元キャリア外交官の原田武夫氏は先日アップされた動画で、アメリカにとってそろそろ日本は刈り取り時なのではないか、ということを懸念していた。
日本は、例えば購入した米国債の売却を試みるとアメリカから「宣戦布告とみなす」と言われたり、酩酊会見で失脚させられてきた。
瀬戸内レモンが1個50円で出回っていたところ、アメリカのごり押しでサンキストのレモン輸入が自由化されたために1個10円のレモンがあふれた。国が瀬戸内のレモン農家の転作を進め終わった辺りで、サンキストレモンは1個100円になった。
日本は昔からアメリカに都合よく利用されてきており、刈り取りは今に始まったことでは無い。
ということで、アメリカによる日本の搾取について、最近の出来事に絡めて考えてみた。
今年の6月に、郵便局において2019年3月までの5年間に、顧客に虚偽の説明をするなどして保険の乗り換えによる不利益や新旧保険の保険料二重支払などの事例が数万件あることが判明した。局員に対する過剰なまでのノルマ強要が問題の原因とのことだ。
だが、この事件の発端は2005年9月の郵政解散以降に進められてきた「郵政民営化」にさかのぼる。
当時の小泉首相は、民営化により国家公務員の数が減るため国の人件費負担が軽減され「郵政民営化によって公務員が削減され財政再建につながる」と主張するとともに、民営化による経営効率化を目指すものとされた。
しかし、当時の郵政公社は職員の人件費含めて独立採算制であり、税金投入は一切行われておらず、職員(国家公務員)を民間に移管しても国が負担する人件費には1円の変化も無かった。
また、2004年度の郵政3事業は郵便事業も含め全て黒字だった。もう少しいうと、郵便取扱数の減少から郵便事業は赤字がちだったものの、簡保(かんぽ)や郵便貯金事業でカバーされており収支は黒字だった。
国際的に見ても、日本の郵便事業の収支は優秀な部類に入る状況だったにも関わらず、小泉政権下では国民を欺いてまで郵政解散し、民営化しようとした。これは何故か。
答えは、アメリカから日本に対して毎年出されている、対日年次改革要求書(日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書)にあった。
対日年次改革要求書とは何か。以下はウィキペディアから抜粋だ。
年次改革要望書(ねんじかいかくようぼうしょ)は、日本政府とアメリカ政府が、両国の経済発展のために改善が必要と考える相手国の規制や制度の問題点についてまとめた文書で、毎年日米両政府間で交換されていた。正式には「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」(英語: The U.S.-Japan Regulatory Reform and Competition Policy Initiative)と呼ばれた。2009年(平成21年)に自民党から民主党へと政権交代した後、鳩山内閣時代に廃止された。
(中略)
米国側からの要望が施策として実現した例としては、建築基準法の改正や法科大学院の設置の実現、著作権の保護期間の延長や著作権の強化、裁判員制度をはじめとする司法制度改革、独占禁止法の強化と運用の厳密化、労働者派遣法改正(労働者派遣事業の規制緩和)、郵政民営化といったものが挙げられる。米国政府からの要望で実現していない項目としては、再販制度・特殊指定の廃止・ホワイトカラーエグゼンプションが挙げられるが、年次要望改革書では引き続き取り上げられている。一方、日本側からアメリカ側への要望の一切は実現されていない。
(以下略)
互いの国への要望の交換と言っているが、要はアメリカが一方的に日本に押しつける「命令」で、医療機器や医薬品、保険・証券などの金融、エネルギーなど多岐に渡っている。
コンセプトとしてはTPPや貿易協定と同様に、アメリカのグローバル巨大資本企業が日本の富を吸い上げるための制度や法律を整備しろという、内政干渉というレベルでは済まないものだ。
話が脱線するが、TPPなどでも何故に日本はアメリカ大企業群に過剰なまでに譲歩し、自国民に不利…というか身体生命の危険が及ぶような譲歩を平気でしてくるのか、不思議でならなかった。
原田武夫氏の話を聞いて納得だ。第二次世界大以降、日本をアメリカに守ってもらうよう頼んだ報酬のようなものということか…。
とりあえず、話を郵便に戻そう。
