日米安保

台湾有事を理由にアメリカは日本の防衛から手を引くかもしれない

日米安保

ウクライナへの戦車供与によりドイツvsロシアの直接戦争へ」では、アメリカがウクライナ支援から手を引き始めている可能性を紹介した。

それに関連して、1月にCIAのバーンズ長官がロシアとウクライナに極秘の停戦交渉をしに行ったことを、スイスのNeue Zürcher Zeitung(NZZ)紙が報じている。

Neue Zürcher Zeitung

Der Beschluss des deutschen Regierungschefs, Leopard 2 in di…

この交渉に当たり、アメリカはロシアにウクライナ領の20%(ドンバス地域)割譲という好条件を提示したようで、ウクライナから足を洗いたいとの本音が透けて見えるものとなっている。

ただ、領土を取られたくないウクライナと、自国の勝利を確信するロシア双方が停戦交渉を断ったとのこと。

なお、アメリカ国内では、ブリンケン国務長官やオースティン国防長官などの好戦派と、安全保障顧問のジェイク・サリバン氏などが停戦派として対立しているようだが、停戦交渉のリーク情報からは停戦派が優勢となっていることが伺える。

ドイツのショルツ首相も「停戦派が優勢なアメリカは戦車供与しない」と考えていたようで、アメリカが交渉決裂により「殺るしかない」方針に傾いたために、急遽、戦車供与するに至ったようだ。

ただ、アメリカのエイブラムス戦車は予備車からの提供となり、軍事機密の劣化ウラン装甲を通常装甲に換装するなどの整備に1年ほど要するとしており、事実上「出す気ナッシング」と言え、好戦派が優勢なのかは微妙なところだ。

結果だけ見ると、アメリカはエイブラムス戦車を出すフリをしてドイツに戦車を出させ、対ロシアの前面に立たせたことは前回のブログでも紹介したとおりであり、ウクライナ戦争を欧州勢(ドイツ)に押し付けて足を洗う方向に進んでいると思われる。

なお、アメリカは、ハイマースの2倍(151km)の射程を持つGPS誘導の長距離ロケット弾(ボーイング製)をウクライナに供与することが話題となっている。

しかしながら、ブルームバーグが報じるように、お届けには少なくとも9ヶ月はかかるとのことで、やはりアメリカのやる気は感じられない。

この状況からは、アメリカは世界覇権縮小戦略を着実に進めており、中東やアフガンに続いて欧州からも手を引き始めた・・との絵が見えてくる。

そうなると、同じくアメリカ覇権下の東アジア(日本)からも手を引くことが想定されるワケだが、実は東アジアでも目に見える形で変化が起こり始めている。

アメリカの軍関係者や政治家から「数年以内の米中戦争」を指摘する声が相次いでおり、例えば、アメリカ空軍大将のマイク・ミニハン氏は、2年以内(2025年まで)の米中戦争勃発を予測しているとか。

ゼロヘッジさんの記事によると、マイク・ミニハン空軍大将さんは、軍内部に向けて「2025年までに中国が台湾侵攻してアメリカと戦争になるよ~」とのメモを作成して警告したとのこと。

ちなみに、このメモはツイッター上で公開されており、見て分かるように単なる走り書きの「アイディアノート」的なものではなく、ちゃんとした書式にミニハン将軍の署名まで入っている公文書的なものだ。

2025年までに米中戦争の準備しとけよ・・と非公式に命令した感じか。

ミニハン将軍が2025年までに米中戦争勃発を予測するのは、2024年にアメリカ大統領選挙と台湾の総統選挙があるため、アメリカが大統領選に勤しんでいる間に、中国が台湾総統選挙に因縁つけて侵攻する想定のようだ。

アメリカ大統領選挙は2024年11月5日実施予定で、結果確定までに数日~1週間程度はかかるだろうから、ミニハン将軍の予測に従えば、中国は2024年末~2025年初頭に台湾侵攻することになる。

