アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が、アジア歴訪の際に台湾を訪問する可能性が出てきていることに対して中国が激オコしてることが話題になっている。
中国、米への警告強める ペロシ氏の訪台計画巡り=FT https://t.co/PhlyXGT8Fn
— ロイター (@ReutersJapan) July 24, 2022
ペロシ下院議長は7月29日にアジア歴訪に出発も、台湾に立ち寄るかはまだ未定とのこと。
なお、このロイター記事の元ネタはフィナンシャル・タイムズの記事だが、気になるのは・・
FTが事情に詳しい複数の関係者の話として伝えたところによると、今回の警告は中国が過去に米国の台湾政策に不満を示した際よりかなり強い内容で、軍事的な対応の可能性も示唆したという。
・・と、中国がペロシの訪台に対して軍事的な対応を示唆するなど、極めて強く反発している点にある。
ちなみに、中国が示唆する「軍事的な対応」について、フィナンシャル・タイムズの記事によるとペロシが搭乗する飛行機撃墜だとか。
仮にそんなことになれば、確実に米中戦争となる。
こうした中国の強硬な態度を前に、ペロシの台湾訪問はアメリカ政府内でも問題となっているようで、あのバイデン大統領や米軍のエライ人たちも反対しているとか。
米ペロシ下院議長 近く訪台の見方 慎重論も 動向に関心集まる #nhk_news https://t.co/pkJX8n3tcy
— NHKニュース (@nhk_news) July 26, 2022
認知症が疑われるバイデン大統領や世界最強の米軍ですら「や、やめとけって・・」となっている状況からは、アメリカの中国と戦争したくなさ加減はホンモノだ。
そもそも、インフレ対策を最優先のバイデン大統領にとっては、対中輸入関
また、ペロシ訪台の時期も最悪だ。
ペロシ訪台は元は4月に予定されていたところ、ペロシのコロナ感染により延期されて「8月に行こうか」となったものだが、現在のバイデン政権は「中国の台湾侵攻あるで!」と反中を煽っている真っ最中だ。
こうした中での訪問は「台湾はアメリカ陣営の国やぞ」と喧伝するに等しい行為だ。
しかも、下院議長であるペロシの台湾訪問は「アメリカ議会の意思」である上に、下院議長とは大統領が不慮の事故等で公務を継続出来なくなった際は副大統領に次ぐ継承順位という超要職であり、大統領・副大統領に次ぐ権威と言える。
つまり、ペロシの台湾訪問は「台湾はアメリカ陣営の国」の喧伝どころか、
「台湾島はおれのナワバリにする!!!」と宣言しているに等しい。
しかし、中国共産党の歴代政権は、台湾は独立国家ではなく中国(中華人民共和国)の一部とする「一つの中国」を堅持している。
また、中国は反分裂国家法により正式な国交は「中国か台湾のどちらか一方のみ」としているため、世界でも台湾を国家承認している国は少数派だ(日本も承認していない)。
こんな建前の中で、世界の国々は中国共産党政府に忖度しつつ大人の対応をしているのが現実だ。
こうした中でのアメリカの「ナワバリに宣言」は、中国共産党政府(習近平)のメンツをつぶすような行為だ。
しかも、今年は習近平にとって重要な年。
2018年の全人代で、憲法で定められた国家主席の任期規定(2期10年)が撤廃されたため、習近平は2023年以降も中国トップとして君臨することが可能となっている。
The Chinese Communist Party’s leadership calls for the removal of presidential term limits, opening the door for China’s most powerful leader in decades, Xi Jinping, to remain in office beyond 2023 https://t.co/FcjsuFyUPT pic.twitter.com/FY7t77zKlQ
