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バイデンのサウジ訪問はペトロダラー終焉の合図

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先日、アメリカのバイデン大統領が「石油増産してちょ、もっとイスラエルと仲良くしてちょ」等をお願いするため、サウジアラビアを訪問した・・が、成果は皆無に近かった。

と言うことで、このところ下落していた原油価格は、再び上昇に転じている。

20220719wti石油日足チャート

ただ、成果ゼロの手ぶら帰国と批判されているものの、サウジ訪問については元から「失敗上等」でもあった。

そもそも、「ウクライナ危機でロシアに寝返るサウジとUAE 黒幕はイスラエル」で紹介したように、サウジアラビアは既にロシア陣営に寝返っているが、その理由はアメリカのサウジに対する無慈悲な対応にあった。

一例として・・

  • イランの影響力の強いシリアやイラクから撤退し、両国をサウジと仲が悪いイラン(ロシア・中国)の覇権下に押し込もうとした。
  • イスラム教の守護者を自認するサウジを無視して、イスラム教の聖地でもあるエルサレムのイスラエル帰属を支持した。
  • トルコのサウジ領事館内でサウジ人ジャーナリストのカショギ氏が殺害された件について、首謀者はサウジのMbS皇太子と暴露してサウジ・トルコ関係を破壊
  • 世界最弱の軍隊しか持たないサウジをけしかけてイエメン内戦に介入させたが、アメリカは手を引き、さらに人道危機としてサウジを非難

この中で、イエメン内戦への介入については「原油高は中東混乱の前触れか 実はサウジアラビアが震源になるかも」で紹介したように、アメリカはサウジをイエメン内戦に引き込んだ上で協力の密約を破棄して、さらにフーシ派(イラン)のドローンがサウジ国内を1000キロ近く飛行して製油施設にアタックするなど、アメリカはサウジを守る気ナッシングなことが明白となった。

このように、サウジ(MbS皇太子)のアメリカに対する信頼は地に落ちており、アメリカの御意を察して何も言われなくとも石油増産していたサウジの姿は過去のものとなっている。

そうでなくとも、バイデン大統領はトランプが公表しなかったカショギ事件の報告書を公表するなど、以前からサウジのムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子を「カショギ事件の黒幕」と非難しており、両者は非常に折り合いが悪い。

今回のバイデン大統領のサウジ訪問については、アメリカ国内からも「けちょんけちょんに非難しといて今さら頼るんかい!」と節操なき外交に対するツッコミが散見されていたほどだ。

また、バイデン政権の支持基盤である環境団体さんの声がデカイため石油採掘に対する設備投資が萎んでおり、ウクライナ危機前から原油価格は高騰していたことを踏まえると、サウジが増産に応じる義理は皆無だ。

・・とこのように、訪問する前から失敗は明らかであり「手ぶら」はむしろ当然なのだが、冒頭に紹介した共同通信はじめ、欧米主要メディアがこぞってバイデン大統領の中東訪問失敗を喧伝しているのは気になるところだ。

コロナやウクライナ危機の報道姿勢を踏まえると、「サウジのMbS皇太子から増産に前向きな回答を得た」とするバイデン大統領のコメントを中心とした報道になりそうなものだが・・。

ところが、バイデンとMbS皇太子の会談についても、本来なら事前に双方の事務方で内容を詰めていて当然だし、世界最強のアメリカ大統領が「土下座外交」したのに成果ナシを喧伝する結果となっている。これ如何に。

さらに、大手メディア各社からは、サウジからのリークと思われる報道が出ている。海外版のロイターの記事だ。

ロイター報道によると、会談の冒頭でバイデン大統領はMbS皇太子に「やっぱカショギさん殺したのお前やろ」といきなり批判していたとか。

対するMbS皇太子側も、イラクのアブグレイブ刑務所でアメリカ兵がイラク捕虜を虐待したことや、イスラエルがパレスチナ系アメリカ人のジャーナリストのシリーヌ・アブ・アクレ氏を殺害したことなどを非難し、「お前もやっとるし、何でイスラエルには何も言わんのや!価値観の無理強いはアカンで!」と反論したとか。

