アメリカと中国

ペロシの台湾訪問により中国は台湾侵攻の口実を得る

アメリカと中国

先日の「ペロシの台湾訪問問題はグレートリセットの巻き戻しか」で、アジア歴訪に出ているペロシ下院議長が台湾訪問を強行した場合、中国共産党政府(習近平)はペロシ搭乗機を撃墜する可能性を示唆していることを紹介した。

中間選挙や共産党大会を控えるバイデンや習近平は「ややめてくれ」のお祈りモードだったかどうかは分からんが、無情にも台湾メディアがペロシが8月2日の訪台を報じてしまった。

8月2日に台湾に到着して翌3日にエライ人達と面会する予定になっているとか。

そして、アメリカ政府はペロシ訪台の地ならしを始めたようだ。

アメリカのカービー報道官の発言は・・

  • ペロシには台湾訪問する権利がある
  • この訪台はペロシの個人的な行動
  • なので、中国は軍事的緊張をエスカレートさせる必要はない
  • 中国は長期的にさらなる措置を講じる可能性

・・といったところだろうか。

平たく言うと「今回の台湾訪問はペロシの個人的なモノなのに、中国さんが軍事行動するとアメリカvs中国に発展しちゃいますよ~」と言っており、「軍事的エスカレートは過剰反応やし、見逃してくれ」と懇願している感じか。

ただ、先日のブログで紹介したように、下院議長ペロシの台湾訪問は「アメリカ議会の意思」である上に、大統領継承順位から見て下院議長とはNo3の権威なので、それを個人的な訪問とするのは無理がある。

全く言い訳になっていない。

前回のブログでは、習近平のあまりのブチ切れ度合から、中国・台湾の真の権力者たる華僑組織がペロシ訪台を了承しておらず、ペロシの行動はグレート・リセットの流れに逆行するもの・・という可能性が考えられることを紹介した。(ペロシの台湾訪問問題はグレートリセットの巻き戻しか

だが、台湾政府にとって面倒事を呼び込むペロシは招かれざる客なのに、台湾メディアがペロシ訪台を報じたことを踏まえると、ペロシの訪台は華僑組織も了承済みのことのようだ。

・・となると、ペロシの台湾訪問は中国にとって侵攻の口実であること、さらには意図的な台湾侵攻の誘発である可能性が見えてくる。

さて、要人ペロシは米軍の護衛を伴って台湾訪問することになるワケだが、中国さんは米軍戦闘機に護衛された飛行機に乗ったペロシの訪台を「侵略」と位置付けている。

中国がペロシの飛行機の撃墜を示唆していたのは、それを侵略と見なしているからだ。なお、ペロシはホノルルで軍用機に乗り換えたとか。

・・やる気(やられる気?)マンマンや。

なお、中国のこの見解は、人民日報(中国共産党の機関誌)傘下のタブロイド紙「環球時報」の元編集長さんが発信したものなので、中共政府(習近平)の御意を受けているのは間違いなさそう。

また、バイデン・習近平共に弱腰姿勢を見せられない重要な時期なので、メンツvsメンツで互いに引くに引けず・・と見せかける形で軍事衝突に発展する可能性はある。

ゼロヘッジさんも、戦争への発展の可能性について報じている。

ゼロヘッジさんによると、実は中国は台湾への侵攻を予定していたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて延期している状況とのこと。

なお、これはロシアからのリーク情報としてニューズウィークが報じている。

情報元はFSB(ロシア連邦保安庁)の内部告発者からのリークのようだ。

そして、ゼロヘッジさんによると、現在ではウクライナ危機に伴うロシアへの経済・金融制裁や過度のウクライナ支援により、中国・台湾方面への欧米諸国の対応能力は大きく低下しているとのこと。

確かに、アメリカはウクライナ支援のために500億ドルを越える予算を構えている。

さらに欧州ではノルドルトリーム1を経由した天然ガス供給が8割減されており、ドイツを中心にエネルギー危機からの経済崩壊が懸念されるレベルとなっている。

・・・確かに、欧米諸国にはウクライナに加えて台湾まで支援する余力は無さそうだし、そもそも最大級の貿易相手国となる中国制裁など不可能だ。

ロシアのウクライナ侵攻により欧米諸国の体力が削られまくった今、中国が軍事行動に踏み切るハードルが限りなく低くなっているのは間違いなさそう。

さらに、9月・10月は台湾周辺を多くの台風が通過するため、米軍のハイテク兵器運用に支障が出ることから、中国にとって軍事的に有利となる重要な時期だとか。

つまり、今は欧米諸国の弱体化&米軍不利のタイミングであり、ペロシの台湾訪問は中国への「今やで」のメッセージと見るべきだろう。

そもそも、ペロシ訪台は4月に予定されてたところ、ペロシのコロナ感染を理由にこの時期に延期となったものだが、雲の上の支配者層からの指令でもあったのかと思える都合の良さだ。

