土日明けの月曜日、NYダウが急落するなど各地で大混乱となっている。
↘【NYダウ】下げ幅900ドル超。3時35分 902ドル安の 33682ドル pic.twitter.com/xNzPbY8QnK
— 相場変動お知らせ bot (@GOLD_OIL) September 20, 2021
ダウは一時900ドル超の下げ幅とか。最安値は、6月の下落時に近いレベルまで逝ってるな。
日経も、大きくGDして窓埋めすることなく逝った・・。連休明けにはデカ過ぎるダメージだ。
また、ビットコインなど仮想通貨全般もおはギャー状態だったが、かなり持ち直している様子。
8月にレジスタンスとなっていた、42300ドル付近がサポートとして意識されている模様だ。9月7日の暴落時もこのラインで止まっており、その後もこのサポラインは抜かれていない。カッチカチや。
また、VIX指数も跳ね上がった。1日で落ち着きつつあるが。
2020年3月のコロナショックでは85まで上昇したことを考えると、まだまだ水準は低い・・。
世界各地の一連の暴落劇は、9月20日に中国の不動産開発大手・恒大集団(EverGrande)の破綻懸念が現実のものとなり、香港市場で株価が急落したことが原因だ。
恒大集団の負債額は中国の不動産業界で最大級の約3000億ドル規模と大きく、コロナ以降、世界を牽引してきた中国経済に大打撃を与えるのではないか・・との憶測から、本格的なチャイナショック前に市場から「逃げチャイナyo」状態となっている。
GPIF(年金運用積立金管理独立行政法人)も70億円ほど保有しているようだ。
Government Pension Investment Fund GPIF
年金運用積立金管理独立行政法人保有全銘柄(2019年度末) 2020/03 保有分
China Evergrande Group を抜粋https://t.co/MyBgqkih8L#Evergrande #GPIF #bond #stock #年金 #中国恒大集団 pic.twitter.com/Hwsvm52F4G— 波の観察者 (@ablaufman) September 20, 2021
まあ、年金の資金規模から見ればハナクソみたいな額だし、優秀なトレーダーさんがショートしてれば、むしろ爆益の局面だ。年金は今のところ大丈夫そうだな。
なお、恒大集団リスクについては、時事通信の解説が分かりやすい。
【解説】破綻危機 中国の不動産大手・恒大集団とは?https://t.co/4oIDFXSryx
— AFPBB News (@afpbbcom) September 20, 2021
解説によると、ピーク時の2017年に430億ドルあった資産は既に90億ドルを下回っているとあり、手元資金が枯渇している様子が伺える。
株価は年初から85%下落し保有資産の売却も進まず、ついに9月21日期限の利払いが出来なくなった・・というのが今回だな。
まあ、リーマンショックの負債総額は6000億ドルで、今回の2倍あったんだが。
恒大集団を巡る動きは、今月に入ってから加速度的に悪化しており、9月7日には格付けが引き下げられ、14日には中国共産党政府から「恒大集団は20日期限の利払い出来ませんぜ」とのアナウンスがあった。
China’s “Lehman Moment” Arrives On 13th Anniversary Of Lehman Bankruptcy: Beijing Tells Banks Evergrande Won’t Pay Interest https://t.co/xo8BorXCFf
— zerohedge (@zerohedge) September 15, 2021
この政府声明は、まさに「政府は救済はしない」宣言であり、この時点で恒大集団の破綻は確定したと言える。
ただ、恒大集団の破綻リスクは急に始まった話ではない。
と言うか、そもそも恒大集団の資金繰りが悪化したのは、中国共産党が恒大集団を狙い撃ちにした規制強化策(三条紅線)を昨年8月に唐突に導入したからだ。
これにより、高層マンションなど着工しただけで未完成の物件を販売する行為が出来なくなり、恒大集団の「先行予約販売で集めた資金で借金返す」という手法が使えなくなった。
恒大集団がチャリンカー(自転車操業)みたいな感じもするが、この時点での資金繰りに大きな問題は無かった。
新規制対応のために一時的に資金が必要となっただけなのだが、中国共産党が恒大集団など巨体不動産企業をターゲットにしているという事実を踏まえ、銀行は融資を渋ったことが恒大破綻の引き金となった。
恒大集団は、所有する不動産や関連事業の売却を進めたものの、負債圧縮には程遠く、ついに利息が払えなくなった・・と言うのが今だ。
中国共産党政府が潰すと決めた結果が今の状況なので、不動産バブル崩壊に伴う(民間企業の)巨額損失は政府にとっては折り込み済みと言えるし、むやみに公的資金注入で救済することは無いだろう。
恐らく、市場の大人はこの動きを織り込んでおり、今になって一部の個人投資家(とメディア)が騒ぎはじめたと言うことになるだろう。
ただ、広州FCの運営はじめ多角経営の巨大企業・恒大集団が破綻すれば、多くの都市部民が失業するだけでなく、中小企業の連鎖倒産も想定される。
さらに、恒大集団ほどの巨大企業が潰れるなら「不動産投資全部売れ」となり、貸し剥がしやパニック売りからの不動産投資の連鎖破綻、そして銀行破綻まで繋がりかねない。
中国経済の3割を占めるとされる不動産業界を潰した混乱を中共政府が収拾出来るかは不透明で、不動産業界から金融業界まで破綻が連鎖する「中国版リーマンショック」が強く懸念される。
ただ、中国共産党の恒大集団潰しの動きは今に始まったものではないし、単に不動産バブルを潰すためだけではないようだ。
以前に「ジャック・マー失踪とデジタル人民元 中国共産党帝国は経済面から覇権を狙う」でも紹介したが、中国共産党は巨大化した中国民間企業からの収奪を進めている。
これについては、以前にも紹介したアメリカに亡命した大富豪の郭文貴(GW)と、インタビュアーのカイル・バス(KB)のインタビュー和訳文字起こし(GIZMODOより)が参考になる。
KB:ジャック・マーは1年後どうなってると思いますか?
