9月27日に、アルメニアとアゼルバイジャンの間で戦闘が勃発した。
旧ソ連に属していた両国の戦闘開始は唐突ではあるものの、元々領土紛争の種は撒かれていた。
南カフカス南部に位置する「カラバフ」は、かねてからアゼルバイジャン人とアルメニア人による領土紛争の舞台となってきた。
地図で見ると分かるが、アルメニアを挟んでアゼルバイジャンの飛び地が出来ている。
(出典:http://www.asahi-net.or.jp/~wu3t-kmy/)
上記地図の「ナゴルノ・カラバフ」の帰属が、今回の戦争の原因だ。
このナゴルノ・カラバフについては、アゼルバイジャン・アルメニア共に「昔からナゴルノ・カラバフに住んでいるのは自分たちだ」と主張し合っており、争いの歴史は長い。
現在の「ナゴルノ・カラバフ」は「アルツァフ共和国」という一応は独立国家だが、ソ連時代にはアゼルバイジャン領だった。
ところで、アルメニアもアゼルバイジャンも、ソ連時代にはソ連邦を構成する国だったぞ。
で、この両国はソ連時代にも内戦を繰り返していた。時には「アルメニア人虐殺事件」など起こった。だが、全体的には石油油田(バクー油田)を持つアゼルバイジャンが優勢を保っていた。
1988年にナゴルノ・カラバフ戦争が勃発し1991年にソ連が崩壊する中で、アゼルバイジャン領だったナゴルノ・カラバフ自治州は独立を宣言し、アルツァフ共和国となった。
だが、独立を承認したのは周辺の数か国のみで、アゼルバイジャンは承認していない。
ともあれ、アルツァフ共和国はアルメニアへの編入を希望したことから、現在ではアルメニアの占領地域的な扱いとなっている。ちなみに、本来のナゴルノ・カラバフ(アルツァフ共和国)は地図ほどは大きくなく、アルメニアとは地続きではなかった。
アルメニアがアゼルバイジャン領を一部占領し、アルメニアと陸続きになったものだ。この時にアゼルバイジャン領に住んでいた人たちは、難民キャンプ暮らしとなった。
当然ながら、アゼルバイジャンは奪回の機会を伺っていたわけだが、1988年に勃発したナゴルノ・カラバフ戦争は、とりあえず停戦となった。
国際世論の手前あからさまな侵攻は難しかったのだが、何か分からんけど停戦状態だったナゴルノ・カラバフ戦争が再開したというワケだ。
どちらから仕掛けたか確認は出来ていないが、自国の飛び地の実効支配にブチ切れたアゼルバイジャンが停戦を破って侵攻したとの見方が一般的だ。
アゼルバイジャンの侵攻が用意周到過ぎること、トルコのアゼルバイジャン支援もスムーズ過ぎることから、トルコが裏でけしかけた可能性は高い。
アゼルバイジャンはイスラム教シーア派の国で、トルコが後ろ盾。言語もトルコとほとんど同じ。
一方のアルメニアはキリスト教(アルメニア国教会)の国で、ロシアと防衛協定を結んでいる。なお、アゼルバイジャン・アルメニア両国に、ロシアの駐留地が置かれている。
現在では、アゼルバイジャン優勢でドローンの波状攻撃でアルメニア戦車が壊滅したり、兵士が吹っ飛ばされる映像が数多くネットに上がっており、アルメニアを中心に多くの戦死者が出ているようだ。
アゼルバイジャンが保有する、トルコ製?イスラエル製?の攻撃用ドローンの有用性が高く、アルメニア軍の防空システムはドローン攻撃の前に破壊されたほか、Youtubeにアップされた動画では戦車は単なる棺桶と化しているなど、もはやワンサイドゲームだ。
『アゼルバイジャンはシリア内戦やリビア内戦で大活躍したトルコ製の無人航空機「バイラクタルTB2」を調達』
トルコ製の無人機が多用されてる模様
手際が良すぎるアゼルバイジャン、弾薬庫を破壊されアルメニア軍は潰走? – 航空万能論GF https://t.co/NIQo16Yu9u— 人生の負け犬🐶💙🐶❄👻💤 (@sTuvOoHjEKaIDwE) September 28, 2020
こうした状況を踏まえると、ロシアは約束に従うならばアルメニア支援に動く必要はあるものの、安易には動けない。
アルメニア支援をしないと、ロシア弱腰と取られてグルジアやチェチェンも騒ぎ出す可能性もあるが、シリア内戦以降に関係が良くなりつつあるトルコと敵対してしまう可能性がある。
それだけではない。ロシアは、アルメニア・アゼルバイジャン両国から恨まれる可能性もある。つまり、将来に禍根を残してしまう可能性だ。
例えば、同盟を優先してアルメニア支援すると、資源国で石油・天然ガスパイプラインを持つアゼルバイジャンが怒るし、ロシアの軍事介入は、トルコの軍事介入に正当性を与える可能性もある。
