怒濤のブラックマンデー展開がキタ!
新型コロナ感染拡大の影響は、ついに金融市場へと波及した。
9日のニューヨーク市場は市場最大の下げ幅となった。以下はロイターから。
ダウ2013ドル安、下げ幅過去最大 原油急落・新型肺炎懸念で
[9日 ロイター] – 米国株式市場は急落。原油相場の大幅な値下がりや新型コロナウイルス感染拡大を巡る懸念からリセッション(景気後退)懸念が台頭し、パニック売りに見舞われた。ダウ平均株価.DJIは2000ドル超急落し、過去最大の下げ幅を記録した。
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9日の原油先物相場は激しい売りに見舞われ、下げ幅は一時30%を超え1991年の湾岸戦争以降で最大を記録した。石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟産油国を加えた「OPECプラス」の協調減産体制が崩壊する中、サウジアラビアとロシアによる石油価格戦争の勃発で原油安ショックが広がった。
関係筋によると、サウジは原油生産量を過去数カ月の日量970万バレルから同1000万バレル超に引き上げる方針。こうした中、ロシアも生産量を引き上げる可能性があり、6ー10年は原油安に耐え得ると表明した。
業種別ではエネルギー株や金融株の下げが目立った。個別銘柄ではアップル(AAPL.O)が7.9%安。中国でのiPhone出荷台数が2月は50万台を下回ったことが、中国信息通信研究院(CAICT)のデータから9日明らかになった。アップルは同月、新型ウイルス感染拡大を受け、中国本土にある店舗とオフィスを少なくとも2週間閉鎖した。
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3月9日のニューヨーク市場では、30年以上前に作ったサーキットブレーカーがようやく発動か・・・何か凄いことになってるな。
武漢市で最初の肺炎患者が報告されたのが12月8日で、日本で最初の感染者は1月16日に確認された。そこからわずか2ヶ月足らずで世界恐慌なみの混乱とは・・・さすがに早すぎるわ。
人間の奢りや傲慢に対する単なるしっぺ返しなのか、現行の金融資本主義の終わりの始まりなのか。両方かな。
今回の下落は、新型コロナによる景気後退か原油価格の大幅下落か、どちらが原因かよく分からないが、両方とも実体経済と金融市場の両方を破壊するパワーを秘めている。
新型コロナによる実体経済からの金融市場破壊についてはブログで書いたので、今日は原油価格の下落が金融市場に及ぼす影響について書いてみる。
原油価格については以下のニュースを見てほしい。ロイターからだ。
サウジ、4月に日量1000万バレル超に増産へ 協調減産崩壊で
[ドバイ 8日 ロイター] – 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の協調減産合意が崩壊したことを受け、サウジアラビアは4月の生産量を日量1000万バレルを大幅に上回る水準に引き上げる計画だ。関係筋がロイターに明らかにした。
OPECプラスの現行の減産合意が期限切れとなる3月末以降、サウジの国営石油会社サウジアラムコ2222.SEが増産に踏み切るという。
OPECプラスが6日に開いた閣僚会議では、OPECによる追加減産と減産延長に関する提案をロシアが拒否。3月末以降はOPEC加盟国、非加盟国ともに自由に産油量を決定するかたちとなり、ロシアとサウジが主導した3年にわたるOPECプラスの協調体制は終わりを迎える。
これを受けて市場では、サウジが価格下支えから市場シェア重視の戦略に転換するとの見方が広がり、原油価格は約10%急落した。
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OPEC関係筋によると、サウジはロシアの合意順守状況が不十分なことに不満を募らせていたという。
関係筋の1人は「サウジはどの国とも敵対していないが、自国の利益を追求する。(現行の)合意が期限を迎えた後は、誰もが増産するだろう」と述べた。
イラクやクウェート、アラブ首長国連邦(UAE)など他のOPEC加盟国も、サウジに追随して4月の販売価格を大幅に引き下げる可能性が高い。
原油価格の低下は、新型コロナにより工場閉鎖や航空便の減少など需要低下によるものとされており、マネーゲームの結果ではないようだ。
ただ、実需低下に伴い原油価格は低迷が続いており、金持ち産油国でも安値が続くと厳しいので、サウジアラビアがOPEC+で産油量減産の談合をしようとしたということだ。
それをロシアが反対してご破算になった。
サウジアラビアは自主的に価格を下げて増産し市場シェアを重視する「薄利多売戦略」へと舵を切ったというわけか。
そのおかげで、原油価格は一夜にして30%も下落することとなった。
だが、原油需要の減退は新型コロナだけのせいでもないようだ。少し前のものだが、以下のニュースを見てほしい。日経新聞からだ。
日本製鉄は7日、2020年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が4400億円の赤字(前期は2511億円の黒字)になる見通しだと発表した。従来予想は400億円の黒字だったが、一転過去最大の赤字となる。高炉の休止を決めた呉製鉄所(広島県呉市)は、23年9月末をメドに事実上閉鎖することを正式発表した。一連の生産設備の集約に伴い、減損損失を計上する。
記者会見した宮本勝弘副社長は「大規模な減損損失の計上は誠に遺憾だ。経営体制をスリム化して早期に収益の回復を図りたい」と話した。
売上高にあたる売上収益は前期比4%減の5兆9000億円。従来予想から2000億円下方修正した。国内外の鋼材需要の低迷や、台風や生産トラブルによる減産が響く。本業のもうけを示す事業損益は3100億円の赤字(前期は3369億円の黒字)となる見通し。未定としていた期末配当は無配にする。
同日発表した19年4~12月期の連結決算は、売上収益が前年同期比2%減の4兆4760億円、最終損益が3573億円の赤字(前年同期は2066億円の黒字)だった。
鉄鋼は実需面の景気を表すごまかせない指標だ。新日鉄の工場整理などによる大幅赤字は、かなり前から鉄鋼需要が減退していたことを示している。
現在の市場の混乱は、かなり前から実体経済は悪化していたところに、原油の薄利多売&新型コロナでトドメをというのが本当のところのような気がする。
うーん、とすると・・・ホントは低調だった実体経済と好調だった株価との整合が取れない。これが中銀による株価操作が行われていた証拠か!
