対米従属

日米中銀の金融緩和措置の変更は日本バブルの準備か

対米従属

日銀が、これまでの金融緩和(ETF買い入れ方針)を変更してきた。

主な変更点として、年間買入額の目安として示していた「原則年6兆円」を削除し、「上限12兆円」だけを残したというもの。

昨年2月3月のコロナショックの頃は、日銀は毎日のように株式ETFを購入していたものの、株価好調となった今年1月以降、ETF購入回数や1回あたり購入額は減っており(700億円→500億円)、こうした変化を踏まえると、年間購入額の目安を無くしたのは打倒か。

日銀は「市場が不安定化した場合に、大規模な買入れを行うことが効果的」としており、株価好調なときは何もしないが、不安定になればドンと買い支える機動的な運用を行う・・との説明がされている。

年間購入額の目安を削除したのは金融緩和の後退ではない、と強調したいのだろう。

しかし、今回の変更のポイントはそこではなく、これ。

今後買い入れるETFは、指数構成銘柄が多いTOPIX連動のものに限るとしたようで、トピックスが前日比1%程度下落した場合に介入する方針にしたとか。

お陰さまで、金曜日の日経平均は△424.7円(△1.41%)の大幅マイナスとなったものの、TOPIXは3.7ポイント(0.18%)のプラスとなった。

日銀ETF買いの恩恵を最も受けていたユニクロは後場から急落でござるの巻き。

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ユニクロの株価は、いったん調整して「さあ上げよう」というところで、前日比△5910円(△6.1%)という大暴落。ユニクロは日経平均への寄与度が高く、日銀ETF購入により実力以上に上げ過ぎていた状況だったこともあるので、暴落は仕方ないか。

来週もしばらくは大幅下落するだろう。

日銀保有の株式ETFは全体の7%を占めており、日経平均構成銘柄(225銘柄)を中心に、日経平均も数千円程度押し上げられているとか。

特に、日経平均への寄与度の高いユニクロは、既発行株の20%を日銀が保有するに至っており、ユニクロは反公営企業と言っても過言ではない。

ユニクロ以外にも、日銀が10%以上の大株主となっている企業は相当ある模様だ。

そもそも「日経平均株価」とは日経新聞の登録商標であり、日経新聞が勝手に選んだ銘柄指数だ。知名度もあるので、日本政府の経済統計として使われていたものの、どうせ日銀が買い支えるならTOPXの方がよっぽど意義があると言えよう。

日銀が保有する株式ETFは、購入簿価で35兆円・時価評価で50兆円もの莫大な規模となっており、お陰様で好調な株式市場が演出されていた。

だが、国内個別企業への直接的な恩恵は薄い。最も恩恵を受けてそうなユニクロも、直接的には1円も入って来ていない(株価上昇による経営の自由度は上がったかもしれないが・・)。

なぜなら、日銀が購入したETF(の元となった株)は第三者割当による新株発行ではなく、外資系ファンドから既発行株を買っていたものだった。

現代洗脳のカラクリ

ということで、日銀が株価を押し上げたことで最も恩恵を受けたのは、結局のところ外資系ファンドであり日銀が刷った円は軒並み海外に流出した。

日銀が株を買う原資は国債だが、国債とは政府の借金であり、その利金と償還費用は税金が原資だ。本来は、国内で日本のために使われるべき日本の富が海外へと流出していることになる。日銀がいくら円を刷ってもインフレしないのは、日本の富が海外へ流出しているからだってことだね。

外資ファンドは日銀のカネでユニクロ株を高値で売り抜けることに成功したワケだが、日銀がTOPIX連動に限ったのは、外資ファンドが保有するユニクロ浮動株が少なくなったのか!?いずれにせよ、今後も日銀は外資ファンドへの資金流出策を継続することになる。日本にインフレが起こる日は遠い。

さらに、日銀はインフレから遠のくような策を打ち出してきた。

長短金利の引き下げを機動的に行うため、利下げに伴う金融機関への副作用を軽減すべく「貸出促進付利制度」なるものが作られた。

新制度は、現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き下げた場合に、民間金融機関が日銀に預ける当座預金に金利を上乗せして付与するというもので、コロナショックの際にも特例的に実施されていた。