— AFP News Agency (@AFP) February 25, 2018
習近平が史上初の2期10年を超える「終身国家主席」となることは既定路線とは言え、正式には今年の秋の共産党大会で決まる。
反習近平派につけ込まれないためにも、今の習近平にミスは許されない。ましてや、メンツを潰されるなどあってはならない。
そんな中でペロシの台湾訪問は、完全に習近平への嫌がらせだ。
グレートリセットを推進するアメリカの立場を踏まえると、ミスを恐れてロシア支援に踏み切れない習近平を、完全にロシア陣営に追いやろうとする意図を感じる。
ただ、大会まで静かに過ごしたい習近平にとって無用な騒ぎはカンベンして欲しいだろうから、ペロシの暴走にブチ切れている・・のは当然だろう。
ただ、「ペロシ登場の航空機撃墜」はいくら何でもブチ切れ過ぎだ。
そうした観点を踏まえると、実は中国共産党政権の基盤が思った以上に不安定化しているんじゃ・・との疑いが見えてくる。
先日、中国の河南省鄭州市で銀行が唐突に市民の預金口座を凍結したため、3000人規模の預金者が「カネを返せ」と叫んで銀行に殺到する取り付け騒ぎが発生したことが報じられた。
中国で相次ぐ取り付け騒ぎは国有銀行にも及ぶ構造問題
ネット金融に活路を見出そうとした農村部の中小銀行が預金者と経済全体を道連れに自滅の道を突き進むhttps://t.co/Ory6y53fvC#ニューズウィーク日本版— ニューズウィーク日本版 (@Newsweek_JAPAN) July 28, 2022
台所事情の苦しい銀行が高金利で預金を集めたものの、貸し出し先の不動産業者への与信管理が甘く資金繰りが悪化した挙句の預金封鎖とのことなので、全面的に銀行が悪い。
そんな銀行に対して、中国全土から市民が「カネ返せコラ」と集まってきたため、当局が市民をボコって強制排除した・・というものだが、上記のニューズウィークの記事にある写真を見て欲しい。
市民はお揃いの赤いボードや政府批判の文言が並ぶ白の横断幕を掲げており、単なるカネ返せデモではなく、規模は小さいものの何者かが扇動した反政府デモに見える。
これは、1989年の天安門事件を彷彿とさせ、習近平政権の正統性を問う「反乱」へと発展しかねない危険性を孕むものだ。
この反乱の背景には、「中国不動産バブル崩壊による金融危機があるかもしれない」で紹介したように、中共政府が、不動産バブル崩壊を通じて中国国内の大金持ちや国際金融資本の投資の成果(富)を収奪していることがあると推測される。
習近平は「共同富裕」を掲げて金持ち大企業や銀行を支配下に置きつつ(=資産の国有化)、習近平への個人崇拝を進めることで、共産主義国家への回帰を果たすとともに毛沢東並のカリスマ権力を手に入れている。
習近平が再構築を進める「共産主義体制」は経済・金融危機に強いシステムなので、来るべき米ドル・米国債を中心とした金融システム崩壊に備える動きなのだろうが、金持ち・国際金融資本からの反発を招いているようだ。当たり前だけど。
となると、取り付け騒ぎに乗じた反乱デモは習近平の政策に対する金持ち・国際金融資本の意趣返しと言える。
そして、この構図は、アメリカの工作により親ロシア政権が倒された2014年ウクライナのマイダン革命にも類似しており、アメリカ政府も絡んだ「習近平追い落とし作戦」という可能性も頭をよぎる。
さらに気になるのは、「withコロナ」だった上海市が急に「zeroコロナ」となり、3月末~5月末までロックダウンしていたことだ。
ロックダウンについては、感染はほとんど抑えられられない上に経済への影響が大きい無意味対策なのは明らかなのに、何故ロックダウンに踏み切ったのか。
大事な大会を控える習近平はコロナ対策で失態を見せられないから・・と言われているが、むしろロックダウンした方が失態となるのは明らかだ。
となると、このロックダウンは「上海」をターゲットにしたものなのではないか。
