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ウクライナ情勢 アメリカ覇権の撤退とロシアのやる気が見えてきた

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ウクライナ情勢 ロシア優位となりアメリカが手を引く可能性」で、ウクライナ情勢緊迫化の先に、東欧・中央アジアからのアメリカ覇権の撤退とそれに代わるロシア覇権の確立、そして国際金融資本の凋落などがあることを紹介した。

このような中で、アメリカは中国に対して「ロシアに緊張緩和を促せよな」と批判したとか。

ウクライナ情勢の緊迫化はアメリカ自身が招いた事なのに、勝手に中国の仲介を期待して批判するとは随分と自分勝手な話ではある。

ただ、ロシア系通信社のスプートニクによると、「批判した」というよりも「中国からロシアへの働きかけたことを期待する」というニュアンスのようだ。

アメリカは「中国さん、ちゃんとロシアに穏便に済ますように言ってくれたよね」という確認的なニュアンスぽい。

アメリカの覇権は、ロシアと共に中国にも委譲が進んでいることを踏まえると、「覇権国としてそれくらいはやんなきゃダメだぞ」という先輩風を吹かせた感じだろうか。

世界唯一の超大国アメリカの世界覇権維持が困難になっており、ロシアや中国、EUなど各地域の覇権国家が共同で世界運営する方向に進んでいる様子が見えてくる。

今後は、中央アジアや東欧、中東に至るエリアは、アメリカ覇権に代わり、ロシア・中国(+各地域の代表国)の共同覇権下に入りそうな雰囲気が強まってきた。

ただ、ウクライナ情勢緊迫化により凋落が見込まれる欧州の資源メジャーは抵抗しているようだ。

ロシア産の天然ガスに頼る欧州のために、アメリカがカタールに天然ガスを融通要請したところ、カタール側から欧州に「転売すんな」「長期契約しろ」など、欧州資源メジャーが儲けられなくなるような「真っ当な要求」が出たことは既に紹介したとおりだ。

こうした中で、欧州がカタール産天然ガスでロシア産天然ガスの不足分を補うことは困難との報道が出ている。

困難な理由として、

  • カタール産天然ガスは、欧州の需要を満たすだけの量が無い
  • ロシア産天然ガス(2~5ドル)と比べ、カタール産は高い(12~24ドル)
  • 天然ガスの輸送船が必要となり、すぐには対応出来ない

などが挙げられており、「カタール産への切り替えムリっす」との内容になっている。

また、記事の最後に、カタールが「転売禁止」を要求したことに対して・・

現在の政治的な対立の中で、カタールは経済的にもっとも困難な立場に置かれる可能性があるとも指摘した。

・・とあり、「カタールさん、調子こくと痛い目見るよ」との欧州資源メジャーからの脅し的なメッセージが込められており、「引き続きロシアから安くガスを仕入れて転売する」「ガス不足で困るのはEU国民で、資源メジャーではない」との本音が見える。

これに対する動きなのか・・ロシアから中国への天然ガス輸出を拡大するとの報道が出てきた。

北京冬季五輪を前に、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席の会談で合意されたもので、ロシアから中国への天然ガス輸出を年480億立方メートルに拡大するとか。

EU諸国からの経済制裁対策との印象も受けるが、よく見ると輸送インフラが整っておらず実現時期が不透明とのこと。時間的に見て、緊迫化するウクライナ情勢を見据えた経済制裁対策にはなっていない。

ではその目的はと言うと、ロイター記事の最後に・・

関係筋は、ガスプロムと中国石油天然ガス集団(CNPC)が30年契約に同意し、2─3年後から新パイプラインを通じた輸出が始まると述べていた。

・・と、長期契約を締結したことが強調されており、スポット取引&転売がメインの欧州資源メジャーへの圧力であることが伺える。

さらに、ロシアから欧州に天然ガス輸送するパイプライン「ヤマル・ヨーロッパ」の流れが東向きに「逆流」しているとか。

ロシアから欧州への天然ガス供給が途絶すれば、中東や豪州からの輸入が増えることになる。

そうなれば、欧州資源メジャーの利益の源泉たるスポット取引&転売から、EU国民のためになる「長期契約」へとシフトせざるを得なくなる。

そして、今回中国への天然ガス輸出拡大を決めたロシア国営のガス会社「ガスプロム」は、ドイツ元首相のシュレーダー氏を取締役に迎えるとか。

なお、シュレーダー氏は、既にロシア最大の国営石油企業ロスネフチの会長であり、ガスプロム子会社のパイプライン運営会社「ノルドストリーム」の役員でもある。

EUの盟主ドイツは既にロシアとズブズブであり、いくらアメリカがウクライナ情勢を煽っても、本気で付き合うつもりなど毛頭無いのがよく分かる。

アメリカも分かっててウクライナ情勢を緊迫化させていたことは間違いなく、意図的なEUのアメリカ離れを狙っている可能性が読み取れる。

つまり、「いつまでもアメリカ頼んなや。EUも早くアメリカから自立しろ、一つの局となれ」ということか。

ウクライナ情勢緊迫化により軍事・経済両面でロシア覇権を強めるだけでなく、EUも西欧地域の覇権国として正々堂々とロシアと良好な関係を築くことが求められており、それに当たってジャマになる欧州資源メジャー(国際金融資本勢力)の排除に動き始めている状況となっていることが推測される。

