元キャリア外交官の原田武夫さんが、その分析において今後の潮目が変わると予測していた10月9日(前後含む)について、原田武夫さんは以下のように述べていた。
- マーケットやそれを取り巻く国際情勢が、大きくトレンドを変えるタイミング
- マーケットの崩落・暴落はひとまず先に延ばされて、まずはこれからの基本的構造を決める動きが起こる展開となっている。
- 具体的には、世界は11月後半から変わり、12月以降は何が起こってもおかしくない状況
- その一つがパンデミックなどの自然災害
で、ここではこれからの「基本的構造」というやつを考えてみよう。
実は10月9日を待たずして、すでにこれからの基本的構造を変えていくと思われる、気になる出来事が起こっている。主なものは以下の4つだ。
- イエメンのフーシ派によるサウジアラビアの石油施設攻撃事件と、アメリカ軍のシリアからの撤退
- 香港における暴動を伴う過激なデモ
- 米中貿易戦争
- 金と仮想通貨の動き
サウジアラビアについては、前回記事で書いたとおり。今後サウジアラビアは米国から離れ、イランはじめ中東各国と結びつきを強めていくのではないだろうか。また、そこにドルは介在しない。
ドルを中心とした金融システムが崩壊してもいいように、中東はアメリカ抜きで再編されていく。
今回は、香港のデモについて考えてみる。
逃亡犯条例改正をきっかけとした香港デモ
香港デモが起こったきっかけとなったのは「逃亡犯条例」を改正(改悪?)しようとしたことが”きっかけ”であった。
現在は、中国側(大陸側)から香港に逃げてきた容疑者を香港で捕まえた場合は、香港の法律で裁かれることとなっている。これを、中国側に移送して中国の法律で裁くことができるようにする、という形に変更しようというものだ。
香港は、アヘン戦争後の1842年にイギリスに割譲されてから1997年に中国に返還されるまで、イギリスにより統治されてきた。中国への返還の際に「一国二制度」として高度な自治が50年間認められることとされた。
このような香港にあって、逃亡犯条例の改正は、民主的な香港と共産党独裁の中国では法体系も違うのに、逃亡犯引き渡し条約も結んでいないのに引き渡してしまうとは何事か、一国二制度の理念に反するだろうということで、反対の大規模デモに発展した。
まあ、一度、中国の要請を認めてしまうと、なし崩し的にずるずると香港が中国化するだろうという不安・不満が香港の人達にあり、この思いがデモに発展したと思っておけば間違いではないと思うぞ!
ちなみに、この「逃亡犯条例」だが香港当局は当初は「絶対に改正するマン」だったワケだが、デモの規模が大きく(主催者発表103万人、警察発表24万人)、反対の声も学生から高給取りのビジネスマンまで幅広い層から上がっていた。
こうした状況を踏まえ、9月4日に香港政府は逃亡犯条例の改正を撤回した。当然、中国共産党の習近平が撤回していいよ、と言ったからだろう。習近平からしてみたら、香港を取り込んでいく第一歩に失敗し、デモ側の勝利で終わった・・・ハズだった。が、未だにデモが続いている。これはいったいどういうことか。
デモが続いている理由
逃亡犯条例は撤回されたのに、なぜデモが続いているのかというと、当初より掲げていた5つの要求の全てが成就するまでデモ続けちゃうぞ!というのが理由だ。
一体いつまでやっとんねん・・・。これが香港市民の大多数の本音だと思う。
ちなみに、5つの要求は以下のとおりだ。
- 逃亡犯条例の撤回
- デモは「暴動・暴徒」認定の取り消し
- 警察の暴力に対する独立調査委員会設置
- デモ参加者の釈放
- 普通選挙制の導入
このうち、①は達成だが、⑤については中国政府が完全否定していることから、絶対にムリだろう。②~④は中国政府にとっては譲歩カードとして切れるだろう。
ということで、現在デモ勢力は、中国政府が明確に否定する⑤の普通選挙制の導入を求めて、いつまでもデモを続けるという状況だ。中国政府はやらんと言ったら絶対にやらない。万が一、同様の内容を求めるデモ(暴動)が中国本土で起こったら、瞬く間に弾圧だろうな。
香港の選挙制度について
一応説明しておくが、香港は100年以上もイギリスが統治していたが、実は全然民主的ではなかったぞ。
まず、香港の各行政区の長官(知事みたいな人)は業界団体等の代表が数名の候補者を決め、その候補者の中から香港市民が選挙するという間接・制限選挙である。
また、香港の立法機関(国会みないなところ)の議員は、半数(35人)は直接市民が選挙で選ぶが、半分は行政長官と同様に間接選挙により選出される。
なお、業界団体等が決める候補者は多分に中国共産党の意思を反映した者ばかりである。
先進諸国の中にあっては、いわゆる欠陥民主主義と呼ばれているぞ!
