ロシアのメドベージェフ元大統領が、2023年に起こるであろう出来事を予測しており、その内容が非常に興味深いものだった。
あの原田武夫氏がツイッター上で紹介していたものだが、メドベージェフ氏のツイートがこれ。2022年末に2023年に起こると予測される10の出来事をツイートしている。
On the New Year’s Eve, everybody’s into making predictions
Many come up with futuristic hypotheses, as if competing to single out the wildest, and even the most absurd ones.
Here’s our humble contribution.
What can happen in 2023:
— Dmitry Medvedev (@MedvedevRussiaE) December 26, 2022
なお、メドベージェフ氏が2023年に起こるとする10の出来事については、原田武夫氏が翻訳してくれている。
1. 原油価格は 1 バレル 150 ドルに上昇し、ガス価格は 1,000 立方メートルあたり 5,000 ドルを超える
2. 英国は EU に再加盟する
3. 英国の復帰後、EU は崩壊する。ユーロは旧EU通貨として使用されなくなる
— 原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA) (@iisia) December 28, 2022
この内容については、以下のとおりだ。
1. 原油価格は1バレル150ドルに上昇し、ガス価格は1,000立方メートルあたり5,000ドルを超える
2. 英国はEUに再加盟する
3. 英国の復帰後、EUは崩壊する。ユーロは旧EU通貨として使用されなくなる
4. ポーランドとハンガリーは、旧ウクライナの西部地域を占領する
5. ドイツとその衛星国、すなわちポーランド、バルト諸国、チェコ、スロバキア、キエフ共和国、およびその他の追放者の領土を含む「第 4 帝国」が創設される
6. フランスと第4帝国の間で戦争が勃発する。ヨーロッパは分割され、ポーランドはその過程で再分割される
7. 北アイルランドが英国から分離し、アイルランド共和国に加わる
8. アメリカで内戦が勃発し、カリフォルニアとテキサスが独立する。テキサスとメキシコは同盟国家を形成する。内戦終結後、共和党が獲得した多くの州でイーロン・マスクが大統領選に勝利する
9. 最大の株式市場と金融活動は、すべて米国と欧州を離れ、アジアに移動する
10. 通貨管理のブレトンウッズ体制は崩壊し、IMFと世界銀行は破綻する。ユーロとドルは、世界の基軸通貨 として流通しなくなる。代わりにデジタル不換紙幣が活発に使われるようになる
この中で特に気になるのは、EUやユーロに関する部分で・・
- イギリスのEU復帰
- EU・ユーロの崩壊
- ポーランド&ハンガリーによるウクライナ西部の占領
- ドイツ陣営とフランスによる戦争(欧州内戦)
・・など、EUやユーロが崩壊し、第一次・第二次世界大戦を彷彿とさせる欧州内部での分裂・戦争が予測されている。
このブログでは、これまでにもウクライナ戦争の真の目的とはEU(特にドイツ)の没落であること、ポーランド現政権が「(旧ポーランド領の)ウクライナ西部を取り戻す」と公言していることや、今後は欧州内戦(第三次世界大戦?)となる可能性等について紹介してきた。(ウクライナ戦争の真のターゲットはEU ユーロは崩壊へ)(ウクライナ戦争が終わり欧州内戦へ、そして第三次世界大戦)(ロシアの部分動員令と戦争のエスカレートを望むアメリカ)
メドベージェフ氏の予測は、この欧州内戦(第三次世界大戦)シナリオを彷彿とさせるものであり、世界シナリオの中でロシアが一つの役割を演じていることを踏まえると、このシナリオが本命であることを示唆してると言えよう。
さて、EUに関するメドベージェフ氏のEU崩壊・内戦に関する予測を見てみると、イギリスのEU復帰から始まっており、世界史の黒幕・イギリスがEUを崩壊させる気マンマンな印象を受ける。
そんなイギリスは、2016年6月の国民投票でブレグジットが決定し、2020年2月1日に正式にブレグジットした。
この辺りの動向については、元外務省職員のラスプーチンの異名を持ち、世界各国のインテリジェンス機関との関係の深い佐藤優氏の鋭い分析が参考になる。
人類の選択 「ポスト・コロナ」を世界史で解く(佐藤 優 著)
佐藤優氏によると、ブレグジットは国民投票により決定されたものの、一般民衆の皆様はブレグジットの可否を判断する材料も能力無いため、そもそも国民投票に委ねるべき案件では無かったとしているほか、この国民投票は国民の合理的な判断によるものではなく、感情論の産物と指摘している。
