ドルの崩壊

アメリカ覇権の駆逐に共闘するイスラエルとイラン

ドルの崩壊

前回の「迫るペトラダラーの崩壊 中東で追い詰められているのはアメリカ」では、イスラエル・イランの対立構造によって、ペトロダラーを支える「アメリカの中東軍事覇権」が駆逐されつつあることを紹介した。

その中東情勢について、直近の動きを確認したい。

まずはイスラエル・イランの報復の応酬の意義について、前回のブログ記事では・・

  • 中東におけるアメリカ軍のミサイル防衛システム能力の詳細
  • ミサイル防衛の運用コストが高すぎ問題
  • これらが露呈したことで、アメリカ軍事覇権の衰退に繋がる

・・と言ったことを紹介したが、これらに加えて「中東版NATO構想の瓦解」や「アメリカの石油支配の終焉」をも露呈するものだったとか。

公式には、イランのミサイル・ドローンをほぼ全て撃墜したのは、アメリカ・イスラエルに加えて、親米アラブ諸国が連携した成果とされている。

だが、アラブ諸国の「石油王」たちは、資源に乏しくアメリカ援助に頼るヨルダンにミサイル撃墜任務を押し付けたほか、当のヨルダンすら「撃墜は自衛なんで。イスラエルのためじゃないんで。」と強調しているのが現実だとか。

この状況について、元アメリカ国防総省高官のビラル・サーブ氏は「イランの攻撃で、中東版NATO構想の失敗が明らかになったやん」と評価している。

駐留米軍が国外出撃するに当たっては駐留国の許可が必須となるため(奴隷の日韓では不要)、対イランを念頭に置いた駐留米軍は、事実上無力化される可能性が高い。

また、アメリカはイラン石油への制裁を行うことにした。

アメリカの石油制裁とは、製油施設や港、海運、銀行等を「イラン石油買ったら・・分かっとるやろなぁ?」と脅すもので、石油がアメリカ支配下にあることを示す象徴的な行為と言える。

しかしながら、イラン原油の8割は中国系の独立製油施設で精製→中国お買上げとなっているほか、輸送から決済までアメリカの決済システムSWIFTを使っていないため、制裁を発動する手段が無いんだとか。

つまり、石油支配しているアメリカ様は、「制裁すべきイラン石油に制裁出来ない」ことがバレた。

まとめると、イラン→イスラエルの報復によって・・

  • 中東におけるアメリカ軍のミサイル防衛システム能力の詳細
  • ミサイル防衛の運用コストが高すぎ問題
  • 中東版NATO構想の瓦解(=親米アラブ諸国の離米)
  • イラン石油への制裁が不可能

・・が露呈し、アメリカの中東軍事覇権は実体が伴っていないことがバレたと言える。

これは、イランからアメリカに対する・・

勝てんぜ、お前は・・・

・・とのメッセージとも言えるだろう。

さらに、アメリカにとって問題なのがイスラエル→イランの報復で、この中に「核兵器」があった可能性が指摘されている。

ブラジルの著名なジャーナリストのペペ・エスコバル氏によると・・

  • イスラエル→イランへの最後の報復攻撃において、イスラエル側は核兵器を詰んだF-35を出撃させた。
  • 目的は、高高度核爆発によるEMP(電磁パルス)攻撃で、イランの電力網をダウンさせようとしたもの。
  • しかし、ヨルダンを越えた辺りで、イスラエルのF-35はロシア戦闘機に撃墜された。
  • イスラエルの報復攻撃が大したことなかったのは、大本命のEMP攻撃が出来なかったから。

・・なんだとか。

これが本当ならば、イスラエルはイランに本気の戦争を仕掛けたことになる・・が、これまで見てきたように、イスラエル・イランはアメリカの中東軍事覇権の駆逐に向けて共闘している。

恐らく、ロシア軍によるイスラエルのF-35撃墜は事前計画どおりだった可能性が高い。

イスラエルがF-35with核兵器を飛ばした目的は、イランを潰すことではなく、本気(プッツン?)をアメリカに見せつけるためだろう。

プッツン

そして、イランに勝てないアメリカは、イスラエルにトンチキなプッツンを見せつけられたため、「イ、イラン攻撃しないなら何してもええわ・・(震え声)」と言わざるを得なくなった。

