原発事故

Fukushima50の原作「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を読んで考える日本の原発

原発事故

まずは、死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発という書籍を紹介したい。

3.11の大地震により福島第一原子力発電所の全電源喪失という状況下において、発電所に留まり命をかけて対応した約50名の作業員「フクシマ50」の闘いを門田隆将氏が詳細な取材に基づいて書いたノンフィクション小説だ。

ちょうど「Fukushima50」として映画化されたところなので、知っている人も多いかな。

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 (門田隆将 著)

本書は地震による津波で壊滅的な被害を受けた直後の福島第一原発で、故郷である東北の地と日本を思い、命を懸けて対応に当たった現場の状況を描いたドキュメンタリーだ。

福島第一原発は、チェルノブイリの10倍に上る原子力燃料を持っており、制御不能となった場合にはチェルノブイリの10倍規模の事故となり、東北地方だけでなく日本が人の住めない地になってしまう。

全てを理解しながら、命をかけて現場に留まり対応に当たった吉田所長以下、50数名の東電職員や自衛隊・協力会社の活躍が描かれている。

著者である門田氏の綿密な取材と事実の積み重ねにより、ニュース映像では分からない、現場で実際に何が起こりどう対応したか。事故の極限の中で起こった闘いが、臨場感あるタッチで描かれておりその迫力に圧倒される。

吉田所長や現場の東電社員、協力会社の方々、そして自衛隊の獅子奮迅の活躍がなければ、日本は壊滅していただろう。彼らに対しては、心からお礼を申し上げたい。

彼らの活躍がなければ、2000年ごろにアメリカのネット掲示板に現れた自称未来人のジョン・タイターが言った日本の姿そのものになっていただろう。

・北海道と青森、秋田の一部は「蝦夷共和国」

・それ以外の東北地方と関東、新潟の東側は「政府管理区域・立ち入り禁止」

・それ以外の地域(東海・北陸・西日本)は、岡京=岡山を新首都とする「新大和皇国」

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本書では、当時の菅直人首相の無駄な動きもリアルに描写されている。

事故発生から不眠不休で対応に当たり、命を懸けて最後まで原発を守り抜く覚悟を決めた東電の現場社員たち。

そんな彼らに対して菅直人は「命がけでやれ」「何が起こるか先手を打って考えろ」など怒りにまかせた激を飛ばす。

命がけでやる覚悟を決めた者に、怒りにまかせて言い放つ言葉ではない。

彼は国のトップという立場にいたが、現場社員が命を懸けるにふさわしい指導者だっただろうか。彼が言うべきは「自分が先陣切って命を懸けるからついてきてくれ」くらいなもんだろう。トップが先陣切るかどうかは別として。

いずれにせよ、命を懸ける覚悟を決めた現場の人間を前に、モチベーションを向上させることは無かった。それどころか、刻一刻と状況が変わり1分1秒を争う中で突如現場に現れ無用な混乱を招くという最悪の結果を残した。

いずれにせよ、官邸や東電本社の迷走に付き合わず、海水注入を継続した現場社員・自衛隊の活躍により、日本は地図のように3分割されずに済んだのは事実だ。

このような現場の命がけの活躍で日本は崩壊に至らずなかったが、福島原発事故について、朝日新聞の記事を思い出さずにはいられない。本書でも最後に触れられている。

朝日新聞は、政府の事故調査委員会が行った吉田所長への聴取内容をまとめた「吉田調書」を入手したとして「福島第一原発にいた社員の9割が所長命令に違反して撤退」というする記事を出した。吉田所長が亡くなって1年も経過しないタイミングだった。

記事が誤りではないか、とする声は常にあった。

そして、政府が吉田調書を公開するとした途端に、朝日新聞は誤報を認めて記事を撤回した。さらに当時の木村社長が辞任し記事を執筆した編集部も更迭された。

朝日新聞は「誤っていた」としているが、誤報ではなく捏造だろう。現場の東電社員が無責任にも逃げたという印象を植え付けることで、原発反対世論を形成しようとしたのか。

まあ、海外メディアは、彼らの活躍を「フクシマ・フィフティ」と賞賛したようだが。

朝日新聞では、社長個人の責任として済ませ、社会的責任は無視して逃亡したが、スジから言えば、捏造報道と同じ程度の熱心さで謝罪と訂正、検証報道をすべきと思う。

そもそも、ここまで捏造する「報道機関」が存在してもいいものか。

大きな責任感を持ち、国と郷土を守るために命を懸けた現場の人間を愚弄する売国奴といっても差しつかえないだろう。そういえば、慰安婦報道も捏造だったな。剣よりも強いペンの力を持て余し気味のようだ。