また、イギリスは伝統的な海洋国家だが、北アイルランド問題等の国内問題を抱えているため、ブレグジットしても海洋国家の優位性を活かすのは難しい・・との指摘もされている。
となると、メドベージェフ氏が予測する「イギリスのEU再加盟・北アイルランドの分離」は、世界史の黒幕・イギリスにとって望ましい展開と言えるのかもしれない。
また、EUについて佐藤優氏は、二度と戦争を起こさないために各国のナショナリズムを抑制した「西欧帝国」とする一方で、経済面でのドイツ一人勝ち状態を踏まえて、EUとは「ドイツ第四帝国」でユーロは「拡大マルク」とも指摘している。
※ドイツ第一帝国とは神聖ローマ帝国(800年頃~1806年)を指し、第二帝国は1871年~1918年にドイツを支配したドイツ帝国を、第三帝国はヒトラー率いるナチス・ドイツ(1933年~1945年)を指す。
第一次・第二次世界大戦がドイツを潰すための欧州内戦(withアメリカ)だったこと、今ではドイツがEU(ドイツ第四帝国)として大復活していることを踏まえると、再びドイツ潰しの欧州内戦が起こっても全く不思議ではない。
こうした中で、「NATO vs ロシアの第三次世界大戦でドイツは消滅!?」等で紹介したように、米シンクタンクのランド研究所がドイツを潰すためにウクライナ戦争を仕掛ける旨の計画書を作成していたほか、イギリスのボリス・ジョンソン元首相は「ロシアとの和平交渉は絶対アカン、長距離ミサイルや戦闘機も供与したれや」と主張し、さらにイギリスは2022年3月に纏まりかけていたロシア-ウクライナの和平交渉を潰している。(占星術は封じられた声が世界を変える流れを示唆する)
つまり、ウクライナ戦争とは、ロシアの格安資源により「ドイツ第四帝国(EU)」として復活したドイツを、アメリカ・イギリスが潰すためのものであり、ドイツが潰れるまで戦争は継続される。
なお、メドベージェフ氏は、
英国の復帰後、EUは崩壊する。ユーロは旧EU通貨として使用されなくなる
としており、EU崩壊についてイギリスの関与を示唆しているが、これまでのイギリスの動きを踏まえれば、イギリスがEU再加盟するのは、内部から「ドイツ第四帝国(EU)」を潰そうとするため・・と見るべきだろう。
ただ、ドイツも運に見捨てられていないようで、今年の欧州は暖冬のようで「終わりが見えたウクライナ戦争と没落する欧州覇権、そして簿外資産」で紹介した天然ガスを使い果たす・・という状況にはならず、ストックの半分を残して冬が終了する見込みとなっているとか。
欧州の天然ガス在庫は半分で冬を終えると予想 https://t.co/z8ltgLiXq1
— zerohedge jpn (@zerohedgejpn) January 19, 2023
さらに、ノルドストリームの破壊によってロシアからの天然ガスを強制的に断たれたEU(ドイツ第四帝国)では、米国やカタールから高価な天然ガスを輸入するハメになっているが、天然ガス価格がピークから8割減となったこともあって、今のところドイツは即死を免れている。
欧州の天然ガス価格チャート(週足)を見てみると・・
・・現在では66.9ユーロとなっており、確かに、昨年夏ごろのピーク価格(346.5ユーロ)から8割減となっている。
ただ、ウクライナ戦争前は20ユーロ程度だったことを踏まえると、まだまだ3倍高い状況と言え、ロシアの格安資源に頼ってきたドイツにとって厳しい状況が続いているのは間違いない。
ただ、メドベージェフ氏は資源価格について・・
原油価格は1バレル150ドルに上昇し、ガス価格は1,000立方メートルあたり5,000ドルを超える
・・と、めちゃくちゃ高騰する予測をしている。
以下はWTI原油の週足チャートだが・・
・・現状では80ドル前後と、120~130ドルのピークレベルから4割近い下落となっており、週足レベルでも下落トレンドとなっていることが分かる(戻しつつあるが・・)。
メドベージェフ氏が予測する1バレル150ドルは、昨年2月のウクライナ侵攻直後の130ドルをも超える価格帯であり、世界的に落ち着きつつある(と言われる)インフレ再燃となりかねないものだ。
また、「中国のコロナ感染爆発はバブルへと繋がる」で紹介したように、原油価格の下落は日本バブルを誘発する可能性もあるため、このまま低価格で推移して欲しいところ。
次に天然ガス先物の週足チャートだ。単位はドル/1㎥で表示している。
欧州の天然ガスと同様に下落しており、今では1㎥あたり0.1ドル強とピークから7割減となっているところだが、メドベージェフ氏は1㎥あたり5ドルに上昇すると予測しており・・・え、50倍!?