これが、ラファ攻撃への「Goサイン」だ。

エルサレム・ポストによると、アメリカは自身が反対するラファ攻撃について、イスラエルがイラン攻撃しないことを条件に認めたんだとか。

イスラエル・イランにとって、決定的に重要なのはココだ。

そもそも、ガザ戦争の目的は、ガザ市民をエジプトのシナイ半島に強制移住させることで、欧米勢が提唱する「2国家解決」という実現不可能シナリオ(=永続的な中東不安定化ツール)を破綻させることにあった。

エジプトに強制移住させられたガザ市民は、中東不安定化のために付与された「パレスチナ人」と言うアイデンティティを失って元々の「アラブ人」となり、中東不安定化の終わりと共にアメリカの中東軍事覇権の存在意義も失われていく。

このプランの大詰めが「ラファ攻撃」だ。

この点を踏まえると、ラファ攻撃をアメリカに認めさせた=ガザ市民の移住は確定的となった=アメリカ中東軍事覇権の駆逐に王手をかけたと言える。

こうした事情を踏まえると、イスラエルが「ハマスとの停戦合意が成立してもラファ攻撃するで」と宣言したのは、アメリカの裏Goサインを取り付けたからだと分かる。

ロイターによると、ネタニヤフ首相は「停戦合意の有無に関わらず完全な勝利を達成する」と述べて、和平合意しても、パレスチナ(ガザ)を消滅させる=ガザ市民を強制移住させるとの強い意志を示している。

また、エジプトはシナイ半島のガザ国境付近に、1万戸規模の「新たな街」を建設して受け入れ態勢を整えつつある。

ただ、200万人規模のガザ市民の受け入れには不充分なので、受け入れ方法は要検討事項だろう。

実際に、エジプトは「ラファ侵攻でエジプトに避難民が押し寄せて治安悪化したら、イスラエルとの国交断絶やぞ」と牽制している。

これが意味するところは、エジプトのシシ軍事政権は、ムスリム同胞団(=ハマス政治部門)をクーデターした政権なので「無秩序なガザ市民流入は、ハマスも一緒に入ってくるからカンベンやで」との念押しだろう。(迫るペトラダラーの崩壊 中東で追い詰められているのはアメリカ

さらに、エジプトはインテリジェンス機関のアッバス・カメル長官をイスラエルに派遣している。

表向きの目的はハマス・イスラエルの停戦交渉だが、エジプトがBRICS陣営入りして脱ドル路線を歩み始めたことを踏まえると、本題はガザ市民の受け入れ方法の協議だろう。

また、イスラエル側はラファから10万人を退避させているとか。

AFPによると・・

イスラエル軍は声明で「ラファ東部の住民に対し、拡大された人道的地域に向かうよう促す」と述べた。

・・とのこと。

これは、「拡大された人道的地域」などガザに存在するとは思えないとで、ラファ侵攻・エジプトシナイ半島移送の第一段ではないか。

なお、Middle East Eyeが報じているように、ガザ・エジプト国境を挟んだ両側の都市名は同じ「ラファ」なのだが、両ラファは1982年にイスラエルがシナイ半島から撤退して分割されるまでは一つの都市だった。

Middle East Eye

Cairo is working tirelessly to prevent an influx of Palestin…

このため、ガザとエジプトの「ラファ」には家族・親族・部族の繋がりがあり、このルートでの移住・避難も想定される。

このように、ラファを巡っては・・

  • アメリカが裏Goサイン出した
  • イスラエルは停戦合意を拒否&無視
  • エジプトは新たな街を建設
  • イスラエル・エジプト間で、秩序あるガザ市民受け入れ方法の検討
  • イスラエルは10万人を移送させた?

・・となっており、ガザ戦争の戦略目標となる「ガザ市民の強制移住」は大詰めを迎えていることが分かる。

そして、ガザ市民のエジプトへの強制移住とガザ市民(=パレスチナ人)の再アラブ人化が達成されれば、中東不安定化が解消されてアメリカの中東軍事覇権は存在意義を失い、軍事覇権が支えたペトロダラーも終わる。

この点を踏まえると、ラファ攻撃は実行してもしなくても良さそうなのだが、中東安定化のためには・・

  1. イスラエル国内の右派勢力の駆逐
  2. アメリカの関与能力の喪失

・・が必要なので、このためにラファで惨劇は「喧伝される」必要がある(実行はされないと信じたい)。

まずは、①のイスラエル右派勢力の駆逐だ。

アメリカが世界で仕掛ける戦争の目的はドルの崩壊?」等で紹介したように、イスラエルではシオニズムに燃える極右政党「宗教シオニズム」が連立与党となり、極右のベングヴィール氏が自由に動かせる民兵組織(国家保護対)が誕生するなど、何時でも中東戦争を始める準備が整いつつあった。

