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苫米地英人著「日本人だけが知らない戦争論」 戦争の影にいる国際金融資本家について知りたい人にオススメの書籍

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本書「日本人だけが知らない戦争論」では、世界の99%の富を握るわずか1%の人たちとも言われる「国際金融資本勢力」が世界史の中でどう動いてきたのかを解説している。

近代史において重要な「金融・経済」の背景として、欧米の銀行家・資本家たちが戦争・陰謀により世界を「金融統治」するに至った経緯が分かりやすくまとまっており、「国際金融資本により作られた歴史」が紐解かれていく。

なので、本書のテーマは「戦争論」というよりは、歴史の影には国際金融資本家(ロスチャイルド家など)が暗躍しているという「金融資本家による陰謀論」だ。

要点が分かりやすくまとまっており、世界史をあまり知らない人でも非常に理解しやすい。

その反面事実について端折っている部分もあるが、本書で重要なのは「表面的な歴史の事実」ではなく「事実の背後で国際金融資本家たちが何を企みどう動いたか」なので、歴史大好きな人が「ちょっと違うぞ」と思うのはご愛嬌だ。

ともあれ、本書のテーマである「国際金融資本が世界を支配している」という歴史観は、「陰謀論」として議論そのものがタブー視(公に主張するとバカにされる)されているため、アカデミックな観点から研究されたことはほとんど無いだろう。

このため、本書でも主役であるはずの「国際金融資本」の説明がやや曖昧なほか、解説されている内容についても具体的証拠に欠けるのは残念なところ。まあ、苫米地英人氏の鋭い洞察には納得してしまうんだがな。

しかしながら、「陰謀論」のレッテル貼りや、マスコミなどによる「闇の権力による世界支配」という煽りによって、「国際金融資本による通貨発行権支配」という問題の本質は隠ぺいされ、誰の目にも本質が分からなくなるような情報操作がされているように見える。

こうした状況を前提に、本書では、義務教育で習う歴史・マスコミが報道する歴史に対し、国際金融資本の視点から歴史解説がスタートする。

さて、議会制民主主義と言えば、人々が国王(皇帝)による専制君主政治から自らの権利を守るべく、革命・戦争等の流血を経て勝ち取った素晴らしき制度・・という前提があるが、本書ではこの概念・歴史観がいきなり覆される。

曰く、この「議会制民主主義」獲得の歴史は、欧米の銀行家が「中央銀行の創設する」ために仕組んだものだった。王様による支配から、一見自由だが国際金融資本によって経済面から支配を受ける時代へと変わったということだな。

スタートは、1640年のイングランド革命からだ。これは、世界で初めて国王の専制支配から民主主義へと移行した、ピューリタン革命や名誉革命を含む一連の革命だ。

さて、この革命についての特徴は以下のものだ。

  • 序盤のイングランド内戦を主導したオリバー・クロムウェルが組織した「ニューモデル軍」という身分を問わない(当時としては)革命的な編成の軍隊
  • クロムウェルの動きに呼応してロンドンを荒らし回った得体の知れない民兵集団(最終的には3万人もの規模)
  • 名誉革命から5年後に設立された「私企業」としてのイングランド銀行(中央銀行)

このイングランド革命とソックリな経緯で起こった革命・内戦として、フランス革命と明治維新が挙げられている。高杉晋作の騎兵隊や、脱藩浪士による京都の治安悪化、そして戊辰戦争後の日本銀行の設立など同じ経緯だ。

さらに、幕府側についたフランス(の中央銀行)と、倒幕(薩長)側についてイギリス(の中央銀行)。どちらの中央銀行も株主は同じ。どっちが勝っても負けても儲かる仕組みになっていた。

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こうして、中央銀行が作られたワケだが、中央銀行は国営銀行ではない。私企業だ。この中央銀行が出来た国では、政府が通貨を発行することは無い。

通貨は、政府が中央銀行に対して国債(借金)を渡し、その代わりに通貨が発行される。国債には利息が付くので、通貨がたくさん発行されればされるほど中央銀行には利息が入る。

この利息というのが、国民が働いて貯めた国の富なのだが、それは中央銀行の大株主(国際金融資本家)の皆さんに吸い取られる仕組みになっている。

リーマンショック以降のFRBや日銀が行っているQEの規模を考えると、国際金融資本は笑いが止まらないだろうな。昨今はコロナ対策でQEは急増してるしな。

話はそれたかま、国際金融資本の狡猾さが説明されているのが、アメリカ独立戦争だ。

表面的には、イギリスが戦費調達のため植民地に重税をかけることとなったが、代表者を議会に送り込んでない植民地が何で課税されるねん、ということで揉めたのが発端だ。ボストン茶会事件などを経てなし崩し的に戦争となった。

結果的にイギリスが負けてアメリカは独立するんだが、国際金融資本にとって、アメリカ独立戦争は全然残念なことでは無かった。

戦費調達に当たり、中央銀行は国債を大量に引き受けて通貨を発行するので、とても儲かる。さらに、カネのない植民地が本国と独立戦争なんて出来るわけもなく、アメリカに資金提供したもの国際金融資本だ。独立後、たっぷり返済されることになった。

おまけに、この独立戦争にはフランスもアメリカ側に立って参戦しており、この戦費負担が国家財政を傾けてフランス革命(フランス中央銀行の設立)に繋がっていくことになる。

ともかく、アメリカ独立戦争・南北戦争とは、国際金融資本がアメリカ政府から通貨発行権を奪うために起こされたものだったのだ。

さらに、二度の世界大戦。

第一次世界大戦については大規模な戦争に発展した経緯が謎としつつも、開戦前年に設立されたFRBの「通貨発行権」を行使するためであり、そして引き続く第二次世界大戦はドルによる一極支配の通貨制度を導入するためとしている。

このように、17世紀のイングランド革命以降、世界各国(日本含む)で起こった革命・戦争は、国際金融資本が通貨発行権の掌握や戦争利権の獲得であり、この観点から「世界統一中央銀行の創設」を目指して今後も戦争は続く・・というのが本書の概要だ。

誰が、何の目的で戦争を起こすのか・・・。

本書では、戦争・革命は国際金融資本が「経済支配を進める(通貨発行権獲得・行使)ため」として書かれているが、その観点から見ると、政治・軍・企業・経済・宗教などは国際金融資本が作ったシナリオを演じる演者に過ぎないことが分かる。

世の中を動かしている仕組みがこれなら・・何とも非道。軍人・民間人合わせて戦争の犠牲となった人は数え切れない。この重みを国際金融資本家たちは、どれだけ認識しているのか。

ちなみに、苫米地英人氏は国際金融資本に関する書籍を何冊か出しているので、いくつか紹介しておきたい。

まずは、過去のブログでも紹介したことがあるが「明治維新という名の洗脳」だ。

明治維新の裏に見える国際金融資本の影について解説している。

次に「日本人の99%が知らない戦後洗脳史 嘘で塗固められたレジーム」だ。

国連に関する事実や、アメリカの戦後支援やM資金、財閥解体などの裏に透けて見える国際金融資本の影について、独自の鋭い考察がされている。

また、「電通 洗脳広告代理店」も面白い。

国際金融資本の駒の一つ。「メディア」について、電通を題材に鋭く洞察している。

本書を含め、これら書籍の内容が全て真実かは分からない。しかし、今後の世界を考える上でこの視点は不可欠なんじゃないかと思う。


最後まで読んでくれてありがとう!