であるなら、習近平の撃墜の真意は「面倒事はやめてくれ」ではなく「今やぁぁぁ、やったるでぇぇぇッッ!!」なのか。

なお、中国は台湾周辺での実弾演習を行っているとか。

この演習については、ゼロヘッジさん曰く「力の誇示」だけでなく、ペロシ搭乗の航空機を撃墜する権利を持っていることを示唆しているとしている。

また、中国軍機の動きも活発だ。

このほか、中国の遼寧や山東といった空母も動いているとの話もあるので、もしかしたらウォーミングアップなのか・・。

なお、ペロシ台湾訪問の報道が出たタイミングで、バイデン大統領と習近平国家首席は電話会談をしている。

この記事の中には、

一方、習氏はバイデン氏に対し「火遊びする者は身を焦がす」と警告し、「一つの中国」の原則を守るよう伝えたと、中国政府は説明した。

とあり、中国側の本気度がかなり高いことが伺える。

さらに、中国外務省のサイトにもこの会談内容が掲載されているが、そこには

火で遊ぶ者は火によって滅びる

とあり、身を焦がすどころの騒ぎではない。

なお、「滅びる」の表現からは、米ドル・米国債を中心とした現在の金融システムの崩壊(=グレートリセット)を彷彿とさせる。

個人的にはペロシ機撃墜という決定的なことはやらないと思うが、ペロシの訪台は「台湾はアメリカのナワバリにする!」宣言に等しい行為でもあるため、中国が本格的に動くきっかけとはなりそうだ。

なお、中国の台湾侵攻の展開について、ゼロヘッジさんから記事が配信されている。

専門家さんたちがいくつかのパターンを想定しているが、ペロシが殺害されない前提で考えると米中戦争とはならないだろうから、その点から考えられそうなのは・・

  • 中国人民解放軍による海上・航空封鎖
  • サイバー攻撃により台湾をインターネットから事実上遮断し、台湾の通信・経済を破壊
  • 台湾周辺の島々を占領

・・辺りだろうか。

台湾の南側の南沙諸島は中国が軍事拠点化しているし、浙江省や海南島には中国海軍拠点があるし、さらに台湾海峡を挟んだ向かいには中国空軍基地が点在しているほか、日本海方面はロ・中合同海軍が睨みをきかせる。

台湾が囲まれていないのは沖縄方面だけ。

気になるのはアメリカの動きだが、ロシアのウクライナ侵攻にアメリカは「軍事介入しない宣言」していることや、「核保有国同士は戦争しないの原則」を踏まえると、アメリカは台湾支援でお茶を濁すウクライナモデルを想定している可能性が高い。

そもそも、台湾には多くの中国人が住んでいるので、うっかりアメリカ軍が出動すると、「自国領土と自国民の保護」を名目に中国人民解放軍が雪崩れ込んでくるだろうし。

アメリカ軍が動かないとするなら自衛隊などいないも同然なので、中国からすると海上・航空封鎖は楽勝だろう。

また、欧米の対応能力低下に伴い、アメリカの「台湾支援」には自衛隊による支援(避難民の輸送とか?)も含まれる可能性が高い。

ちなみに、台湾と日本の位置関係を見ると・・

台湾周辺地図

実は、台湾の目と鼻の先が与那国島や石垣島等の先島諸島となっている。日本は否が応でも巻き込まれる。

余談だが、1949年の金門島の戦いで人民解放軍は台湾(中華民国)軍に撃破されており、中共政府は台湾統一を断念した。

この戦いを指揮したのは元日本帝国陸軍中将の根本博だが、敗戦後に日本人居留民や日本軍の引き上げに協力的だった蒋介石に恩義を感じて、わざわざ台湾に密航して助太刀したとか。

この命、義に捧ぐ(門田隆将 著)

まあ、今の日本や台湾に中国人民解放軍の撃退は不可能だろうから、台湾は名実共に中国の一自治区となるのは現実に起こり得る。

そうなると懸念されるのが半導体だ。

今のところ、アメリカはHUAWEIの半導体部門の海思半導体(ハイシリコン)や芯国際集成電路製造(SMIC)など、中国半導体企業に対する制裁を行っている。

このため、中国では高性能半導体の入手が難しくなっているところだが、実は台湾には泣く子も黙る台湾積体電路製造(TSMC)がある。

TSMCは世界最大のファウンドリー(半導体製造専門企業)であり、どんな難しい設計の半導体も量産する唯一無二の技術とケタ違いの生産能力を持っている。

クァルコムやAMDもTSMCに依存するなど、台湾・TSMCは世界の半導体サプライチェーンの要衝となっている。

2030 半導体の地政学(太田泰彦 著)

ウクライナ危機によって世界の資源の大半はロシア陣営が抑えているところだが、そこに半導体までロシア陣営(中国)に抑えられれば、アメリカ陣営の国々にとっては死活問題だ。

アメリカはドルやSWIFTを金融兵器として活用し、外貨準備としてのドルの価値・信用を大きく棄損したほか、ペトロダラーの崩壊も迫っている。(制裁強化で現実になる米ドル崩壊と食糧危機)(バイデンのサウジ訪問はペトロダラー終焉の合図

欧米陣営vsロシア陣営の勝敗の帰趨は決する。

また、世界の名だたる半導体・IT企業の多くは、台湾・中共の背後にいる浙江財閥などの華僑勢に牛耳られている。

ソーシャルメディアと経済戦争(深田萌絵 著)

この観点を踏まえると、中国が台湾を取りに行くのは、世界がグレートリセットへと進む中にあって、崩壊する米国勢から半導体覇権を移行する動きにも見える。

そして気になるのが、「中国・習近平の強まる独裁から見る政体を越えた権力の目指す先」で紹介したように、台湾には簿外資産に関する「何か」があると言う話。

簿外資産を勝手に我が物とした安倍さん殺害事件の直後に、簿外資産に絡む地・台湾でコトが起こる・・。

やはり、グレートリセットへと進んでいる。

なお、日本は米中両属の中立的な状態にあると言え、何かコトが起こった際にはそのプレゼンスを最大限発揮することで、世界的な信頼を得ることも不可能ではない。

そうした上で、日本に投資資金が集中するような展開を期待したいものだ。


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