こうした中で、イスラエルはハマスを動かしてガザ戦争へと突入したが、これまでの動きを踏まえると、その目的は極右やアメリカのクリスチャン・シオニストが望むアルバート・パイク計画の第三次世界大戦とは真逆の「中東安定化」という可能性が高い。

この点については、極右やクリスチャン・シオニストを上手く欺いたと言える。

こうした中で、ハマスが受け入れた停戦合意をイスラエル右派政権が拒否したことで、イスラエル国内では右派の凋落が加速している。

BBCの報道では、イスラエルが合意拒否した背景事情として・・

  • ハマスが勝手に停戦合意を有利なものに変更した。
  • 条件が違うので、イスラエルは拒否した

・・となっており、これが本当ならばイスラエルが拒否するのも当然だ。

ただ、最初から停戦合意など選択肢には無いイスラエルが、敢えてハマスに合意させた上で拒否する一手間をかけた点からは、何らかの目的があることが伺える。

その目的については、停戦案を拒否したネタニヤフ政権に対して、人質解放を求めるイスラエル国民の怒りが頂点に達している点にありそう。

イスラエルメディアのTimes of Israelによると、人質解放を求めて反戦ムードが高かったところ、「停戦拒否」を受けてイスラエル各地で反政府デモが起こっているんだとか。

これを踏まえると、イスラエルがハマス合意の停戦案を拒否したのは、「右派」への支持を凋落させる目的があったことが伺える。

さらに、同じタイミングで、トルコがイスラエルへの全面輸出停止を打ち出した。

イスラエルにとってトルコは輸入元としては第5位という大きさだが、鉄鋼、建材、鉱物、機械、自動車、エネルギー製品、ゴム、プラスチック、健康製品、農産物等、幅広い品目全ての輸出を停止するとのこと。

Middle East Eyeによると、イスラエルのセメント総輸入量の29%、石油の40%をトルコから輸入(アゼルバイジャン→トルコ→イスラエル)しているため、建設業界や製油施設は戦々恐々となっており戦争どころではなくなる可能性が高い。

ただ、これまでのトルコは口先非難だけで、石油輸送などスルーし続けるなど、ガザ戦争に介入する気はサラサラない感じだったのに、今頃になって輸出停止に踏み切るのは、ラファ攻撃ストップ以外の目的があることが伺える。

その目的とは・・イスラエルの事業者団体がネタニヤフ政権に猛反発していることを踏まえると、ガザ戦争後にイスラエル政界から右派を一層するための布石と考えられる。

さらに、ICC(国際刑事裁判所)は、ネタニヤフ首相とガラント国防相に対して、戦争犯罪及び人道に関する犯罪に関する逮捕状を発行したとか。

イスラエル右派政権は「反ユダヤ!」「歴史的犯罪」と反発しているほか、アメリカはICCに制裁をチラつかせるなど、両国の孤立が鮮明化している。

このように、これまでブイブイ言わせてきたイスラエル右派(&アメリカ国内のイスラエル忖度派)は、一転して自滅的に窮地に立たされていることが分かる。

この理由は、アメリカ軍事覇権亡き後の中東において、イスラエルはアラブ諸国(=BRICS)との親和性を高めねばならないため、「中東不安定化ツール」である右派勢力の完全駆逐は必須・・ということが考えられる。

そして、右派勢力を駆逐するためにも、ラファでの惨劇(の喧伝)が必要となる可能性は高い。

②アメリカの関与能力の喪失についてだ。

まず、①でイスラエル右派勢力が駆逐されるため、イスラエルはアメリカを必要としなくなり、アメリカは中東に関与できなくなっていく。

しかし、ラファ攻撃による効果はそれだけに留まらず、アメリカを分断・内戦へと導く可能性が出てきている。

そのきっかけとなりそうなのが、バイデン政権が打ち出したイスラエルへの武器供与の停止だ。

これは10月7日のハマス攻撃以来初めてのことで、アメリカ国内外の反戦世論の高まりを受けたものだろう。

ただ、「ラファに侵攻するなら」とか「一部の武器(攻撃兵器)」との条件付きな上に、既にイスラエルへの武器供与予算が可決&大量の兵器類が輸送済みで、そもそも裏Goサイン出してる点を踏まえると、単なるポーズなのは間違いない。