デモ勢力と香港市民と中国国民の認識
逃亡犯条例に反対するデモは、当初、穏やかなものだったが、段々と過激派が目立つようになった。本当に一部の暴徒化したデモ参加者は、一般市民からしてみたらマジで迷惑な存在となっている。デモに参加してるオレらマジすげーって、自画自賛しているのだろうか。
香港では、2014年にも「雨傘運動」と呼ばれる民主的選挙を求めるデモが発生したが、今回と同様に一部暴徒化するなどして市民の支持を失い失敗した過去がある。
今回も同様のルートをたどりそうだ。
デモの規模も小さくなっており、完全に市民の支持を失っている。香港市民は、もともと完全普通選挙が実現するとは思っていないのだろう。
それもそのはずで、イギリス統治下の香港では、行政・官僚主導で政治運営がされており、選挙による議会が作られたのがなんと返還直前の1995年だ。
こんな経緯なので、別に普通選挙の実現を望んでいないし、なんなら生活のジャマであるデモ隊の方がムカツクというのが香港市民の感覚だ。そんなデモ隊を一定取り締まっている香港政府(中国政府)については、そんなに悪印象を抱かない。むしろ、デモ隊排除してくれるなら支持するぜ!ってところだろう。
つまり、デモ暴徒化が進むと、香港市民はデモを食い止める中国共産党に対しての印象が改善していくという循環になる。
また、中国本土の国民意識だが、イギリスは戦争で中国から香港を簒奪したヤカラなのに、香港の人間がイギリス支持するような言動・行動をするとは売国奴か、と考えるだろう。
ましてや、米中貿易戦争で一部の中国人は経済的に追い詰められている状況がある。
そうした中で、デモ隊がトランプ支持を訴えたりイギリス国旗や星条旗を掲げているうちは、中国本土の国民からの支持は絶対に得られない。
つまり、このデモは香港市民からも中国国民からも支持を得られない、失敗が約束されたデモなのだ。
香港は没落する
香港は、世界的に重要な国際金融センターに格付けされている。中国から見れば、ドル建て資金を調達するために香港は非常に重要な拠点だ。
一方で、前回記事でも記載したが、今後のドルを中心とした金融システムが崩壊することを念頭に置くと、香港はドル崩壊に巻き込まれる。また、ドル崩壊後の香港は、特段産業が発達しているワケでもないので、全然重要な拠点ではなくなる。
ドルが崩壊しても、欧米経済圏からのはみ出し者であるロシアやイランといった大国とともに、新たな経済圏を作っていける。それが中国の思惑だろう。
今回のデモは、デモがひどくなるほどに中国共産党への支持が間接的にでも増えることから、逃亡犯条例の撤回くらいイイよ、ってことになったのだろう。
中国共産党としては、香港を今すぐに無理してコントロール下に置く必要はないし、無理して守っていくべき戦略的重要拠点ではない、と考えているのではないか。
こういったところから、世界の基本的構造が変わるという潮目の変化を感じ取ったが、おじさんが変に敏感なだけか?
とはいえ、中国はここ最近、大量の金地金を買い込んでいる。これが、ドル崩壊を見越しているからだとしたら、我々も同様に金(ゴールド)を備えておくべきだ。
過去記事で金(ゴールド)の買い方を紹介しているので、参考にして欲しいぞ!
最後まで読んでくれてありがとう!