日本発の金融危機

コンテナ船物流混乱はますます酷くなり金融緩和が終わる

日本発の金融危機

これまでにも何度か紹介してきたコンテナ船物流混乱が深刻化している様子が、改めてブルームバーグから報じられた。

アメリカ西海岸で入港待ちのコンテナ船が増えており、入港待ち時間の平均は16.9日で2ヶ月前の2倍になっているとか。

WHO「コロナはまだまだ終わらない」 迫りくるのはインフレリスク!?」等で紹介しているが、昨年秋頃から深刻化しているコンテナ船の滞留問題は、改善されるどころかむしろ悪化している。

長期化する世界的な物流混乱を受けて、コンテナ船の運賃はうなぎ登りとなっており、全く混乱のない航路でも便乗値上げが相次いでいるようで、船会社は総じてホクホクとか。

純利益が10倍・・・コンテナ船バブルは凄いな。

ちなみに、日本の海運大手3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)も、2022年3月期の利益予想を上方修正している。

日本郵船と川崎汽船は純利益を2年連続で記録更新しているほか、商船三井も08年3月期以来の記録更新となっており、10数年前の「お船バブル」を彷彿とさせる状況となっており、この海運企業の好調はまんま世界的インフレへと繋がっている。

さて、この海運の混乱はいつまで続くかという点について、日本海事新聞さんからは「長期化する」との予測が出てきている。まあ、既に長期化しているが・・。

海事新聞さんによると、航路ハブ的な中国・韓国の主要港では貨物量の増加による港内のスペース不足もあって積み替え待ちの貨物が港内に滞留しているほか、船の入港待ちも常態化しているとか。

さらに、米中間のメジャー航路だけでなくアジア航路もキャパはパンパンで、運賃が安い日本発分はスペースを縮小される傾向にあるとのことで、低運賃に慣れた日本企業にもかなりの痛手。

ただ、近海航路運賃は、これまでが安すぎであって、今が本来の適正水準との話もある。日本企業・・大丈夫かな。

日本海事新聞さんの読みでは「来年夏頃までは改善されない」とのことだが、今のところ改善される理由が見当たらず、いつまでも続きそうな雰囲気となっている。

おじさん個人的には、インフレに起因する金融崩壊が不可逆的になるまで、つまり、アメリカのテーパリングからの利上げに至る動きが戻れなくなるとこに到達するまでは続くと思っている。

いずれにしても海運大混乱はさらに長期化するが、その理由として、大混乱の原因はコロナ禍から実体経済が回復して荷動きが活発化したからではなく(そもそも経済は戻ってない)単に「人手不足」にあるからだ。

人手不足となっているのは、コロナの手厚い失業保障が忘れられない「絶対働きたくないマン」の存在や、港関係者のコロナ感染やワクチン義務化圧力がうるさかったり等で、人が集まらないからだ。

・・・そうか、アメリカのワクチン義務化は労働市場に人を戻さないための施策なのか。

このほか、中国共産党さんによる有無を言わさない主要港湾ロックダウンも混乱の一因であり、その点では「米中共同作業」なのだが、今はマンパワー不足によるところが大きい。

このままだと、11月末のブラックフライデーを物流停滞のまま迎えることになる。マジで致命的な状況だ。

さらに、人手不足は港湾に留まらない。

ゼロヘッジさんによると、アメリカではトラック運転士が80000人足りてないとか。

イギリスでも、ブレグジットによりEUから安い労働力を入れられなくなって人手不足・・との報道があったが、アメリカも同じっぽい。

なので、運ちゃんの給料上げないと人が集まらず、それも輸送コストに跳ね返っている。

また、ゼロヘッジさんの別の記事によると、トラック運ちゃんに限らず労働力不足はかなり深刻ぽい。

いよいよインフレが本格化 そして日本デフォルトとデジタル円」で紹介したように、直近のアメリカCPI(消費者物価指数)は異次元の伸びだったが、その一因には食肉の価格高騰がある。

ゼロヘッジさんによると、特に深刻な人手不足は深刻により食肉工場も生産量を増やせないとか。

コンテナ船だけだなく、食品や輸送などあらゆる方面で人手不足が深刻となっており、コスト高へ物価高騰へと繋がっていく。

さらに、「世界で同時多発的にインフレの兆候 金融危機へのカウントダウン!?」でも紹介したように、中国の計画停電や原油高、半導体不足など、インフレスパイラルにより物価高騰は止まらない状況だ。

なお、ゼロヘッジさんによるとアメリカ消費者物価の伸びはこの40年で最速とか。

牛肉は前年比20.1%、豚肉は14.1%、ガソリンは49.6%の垂直上昇など、物価・サービス全面的に上がっているとか。一方で収入は1.6%減少しており、アメリカ国民さんの苦労が忍ばれる。

そして、このインフレ最大の問題が、超低金利が大前提の金融緩和の継続を困難にしているという点にあり、さらに決定的な打開策がないという点で大問題だ。

このインフレを抑制するために、FRBはテーパリングに舵を切ることとなり、リーマンショック以降続いてきたQE(金融緩和=造幣による債券買い支え策)は終了を余儀なくされることに。