融資実績に応じて利息が増える仕組みということだが、結局のところ超低金利下における金融機関の収益悪化に配慮したに過ぎない。金融機関にとっては実質マイナス金利にならず、結局市中にカネが出回らないような気がする。

市中にカネが出回らなければ、インフレ誘導には結びつかない。日銀はインフレ抑制策を行っているのか・・・。

インフレと金利上昇が日本の資産バブルを招く」でも紹介したように、物流の混乱に起因したコストプッシュインフレが着実に進行している。

こうしたステルス値上げを踏まえると、コロナによる物流混乱関係なく物価は上がっていると考えていいだろう。

ただ、日銀はQEで生み出したカネを、国債など金融市場にブチ込んだり、国内に還流させずに外資ファンドから株を購入して海外に流出させているため、デフレ気味(=通貨価値が上昇)だ。本来なら、GDP上昇分は実体経済に還流する紙幣を発行してもいいと思うが・・。

また、東北の復興は復興税が儲けられているが、現実に建物など新たな富が生まれているので税金ではなく国債で補ってもヨカッタし、デフレ克服するまで消費税も止めてもよかった。税金は市中からカネを吸収し、デフレを後押しするからだ。

やはり日銀は、意図的にインフレ(&金利上昇)を止めている。インフレ下においては、景気過熱の有無とは無関係に金利上昇が起こるが、日銀は長短含め全ての金利をコントロールする、世界でも類を見ないガチガチな金利調整を行っている。

その意図として考えられるのが、2%のインフレターゲットが達成されれば、日銀は金融緩和を継続する大義名分を失う。株式ETFの買い入れ、国債の買い入れもテーパリングするだろう。

だが、その時には、日本の国債・株式市場は絶好のショート場になる。

日銀が保有する大量の株式ETFや国債が大幅下落すると、日銀は債務超過に陥る可能性が高くなる。国債暴落すれな金利は暴騰するから、政府の国債利払いもかなりキツくなる。最悪、デフォルトが見えてくることになる。

こうした状況なので、日銀はインフレ・利上げは事実上できない。掛け声だけだろう。

一方のアメリカ。日銀とは正反対に、意図的にインフレ誘導しているフシがある。

FRBが昨年4月から特例的に実施している、金融機関への補完的レバレッジ比率(SLR)規制のコロナ緩和措置を終了すると発表した。

「補完的レバレッジ比率(SLR)」は2008年の金融危機後に導入された規制のことで、過度な投資拡大を防ぐための資本規制だが、コロナ危機の中で一時的に緩和されていた。このため、アメリカの金融機関は企業への融資や国債購入をやりやすくなっていた。

市場では、緩和措置が終了した場合は、金融機関が保有する国債を売却しなければならなくなり、さらなる金利上昇を懸念していたが・・・ FRBが期限延長しなかった。

予想どおり、19日金曜日の米国市場では10年国債利回りが急上昇した。

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FRBの発表に合わせて1.7%水準まで急騰した。

一部では、市場は緩和措置終了を織り込み済みとの声も聞こえるが、SLR規制をクリアする水準まで米国債売却を進めていた金融機関はごく一部だろう。今後、米国債の下落(=金利上昇)が予想されていることからも、何も織り込んでいなくて、米国債の大量売り&金利上昇は加速する。

FRBさんは、2023年までゼロ金利を継続すると言っているが・・

日銀のようにガチガチに長期金利コントロールをしているワケでもないし、そもそも金利のコントロールが困難なことは歴史が証明済みだ。一度上昇に火が付いた金利は、中央銀行と言えども簡単に抑えられるものではない。いずれ、手に負えなくなる時期が来る。

進むインフレ 資金はアメリカから日本へと流れる」でも紹介したが、アメリカでは制御不能なインフレとなる可能性が現実のものになりつつある。

日本では超低金利が継続する一方で、アメリカでは制御不能となる可能性も。この日米の正反対の動きは・・やはり、日本バブルを誘っている動きと考えられる。


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