先日、元キャリア外交官の原田武夫氏がアップした動画の中で、我々が普段当たり前と思っているものが、実は極めて危ういものの上に成り立っているとの話があった。
その一つが不動産だ。
地籍図の話を例にその所有権は非常にあいまいなものだという話があった。
この話を聞いて、昔読んだ本の話を思い出したので紹介したい。
昔流行った本なのでご存知の方も多いと思う。ロバート・キヨサキ氏著作の金持ち父さん貧乏父さんシリーズの一つ「キャッシュフロー・クワドラント」という本の一説だ。
以下は「キャッシュフロー・クワドラント」からの抜粋だ。
私はよく人から「住宅ローンを払い終わったら持ち家は資産になるのか?」と聞かれる。私の答えはこうだ。「たいていの場合、それでも答えは「ノー」、持ち家は負債のままだ」
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だが、ローンを払い終わっても持ち家が依然として負債だという最大の理由は別にある。それは、たとえ支払は終わっても、その人は家をほんとうに所有することにはならないからだ。政府は持ち家にも税金をかける。固定資産税を払うのをやめてみれば、あなたの家をほんとうに所有しているのがだれなのかわかる。
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以前、私はリアル・エステートのリアル(real)は「ほんもの」とか「有形の」といった意味を持っていると思っていた。ところがあるとき金持ち父さんから、それがスペイン語で「王室の」を意味するレアル(real)という言葉から来ていることを教えられた。
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同じようにリアル・エステートは「王の地所」を意味している。
一五〇〇年頃、農業時代が終り産業時代が始まると、それまで土地と農業に基づいていた権力が力を持たなくなった。小作農に土地の所有を許す農地改革法の施行にともない、君主たちは自分たちも変わらなければいけないことに気がついた。そこで彼らはデリバティブ、つまり派生的な制度を生み出した。たとえば、土地の所有に対する税金や、平民が土地を所有できるようにするための方法の一つとして、土地を抵当とする貸付の仕組みだ。このような税金や抵当貸付は土地から派生したものだから、デリバティブの一種と言える。
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次に、収入の源がもはや土地ではなくこれらのデリバティブにあることに気づいた君主たちは、銀行を作り、増大の一途をたどるこのビジネスに乗り出した。今日でも土地がリアル・エステート(王の地所)と呼ばれているわけは、あなたがたとえいくらその土地のために支払おうと、決してほんとうに自分のものにはならないからだ。いつまでたってもあなたの土地は王様たちのものなのだ。
いかがだろうか。
土地は王様たちのもの・・・というよりは、根源的階層と言った方がいいかもしれない。いくら自分が買った自分の土地だ、家だと言っても結局は王族に帰属するのだ。
我々は「自分の土地だ」と思い込んでいるに過ぎず、見た目だけでも自分の土地となっているのは、王族にとってその方が都合がいいからだろう。
こうした「土地の所有」よりもさらに危ういのが「通貨」だ。
以下は、同じ「キャッシュフロー・クワドラント」からの抜粋だ。
次に金持ち父さんは、私たちが毎日使っている通貨も純資産を表す証書ではなく、負債を表す証書なのだという話をしてくれた。通貨はかつては金や銀との交換が保証されていたが、いまでは単なる借用書にすぎない。支払いを保証しているのは、その通貨を発行している国の納税者たちだ。つまり、アメリカの納税者たちがせっせと働き、「お金」という名のこの借金の返済をし続けると世界の人が信じているかぎり、アメリカドルの信頼は保たれる。だが、お金が成立する最大の要因であるこの信頼が失われれば、経済はトランプのカードで作ったお城のようにまたたくまに崩壊する。
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いま世界に流通しているお金の大部分が「名目貨幣」と呼ばれる理由はここにある。名目貨幣とは、金や銀などの有形物への交換が国家によって保証されていない貨幣を示す。このようなお金はそれを発行している政府に対する人々の信頼によってのみ成り立っている。
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このように、今日の世界経済の大部分は借金と信頼の上に成り立っている。そして、みんなが手を取り合い、だれも列をみだしたりしなければすべてうまくいく(everything will be fine)ことになっている。ただし、このfineという単語は私には”Feeling Insecure Neurotic and Emotional”(不安で神経と感情が高ぶっている)の頭文字を集めたもののように聞こえてならない……。
この本が発行されたのは2001年だが(アメリカではもっと早いが)、ITバブル真っ盛りのころで「金融危機」という言葉は一般に広まってはいなかったころだ。
この一説を読む限りでは「資産家」として名をはせるロバート・キヨサキ氏も、現行の信用のみのよって成り立っている通貨に一抹の不安を覚えているようだ。
そして、現在では信頼の上に成り立つ世界経済がかなり危ういバランスであることが分かってきている。
世界のデリバティブ(金融派生商品)の総額は、分かっているだけでも6京円ほどあると言われている。正確な把握が困難な相対取引分なども加えるとさらに増える。
デリバティブについて簡単に言うと、手元資金10万円でレバレッジ10倍のFXやってみるとしよう。レバレッジ10倍なので手元資金10万円が100万円として取引できる。1ドル100円とすると、1万ドルを買うことができるのだ。これが1ドル80円になるとすると、損失は20万円と資金10万円を軽く越える。
デリバティブも同様だ。その総額も良く分かっていないが、どのくらいのリスクがあるのかも良く分かっていない。リーマンショック以降、バブル状態となっていることを踏まえると、あの時よりもダメージが多きいということは分かっている。
世界の金融界には限界を迎えている地雷が多い。原田武夫氏の言う簿外資産の流れが止まったことで金融界の延命に流れるカネも止まったとすると、これらの地雷が爆発する。グローバリズムの中で、世界は密になっているので誘爆が進む。
以前に書いた、アメリカのレポ市場もそう。ドイツ銀行もそうだ。
ドイツ銀行のCDSが8000兆円!?これが欧州経済崩壊の引き金か!?
【原田武夫】アメリカのレポ市場が12月25日前後の暴落の引き金か!?
ドイツ銀行に至ってはCDSの問題だけでもヒドイのだがここにきて、多くの銀行を巻き込んだマネーロンダリング疑惑まで起こっている。
金融危機は、起こるか起こらないかではなく「いつ起こるか」が問題だ。原田武夫氏の言うように、クリスマスに暴落してもおかしくない。
最後まで読んでくれてありがとう!