この記事のソースはサウジメディア(=MbS皇太子側のリーク)であり、何かしらの交渉を纏めようとする気配は皆無だ。

さらに、バイデン大統領はサウジ側に原油増産を頼んでいないとの話まで出てきている模様だ。

・・・何しに行ったんや。支持基盤の環境団体のことを気にしてたんだろうか。

これらの報道をまとめるとこんな感じだろうか。

  • バイデン大統領の中東訪問が成果ナシに終わったことが、必要以上に喧伝
  • サウジ側から、バイデン大統領(アメリカ)の権威を貶めるようなリーク報道が乱発
  • ここ数年のサウジとアメリカとの関係を踏まえると原油増産などの成果が得られるハズもなく、最初から行く案件ではない。

こうした状況からは、アメリカ・サウジ双方ともに原油増産する意志などは最初から無く、アメリカは意図的に外交の失敗を演出した・・と見るべきではないか。

そして、このようなバイデン政権の「成果無き土下座外交」は、中東におけるアメリカ覇権や影響力の低下を示すだけでなく、究極的には「ペドロダラー体制」の崩壊を目的としている可能性が高い。

「ペトロダラー体制」は、サウジなど親米アラブ国家がドル以外の通貨で石油を売らないもので、石油需要が続く限りはいくら過剰発行してもドルは安泰というシステムだ。

ニクソンショックで金の裏付けをなくしても、QE(造幣による債券買取)でFRBの資産が急激に膨れ上がっても・・

20220719frb資産推移

・・ドルが安定していたのは、「石油が買える唯一の通貨」という価値を持つ事実上の石油本位通貨だったことが大きい。

逆に言うと磐石な米ドル・米国債を中心とする金融システム崩壊(=グレートリセット)には、ペトロダラーの崩壊が不可欠と言える。

そして、ペドロダラー崩壊については、サウジ側も連携している。

以前に「アゾフ連隊の活躍報道から見る戦況とドルの崩壊」で、最大産油国のサウジアラビアが人民元建てでの石油販売を検討していることを紹介した。

これと関連しているか分からんが、バイデン訪問の直前に、サウジアラビアがBRICS入りする可能性をゼロヘッジさんが報じている。

BRICSチームは世界人口の40%以上と世界GDPの4分の1を占めているところ、サウジアラビアやトルコ、エジプトが加盟を検討しているほか、イランとアルゼンチンが加盟申請しており、さらなる拡大や資源の独占が見込まれるとか。

この拡大についてゼロヘッジさんは、米ドル中心の金融システムへの対抗と多極世界への移行を意味するものとしており、サウジ側も本格的にペドロダラー崩壊を意識している可能性が高い。

ウクライナ情勢の転換と役割を終えたバイデン政権」で紹介したように、バイデン政権の役割がグレートリセットの不可逆的な開始であることを踏まえると、今回の件はペトロダラー崩壊の合図であり、米ドル・米国債中心の金融システムからの移行を進めるマイルストーンだったのかも。(ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット

さて、アメリカでは今になってガソリン価格が下がるかも的な報道が出てきている。

バイデン大統領のサウジ訪問の成果のように報じられているが、アメリカのガソリン価格下落(世界的な原油価格の下落)は景気後退懸念による需要減が主な理由なので、政権にとってむしろマイナスだ。

それに、原油の増産余力があるのはサウジやイランくらいだし、OPEC+にはロシアも入ってるし、ロシア陣営についたMbS皇太子の意向を踏まえても増産は無さそう。

ちなみに、「本格化するロシアの報復制裁により対米離脱を迫られる日本とドイツ」で紹介したが、インドは安く仕入れたロシア石油を精製し、アメリカ陣営の国々に市場価格で転売して大儲けしている。

ロシア産原油は転売不可じゃないから成せるワザだ。

だが、これは半親米陣営のインドを経由してロシア陣営が石油を輸出できること、石油価格のコントロール能力は世界有数の埋蔵量を誇るロシア・サウジ・イランを抱えるロシア陣営に移りつつあることを意味している。

こうした中で、先日のBRICSサミットでBRICS通貨の活用(=非ドル決済の拡大)が協議されたとか。

多くの国がドル建て債務を抱えてる中で急速な切り替えは難しいものの、中国やロシアを中心にSWIFT(ドル)を経由しない国際決済の拡大が模索されているとか。

こうした状況を踏まえると、石油価格決定権を持ちつつあるサウジやインドが、BRICS通貨への誘導のためドルに逆プレミアムをつけることは想定される。

そして「石油のご購入はBRICS通貨でおなしゃす」と言い始めればペトロダラーは完全に崩壊し、金融システムのグレートリセットは加速することになる。


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