しかし、イスラエルは「バイデン政権はハマスを支援してるんか」と強く反発しているほか、アメリカ国内でもトランプ共和党を中心にバイデン政権への反発が高まっている。

実効性に乏しく単なるポーズに過ぎない「武器供与の停止」が・・

  • イスラエルの離米
  • アメリカ国内で親ユダヤ・反ユダヤの分断の表面化

・・という重大結果を招いた点には留意したい。

さらに、ロシアメディアのスプートニクは、バイデン政権に武器供与停止させたアメリカの「親パレスチナデモ」の背後に、ジョージ・ソロスマネーの存在を指摘する。

この結果、ポリティカルコレクトネスや不法移民、ウクライナ問題に加えて、親パレスチナ・反ユダヤという保守vsリベラルを超えた分断の火種が投入された。(トランプの機密文書問題はアメリカ内戦とグレートリセットに繋がる)(アメリカデモの背後にイスラム過激派の影 狙いはアメリカ内戦か

さらに、ソロスマネーによる親パレスチナデモに対して、数年前のBLM運動を彷彿とさせる暴力的鎮圧が行われているとか。

これによって、アメリカでは親パレスチナ・反ユダヤの声が大きくなっていくだろうから、ソロスマネーはイスラエル推しのトランプ再選を阻む目的がありそう。

しかし、この結果としてアメリカの政治的弱体化が進んで行くことを踏まえると、ソロスマネーの真の目的とは、「政治的分断」と「経済・金融危機」との合わせ技によって「アメリカ内戦」を誘発することにありそう。

実のところ、アメリカ国防総省は、1968年に社会崩壊に伴う戒厳令の発動を含む「ガーデン計画」という内乱計画を起草している。

ゼロヘッジさんの記事によると、この計画のポイントは・・

  • 経済不安・大量移民を背景とした暴動が、戒厳令発動のトリガー
  • アメリカ軍の国内展開(=自国民に銃を向ける)を想定

・・というものだ。

現状では、アメリカ人が不法移民に仕事を奪われる雇用破壊が進み、新パレスチナ運動が暴力的に取り締まられ、不法移民に紛れて多数のテロリストが侵入している・・となれば、ガーデン計画はスタンバイ状態だ。(迫る金融危機 アメリカ株式市場のバブル崩壊は意外と近い)(トランプの機密文書問題はアメリカ内戦とグレートリセットに繋がる

また、ガーデン計画を実行する上で、アメリカ軍兵士が自国民に銃を向ける命令に従わない可能性が懸念されるため、アメリカ国民に銃を向けられる「移民部隊」の創設が懸念されているとか。

つまり、バイデン政権による不法移民の際限なき受け入れは、暴動要員(テロリスト)と移民部隊要員としてだった。

なお、サウスダコタ州のノエム知事は、バイデン政権による不法移民の際限なき受け入れが、国力の低下・不安定化を招いていると指摘する。

また、ノエム知事は「ホワイトハウス動かしてんのはバイデン以外の誰かやで」としているほか、政権の社会主義的政策の実力行使は、内戦に繋がる可能性を警告している。

あの未来を暗示することで有名なイルミナティカードにも、戒厳令カードが用意されており、ガッツリホワイトハウスを守っている。この兵士さんは移民部隊・・?

illuminati martiallaw

このような準備万端の中で「ラファの惨劇」が起これば・・ソロスマネーも加わって、一気に内戦まで行く可能性が高い。

そして、内戦となれば、ドル・米国債の価値そのものに与える影響は極めて大きく、中東軍事覇権の喪失=ペトロダラー崩壊もリンクすれば・・。

なお、ガザ戦争については、アメリカの内部で早期終結(=アメリカの中東軍事覇権の維持)を目指す動きもあるが、優勢なのは戦争継続(=軍事覇権の撤退・ドル崩壊)派のようだ。

ICC(国際刑事裁判所)はネタニヤフらイスラエル右派トップの逮捕を目論んでいるのは報じられているとおりだが、アメリカ議会はそんなICCに「イスラエル高官に逮捕状出したら、アメリカはICCに報復すっぞ」と宣言しているほか、その旨の法案まで準備中なんだとか。

うるさいICCをチカラワザで潰すなんて・・

そこにシビれる

・・と言うことで、アメリカ・イスラエルの国際的孤立は際立っており、西側の連帯すら危うくなりつつあるのは、アメリカの世界覇権撤退戦略という大きな絵に繋がっていることを伺わせる。