ところで、サーキットブレーカー発動となったニューヨーク市場では、原油価格の低下を受けて特にエネルギー関連株と金融株が下げた。
エクソンモービルとか石油メジャーは原油がいっぱい使われた方がいいだろうから、下げるのは分かる。分かるが・・・金融株とな!?
ここで一つ思い出して欲しい。
アメリカのシェール業界だ。以前にもブログで書いたことがあるので参考にして欲しい。
【革命防衛隊幹部殺害】アメリカの目的はイランへの覇権委譲のためのシェール維持か
原油価格の大幅下落により資金的に脆弱なシェール企業の信用不安が頭をよぎったことが、株価下落の一因になったのではないか。
シェールの油井は産油量が数年で減少するため、シェール生産のためには次々に新たな油井建設が必要だ。シェール業界は常に設備投資が必要で、銀行融資や社債により資金調達が低コストで出来る超低金利下でのみ成り立つ業界なのだ。
当然、採掘コストは高く一説には70ドルが採算ラインと言う。昨日の一撃で原油価格は30ドル台前半まで下落した。しかも中東各国は増産・低価格化を決めており、リバっても40ドルに届くかどうか…。
さらに、シェール業界は財務体質の弱い中小企業が多く、設備投資による莫大な債務と生産量の伸びの鈍化を抱えている。この原油価格低迷が続けば、資金ショートによる倒産が続発する。
融資返済が滞り、アメリカの金融機関に与える影響は大きい。だが、おじさんは社債の方が問題が大きいと見ている。
シェール企業社債の破綻が多発することになるが、昨日紹介したロサンゼルスタイムズで指摘されていたように、社債金利が上昇(=社債の信用が無くなる状態)している。QEによりバブル状態になっている債券市場のバブル崩壊の引き金を引くことが十分に想定される。
もちろん、FRBがQEを再開して社債を買い支えるだろう。そうなったら本格的にシェール社債市場がヤバイ合図だと思えばよい。
さて、こう見て見るとロシアが協調減産を拒否した狙いが見えてくる。
実はロシアの財政は健全で日米のような借金が全くないばかりか、約1500億ドル超の外貨準備を蓄えているため、原油価格が低迷しても当面問題ない。
となると、アメリカ弱体化を目的としてシェール業界を潰す狙いがあるのではないかと勘繰りたくなる。
また、談合を主張していたサウジアラビアの事情だが、もともとサウジアラビアは、アメリカの石油戦略の中核を成す国家だった。ところがシェール台頭によってその地位は転落した。
イエメンとの紛争に際してはドローンにより自国の油田が攻撃されるなど、アメリカは本気でサウジを守る気などさらさら無いのが明らかになってしまった。
加えて、新型コロナによる需要減少も確実な中で、協調減産しても価格は下がり続ける可能性が高く、それならいっそのことロシアと決裂したフリをしてシェール業界を潰してやろうと考えても不思議はない。
その目論見は大当たりし「石油価格の大幅下落」を成し遂げた。加えて折からの社債金利の上昇による、資金調達コスト上昇という状況だ。
なお、ロシアが弱体化を狙ったアメリカとは、いわゆる軍産・国際金融資本勢力のことで間違いないだろう。おそらく本丸は、シェール社債の連鎖破綻を引き金をしたアメリカ債券市場の崩壊と見る。
ちなみに、アメリカ金融市場の崩壊により日銀も危なくなるかもしれない。日経平均下落により日銀バランスシートも債務超過になる恐れが…。
保有するETFの損益分岐点は日経平均19,500円辺りのようだ。この辺りで日銀の積極的買い入れが行われる。
日銀は、株価テコ入れのために30兆円ものETFを保有している。これらが日銀のバランスシートに重くのしかかる日が来るのか。いよいよ、日銀そのものの信認に疑問符が付くかもしれない。そうなれば、日本円の信認も揺らぐ。
しかしその前に株式市場版の日銀砲やGPIF砲が炸裂するかも分からんね。今日の東京市場も、まさかの全モだったからな。まあ、最後は全部溶けるだろうから年金の将来は暗いかも…。
最後まで読んでくれてありがとう!