金のインゴット

英米による金価格コントロールの終わりと今後の展望

金のインゴット

このブログでは、前々から金融危機に備えてインゴットなど現物の金(ゴールド)買うことをオススメしている。

しかし、じわじわと上昇する金価格は、年明け早々のアメリカ・イランの戦争懸念もあってかなり高くなっており、なかなか手を出しづらいのが実情だ。

少し前まで、ネット買うと購入金額に対して3割位のポイントが付与されるなど、かなりお得に買えることがあったが少し前から還元の対象外とされてしまっている。

現物が買いにくくなりつつある中で、金ETFは、少額から金投資が始められることや、現物取引よりも手数料が安く上場株式と同じように取引できるため手を出しやすい、というメリットがある。

一方、通常のETFは信託報酬が年0.1%~0.2%程度のところ、金ETFは0.4%~0.5%台と運用コストが高いというデメリットがある。

また、全ての金ETFが現物の金に交換できるわけではないという点に注意が必要だ。

国内で買える金ETFはいくつかあるが、おすすめは、国内の金ETFの中で唯一、現物の金(金地金)との交換が出来ることをウリにしている「純金上場信託(金の果実)」だ。

とは言え、金地金と交換するためには、一定の受益権口数を持っていることが条件だ。

小口の場合で1kg以上5kg以内の受益証券が必要となる。なお、金地金との交換を申し込める証券会社は、ネット系ではカブドットコム証券かSBI証券で対応型しているぞ。

だが、ネックは1キロ以上というところだ。金1キロで6,000,000円くらいか?

うーん、一気に手の届かない存在になってしまったな・・・。まあ、使わないカネが充分あるならこのETFを通じて買うのもいいかもしれないな。

前置きが長くなったが、本題はここから。

実は、海外でも「金の果実」と同様に、現物の金(ゴールド)と交換をうたうETFなどの金融商品がある。

通常ならば、例えば金ETFを買いで入って利益確定したら、その利益分についてはおカネ(現金)で受けとる。わざわざ現物の金(ゴールド)で受けとるくらいなら、利確しなくても良かったワケだからな。

ところが、ニューヨークやロンドンの取引市場では、利益確定後に現物の金(ゴールド)で受け取る人が増えているというではないか。

現物の金(ゴールド)を希望する人が多すぎて、現物化の申し込みに対応しきれていないようだ。まあ、ETFの裏付けとなる金が本当にあるのかどうかも怪しいがな。

いずれにせよ、このままだと現物の金(ゴールド)のと交換をウリとしていたETFは「現物の金(ゴールド)が用意できないから交換サービスを停止します」というアナウンスをするハメになる。

