今回はAmazonのKindle本としても発売されている「奇跡のリンゴ」という本の紹介だ。
本書は著者の木村秋則氏が、家族と窮乏に陥り、死を覚悟するほどにまで追い詰められながら、不可能と言われたりんごの無農薬栽培を達成した話だ。
本書では大切なことが二つある。
一つは木村氏がりんごの無農薬栽培を成し遂げた過程で知った「農業と自然との関わり方」だ。
二つ目は、今を生きる我々にとって「仕事」とは何なのかということだ。
一つ目の農業と自然との関わり方について、無農薬りんごの栽培を目指す過程で、著者の木村秋則氏が知った自然の真理が余すことなく書かれている。
その真理は、この地球上で大地から糧を得て生きている我々みんなが知っておくべきことだと思う。
木村氏が苦しみの末に悟った「無農薬栽培」というのは、農薬を使わないことはもちろんだが、農薬の代わりになる何かを使うことではない。
田畑を極力自然の状態に近づけて、植物の本来持っているポテンシャルを引き出す方法を見つけ出すというのが、木村氏の言う無農薬栽培だ。
自然の山にあるフカフカの腐葉土、独特のツンとしたニオイ、これらを自分の畑で再現することが無農薬栽培だと気がついた。
敢えて荒く耕し肥料もあまり与えず、作物が根を広げる工夫などがそれだ。
木村氏は「何もしないのが一番合理的」という考えに至った訳だが、うまくいかない状況にあって今までやっていた何かをやめる決断をすることはとても難しかっただろう。
死を決意するまで追い詰められた氏だからこそたどり着いた境地と思う。
本書はライターさんの趣味なのだろうか、リンゴの木に話しかけたり、リンゴの木の手助けをする等「考えるな、感じるんだ」というスピリチュアルな印象が強い。
古来より日本の農業は自然への畏怖を持ちながらしぜんと向き合ってきたものであり、スピリチュアル全てダメと言うつもりはもちろん無い。
ただ、本書が世に出た意義は、木村氏の自然に対する概念とそれに基づく栽培方法が体系化され、無農薬自然栽培の取り組みが広く普及することではないだろうか。
それによって、農薬が必須となっている今の農業の考え方や食の安全に対する考え方は大きく変わるだろう。
また、おじさん自身このことがとても大切と思う理由がある。
モンサント(現バイエル)などの国際アグリメジャーの動向だ。
彼らは、遺伝子組み換え作物と農薬をセットで販売している。
植物を枯らす農薬(ラウンドアップ)と、その農薬への耐性を持つ遺伝子組み換え作物(ラウンドアップ・レディ)をセットで日本に売り込みたいと考えている。
日本では原料に使用した場合も含め遺伝子組み換え作物の表示義務があり、遺伝子組み換え作物を好む人が少ないため売れない。
だが、国際アグリメジャーはその表示を無くしてやろうと虎視眈々と狙っている。
数年前に話題になったTPPでは関税以外にも「非関税障壁の撤廃」が話題となった。
要は多国籍な大企業が不利になるようなルール・法令は変えさせることが出来るというものだ。
この中では、科学的に健康被害が証明されていない遺伝子組み換え作物をわざわざ表示することが、不要・不当な差別とされてしまうのだ。
なお、現代の科学では遺伝子組み換え作物の健康被害の証明は不可能に近いのだが、遺伝子組み換え作物を扱う農場近郊では、特に子どもの健康レベルに有意な差が出ていると言う話も聞く。
食の安全が脅かされている中、こうした動きから国内の農業を守るためにも、木村氏のような考え方は今後ますます重要性を増すだろう。
安全な食べ物を作る上で何が大切なのかをみんなで考えることが出来る、そういう世界を作っていきたいものだな!
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本書のメッセージ二つ目の「仕事」とは何なのかだ。
農薬過敏症を患う家族を思い始めた無農薬リンゴの農法を生み出すプロセスが描かれている。
農薬無しでは育たないリンゴが、自らの力で育つことができるよう自然の環境を再現する、という結論にたどり着く過程は壮絶で、木村氏の言葉では「バカにならなけば到達できるものではなかった。」
おそらく木村氏が歩んだ自然栽培への道はは想像以上に過酷であり、本人は本書の内容以上に辛い時期を過ごしてきたのだろう。
一時は死を決意するまで追い詰められながら、最後に無のりんごにたどり着いたのはひとえにそれが「やりたいことだった」ことが大きいだろう。
日本におけるコーチングの第一人者たる苫米地英人氏が言っている、生活費のための仕事というのはあくまでファイナンス活動であって「仕事」ではない。
自分が本当にやりたいことで、社会に何らかの価値を提供できることが「仕事」だという言葉のまさに実例と言えよう。現実にできるかは別だが。
まあ、色々書いたがとにかく読んでみることをお勧めする!途中で読むのをやめらないほどに面白かった。
いつか木村氏りんごを食べてみたいと思うぞ!
あと一点、農薬は農業の発展に大きな役割を果たしており、季節問わず様々な野菜が流通しているのは、農薬もその一翼を担っているのは間違いないところだ。
また、無農薬栽培は誰しも手を出せる段階にはないだろう。安易に農薬を悪者と決めつけないようにな!現状の最適解はまだ農薬が必要だ。
あと、UFOのくだり気になる。人類が滅びるのはいつなんだ!
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最後まで読んでくれてありがとう!