まとめると、世界史の大きな流れはアメリカの中東軍事覇権の崩壊=ペトロダラー崩壊に向かっており、そのための最後の一押しがイスラエルのラファ侵攻・惨劇・・となりそうだ。

そして、この結果として・・

  • イスラエル国内の右派勢力の駆逐
  • イスラエルの離米・アラブ諸国との融和(=BRICS入り)
  • アメリカ内戦へ
  • アメリカ中東関与能力の喪失
  • ガザ市民のエジプトへの(秩序だった)強制移住
  • ガザ市民(=パレスチナ人)の再アラブ人化の達成

・・が起こり、

中東不安定化の解消

アメリカの中東軍事覇権は名実共に崩壊

ドルを支えるペトロダラー終了

・・となる。

そして、ペトロダラー終了と歩調を合わせるかのように、先に紹介したアメリカ内戦のようなドル・米国債の崩壊策も同時進行している。

なお、ドル・米国債の崩壊策の本命については、「迫る金融危機 アメリカ株式市場のバブル崩壊は意外と近い」で・・

  • アメリカでは雇用や製造業が死んでおり、実体経済はかなり悪い。
  • アメリカ経済は政府支出によって支えられており、政府債務が急増している。
  • これにより、実体経済に大量のマネーが投入されてインフレ(=ドルの貨幣価値の下落)原因になっているほか、ドル・米国債の信用悪化をも招いている。
  • CRE崩壊に伴う信用危機・銀行危機も懸念される中で、FRBはアメリカ株式市場のバブル崩壊を理由として、事実上のQE再開に踏み切る可能性が高くなっている。
  • しかし、それはドルのインフレ(=貨幣価値の下落)を一層進めるものとなる。

・・ということを紹介したように、経済・金融面だろう。

特に、アメリカ政府債務の急増については、あのゴールドマン・サックスのソロモンCEOも「パンデミック終わったのに、いくら何でも増えすぎやぞ」と警鐘を鳴らし始めたとか。

ソロモンCEOは「債務増加によって金利は高くなるで」としており、アメリカ政府債務が持続不能で信用問題になることを示唆している。

100日で1兆ドルという途方もないペースで増加する政府債務の利払い費用は、既に社会保障費に次ぐ第二位の支出となっていて国防費・メディケア費を上回っている。

自転車操業化しつつあるアメリカ財政を踏まえると、ソロモンCEOの警告は妥当だ。

この他にも、金融界のエライ人たちは・・

  • イーロン・マスク「このまま政府債務が増え続けたら、ドルは無価値になるで」
  • JPモルガンのダイモンCEO「米国債務のGDP比はある時点で指数関数的に急上昇する」
  • IMF(国際通貨基金)「アメリカの巨額の財政赤字・政府債務の膨張がインフレに繋がる」

・・としており、アメリカの債務膨張によるドルの貨幣価値の下落=インフレを警告し始めており、さらにそれが「ハイパー」なものになる懸念をしていることが分かる。

ちなみに、アメリカと同じ自転車操業財政の日本は世界一の対外資産を保有する「純債権国」であり、「純債務国(借金大国)」アメリカと比べると通貨の信用状況はかなりマシと言えよう。

さて、アメリカ株式市場ではバブルが進んでおり、NYダウは史上初の終値4万ドルに達したとか。

この背景には直近のCPI(消費者物価指数)が予想より低かったことでインフレの終わりと利下げ期待が高まったことがある。

しかしながら、先にも触れたように、実際のアメリカ経済は死んでおり、政府債務マネーの投入によってかろうじて生きながらえているほか、CPIをファクター別に見ると8カテゴリー中6カテゴリーが12ヶ月のトレンドを上回っているとか。

CPI全体の数年間推移を見ても再上昇しそうなチャートでインフレは酷くなる可能性の方が高く、さらに実体経済を乖離した株価という点を踏まえても今は完全なるバブルと言える。

なお、CPIに先んじて公表されたアメリカのPPI(生産者物価)前年比は・・

PPI 前回2.1% 予想2.1% 結果2.2%

コアPPI 前回2.4% 予想2.3% 今回2.4%

・・と予想を超えて上がっており、この点からもインフレは加速することはあっても落ち着くことは無い。

なお、過去の歴史からバブルの特徴とは・・

  • バブルは市場に資金が大量投入されて起こるもので、実体経済を反映していない
  • バブルの間はバブルと認識できない
  • バブルとは、何年にも渡る超絶大暴落のための上げ