GW:ふたつしかない。中国の億万長者の運命はみなふたつ。刑務所か死。
KB:刑務所送りになるか殺されるか、ふたつにひとつだということですか?
GW:そう。殺しは殺すって意味ね。ジャック・マーっていうとアリババの話ばかり注目されるけど、個人で金融会社持ってるでしょ。
KB:アント・フィナンシャル。中国の金融システムではかなりの大手ですよね。
GW:オーマイガーそこが大問題なのよ。
KB:銀行に反旗翻してますからね。
GW:だいぶ儲かってるしね。マシーン。造幣マシーンよ。アリババは嘘、ズル、アメリカまんまとひっかけた(史上最高の2.4兆円調達を果たした2004年のNY上場の話と思われる)。全部デタラメ。全部本当なわけないと思う。でもこのフィンテックは絶好調。本当に儲かってるんだよね。
KB:アント・フィナンシャルですね。
GW:アント。いくらだからわかる? 1兆ドルだよ。
KB:1兆ドル。
GW:全部どりよ。歴史を見てごらん。1927~1942年のドイツ。ヒットラーが台頭した。あれと同じ。新興会社全部横取りで国を支配して、ファミリーに株式の持分を配るんだ。あれと同じ手法だね。それがこれまでのジャック・マーね。ジャック(字幕はタイポ)のファミリー企業がお金を持っていて、会社を生むのは全部中国の起業家連中。人のお腹で子づくりよ。それじゃだめなんで、赤ちゃん取り戻さないとって話になる。「それはあんたのものじゃないよ、ジャック・マー。手放すんだ。さもないと1週間で刑務所。もう1週間で殺すからな」ってね。
ということで、中国共産党(習近平)の認識では、改革開放の鄧小平(トウショウヘイ)路線で成長した民間企業(郭文貴の言葉を借りれば赤ちゃん)を、国の手に取り返すフェーズになっているようだ。
こうした考えの元に習近平(中共政府)が三条紅線などの規制強化したであろうことを踏まえると、恒大集団以外の巨大不動産企業も「近日中に潰す企業リスト」に入っていることは間違いない。
中国恒大集団の次は「富力地産」と「緑地控股」など大手不動産開発企業も巨大な負債のため破綻しそうな状況に陥っている。 pic.twitter.com/g97YC7zhdg
— Alan~速報~🇯🇵🇲🇳🇺🇸 (@MogolianAlan) September 14, 2021
中国不動産業界の混乱は、まだまだ続きそうだ。
さらに、「赤ちゃんを(国の手に)取り戻す」ことを踏まえると、巨大企業が放出した不動産は、政府(国有企業)が根こそぎかっさらって行くことになろう。
行き着く先は、不動産業界の完全国有化になりそうだ。
ちなみに、中国では全ての土地は国家のものとされており、個人所有は認められていない。売買されている「不動産」とは土地の「使用権」に過ぎない。
ただ、日米欧で不動産(土地)を意味するリアルエステート(real estate)はスペイン語の「レアル(国王の土地)」が由来で、土地所有に課される「固定資産税」は土地の借り賃みたいなものと言える。
「土地を真に所有しているのは国だけ」なのは、中国も日米欧も変わらないと言えよう。
さて、アリババのジャック・マー以降、中国ではトップクラスの富裕層が狙い撃ちされて潰されている。
中国では、7月から米国への株式上場に政府の許可が必要となったが、その直前(6月)に駆け込み上場した滴滴出行(DiDi)は、政府から配車サービスアプリを「違法」扱いされ潰された挙げ句に国有化されそうな勢いだ。
City of Beijing said to seek taking Didi under state control https://t.co/hBZfmt7fzD
— TIME (@TIME) September 4, 2021
さらに、中共の締め付けは芸能界にも及んでおり、大人気女優の鄭爽(ジェン・シュアン)や范冰冰(ファン・ビンビン)などの脱税事件を機に、芸能人に対する税務調査の強化が打ち出された。
中国当局 芸能人への税務調査の強化を発表 https://t.co/UZJQh8NrtF #tbs #tbs_news #japan #news
— TBS NEWS (@tbs_news) September 18, 2021
さらに、人気アイドルへの投げ銭行為などいわゆる「推し活」までもが規制対象に。
中国からアイドルが消える?異例の芸能界規制に「推し活」禁止…習近平一強体制が抱える危機感 #FNNプライムオンライン https://t.co/SJH69OXJkn
— FNNプライムオンライン (@FNN_News) September 16, 2021
このほか、男の名前なので忘れたが、靖国神社で写真とってたとかで、男性アイドルも粛清されたとか。日本で例えるなら、国策でジャニーズやアメージングをぶっ潰しているようなものか。
さらに、規制強化はゲームにも。
8月末に、18歳未満がネトゲしていいのは週3時間まで規制が出来たとこだが、さらにゲームの内容にも厳しい規制が。
中国のゲーム規制ってこうらしいけど
コレをクリアできるゲームってある?
