イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害事件について、昨日の記事でアメリカの目的を考えてみたところだ。
だが、本日の相場からアメリカの目的が少し見えてきたので改めてまとめてみたぞ!
【第三次世界大戦】アメリカはイランと戦争するのか?アメリカの目的とは!?
さて、年明け一発目の本日の相場だが、株式市場はイラン革命防衛隊スレイマニ司令官の殺害事件を受けて案の定の暴落スタートとなった。
国債は買いが入って利回りは低下気味だ。こちらも、事件を踏まえると当然とも言える動きだろう。
一方、為替は思い切り円高にふれるかと思いきや円は静かだった。年末年始に思い切り円高に触れたのは薄商いの中で誰か勝負かけたかと思っていたが、この事件を織り込んでいたのかと疑いたくなるほどだ。
ドルストレート(ポンドル・ユロドル)は上がっているのでドル安傾向とは言えるかも。ただ、ボラティリティは小さく通常の値動きの範囲と言った程度か。
そして、金(ゴールド)や原油は爆上げの展開だ。
原油については、事件を受けてアメリカとイランの関係が急速に悪化するなど、中東の情勢不安による石油需給がタイトになることを懸念してのものと言えるので、ある意味では予想どおりと言えるだろう。
だが金は思った以上に上がっているという印象だ。クリスマス前後から上げてきていたが、事件のニュースを受けて一段と上げの勢いが強くなった。
2000年頃は1オンス250ドル程度だったが、リーマンショックを機に1,000ドルを超えた。半年前には節目の1,350ドルを超え今日は1,750ドルだ。
リーマンショック以降上がってきた金価格だが、一昨年までは1,350ドルを越えた辺りで売りこまれるのが常だった。
リーマンショック以降に金融崩壊懸念が強まるなかで、国際金融資本勢力が「何の裏付けもない紙切れ通貨ドル」の基軸通貨性を維持するため、古来よりリアルに価値のある金(ゴールド)の価値を貶めるため価格を押さえていた。
ところが、中国やロシアが金の保有量を増やし金価格を左右する力をつけてくるにつれ、徐々に抑えが効かなくなってきているのだろう。
さらに今日は仮想通貨(ビットコインやイーサリアム等)も上げており株式市場と逆相関な状況だ。今後も逆相関が続くようなら、金(ゴールド)と同様に金融崩壊に備えた選択肢の一つとなる可能性がある。あくまで可能性だが。
こうした状況からも、債権や株式市場のバブル維持がどんどん困難となってきている状況が見てとれる。
さて、こうして見るとイラン革命防衛隊のスレイマニ司令官殺害事件によって債権市場には買いが入って金利は低下し、また、原油価格も上がった。
もちろん一時的なものだろうが、アメリカとイランの間で緊張が続く間はこの傾向は変わらないだろう。
そして、この状況を一番歓迎しているのは実はアメリカのシェール業界だ。
シェールオイル掘り出す油井は、採掘を始めて数年程度で産油量が大きく減少する特徴がある。通常の石油油田の油性の場合、20年程度は産油量が変わらないことを考えるとシェールオイルの油性はずいぶんと短命だ。
このため、シェールオイルを安定して大量に産出するには、次々に新たな油田を採掘することが必要となってっくる。
油田を継続的に採掘するには常に巨額の設備投資が必要であるため、シェール事業者は資金調達を繰り返している。当然、採掘コストも高い。
従って「シェール革命()」を維持するためには、ゼロ金利・低金利が維持され資金調達が容易であることと、シェールの高い採掘コストに見合うよう原油価格が高値安定している状態が必要不可欠だ。
しかしながら、金融市場のバブルとは裏腹に実体経済は世界的にリセッションに入りつつあるため、今後は原油の需要低迷に伴い価格の下落が予想されるほか、金利もじわりじわりと上がってきている。
現状のままだと、早晩シェール業界は資金ショートする運命にある。
こう考えると、アメリカが一昨年辺りからイラン敵視を急速に進め、世界各国がイランから原油を輸入できなくなったことは、原油価格を維持するための策と見ることが出来る。
一連のイラン敵視策の極めつけが、革命防衛隊幹部のソレイマニ司令官殺害だ。
では、トランプ大統領は何故ここまでシェール業界に肩入れするのか。
これまでにも書いてきたが、トランプ大統領はアメリカ一国が世界の覇権を握っている現状から、複数の国家による多極型覇権の世界とするため中東覇権の委譲を進めており、中東北部についてはロシアやイランへの覇権委譲が済んだ。
そして、残る中東南部の覇権委譲を進めるに当たり、覇権委譲に反対するアメリカ国内の国際金融資本勢力をダマらせるため「アメリカにはシェールがあるから中東はもう不要論」を展開する必要があるんじゃないだろうか。
特に中東南部は石油王サウジアラビアがいる。ここの覇権を手放すとすれば、アメリカ国内からも相当な抵抗が予想される。
つまり、イラン革命防衛隊ソレイマニ司令官殺害事件とは、覇権移譲のため一時的にシェール業界を守るために原油価格維持と戦争懸念のリスクオフによる債権買い誘発(ゼロ金利・低金利を維持)するためと考えられる。
また、中東諸国では政権が親米であっても国民は反米が多い。
そうしたなかで今回の事件はイランの中東反米盟主の地位向上にも繋がるだろう。イランとアメリカの全面戦争に至らなくても、イランは中東覇権を手に入れることになる。シリアと同様に、ロシアや中国と共同で覇権運営となることだろう。
なお、アメリカが中東の覇権を手放してもシェールはしばらくは続くだろう。だが、今の異常な金融バブル崩壊とともに終わるはずだ。
最後まで読んでくれてありがとう!