ちなみに、ロシアの動きでもう一つ気になるのが仮想通貨(ビットコイン)への対応だ。

ロシア中銀はビットコインに否定的だったハズだが、財務大臣さんは、銀行によるビットコイン販売や取引所運営を認めるべきとの発言。

巷では、ロシアがビットコインを法定通貨化するのではとの期待も聞こえるが、財務大臣発言は認可制度整備など税収増を期待してのものと思われ、さすがに法廷通貨化は無さそうだ。

ただ、ウクライナ情勢緊迫化で明らかになったアメリカの覇権撤退に代表されるように、今後は経済・軍事面におけるアメリカの立場はどんどん揺らいでいくことになる。

そうなれば、ドル本位制(ドル基軸通貨制)の維持は難しくなっていくとともに、「バーゼルⅢで金と仮想通貨は爆上げ そしてドルは崩壊・・世界統一デジタル通貨へ」などで紹介したような世界統一デジタル通貨へのシフトが進むことになる。

その過程で、デジタル通貨の広告塔としてビットコインの地位を押し上げが図られることを考えると、ロシアのビットコイン容認の動きはそれに沿ったものと言える。

ロシアの決定は、自国通貨の信用が低くドルを使わざるを得ない後進国が、インフレ(=貨幣価値低下)が進むドルから仮想通貨にシフトするだけでなく、ドルを使用しない経済圏確立まで視野に入っているのかもしれない。

また、デフォルト常連のアルゼンチンも追随しそうだ。

ブレトンウッズ体制(ドル本位制)とは、IMFを通じて途上国の政治経済に介入し、国際金融資本がその富を収奪する体制でもある。デフォルト常連のアルゼンチンは、よく分かってそう・・・。

また、アメリカの軍事・経済力を背景としたドル本位制は、アメリカの覇権撤退と共に陰りが見えていることからも、国際決済は仮想通貨やドル以外の通貨で行われるようになっていきそうだ。

ウクライナ情勢に話を戻す。アメリカによる「ロシアはいつ侵攻してもおかしくない」状況だとか。

明日にでもロシア軍がウクライナ侵攻しそうな緊迫感だが、実のところアメリカ軍の介入については言及が無く、経済制裁についても口先介入感が漂うなど、やる気の無さを感じる。

また、ドイツのタブロイド紙は、ロシアがウクライナ併合を計画している旨を報じたとか。

これにはロシアも「ね、ね、ねーよ!ちげーよ!!」と反発している。

ただ、ウクライナ侵攻はかなりの確立で起こりそうだしアメリカはお茶を濁しそうだし、その結果としてウクライナ東部(ドンバス)併合の可能性はゼロではない。(混沌とするウクライナ情勢 ロシアを挑発するアメリカの狙い

また、ロシア隣国のベラルーシはやる気マンマンだ。

「ウクライナごとき、3~4日で片付くわ」とか。

この自信の背景には、ロシアがウクライナに侵攻する準備が整っていることに加え、アメリカやEU(NATO)が本気で対応するつもりが無いことを物語っていると思われる。

ウクライナ情勢緊迫化は、東欧におけるアメリカ覇権の撤退とロシア覇権の確立、EUのアメリカからの自立など多極化へと繋がっていく。

ちなみに、イギリスの著名な予言者のクレイグ・ハミルトン・パーカー氏は、ロシアによるウクライナ侵攻を予言する。

曰く、ロシアがウクライナの一部を手に入れようとするとか。

ロシアは、ウクライナ地域の長期的な安定を視野に、ウクライナ侵攻だけでなく、ウクライナ東部(ドンバス)併合まで考えているのかもしれない。

ただ、戦場となるであろうウクライナ東部の住民を思うと、可能な限り戦乱を避ける方向でシナリオを遂行して欲しいと心底思う。

なお、ゼロヘッジさんのこのツイート。

ウクライナにおけるデスカレーション・・つまり、軍事行動の縮小が見られるとしている。

軍事紛争ナシでの解決としては、ウクライナが東部(ドンバス)への自治権を再度付与するなど、ロシア系住民への迫害をやめる方向でロシアと合意することが考えられるが・・。

アメリカ以外(もしかしたらアメリカも)は誰も望まない戦争なので、可能な限り回避されるといいと思う。


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