債券市場崩壊

アメリカレポ市場へのFRB資金供給増額が意味すること

債券市場崩壊

レポ市場は9月にいきなり金利が高騰し10%を超えたことがあったが、FRBの介入によって表面上は一定の落ち着きを取り戻している。

だが、年末年始の資金需要への対応について金融当局はピリピリしているようだ。

米金融当局、レポ市場安定化に裏技も活用か-ウォール街で観測浮上

米レポ市場が3カ月前に混乱に見舞われて以降、米金融当局は流動性供給を通じ、市場の安定化を図っている。翌日物とターム物のレポ取引や月600億ドル(約6兆5600億円)相当の米財務省短期証券(TB)購入がその柱だが、米当局が別の手段も密かに活用しているのではないかとの見方がウォール街の一部で浮上している。

その仕組みは、ニューヨーク連銀に口座を持つ海外の中央銀行など公的機関向けに限定的な投資サービスを提供する外国レポ枠と呼ばれる預金枠を使ったものと考えられている。海外の中銀などが外国レポ枠を利用する場合、銀行システムから準備預金を引き揚げることになり、米金融当局による資金供給の取り組みに逆行する。

レポ市場混乱の理由の1つは、準備預金の残高があまりにも小さくなったことにある。しかし、外国レポ枠の残高は9月半ばに3060億ドルのピークを付けて以降、18%減っている。銀行システムにおける準備預金を増強してその秩序を保つのが米金融当局の目標であり、同枠の残高減少はこの目標に合致する。

以下略

ニュースの概要は、ニューヨーク連銀の外国レポ枠の利用が減少しているが、それは当局の目指すところ。当局が意図的に海外の中央銀行による利用を減らすようにしたのではないか、というものだ。

アメリカの金融当局はレポ市場の動向にかなり気を使っている。

レポ市場の状況を見る前に、レポ市場の利用者である「銀行」がどんな状態にあるかを見てみよう。

銀行の持つ最も重要な機能は「融資」だ。企業や個人にカネを貸して利ざやを稼ぐ、銀行の根本的な業務だ。

みんなが銀行に預金したカネに少しだけ利息をつけ、企業に高い金利で貸し出す。または、レポ市場で他の銀行から低金利で借りて企業に高い金利で貸し出す。

いずれにせよ利ザヤで稼ぐということから、カネを右から左に流して年収2000万円みたいなイメージだった。

ところが、最近は様子が違う。

世界中でゼロ金利・超低金利政策が長く続いた結果、普通に融資しても「利ざや」が全然取れなくなったため、融資業務だけでは銀行は立ち行かなくなっているのだ。

銀行には融資業務以外にも「投資」によって市場に資金供給することも重要な業務だ。もちろん無駄なリスクは取れないので、リスクは少なくリターンは高い投資を探すこととなる。

ところが、安全な投資先として一番に名前が上がる国債は、ゼロ金利ヘタすりゃマイナス金利でとても稼げるものではない。

融資もダメ投資もダメで、銀行経営はかなり厳しい状況にあるため、先日の記事で書いたように、欧米の銀行はコベナンツ・ライトやレバレッジドローンと言った、リスクの高い融資業務に手を出さないといけなくなってきている。

CLOが日本に集中!次の金融危機は日本発か!?

では、銀行が一致団結して金利を上げるように当局に働きかければいいようなものだが、それは難しい。

ゼロ金利下において、国は国債の利払いが不要なためドンドン国債を発行できる。また、倒産寸前の企業でも起債して資金を調達できる。信用の低い社債(ジャンク債)でも金利が低いからだ。

このように「ゼロ金利」とは無限にカネが涌き出る仕組みであり、企業倒産が少なくなり株価も安定し景気はよく見える。

なので、まだまだ超低金利・ゼロ金利は続く。やめたら金融危機が見えてくるからだ。

状況としては日本の銀行も同じだ。

特に地銀は厳しく、国際決済銀行が定めた銀行の自己資本比率規制(BIS規制)を守るため、不良債権など絶対に作れず、安全・健全な企業にしか融資出来ない。

だが、そんな企業はほとんどなく、あってもゼロ金利・超低金利のなかで利ざやはほとんどない。

日本の銀行は、リスクを知りつつもCLOなどリターンの高い危険な証券に手を出さざるを得ないのだ。

こうした銀行業界の状態を踏まえてレポ市場を見てみよう。

レポ市場とは、銀行同士が国債などを担保に短期的な資金を貸し借りする場だ。

このレポ市場で9月に金利が10%まで急騰するという異変が生じ、FRBが介入した。

金利は落ち着いたが今でも資金の貸し手はFRBのみで、今では民間銀行に1200億ドル規模で短期融資を行っている。

さらに民間銀行から米国債を月に600億ドル(6兆円!?)の規模で買い取っており、事実上のQE再開している状況だ。

レポ市場では、今月再び金利が4%台まで上がるなど異変は続いている中で、金融当局は、年末年始の資金不足懸念から5000億ドル超(50兆円!?)の資金を投入すると発表した。

この異変は大手のJPモルガン・チェース銀行が、レポ市場向けに準備している資金を大幅に減額したことが直接の理由で、「JPモルガンがワザと引き起こした」と言われている。

レポ市場最大の利用者たるJPモルガンが、資金提供を渋ったことで、FRBは2015年頃からやっていた「QE脱却」から180度方針転換し「QE再開」をさせられることになった。

JPモルガンが、FRBに資金供給させた目的は何だろうか?

おじさんは「債権市場の買い支え」と「金相場の破壊」と考えるぞ。

実はJPモルガンは金相場操縦の疑いを持たれている。債権や株式、ドルの信用が低下するほどに安全資産の金(ゴールド)は上がっていくはずで、この一年で金は大きく値を上げた。

ところが、2008年のリーマンショックでは金(ゴールド)は下がっており、金先物市場などでレバレッジをかけた金の大量売りが仕掛けられた可能性がある。

JPモルガンは、リーマンショック時と同じように金相場の暴落を画策しているのではなかろうか。

ゼロ金利が続くなかでドルや債権、株式にはうま味が少なくなったが、ここで金(ゴールド)に資金が集中すると債権や株式市場の暴落を招く。

先日、ウィーワークの上場中止報道がされたが、実はそれ以外にも上場中止が相次いでおり株式市場はかなり弱気モードだ。債権市場も同じだろう。

安全と言われる日本国債も、日銀が引き受ける前提でなければ売れなくなりつつある。

さらにCLOという時限爆弾を抱え、債券市場の崩壊に端を発した金融危機がいつ起きてもおかしくない状態だ。

そんな中で、金(ゴールド)に走られてはひとたまりもない。

だが、逆に言えばゴールドの備えが必要ともとれるな。うん。


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