以前にも紹介したように中国は「軍閥国家」であり、地方の軍は独自企業を運営するなどして「経済力」と「軍事力」を兼ね備えた存在となっている。
そうした軍閥の中で習近平が恐れているとされるのが、北朝鮮と軍事的関係も深い北部軍区(旧瀋陽軍区+内モンゴル自治区+山東省)なのだが、この北部軍区は上海閥(=江沢民系)と関係が深い。
つまり、上海ロックダウンとは北部軍区(上海閥=反習近平派)の壊滅を狙ったものと考えられる。
権力闘争勃発!異常な上海ロックダウンの真相 習氏はゼロコロナ失敗にパニック 最大の政敵「上海閥」によるクーデター計画もhttps://t.co/xdgycoVXor#ゼロコロナ #習政権 #上海ロックダウン #権力闘争
— zakzak (@zakdesk) April 26, 2022
習近平が北部軍区をダマらせたかったのは、「アメリカの暴動と新中国連邦構想」や「原田武夫氏と馬淵睦夫氏 奇妙に一致する今後のシナリオ」で紹介したように、今後の中国は共産党支配が終わって分裂、連邦化することが見込まれていることと無関係ではないだろう。
分裂・連邦化の際には「軍区」が目安になるだろうし。
そして、終身国家主席を目前に控えた時期に、わざわざ上海市民を犠牲にした権力闘争を展開していることから、以外にも中国共産党支配の終焉と中国の分裂は近い可能性がある。
ということで、中国国内で金持ちや軍閥が反習近平に動く中でペロシが「台湾はおれのナワバリにする!!!」なんてことになれば、習近平の求心力低下は避けられず終身国家主席が遠のいてしまう・・・。
そりゃ撃墜レベルでブチ切れても仕方がない。
また、追い詰められているのは中国・習近平政権だけではない。
バイデンと米軍は「行かない方がいいと思うのでペロシにも行くなって言いました。中国との戦争はイヤっす。」と発言しており事実上ペロシ訪台を認めており、安易にペロシの訪台中止となれば中国の脅しに屈したことになる。
そうなれば、バイデン政権は中間選挙で政権の弱腰を嫌うアメリカ国民&共和党から袋叩きにされるだけでなく、クアッド等の対中戦略に対する国際社会からの信頼も失う。
同様に、中国サイドも撃墜しなければ、習近平も弱腰批判により終身国家主席の座を失うことになる。
つまり、このペロシ訪台はアメリカ・バイデン政権と中国共産党の存続をかけた一大事となっている。
それもこれも、全てイギリスのフィナンシャル・タイムズ紙のリーク報道が原因であり、米政権内部と繋がる世界の大いなるチカラを感じざるを得ないところだ。
「ウクライナ情勢の転換と役割を終えたバイデン政権」で紹介したように、バイデン政権や習近平・中国共産党には米ドル・米国債を中心とする金融システムのグレート・リセットを実現する役割があると思われるが・・・。
また、ペロシの台湾訪問は台湾や中国共産党の背後にいる洪門や浙江財閥などの華僑組織は了解しているのかは疑問なところだ。
以前に「中国・習近平の強まる独裁から見る政体を越えた権力の目指す先」で紹介したように、台湾には簿外資産に関する「何か」があると言う。
「安倍元首相の暗殺は歴史が大きく動く合図か」で、安倍元首相が殺害されたのは歴史が大きく動く際に表に出るゴールデン・リリーとも呼ばれる簿外資産について、本来は簿外資産の投入が無いハズのロシアに流そうとしていたor流して上前をハネていた等、好き勝手に使っていたことが原因の可能性が高いことを紹介した。
そのような安倍さん殺害事件の直後に、簿外資産に絡む地・台湾にペロシ下院議長がサプライズ強行訪問する。
そして、習近平が「撃墜」まで示唆してブチ切れている様子からは、真の権力者たる華僑組織はペロシ訪台を了承していない可能性もあり、そうであるなら、ペロシ訪台は安倍さんと同様にグレート・リセットという歴史の流れに逆行するものと言える。
習近平がペロシ搭乗機の撃墜まで仄めかしてまでブチ切れているのは、実はグレート・リセットを妨げていることに対する警告なのかもしれない。
最後まで読んでくれてありがとう!