中国国内では、アリペイなどのデジタル決済が広く普及している。
中国でデジタル決済が普及しているのは、偽造紙幣が多いとか治安面での不安など理由は様々だが、本来の理由は「デジタル人民元」の導入に向けた先兵しての役割だったのではないだろうか。
そんなアリペイだが、昨年11月に習近平がアリペイの運営会社(アント・グループ)の上場中止を決めたとの報道が出た。
中国アントの上場中止、習近平氏が決定 WSJ報道https://t.co/f4753FzHL1
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) November 12, 2020
記事によると、習近平が上場中止を決めた背景にあるのは、アント(アリババ)創業者のジャック・マーが「政府による規制の厳格化が金融問題解決のための技術開発を抑えている」と批判したことが原因と書かれおり、中国国内の巨大資本が、習近平独裁支配を脅かす可能性をうかがわせる。
さすが、大金持ちジャック・マー!言いたいこと言えるってすごい!
しかし・・習近平を怒らせたことが原因かは分からないが、この批判のわずか10日後に世界最大規模の3.8兆円のIPOが中止させられた。
さらに、この批判以降、ジャック・マーが公式の場に姿を見せておらず、欧米メディアが「行方不明」と騒ぎだしている。拘禁されている説から国外に脱出した説まであるが、いずれも真偽のほどは定かではない。
この状況について、2019年に郭文貴がインタビューを受けた内容が予言だと話題になっている。
Exiled Billionaire Guo Wengui (Miles Kwok) tells @Jkylebass why Jack Ma’s retirement could end with imprisonment or death. Watch the full interview for free now: https://t.co/OrLkRQMEfK pic.twitter.com/zjoUb7OWLT
— Real Vision (@RealVision) September 10, 2019
以下は、アメリカに亡命した大富豪の郭文貴(GW)と、インタビュアーのカイル・バス(KB)のインタビュー和訳文字起こし(GIZMODOより)
KB:ジャック・マーは1年後どうなってると思いますか?
GW:ふたつしかない。中国の億万長者の運命はみなふたつ。刑務所か死。
KB:刑務所送りになるか殺されるか、ふたつにひとつだということですか?
GW:そう。殺しは殺すって意味ね。ジャック・マーっていうとアリババの話ばかり注目されるけど、個人で金融会社持ってるでしょ。
KB:アント・フィナンシャル。中国の金融システムではかなりの大手ですよね。
GW:オーマイガーそこが大問題なのよ。
KB:銀行に反旗翻してますからね。
GW:だいぶ儲かってるしね。マシーン。造幣マシーンよ。アリババは嘘、ズル、アメリカまんまとひっかけた(史上最高の2.4兆円調達を果たした2004年のNY上場の話と思われる)。全部デタラメ。全部本当なわけないと思う。でもこのフィンテックは絶好調。本当に儲かってるんだよね。
KB:アント・フィナンシャルですね。
GW:アント。いくらだからわかる? 1兆ドルだよ。
KB:1兆ドル。
GW:全部どりよ。歴史を見てごらん。1927~1942年のドイツ。ヒットラーが台頭した。あれと同じ。新興会社全部横取りで国を支配して、ファミリーに株式の持分を配るんだ。あれと同じ手法だね。それがこれまでのジャック・マーね。ジャック(字幕はタイポ)のファミリー企業がお金を持っていて、会社を生むのは全部中国の起業家連中。人のお腹で子づくりよ。それじゃだめなんで、赤ちゃん取り戻さないとって話になる。「それはあんたのものじゃないよ、ジャック・マー。手放すんだ。さもないと1週間で刑務所。もう1週間で殺すからな」ってね。
もともと、ジャック・マーの運命は刑務所か死のどちらかだった!?
中国における「企業」とは、中共が独裁体制の維持などに必要と考えれば手厚い保護を受けられるが、一方で中共が目障りと思えば、どんなに大企業であっても潰される。アントの上場廃止の背後には、そんな中共の思惑が見える。
追い詰められたジャック・マーからは、アントを切り売りしてでも勘弁してくれと言う提案がなされたようだ。
アリババ創業者、アントの一部譲渡を当局に提案 – WSJ
https://t.co/VapFjsITVG— 世界四季報 (@4ki4) December 22, 2020
アントが運営する「アリペイ」は、元々はネット決済ツールとして作られたものだが、AIやビッグデータを活用することで、個人に無担保融資をする金融プラットフォームへと成長しており、中共政府はその小口融資業務(ネット専業の庶民向け高利貸し)を問題視しているようだ。
しかし、中共政府のこれまでのフィンテックへの投資や、デジタル人民元の存在を踏まえると、中共政府は遅かれ早かれアントを接収する予定だったのだろう。高利貸しプラットフォームは、単なる口実に過ぎない。
中共にとって予定外だったのは、ジャック・マーが思ったより反抗的だったことくらいだろうか。
いずれにせよ、ジャック・マーに「デジタル決済」を浸透させた中共政府は、次は「デジタル人民元」と競合するであろうアリババ(アント)の利益を収奪し、アリババ(アント)を排除し、「デジタル人民元」による独占を目指す。
ある意味では、共産主義の「みな平等」「利益は皆で配分」原理を地で行っているような気もするな。
ということで、「デジタル人民元」も出番が近い。
「デジタル人民元」実現へ法改正 中国、民間の発行禁止https://t.co/Y9OSRdiw4i
中国は中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)で実証実験を始めるなど、日米欧に先行。法改正で国を挙げて後押しする姿勢を明確にする構えだ。
法改正案では、人民元を「実物とデジタルの形式が含まれる」と明記。
— 産経ニュース (@Sankei_news) November 2, 2020
通信環境が整っていなくても決済ができるなど、リアルマネーと変わらない使い勝手とか。
この「デジタル人民元」は、中共政府の資金援助を受けた企業・大学がフィンテックの研究開発を担っており、胡錦濤政権下で研究開発が始まった際には、習近平が責任者だった。まさに、習近Payといったところか。
中共の次の狙いはデジタル人民元を準基軸通貨として活用し、基軸通貨ドルを介さない国際決済を行う非ドル経済圏の確立だろう。中国はもう4年ほど前から、人民元と相手国通貨による直接取引を進めており、ドルを介さない貿易を推進している。
ドルを通さない国際決済は、本来であればアメリカが絶対に許さない事項だろうが、肝心のアメリカはバイデンが大統領となることが決まっており、中共にとっての驚異は排除された。
本日は、アメリカ大統領選に係る両院議員総会が開催される。各州で選挙人が投票したトランプorバイデン票の数が確認され、過半数を獲得した方が大統領となることが決まる。現状で、トランプが訴える不正の中には頷けるものがあるのも事実だ[…]
中共は、国際金融資本家からの脱却も見据えているのかもしれないが、彼らが力の源泉たる「通貨発行権」を手放すわけがない。
中共政府と国際金融資本。どちらが上手か分からないが、中共政府も国際金融資本の手の上で踊っているだけだとすると、非ドル経済圏の確立とは、来るべきドル崩壊に備えた国際金融資本家たちの準備なのかもしれない。
最後まで読んでくれてありがとう!