さらに、テーパリングを加速するだけでなく利上げも急げ的な意見も出てきている。

米セントルイス連銀のブラード総裁が、インフレ懸念を念頭にテーパリングを加速(毎月150億ドル→300億ドル)して完了時期を来年6月から3月へと早め、さらに早期の利上げ開始を示唆したとか。

今回と同じようなコストプッシュインフレだった「石油ショック」の時の日本では、金利を引き上げにより狂乱物価を収束させたように、中央銀行がやれる物価抑制策は金利を上げることしかない。

この点では正論だが、今回のインフレ原因は労働力不足や物流混乱なので、利上げしても解消されるかは微妙だ。

また、「3京円の世界債務がもたらすインフレーションとデフォルト」などで、QEで莫大なドルを刷ってもインフレにはならなかったのは、過剰ドルの大半が金融市場に投入され実体経済に回っていないから・・との推測を書いたことがあった。

その説が正しいなら、そもそもインフレだろうが景気加熱しようが、QEは続けられるんだよなぁ・・。

ブラード総裁の発言は、QEに頼る金融市場への影響に慎重なハト派のパウエル議長に対するプレッシャーだろう。

しかも、FRBがテーパリングする表向きの理由は「コロナ回復による景気過熱でQE続けられない」だが、実際にはアメリカ国民さんの収入が減少しているように景気加熱は起こっていない。

単に、サプライチェーン問題によるコストプッシュインフレ・・つまり「スタグフレーション」になっており、国民の不満が高まる方向に向かっている。

この点からも、FRBはインフレ対策として(本来は不要な)テーパリング&利上げをやらざるを得ない状況となっている。

それを敢えてやるのは金融崩壊が目的であり、その最初の標的がGDP比200%オーバーの国債を発行する日本政府であり、500兆円オーバーの国債を保有する日銀だろう。詳しくは、別記事を見て欲しい。(いよいよインフレが本格化 そして日本デフォルトとデジタル円)(ツイッターCEOが語るハイパーインフレ 一番危険なのは日本か

さて、FRBやアメリカ市場で気になるのは、テーパリングすると宣言したというのに、「タントラム」どころか株価は上昇し米国債も比較的安定していることだ。

2013年の5月にテーパリング発言して2014年から開始したところ、米国債金利は1.6%くらいから3%まで急騰(テーパータントラム)した。

2013US10Y

すごいタントラム(癇癪)ね。

その後はサプライズ黒田バズーカ(日銀の追加金融緩和)の名のもとに、恐らくは日銀がFRBの肩代わりしてたと思われ、金利は2%前半まで低下したが・・。

今回も同じ展開になるんだろうか。日銀にも余裕は無さそうだが・・日銀にトドメ指す意味でもまた買わせるつもりなのかもしれん。

ただ、日銀とて完全にFRBの肩代わりが出来るワケではないので、利に目ざといファンドマネーなら、先を争うように逃げ出しそうなものだ。

現状そうなっていないのは、ファンドマネーが抜けていないのではなく、市場におけるFRBマネーの存在感があまりに大きいことを意味しているのではなかろうか。

確かに、FRB保有資産はコロナを機に垂直上昇している。

FRB資産推移

コロナショック以降の資産額の増え方は、リーマンショックの時の比ではない。

現在の米国債市場はFRBがダントツのビッグプレーヤーであり、そしてテーパリングとは米国債市場最大のビッグプレーヤーであるFRBが抜けることを意味する。

テーパリングが進むにつれて垂直上昇した分のマネーが無くなり、米国の株式・債券市場はその分は大暴落するはずだ。この規模の暴落は、日銀や特別会計マネーをもってしても買い支えられるものではない。

もっとも、そうなれば米国市場から逃避した投資マネーの大群は、金融緩和を続ける(と言うか続けざるを得ない)日本に集中するだろうが。

そして、近い将来の米国市場の暴落を感じさせるのが、バルチック海運指数だ。

バルチック海運指数が表すのは、運賃絶好調のコンテナ船ではなく、穀物や石炭、鉄鉱石等の輸送船(バルカー)運賃だ。

この「バルチック海運指数」は、まんま経済の活性状況が反映されることから、1ヶ月半~2ヶ月先の株価の先行指標とも言われている。

そんなバルチック海運指数は、直近で大幅下落に転じている。以下はバルチック海運指数の週足。

バルチック海運指数

2020年のコロナショックで急落したものの、昨年の秋頃には底打ち。今年の4月頃からは急騰したものの、10月7日を天井に強烈なガラ。チャート的にはそろそろ底うちして欲しい形だが・・・それにしてもヒドイ大暴落。

過去にこれほどの下落をしたのは、リーマンショックの時で、11793→663までの超絶大暴落となったことがあったが、その時は需要急減という理由があった。

今回は、中国さんの需要急減だろうか。

いずれにしても、インフレはアメリカが金融引き締めに転じるまでは続くだろう。バルチック海運指数が株価の先取りとするなら・・FRBのマネー引き上げペースが思ったよりも早くなるのだろうか。

そして、テーパリング加速→日本へのマネー流入の動きとなりそうだが・・日本株にとってはそこが最後の逃げ場だ。

今後もインフレ動向は

要チェックや

要チェックや!!


最後まで読んでくれてありがとう!