本日、市場がザワついた。
日銀が追加金融緩和の一環で、国債買入の上限を撤廃したのだ。以下は共同通信からだ。
日銀は27日に金融政策決定会合を開き、追加の金融緩和策を決めた。国債買い入れの上限を撤廃し、社債やコマーシャルペーパー(CP)の購入枠を拡大する。金融市場に大量の資金を供給できる態勢を整えて急激な金利上昇を防ぎ、社債などの購入を通じて新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた企業の資金繰りを支援する。景気判断は3月会合時点の「弱い動き」から「厳しさを増している」に引き下げた。
追加緩和は3月会合に続いて2回連続。追加緩和策を打ち出して経済下支えに向けた姿勢を示し、各国の中央銀行や緊急経済対策を取りまとめた政府と歩調を合わせる。
さて、このニュースの中で最も関心が高いのは「日銀が国債買い入れの上限を撤廃した」の部分だ。
一部の市場関係者は買い入れ上限の撤廃は想定していたようで、7月以降に控えた実際の国債増発に備えた措置だろう。
とはいえ、金融緩和の効果という点からは、公共投資など社会的な需要拡大政策を行わずに金融緩和だけをやってもあまり意味もない。マネタリーベースだけ膨れ上がり、デフレとなったこの10年間を見ていればそれは明らかだ。
ただ、金融緩和が無意味になってしまった原因としては、日銀QE(量的緩和)の資金が実体経済ではなく市場に向かってしまったことが挙げられる。
第二次世界対戦前も世界恐慌となっていたが、アメリカやイギリスはブロック経済の元、自国に莫大なカネをバラまき、そのカネは市民・国民にしっかりと還元された。
だが、今は当時と違ってマネーは「デリバティブ」に吸収される。このため、日銀QE(量的緩和)で生まれたカネは市民・国民生活とは無縁の金融市場に流れてしまう。当たり前だが、インフレや景気回復には何の効果もない。
そういった観点から、今回の国債買い入れ額の上限撤廃は、これまでのような量的緩和ではなく、政府の国債大量発行を睨んだものではないかという見方がある。なるほど、コロナ禍を理由に個人や企業にばらまくカネの財源として、赤字国債を日銀が買い取るための準備というわけだ。
確かに、海外と比べれば緩やかとは言え日本も事実上のロックダウンしており、中小は言うに及ばず大企業でさえ資金繰りに窮している。この状況が長引けば、本格的な経済崩壊ともなりかねない。
さらに、国債発行に伴う金利上昇も予想されるから、企業が金を借りやすくなるように買い入れを増やして金利を下げようということか。
それに備えての措置というのは納得の説明だ。
テレビの報道番組で、日銀が国債を市場から買えないので、事実上の無制限発行と報道されていたような気がする。チラ見なので定かではないが、これは日銀による赤字国債の直接引受けの布石ということだろう。
そうなると、最近はやりのMMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)というやつが頭をよぎる。
MMTとは、日本円のような信用の高いメジャーカレンシーを持つ国は、政府が財政赤字をどれだけ増やしても破綻しないというものだ。
MMTが正しいとするなら、国債を大量発行してもハイパーインフレにならず、従って財政破綻もしないということになる。もちろん、それが出来るのは日本やアメリカ、EUにイギリスというメジャーカレンシーを持つ国に限定されるが。あ、オーストラリアもイケるのかな?
ネット上では、このMMTを支持する層が急増している印象を受ける。
100兆円規模の財政支出をバンバンやっちまおうとか、日銀は日本円作れるのに破たんするワケがねーとか。仮にそれでインフレになっても、日本の製造業にとって有利だから問題なしとか。
まあ、一つ言わせてもらうとすれば、日本はだいぶ前から製造業メインの国では無くなっているので、円安の方が困るんだが。
とは言え、この理論がまかり通るとなると、今のコロナ禍は政府が赤字国債で作ったカネを国民にばらまき、実体経済を支えることが可能となる。と言うことは、無限に発行できる赤字国債でベーシックインカムすれば何とでもなる、ということだ。
・・・もうおじさんは働かんぞ。ベーシックインカムで経済回すわ。
だが、MMTはゼロ金利前提だ。超低金利の今なら、調子よければマイナス金利なので赤字国債の利払いはゼロ以下だ。
さすがにこれは続かないだろ。という点で、おじさんはMMT反対だ。
だが、MMTを唱えたい気持ちも分かる。
これまでの日銀QE(量的緩和)で生み出したカネは、日銀や市中の銀行を通じてETF買いに消えていった。株の儲けは、外国人投資家がかっさらっていった。
多国籍企業や外国人投資家にはホイホイ莫大なカネを渡すのに、自国民には10万円払うのも渋る政府には釈然としないものを感じるからな。
まあ、MMTに賛成・反対は置くとしても、今回の「国債買い入れ上限撤廃」というのは、日本が財政を急拡大するMMT路線への転換準備を整えたメッセージと見て間違いないだろう。
では、なぜMMTか。
その理由として、金融市場を支える日銀QEが既に限界に達していて、これから金融市場を支えるためには、日本政府が直接カネを突っ込むしかない、というところまで事態は進行していると思うのは勘繰りすぎか!?
表面的には財政規律を重んじている財務省(麻生氏)が、赤字国債ウェルカムに転じたのは、金融市場を延命させたい軍産・国際金融資本勢力に押し切られたち言うことは考えられないか。
政府や日銀が救おうとしてるのは、どこまで言っても国民ではなく、海外の多国籍企業や投資家ということだ。
共同通信記事内の「各国の中央銀行や緊急経済対策を取りまとめた政府と歩調を合わせる」の部分が、何気に真実をついているのかもしれない。
FRBはいつ破綻してもおかしくないジャンク債もCLOも買い支えるという、危機的状況に突っ込んでいった。日銀も後追いして、金融市場を支えられるところまで支えることを決めた可能性がある。
そうなると、MMTで生まれたカネの使い道はQEで生まれたカネと同じだ。ETF購入など株価維持の資金として使われることにいなり、国民には回ってこない。
赤字国債が一定レベルを超えると国債への信用が失われてしまう。金融・債券バブルは弾けるし金利も高騰するだろう。
既に日本やアメリカでは、日銀やFRBが国債を買い入れ保障をしないと、銀行など金融機関は国債を買いたがらなくなっている。既に国債は過剰発行気味とみられている。
だが、金融市場は中銀の支援なくしては自立走行出来ない。でも中銀もそろそろ支えきれない。金融市場と実態経済の解離はGDPの4倍以上だ。巨大な金融バブルを維持しないと金融崩壊する。
日本政府は、事実上のMMTにより金融市場を支えるための無限の財政出動準備を整えてしまった。
だが、金融バブルと心中するまで支えるのが真意なのかは測りかねる。
日本のコロナ対策の規模感は、アメリカの対策と比べるとショボい。そこまで巨額の国債発行は不要だ。
現状でも新規国債は全量引き受け状態なので、発行額が増えないのならば特に影響はない。
だが、軍産・国際金融資本勢力に対しては「やった感」を出せる。
コロナ対策でも、欧米のような強烈なロックダウンとはなっていない。政府内部に、ギリギリで国際金融資本勢力の言うなりにならない”良心”が存在するのだろうか。
この「やった感」を出すだけってのが、日本にとっては最良のシナリオだ。
最後まで読んでくれてありがとう!