なお、台湾総統選挙は2024年1月に実施されるが、再選回数規定により現総統の蔡英文氏は出馬出来ないため、中国が何らか介入するにはうってつけと言える。

ちなみに、このメモの件はアメリカのNBCが報じており、多くの米国民の知るところとなっているものの、ミニハン空軍大将はペンタゴン内部では「タカ派(強硬派)」として知られているため・・

アメリカ国民「中国と戦争?HAHAHA、勝手に言ってるだけやろ」

・・と本気にされていない可能性はあるかも。

ただ、マイケル・マッコール下院議員(共和党)は「I Think He’s Right(空軍大将の言ってることは正しいぜ)」と、ミニハン将軍の援護射撃をしているとか。

下院外交委員長でもあるマッコール議員は・・

  • 中国は、台湾総統選挙を通じて台湾を支配下に置くことを目指している。
  • ただし、選挙工作が失敗した場合は軍事侵攻する。

・・とニラんでいるんだとか。

中国共産党政府は、台湾で不正選挙工作して親中政権の成立を目指すものの、失敗した場合は「インチキ不正選挙」「選挙で混乱した台湾の治安維持」と因縁つけて侵攻することになりそうだ。

この予測が正しいとするなら、親中投票や不正選挙、選挙後の暴動のために、既に相当数の中共工作員が台湾に潜んでいることになるが・・・全然あり得る。

さらに、アメリカ軍の前インド太平洋司令官のフィリップ・デービッドソン海軍大将は、キンペーさんの任期となる2027年までに中国が台湾侵攻する可能性を指摘する。

なお、冒頭に紹介した、マイク・ミニハン空軍大将は2019年9月~2021年8月にインド太平洋軍の副司令官だったが、デービットソン海軍大将は2021年4月30日までインド太平洋軍の司令官だった。

インド太平洋軍という極東地域の軍事専門家でもある海軍大将・空軍大将に加え、下院議員まで「米中戦争くるで」と警告する背景には何があるのか。

一つには、危機を煽ることで軍事予算を増やしたいとする軍産企業の意向もあるだろうが、今のウクライナでも充分だろうし、他に何か目的があると考えるのが妥当か。

その点で気になるのは、米中戦争の話が出始めたのと同時期に、日本では増税&防衛費増額・敵基地攻撃能力の保持が決まったことだろう。

防衛費(軍事費)増額の意思決定過程は不透明そのもので「他にカネ使うとこあるやろ」など反発の声は大きく、あの航空幕僚長だった田母神さんですら「増税アカンで」と批判する。

下手すれば政権の命運を懸けた重大決定だが、すんなり決まって批判も小さかった(メディアがあまり流さなかった)状況を踏まえると、アメリカからの天の声に従ったものと思われる。

なお、先のデービットソン海軍大将は、防衛費増額を決めたばかりの自民党の会議の場で米中戦争の可能性を指摘しており、これらの状況証拠からは「ボッタクリ兵器買え」とのご命令があったことが伺える・・が、目的は押し売りだけではなさそう。

防衛費(軍事費)増額は欧州で先行しているが、アメリカは欧州覇権をひっそり縮小し始めていることを踏まえると、防衛費(軍事費)増額とは事実上「アメリカがいなくなっても大丈夫です」宣言だ。

ジャイアン対のび太

ドラえもんも安心

EU(ドイツ)がロシアに勝てるようにならないと、アメリカさんが安心して帰れない(覇権撤退)という涙ちょちょぎれる話だ。

と言うことで、ウクライナ戦争におけるアメリカの動きをまとめると・・

  1. アメリカはウクライナ傀儡政権にロシアを煽らせて侵攻を誘発
  2. アメリカはEU(ドイツ)を誘ってウクライナを支援
  3. アメリカは、EU(ドイツ)の軍事費を増額させると共に、戦車の話を悪用してウクライナ支援をドイツ中心にして自らは撤退