数独くらいじゃね? pic.twitter.com/TMGGwg50s7— 雪山雪乃介 (@yukiyama2003) September 13, 2021
メディアも企業も、中国共産党よりも大きな影響力を持つことは許されないという、強い意思を感じるな。
また、FNNの記事にもあるように、習近平は「共同富裕」方針を打ち出しており、少数の富裕層を潰したり寄付の名のもとに巻き上げたカネを貧困層にバラまくという「国民全員で豊かになろう運動」を展開している。
これに加えて、最近では「習近平思想」を学ばせるなど、集団指導体制を破壊して個人崇拝を進めている。
中国の習近平政権の暴走がエスカレートしている。「共同富裕」というスローガンを掲げて大企業などに巨額の拠出を強要し、子供たちにも「習近平思想」を学ばせるなど個人崇拝の様相だ。 https://t.co/YD9DXUnqBf @zakdeskより
— zakzak (@zakdesk) September 14, 2021
金持ち大企業を痛め付け、ルサンチマン感情を上手くコントロールすることで貧困層から支持を得ており、そこに個人崇拝を上乗せすることで、政治基盤を磐石のものとしている。
習近平は、のし上がった大企業や芸能人などを分かりやすい「人民の敵」と位置付け、大企業国有化や寄付金強制徴収など、大富豪を痛め付けて自らの支持を固めるポピュリズムに走っている点を踏まえても、「人民の敵」を助けることになる恒大集団への安易な公的資金注入は行われないだろう。
なお、中国都市部の不動産価格は、平均1万元(170000)/㎡と言われており、都市部労働者の平均年収(167万円)から見てかなり高く、まともに働いても手が出ないくらいにはバブルとなっている。
習近平から見れば、「バブル潰せば金持ち投資家連中も潰れるし、ますます支持率上がるやろな~」だろう。
とは言え、世界では「チャイナショック」として世界中に破綻が連鎖することを懸念している。
これは、「バブルを潰したい中国共産党 VS QEバブルを潰せない日米欧」の綱引きと言え、チャイナショックによるダメージは、リーマンショック以降10年以上もQEを続けながら金融システムが正常化しない日米欧の方が圧倒的に大きい。万が一に世界波及した場合には相当厳しいことになる。
「3京円の世界債務がもたらすインフレーションとデフォルト」等で触れたように、世界ではインフレが長期化しつつある一方で、景気は停滞するスタグフレーション気味だ。
チャイナショックが金融システムを襲っても今以上に緩和的な金融政策を取ることは困難で、QEを続けた場合には制御不能の金利高騰&インフレに突入する恐れもある。そうなれば、ドルの基軸通貨性の喪失にも繋がりかねない。日本円もかなり危ない。
支配者層に連なり、欧州の知性とも呼ばれたジャック・アタリは、2025年までに中国共産党の一党独裁が終わるとしていたが・・・恒大集団の破綻は、その予言(=国際金融資本の予定)に対する習近平の逆襲だろうか。
本日は、書籍の紹介をしたい。紹介する書籍は、馬淵睦夫著「知ってはいけない現代史の正体」だ。本書は、元駐ウクライナ大使兼モルドバ大使の馬淵睦夫氏が、いわゆる「ディープステート(影の支配者)」について解説したものだ。ディ[…]
知ってはいけない現代史の正体 馬淵睦夫 著
おそらく、今回の問題は中国国内で落ち着くだろうが・・状況の注視が必要だな!
最後まで読んでくれてありがとう!