一方で、この原発事故を単なる英雄譚で終わらせてはいけないのも事実だ。それはそれで原発推進プロパガンダとなるだろうしな。

少なくとも、原発の存在については一人ひとりが考える必要がある。

そもそも原発とは、世界的に大きな利権構造の中にあるものだ。日本の利権の亡者たち(東電・官僚・一部政治家)はその奴隷だ。

原発事故の直後、世界原発利権の頂点にいるアメリカとフランスが相次いで来日した。

日本の原発利権の亡者たちは、相当に釘を刺されたようで、現場が命懸けで原発を守っていたのと並行して、亡者たちも原発「利権」を守る努力を重ねてきたようだ。

この努力は地震発生当時からあったようだ。

例えば地震の強さだ。

あの地震はマグニチュード9だが、当初発表は8.4だった。

最初の8.4という数字は、普通に日本では気象庁が独自に算出した「気象庁マグニチュード」を用いるのでその数字だ。一方でマグニチュード9は「モーメントマグニチュード」だ。

もっとも、大地震の場合は気象庁マグニチュードが小さめの値になるため、国際的にもモーメントマグニチュードを使うことが多い。とされている。

だが、結果的に設計を超える強さの地震となったことで、原発利権に群がる東電と政治家、原発を作ったGEが、一定の責任を逃れることが出来た。

しかも、日本では原発がなくても電力不足にならないことが明らかになっている。

当初、電力が足りないと言っていたのは、東電の儲け至上主義のせいだった。東電では、真冬と真夏のピーク時は火力発電所を稼働していたが、それ以外は休止して、その分を東北電力から安く買っていた。

だが、東北電力の発電所も地震の被害を受けており、東北電力から電気を買えなかった。火力発電所を再稼働すれば計画停電を避けられるはずだったが、コスト面から火力発電所は再稼働されなかった。

ということで、原発無しでも十分電力需要にこたえられる。

しかしながら、民主党政権下ではグダグダだったが「全原発再稼働しない」方針だったが、今では再稼働の方向に向いている。

そもそもなぜ、日本には不要な原発が原発がたくさんあるのだろうか。

日本の原発政策を振り返ってみると、1970年代に原発が急増している。これは、アメリカへの従属を望む官僚・一部政治家たちがアメリカへの「富の献上政策」として始めたことによるものだ。

もともと日本の原発は1950年代から作られ始めたが、当時は核兵器の原料となるプルトニウム生成を目的としていたので、プルトニウム(使用済み核燃料)はアメリカに送られていた。また、燃料のウラン濃縮だが、これは核兵器の製造工程とほぼ同じなので、アメリカで濃縮されていた。

その後、対米自立を求められる中で(沖縄返還・米中国交正常化など)、日本は国内でウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理ができるようになった。

だが、今でも大半(7割)はアメリカでウラン濃縮することが電力会社に義務づけられている。アメリカ様への忖度が伺える。

こうした対米自立を暗に求められる中で、肝心のアメリカは1979年スリーマイル島原発事故が発生した。

このため、アメリカでは原発を作ることが出来なくなった。アメリカの原発企業様が儲からなくなってしまう!ということで、軍産・国際金融資本勢力の配下のGEなどが日本で原発を建設できるように、率先して日本国内で原発建設を推進したのだ。

こうして、日本にはGEなどが原発を大量建設し、建設代金として日本の富が献上された。

そうした中で、国内に原発利権構造が生み出されたが、それは世界原発利権構造の末端というワケだ。

これが、日本に原発がたくさんあって、そして福島第一原発事故でアメリカやフランスが日本に怒鳴り込んできた理由だ。

地球温暖化説の流布などしても、原発は世界中でいらない子になりつつある。世界的に核燃料ゴミ(劣化ウラン、プルトニウム)の行き場がなくなっているからだ。

プルトニウムを燃やす高速増殖炉は事故や不具合が相次いで頓挫し、プルトニウムを混ぜた燃料を普通の原子炉で使うプルサーマルも失敗続きだ。

東芝がウェスチングハウスの買収により会社が傾いたことを覚えているだろうか。

これは、アメリカはじめ原発利権のトップが原発事業の失敗を認め、日本企業に損失を押し付けたということだ。いや、軍産・国際金融資本勢力への従属一辺倒の官僚が進んで引き受けたということか。

とは言え、押し付けられたのはウエスチングハウスの中でも価値の低い原発メンテナンス部門だけだ。

官僚・一部政治家たちは、核燃料サイクルの確立が出来ず使用済み核燃料(劣化ウラン、プルトニウム)が積みあがっていくだけの原発を、今後どうするつもりなのだろうか。

一つの解決策として、第4世代の原発を作ることもあるだろう。

第3世代(軽水炉)はウラン濃縮やプルトニウム生成を伴う単なる核兵器製造工場だが、第4世代は劣化ウランやプルトニウムを燃料とす超高温ガス炉、トリウム溶融塩炉や高速炉などがある。

使用済み核燃料を持て余している日本には向いていると思うが、軍産・国際金融資本勢力への従属を絶対視する官僚・一部政治家はもう興味ないだろうな。

話が大きくそれてしまった。

福島第一原発で事故対応に当たった現場の社員の皆様には心から敬意とお礼を申し上げたい。

だが、軍産・国際金融資本勢力に日本の富を献上するために、原発を推進してきた官僚・一部政治家たちを許すことは出来ない。

福島第一原発は、世界最悪の事故レベル7の状態が10年以上継続する。故郷を失った人もいる。日本人は莫大な富を失ったのだ。

そんなことを考えさせられた一冊だった。


最後まで読んでくれてありがとう!