多くの人が、株式市場や債権市場、そして基軸通貨ドルは中央銀行のQEによって支えられており、長くは持たないということを知っているかのようだ。

そしで、資産を債権や株式、ドルなどの通貨とは対局に位置する金(ゴールド)に変えようとしている。

今は一部が求めているだけかもしれないが、今後様々な場面で金融危機が表面化することになると、金(ゴールド)に人々が殺到するようになる。

それを象徴しているかのような動きがある。最近、金(ゴールド)の価格がこれまでにないほどに上がってるが、株価も上げているのだ。

通常、株価と金(ゴールド)は逆相関となるはずだ。

金(ゴールド)には金利・配当がつかないので、この株高地合ならば株を持っていた方が有利だ。普通で考えれば金は下げる。

アメリカイランによる第三次世界大戦危機が去っても、金価格はほとんどさげていない。

このことからは、株式市場から現物の金(ゴールド)に資金が流れてきていると考えられる。

そんな金の価格は、1990年代から意図的に低く押さえられてきた。イギリスで今の金融バブルに繋がる証券制度改革(ビッグバン)があった頃だ。

現物を伴わない証券取引が急速に拡大するなかで、やはり裏付けのないドルを相対的に高く保つためと考えられる。

そうは言っても、ITバブル崩壊などきっかけがある度に金価格は少しずつ上がっていった。

特にリーマンショックを契機に、節目を一気に越えたのは、多くの人が債権やドルの崩壊を秦で感じたからだろう。

ところが、ドルの基軸通貨性の喪失をさけるためにFRBなど各国中央銀行がQEで生み出したカネを使い、特に金ETF等を売り浴びせることで金価格を低く抑えた。

先物市場だけでなく、金地金の現物を取引するマーケットにおいても、金融機関から金地金を借り出してまで売り出す徹底ぶりだった。

このため、2008年のリーマンショック直後に高騰した金も、2012年頃から急落することになる。

だが、こうした中で中国やロシアはじめ、世界各国の中央銀行は、金地金を買い増しつづけて保有量を増やしている(日本を除く)。

こうして中央銀行の間で金需要が増すなかで、世界一の金保有国のアメリカなどが保有する金が実は存在していないのではないかと言われるようになった。

ドイツは、ニューヨーク連邦銀行に金地金を預けていた。建前として、ドイツなどは共産主義との間の最前線にあったことから、万が一にも共産主義国家に金塊が渡らないように安全なアメリカで保管するという建前だ。

ドイツが保有する金塊は、約3300トンにのぼるが、その半分以上がアメリカやイギリスで保管されている。

2012年にドイツは預けた金塊の返却を求めたところ、ニューヨーク連邦銀行は当初これを拒否したが、とりあえず何年かかけて300トンほどは返還することとなった。

以下の野村リサーチの記事を参考にして欲しい。

ドイツの金準備と通貨価値低下への不安

記事によれば、2017年に一部の返還は終わったようだ。2012年に返還を求めて、5年かけて少しずつ返してもらったものの、それでも半分近くはアメリカやイギリスに置かれたままだ。

ちなみに、過去記事でも紹介したがアメリカとドイツは金保有量で世界ナンバー1、ナンバー2だ。

歴史的高値圏!金(ゴールド)はナゼ強い!?

第1位 アメリカ 8133.46トン(75.8%)

第2位 ドイツ 3366.77トン(71.7%)

カッコの中は、外貨準備に占める割合だ。その国の資産の何割くらいが金塊なのかを表している。

ちなみに日本は765トンで外貨準備に占める割合はわずかに2.6%だ。ほとんど米国債などの有価証券なんだな。

さて、なかなか金を返すと言えなかったアメリカやイギリスの事情を察するに、ニューヨーク連邦銀行の金庫の金地金は勝手に使われており、在庫が少なかったか全く無かったと考えられる。

もちろん、その目的は金相場を引き下げるためだ。

ドイツに対して金塊を全て返還するとなると、1500トン近い金地金をマーケットで買い戻す必要が出てくるため、かなりの金相場押し上げになるだろうし、大体金庫に無かったことがバレるから出来なかったのだろう。

状況としては当時とあまり変わっていない。だが、なぜ金価格はこんなにも上がっているのだろうか。

考えられる理由として、アメリカ・イギリスの持っていた金価格の操作能力が低下するとともに、操作権限がロシア・中国に移ったのではないかということだ。

直近のデータでは、アメリカの金保有量8000トンに対して、ロシア・中国は4000トンであり、数字だけ見ればまだダブルスコアだ。

しかし、先ほどのドイツの金塊の件で見たように、アメリカ・イギリスの金庫の中には金塊がない可能性が高い。

ドイツからアメリカに対しては、金塊の返還だけでなく、金庫の中にあると言われている金塊の存在確認をさせろと求めている。

ところが、アメリカはドイツ(や他の国)からの確認要請を拒否しており、アメリカ・イギリスには「随分前から金を保有していない疑惑」がかけられている。

ということで、金価格のコントロール権限はロシア・中国サイドに移行したと思われる。

もう一つの考え方としては、本当の金(ゴールド)の最大保有者は、原田武夫氏の言うところの「根元的階層」たる王候貴族の皆様であるため、こちらにコントロール権限が戻っているとも考えられる。

いずれにせよ、ドル防衛を目的に金(ゴールド)を低く抑えてきたアメリカ・イギリスの金価格コントロール権限は喪失したと見るべきで、人々の需要を考えるとまだまだ上がっていくのではないだろうか。


最後まで読んでくれてありがとう!