・・となり、アメリカは欧州における覇権縮小に走っていることが分かる。

さらに、ドイツ外相さんは「戦争はロシア vs ドイツ(EU)となってんで」として、アメリカ亡き後の欧州はドイツ中心にロシアに立ち向かうとの決意を感じさせる。

NATO vs ロシアの第三次世界大戦でドイツは消滅!?」等で紹介したように、ウクライナ戦争の真の目的はドイツ(EU)の弱体化だが、ドイツとロシアを直接戦争させトドメ刺す感がある。

また、アメリカの著名な予言者のジョセフ・ティテル氏は、ドイツがロシアに攻撃されることを予言している。

以下は、はろーふろーむロングビーチさんがジョセフ・ティテル氏のクソ長いライブを要約&和訳してくれている動画だが、8分16秒辺りからドイツの話が出てくる(短いけど)。

ジョセフ・ティテル氏によると・・・

  • ドイツがウクライナに供給する戦車(レオパルト2)が原因となり、ロシアがドイツを攻撃する。
  • ロシアは、欧米戦車について「届けられ次第破壊する」との言葉を実行する。
  • ドイツはウクライナへの戦車供与を激しく後悔することになる。

・・とのことだ。

ちなみに、ロシアがドイツを攻める理由は「劣化ウラン弾」ではなかろうか。

ゼロヘッジさんの記事によると、欧米戦車による劣化ウラン弾の使用について、ロシアからは「ロシアに対するダーティー・ボムの使用と見なす」との警告が出ているとか。

また、ウィーン軍事安全保障・軍備管理交渉のロシア代表コンスタンティン・ガブリロフ氏は「劣化ウラン弾はドイツのレオパルト2戦車にも搭載可能」と名指ししており、レオパルト2戦車の戦場投入と共に「ドイツぶっ殺す」モードに突入する可能性を伺わせる。

公式にはドイツのレオパルト2は「タングステン弾」を使っていることになっているが・・。

ちなみに、かつてロシア外交で活躍した元外交官の佐藤優氏は、ロシアについて・・

極端から極端に振れる国で、「味方でなければ敵」との図式に傾きやすい

・・と分析している。

獄中記(佐藤 優 著)

この分析を踏まえると、既にロシアはドイツを「友好国→敵国」と認識しており、劣化ウラン弾を口実に直接攻撃を仕掛ける可能性は否定出来ない。

ドイツはレオパルト2を出せないかもだ。

このように、米軍大将や政治家の「米中戦争」喧伝と日本の防衛費増額という状況は、EU(ドイツ)と似通っていることが分かる。

この点を踏まえ、米中戦争に関するアメリカ様のご意見を見てみたい。

まずは、ワシントンDCに本拠地を構えるネオコン系シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)が出したこのレポート。

アメリカが中国と直接戦争すると、1週間で米軍の弾薬が無くなってしまうとする。

CSISさんによると、アメリカの軍需産業が有事の生産体制に移行するのに時間を要するため、アメリカ軍は1週間でタマ切れになるんだとか。

と言うことで、このレポートは・・

  • 中国と戦争するなんて無理や。
  • ウクライナ終わらせないと、中国に負けるで。

・・と言っており、分かりやすく言い換えると・・

  • アメリカ軍はタマ不足になるから、日本(自衛隊)参戦は必須や。
  • アメリカは中国との戦争に備えてウクライナ支援終了やで。後はドイツに任せたで。

・・となり、日本の再軍備とウクライナ撤退を求めるものと言える。

さらに、CSISは2026年台湾有事を想定した勝敗・被害想定のシミュレーション結果を公表しており、日本では「日米勝利・中国敗北」との結果が大きく報じられている。

しかしながら、ドイツの例やジャパンハンドラーと言われるCSISの性格を踏まえると、日本にとって好ましくない重要メッセージが込められていると考えるべきだろう。

CSISのシミュレーションでは、日本の自衛隊参戦を得たアメリカ軍は中国軍に勝利するものの、1隻1兆円の空母を2隻、航空機・駆逐艦等は数百単位で失うほか、米軍兵士にも多くの死者が出るなど、甚大な被害が予測されている。

