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【原田武夫】アメリカのレポ市場が12月25日前後の暴落の引き金か!?

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今年の9月にアメリカのレポ市場で金利が異常に高騰するという異変が発生した。

この件については、前にも書いたとおりだ。

【短資金利】日米で起こっている金融危機の密かな進行

レポ市場とは以前の記事でも書いたとおり、資金に余裕のある金融機関が資金を必要とする金融機関に対して、米国債などの債券を担保に、短期的な資金の貸し出しをする市場だ。

その際の貸し出し金利を「レポ金利」と言い、その水準はアメリカ連邦準備理事会(FRB)のFF金利(今は1.5%~1.75%)が目安となっている。

この金利が今年の9月に10%を越えて暴騰し、安定する兆しも見えないことから、FRBが2008年以来久しぶりに市場に資金を供給する介入(公開市場操作)を行った。

要はどこの金融機関も貸し出し出来ない(したくない?)状況であったため、FRBが貸し手になったということだ。

なお、2008年と言えばあの「リーマンショック」が起こった年だ。レポ金利の高騰は、再度の金融危機発生を連想させるためか、マスコミは「たまたま資金需要が重なったため」など大したことはないという論調が目立った。

ところが、このレポ市場について久しぶりに気になるニュースが出たので紹介したい。

以下はロイターから。

米レポ市場、年末に混乱再現なら「QE4」も=クレディ・スイス

[ニューヨーク 10日 ロイター] – クレディ・スイスのアナリストは、年末にかけて予想される短期金融市場の資金需給ひっ迫に対し、米連邦準備理事会(FRB)の現行の対応では不十分となり、量的緩和第4弾(QE4)につながる可能性があると指摘した。

米レポ市場では9月半ば、国債入札の決済や法人税の納付に伴い流動性がひっ迫し、金利が一時10%と、フェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標の4倍超に跳ね上がった。

米金融機関や市場関係者は、国債入札の決済や法人税の納付期限が再び到来する今月半ばや月末に、9月のような短期市場の混乱が再び起きる可能性を警戒している。

同時に、一部の大手銀行はバランスシートを縮小して資本の積み増しを回避するため、レポ市場で資金の貸し出しを控える可能性もある。

クレディ・スイスのアナリスト、ゾルタン・ポザール氏は9日のリポートで、短期金融市場の流動性を高めるためFRBが実施している財務省短期証券(Tビル)買い入れやレポ市場への臨時資金供給では、年末の資金不足に十分対応できない可能性があると指摘。「資金需給ひっ迫に関するわれわれの見解が正しければ、FRBは年内にQE4に乗り出すことになる」との見方を示した。

中略

ポザール氏は、短期金融市場の混乱が再現すれば、FRBは伝統的なQEの再開を迫られるとみている。

同氏は、翌日物市場が不安定になれば、ヘッジファンドによる米国債売却が進み、FRBはより踏み込んだ対応を取らざるを得なくなると予想。年末にかけて国債利回りが急上昇し、FRBはTビル買い入れから国債買い入れへのシフトを迫られるとの見方を示した。

以下略

年末にかけて再び9月のようなレポ市場の混乱が起こる恐れがあることと、それに引き続きQEが再開される可能性について指摘されている。

また、ヘッジファンドによる米国債売却が進むことや、年末にかけて国債利回りが急上昇するリスクについても念頭においているようだ。

現在のトランプ政権が、大量に国債を発行出来ているのは低金利&順調に消化されるからだ。その国債利回りが急騰(=国債が消化されなくなる)となれば、一転して財政難に陥るだろう。

そうなれば、万が一の金融危機への対応は一段と困難になる。

年末と言えば、原田武夫氏がクリスマス前後の市場の大暴落を警告しているが、それに繋がる異変となるのだろうか。

そもそも、9月にレポ市場の金利が高騰した原因は、トランプ政権では米政府の支出を増やして(=財政赤字を急拡大して)景気刺激策を展開しており、国債を発行しまくっていることがあげられている。

米国債の発行が増えれば、市場に出回る米国債も増えるが、市中の金融機関はそれら米国債を引き受けるために資金を振り向ける必要があり、手持ちのドルが足りなくなったと言われている。

だが、それだけだろうか?

レポ市場では極めて安全であるはずの米国債を担保とするにも関わらず、FRB以外の貸し手が不在の状況が続いており市場としての体をなしていない。

レポ市場に回す資金不足と言うよりは、貸し出しをしたくないだけの信用不安が実態なのではないだろうか。

だとするならば、年末に向けて一段と信用不安が酷くなり、リーマンショックの再来となる可能性も否定出来ない。

と書いているところに、ここ数日でレポ金利が1%ほど上がってきたと言う話が聞こえてきた。FRBが連日巨額の資金提供を続けているはずだが・・・一体どういうことなのか?

取り敢えず、ロイターの記事が出たのはこの異変のためなのか!?

とにかく、今月は12日にイギリスの総選挙があり、15日には昨日書いたアメリカの対中追加関税の発動が予定されている。

どちらも、世界の今後の方向性を決める一大イベントだ。

もしも、イギリス総選挙でボリス・ジョンソン勝利により「とにかく何でもいいからブレグジット」が確定し、さらにトランプ大統領が周囲の反対を押しきって対中追加関税を発動するとなれば、原田武夫氏の言うような「12月25日前後のマーケットにおける大暴落以上のガラ」が来る可能性が否定出来なくなってきた。


最後まで読んでくれてありがとう!