何処にでも、定額で郵便を送る、現金を送る、受け取ることができるというサービスは極めて重要だ。個人間の連絡ということ以外にも、裁判などで必要となる内容証明郵便や役所の出す公示送達など、法体系の一部に郵便事業は組み込まれており、その役割は極めて大きい。
ちなみに、世界各国でも基本は国営だ。赤字経営のところも多いが不採算でもみんな国営でやっている。日本に民営化を迫ったアメリカですらも「USポスタルサービス」という国営事業となっている。また、郵便庁に勤務する約86万人は公務員で、大統領委員会は今後も公的機関が郵便事業を行うのが望ましいと結論づけている。
そんな中で、日本は郵便事業の赤字を郵貯と簡保で補っており、事業全体で見るとかなり優秀だった。
ではなぜ、アメリカは日本の郵便事業の民営化をごり押ししてきたのか。答えから言うと、郵貯と簡保の持っていた350兆円に上る「資産」が目的だった。
2004年10月14日公表の対日年次改革要望書にあるアメリカの要求内容は、アメリカ保険業界の意向に沿う形で簡保を郵便事業から切り離して完全民営化し、全株を市場に売却するよう要求している。
アメリカの保険業界や経済団体はアメリカでは1990年代初頭から日本の郵政民営化に積極的で、郵貯や簡保の民営化を日本に要求していた。2004年9月の日米首脳会談では、ブッシュ大統領が自ら小泉首相に郵政民営化の進捗を確認したほどだ。
つまり、郵便事業についてはどうでもよく郵貯と簡保を民営化し上場させたうえで、その株式を国が手放すことで、ゴールドマンサックスなど外資系ファンドが購入し、支配権を掌握することで国民の財産たる「350兆円」はアメリカ大企業群の思いのままになるというストーリーだ。
その証拠に、2005年9月の郵政解散翌日にフィナンシャル・タイムズでは「日本はアメリカに3兆ドルをプレゼント」というタイトルの記事が掲載された。
こうして、郵政民営化に向けて大きく動きだしたところ、2009年に政権交代により民主党政権が誕生した。
民主党政権下で、郵政民営化に反対し自民を追われた亀井静香郵政改革・金融担当大臣(国民新党)が見直しを働きかけた結果、一時的に株の放出を止めることと運用資産の市場解放も凍結した。
また、かんぽ生命も民営化したことで競争力のある新たな商品(ガン保険と学資保険)を開発し、総務省・財務省との調整も終えて販売直前までこぎつけた。
こうした点は、ほとんどが三流人材だった民主にあって数少ないファインプレーだ。
その後、2012年に自民に再度政権交代したところで、かんぽの新保険はアメリカの意向を受けた安部政権に差し止められ、代わりに、アフラックのガン保険を売ることとなった。
これが大問題で、郵便局の従業員はアメリカの保険会社アフラックからノルマを課せられ、必死になっていたのだ。
民営化後もしばらくは、日本郵政の株100%を日本政府が保有していたが、2015年に予定を前倒して東証一部に上場され売り出された。ゆうちょ銀行とかんぽ生命も上場し日本郵政から株が売り出された。
2019年9月30日の状況だが、日本郵政株式会社の大株主は、政府56.87%、日本マスタートラスト信託銀行2.42%、日本トラスティ・サービス信託銀行1.58%となっている。
ゆうちょ銀行では、日本郵政株式会社が88.99%抑えているが、2位3位は日本マスタートラスト信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行が名を連ねる。
日本トラスティ・サービス信託銀行はゴールドマンサックス系列で、ゆうちょ銀行の債券管理業務を-10億円で落札したところだし、日本マスタートラスト信託銀行もロスチャイルド系列だ。
また、ゆうちょやかんぽの大株主でもある日本郵政の株は政府が1/3まで株の保有比率を下げていく。日本政府が手放した分は、日本の皮をかぶった外資系金融機関が拾っていき、日本国民の350兆円が外資の思うがままに運用されていく。
日本の官僚機構と一部政治家が、その権力の源泉としてアメリカへの従属を貫いていることはこれまでにも書いてきたが、日本の富・国民の財産がアメリカに収穫されていくよう、むしろ積極的に協力していると言えよう。
対日年次改革要求書の中で、あまりアメリカにうまみの無い要求もあるが、官僚機構がアメリカに言わせていると思われる。
日本の官僚機構が進む国際金融資本勢力による企業利益のみを追求した世界ではなく、一度デフォルトなどを経ても多極化する世界の方が本当の発展が望めるのかな。
最後まで読んでくれてありがとう!