気になるのは、憲法違反となる自衛隊の参戦が大前提となっていることや、アメリカ軍の被害想定が大きすぎることだろうか。

自衛隊の参戦については、先の「タマ切れレポート」と同様に日本の再軍備を促すものだろうが、CSISの被害想定は盛り過ぎではないか。

そもそも、台湾へは日本の米軍基地から戦闘機・爆撃機が往復可能なので空母投入は考えにくく、アメリカ軍は中国軍の上陸船団をアウトレンジからミサイル攻撃するだろうから、甚大な被害が出ようハズがない。

マシマシの被害想定を見たアメリカ国民は、アメリカ本国の防衛とは無関係の台湾派兵に大反対するだろうから、アメリカの参戦は不可能になるだけだ。

さらに、CSISレポートにはアメリカ軍不参戦の想定もあり、その場合は日本・台湾陣営ボロ負けとのことで、自衛隊単独での対中戦争はかなりキツいと考えられている。

このようなシミュレーション結果と先の「弾切れレポート」を合わせると、ジャパンハンドラーCSIS様の御意とは・・

  • アメリカは台湾有事になっても中国と戦争しない
  • 日本は対中戦争が出来るように、再軍備と憲法改正しとけ

・・となるだろう。

ただ、これはドイツのように日本を中国にぶつけて潰す・・と言うものではなさそう。

実は、アメリカ政界の奥の院CFR(外交問題評議会)から、東アジアで中国が強くなってくるので、アメリカはこの地域を日本に任せて、アメリカ軍はグアム島に移転すべき・・とする論文が2010年に出ている。

日清戦争以外に海戦経験のないランドパワー国家の中国に、最強のシーパワー国家アメリカが負けるワケが無いことを踏まえると、2010年の段階からアメリカの基本戦略は「覇権縮小」であることが分かる。

つまるところ「アメリカは東アジアから手を引くから日本は早く再軍備しろ」が、CSIS・CFR(支配者層)の御意と言える。

なお、1951年にアメリカは日本に再軍備を要求したものの、当時の吉田茂首相が国民感情と経済発展優先を理由に警察予備隊でお茶を濁し「アメリカさんに守って欲しいお」を貫いた経緯がある。

また、日本は2045年までアメリカに防衛してもらって貢ぎ続ける(植民地的な)密約があるとも言われており、その期限を見据えた準備勧告とも考えられる。

いずれにしても、アメリカの世界覇権撤退戦略の一環として日本(や韓国)から米軍は引き上げるので、そろそろちゃんと独立準備してね・・と言うことなのだろう。

なお、台湾有事や米中戦争については、「アメリカの暴動と新中国連邦構想」等で紹介したように、2025年までの中国共産党政権崩壊・中国分裂は既定路線であり、中国は台湾侵攻する状況には無さそうだ。

また、「ゼロコロナ政策は中国共産党支配の崩壊へと繋がる」でも紹介したように、中国・台湾の黒幕華僑勢は、本拠地となる上海~深圳エリアと台湾を独立させて同じ国にする可能性すらあり、わざわざ戦争する必要性は薄い。

そもそも、経済的に中国に依存する台湾で、本気で中国からの独立を望む人は少ないだろうから、仮に台湾有事となっても台湾は即降伏する可能性が高く、アメリカ様が何もしないうちにコトは終わる可能性が高い。

そう考えると、日本が再軍備を求められるのは、ドイツのように中国と戦争させられるのではなく、アメリカの覇権から外れるに当たって自立を求められている・・と信じたい。

そういえば、共和党のマッカーシー下院議長が台湾訪問を計画して中国のお怒りを買っている。

政権が代わっても、中国を煽るだけ煽り倒ししている。

さらに、中国のスパイ気球をアメリカが撃墜した件を受けて、ブリンケン国務長官の訪中&キンペーさんとの会談(=対注関係改善)が無くなったが・・アメリカと中国が仲良くなるのを避けるためのものだった?

中国との対立を煽らないと日本はちっとも再軍備しないので、アメリカは東アジアから永遠に帰れないことを踏まえると、このセンはあるかもしれない。


最後まで読んでくれてありがとう!