・・というものである点には留意したい。

実のところ、金融環境は利上げ前よりも緩和的=マネージャブジャブになっている。

アメ株バブルとは、FRBが「QT・引締め」と見せてリバレポ資金等を投入していることと、市場参加者が勝手に利下げ期待していることの相乗効果の産物と言える。

既に、一部の市場の大物さんたちは、アメ株バブルを牽引してきた「利下げ期待」「Mag7」の終了を予測し始めた。

・・・と言うことで、中東におけるアメリカ軍事覇権の終焉=ペトロダラーの終焉と、アメ株バブルの崩壊=事実上のQE再開はリンクし始めており、ドル価値の大幅下落が現実化する可能性は高くなっている。

・・とここまで書いたところで、イランのライシ大統領・アブトラヒン外相が搭乗したヘリが墜落し、両者とも死亡したことが報じられた。

ゼロヘッジ等が報じている内容も含めると、アゼルバイジャン国境付近で墜落したとか。

この事件については・・

イラン→ヘリの技術的欠陥と悪天候による事故

イスラエル→関与を否定

アメリカの高官→「暗殺じゃね?」

・・と、誰がコトを荒立てたいのか一目瞭然となっており、ここまでアメリカ軍事覇権の駆逐を目的として共闘してきたイラン・イスラエル関係が壊れる可能性が懸念される。

特に、イランでは「中東不安化ツール」としての革命防衛隊を抑えられるかは気になる。

また、最高指導者ハメネイ師(84歳)の筆頭後継者だったライシ大統領が死亡したことで、次なる筆頭候補はハメネイ師の息子となるため、実態としては「世襲」となる。

世襲親米のパーレビ王朝を妥当して成立したイランでは、最高指導者は国民が直接選挙したイスラム法専門家会議への諮問・答申により選出されることとなっている。

これが「世襲」となることで、最高指導者の正統性に疑問符がつくことになると共に、ウクライナのマイダン革命のごとく、アメリカに付け入るスキを与えることになる。

さらに、アメリカはイスラエルにも反撃を始めており、ネタニヤフ政権に対して「戦後のガザ統治について考えんかいな」と迫っている。

この内容としては、ハマス打倒後にパレスチナ人が戻る前提のガザ再建計画で、実現不可能な二国家解決を改めて迫るものとなっている。

イスラエル国内でもガラント国防相がこれに同調し始めており、戦時内閣内部から「イスラエルがガザ支配するのはアカンで」と二国家解決を支持する声が上がり始めた。

騒ぎの大元はガラント国防相で政権に同様が走っており、イラン大統領のヘリ事故とのタイミングを踏まえると、アメリカ裏介入と考えるべきだろう。

なお、この件については、強い発言力を持つガンツ元国防相も同調している・・が、ガンツ氏はラファ侵攻を必須としているので、その本心はよくわからない。

また、イスラエル軍は既にラファに戦車を突入させていたり、食糧を止める兵糧攻めを行っているとのことだが、ガザ市民の惨状はあまり伝わってこない。

本来であれば、イスラエル軍と右派政権による「ジェノサイド」が喧伝される展開が考えられるところだが・・。

このほか、サウジアラビアのMbS皇太子は、急遽来日をキャンセルしたことが報じられている。

FNNプライムオンライン

林官房長官は20日午前の記者会見で、同日に日本に到着する予定だったサウジアラビアのムハンマド皇太子兼首相の来日が延期にな…

FNNの報道によると、来日キャンセルの理由は父親(サルマン国王)の体調不良によるものとしているが、来日した折に皇室との面会まで予定されていた点を踏まえると、国王の体調不良が理由とは考えにくい。

サウジも親米からBRICS陣営へと寝返っており、イラン・イスラエルと協力してアメリカの中東覇権の駆逐に尽力している点を踏まえると、MbS皇太子は暗殺を恐れた可能性が高い。・・と言うか、5月初旬にも暗殺未遂があったとか・・・。

と言うことで、中東ではイスラエル・イランがアメリカ覇権駆逐に共闘し、優勢にコトを進めているところだが、アメリカの覇権維持(or第三次世界大戦派)がペトロダラー維持をかけて起死回生の一手を打ってきたところなのではないか。

このため、イランのライシ大統領は死なねばならなかったし、MbS皇太子も容易に国を離れられなくなった。

中東情勢はまだまだ動きそうな感じだ。

今回はドルとBRICSをテーマとしようとしたが、中東情勢の展開を見ていたら終わってしまった・・。


最後まで読んでくれてありがとう!