そして、アゼルバイジャンとトルコの関係が深まれば、ロシアの喉元でトルコの影響力が高まることになる。トルコも、ロシアが積極的な介入が出来ないことを計算済みとも言われている。
また、アゼルバイジャン→トルコ→NATOとエスカレートすれば、ヘタすりゃ第三次世界大戦に発展する。第一次世界大戦の「きっかけ」はサラエボ事件だったが、世界大戦に発展した原因は、時のロシア帝国が総動員令を発令したことで、世界中で総動員令が出されたためだ。
これこそ、ディープステートの望むところだ。やはり、ロシアは迂闊に動けない。ロシアは開戦直後から停戦を求めているが、それだけだ。
だが、ロシアが介入を自制しても、戦火が拡大する可能性は高い。というか、裏にディープステートがいるなら、戦火を拡大させる方向に持っていくだろう。
今回の戦争は複数の国が国境を接する地域で戦火が拡大している。
直接的にはトルコとイランだ。中でもイランはロシアと同じ悩める立場だ。
アゼルバイジャンと同じイスラム教シーア派であり、イラン国内にいる最大の少数民族はアゼルバイジャン人だ。でも、アルメニアの同盟国という・・・。
好戦的と思われるイランだが、この件に関してはガチで平和を願っているんだろうな。
さらに、意図的に戦線拡大を図ろうとする報道も。アルメニア軍のSu-25がトルコのF-16に撃墜されたとするものだ。元から空軍はアゼルバイジャンが圧倒的なのに、トルコが参戦したらアルメニアは秒で終わるぞ・・。
アルメニア国防省は、アゼルバイジャンとの軍事衝突をめぐり、アゼルバイジャンを支援するトルコ軍のF16戦闘機がアルメニア軍のスホイ25攻撃機を撃墜し、操縦士が死亡したと主張しました。https://t.co/tpPSChWT3Q
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) September 30, 2020
ただ、トルコはこれを否定している。
さらに、ロシア国営放送も否定する報道を出している。ロシアが「戦争に介入したくないっす」という気持ちは伝わってくる。
この件は、アルメニアがロシアの支援を得るために「トルコが介入」情報を流したとも考えられるが、戦火拡大も狙っていたかもしれない。
ロシアもイランも、こんな小国同士の戦争に本気で介入したいわけがない。
ロシアはアルメニアを助けないだろうし、アルとアゼの背後にいるロシアとトルコは一応は同盟関係だし、イランもアルとアゼには中立にならざるを得ない。
トルコだけガチでアゼルバイジャン支援するのは、バクー油田からのパイプラインがトルコのエネルギー政策上決定的に重要だからだろう。
ただ、ロシア(ロストフ)からアルメニアに大型軍用輸送機が飛んでたり、イスラエルからアゼルバイジャンに軍用輸送機飛んでるのは偶然だろうか。
イスラエルも一枚噛んでいるのか・・しかも、アゼルバイジャン寄りで。
さらに、シリアやリビアから民兵がナゴルノ・カラバフ戦争に送り込まれている。
ロシア外務省 「シリアやリビアからよう兵」 戦闘激化を懸念 #nhk_news https://t.co/ahJQFNtVri
— NHKニュース (@nhk_news) October 1, 2020
「よう兵」って分かりにくい・・。
シリアでは、(トルコが支援していた)反体制派・ISの民兵たちを国境付近で管理している。言葉は悪いが、こうした民兵を手っ取り早く「処理する」という目的もあるのだろう。
こうした民兵たちは、アルメニア・アゼルバイジャン両国に送り込まれているようだ。
指揮命令が行き届きにくい民兵が両軍に入ることで、思いもよらない場所・タイミングで戦線が拡大する可能性が高くなることは、大きな懸念材料だ。
イラン、イスラエルが絡んでくるようになれば、中東戦争のリスクが大きく高まる。
以前にも紹介したように、原田武夫氏も中東戦争を予測している。
元キャリア外交官の原田武夫氏が、自身のブログで語ってたことのうち「中東に関すること」を考えてみたい。※リンク先のブログは英語です。原田武夫氏が語っていた中東に関することは以下のとおり。 トランプの出した中東和平案にもとづき中東[…]
さらに、謎のツイッターアカウントれうういさんはも、中東戦争を警告するツイート。
中東戦争は、トランプが出したイスラエル寄りの和平案をきっかけに、イスラエルVSイランの構図で起こると思っていたが・・まさか、ナゴルノ・カラバフ戦争がきっかけになるのか!?
今のところ、アゼルバイジャンのワンサイドゲームのようだが、他国が介入してくるようなら要注意だ。目が離せないな。
最後まで読んでくれてありがとう!