ロシアの格安天然ガスに依存してきたドイツ経済ならずとも、致命傷になりかねない暴騰だ。
本当に50倍になるのかどうかは不明だが、アメリカでもガス価格は上がっているようで、カリフォルニア州のガス会社が「1月のガス料金は12月から128%の値上げっす」と顧客に警告したとか。
“Not The Weather”(天気じゃない)。カリフォルニア州の天然ガス料金高騰の背景とは? https://t.co/1QgW7Q23uV
— zerohedge jpn (@zerohedgejpn) January 21, 2023
ゼロヘッジさんによると、ガス価格の高騰は、欧州への天然ガス輸出増加によってアメリカ国内で供給不足・在庫減少したことに加え、バイデン政権の気候変動対策によって天然ガス設備投資が制限され、需要急増してるのに生産量が伸び悩んでいることが理由とか。
アメリカやカタールが頑張ってもロシアの減少分を補えないだけでなく、気候変動対策の名のもとに天然ガスの生産量が増やせないため、天然ガス価格は暴騰する・・と言ったところか。
さらに中国のゼロコロナ解除で世界のインフレ率が上昇する可能性を、米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が指摘している。
FED’S WILLIAMS: THE ELIMINATION OF CHINA’S LOCKDOWNS COULD TICK GLOBAL INFLATION HIGHER.
— Breaking Market News (@financialjuice) January 20, 2023
ウィリアムズ総裁の指摘を踏まえると、世界の需給バランスが壊れているところに中国経済が復活するため、資源価格は火柱上げする未来となるかもしれない。
こうなってくると「自滅するEUの分裂と対米離脱、そして中東戦争へ」等で紹介したように、経済・金融面で追い詰められたEU(ドイツ第四帝国)は、ロシアと和解するために対米離脱(NATO離脱)することになるかもしれない・・が、イギリスがEUに復帰するとなれば、ドイツも簡単には「対米離脱・ロシア和解」をさせてもらえないだろう。
さらに、ポーランドの動向も気になる。
冒頭でも触れたが、反ロシア急先鋒のポーランドには「戦争のドサクサに紛れてウクライナ西部を取っちまおう」との意思があるのは確実で、メドベージェフ氏の・・
ポーランドとハンガリーは、旧ウクライナの西部地域を占領する
・・との予測が的中する可能性は高い。
さて、ポーランドの「ウクライナ西部占領作戦」については、昨年4月にロシアメディアのRT(Russia Today)が、既にポーランドとアメリカの間でウクライナ西部へのポーランド軍進駐が検討されていることを報じている。
Poland has entered into discussions with the United States over a possible ‘reunification’ with Western Ukraine, according to Sergey Naryshkin, head of Russia’s Foreign Intelligence Service.https://t.co/T6UmfmBVSZ pic.twitter.com/1txAdsBoec
— RT (@RT_com) April 29, 2022
この記事によると、ウクライナ政府が治安維持機能を維持できなくなった際に、ポーランド軍がウクライナ西部に進駐して治安維持を担うこと等がアメリカとポーランドの間で検討されているとか。
ウクライナが勝利した暁には、ポーランド軍はウクライナから徹底する予定だろうが・・・RT(Russia Today)は「そんなワケあるか、ウクライナ西部はポーランドのモノになるぞ」と警告している。
メドベージェフ氏の予測どおりの展開となるが、これが2022年4月に検討されていた点からは、アメリカはポーランドに「ウクライナ西部は好きにしていいから、とりあえず戦争の長期化に協力してよ」と提案し、ポーランドは了解している可能性が見えてくる。
また、2008年にロシアからポーランドに「ウクライナ西部はポーランドのモノなんだから奪っちまえよ」との提案があったことが2014年にロイターから報じられている。
ロシアが2008年にウクライナ割譲を提案=ポーランド元外相 http://t.co/GGzPfUq1u8
— ロイター (@ReutersJapan) October 21, 2014
ポーランドは「そんな提案に乗れるか!」と拒否ったとのことだが・・・ポーランド歴代政権が「ウクライナ西部を取り戻す」と言い続けてきたことを踏まえると、本当にロシアの提案を蹴ったかどうかはアヤシイ。
アメリカもロシアも、ポーランドにウクライナ西部の併合を認めている可能性がある。
この点を踏まえ、ポーランド視点でこの戦争を見ると・・
- ウクライナは、治安維持能力を失う程度にボコボコにされる必要がある
- それまで戦争が継続されなければならないので、ロシアとの和平には断固反対する
- ポーランド軍進駐を警戒させないために、反ロシア・親ウクライナの姿勢を貫く
・・との戦略が見えてくる。
今のポーランドの反ロシア・親ウクライナ姿勢はウクライナ西部への進駐を目指したものであり、アメリカ・ウクライナからの「ウクライナ西部を頼むわ」の言葉を待っていると言えよう。
なお、最近のポーランド国内では、ウクライナ戦争終結を目的とした「ウクライナ分割」に関する議論が本格化し始めているとか。
ポーランド📺は🇺🇦一部がポーランドに属している理由を市民に説明し続けている
現在の危機から抜け出す方法として、「ジリノフスキー モデル」を提案しています。🇺🇦が部分的に分割されること。🇵🇱、ハンガリー、ルーマニア、🇷🇺が歴史的な土地を帰還させる。🇷🇺がすでにその部分を返還していることに注目 pic.twitter.com/YdGo9TN0OZ— MK✝️ほんものだよ (@Mari21Sofi) January 21, 2023
このツイート中の「ジリノフスキーモデル」とは、ドンバスやヘルソン、ルガンスク、サポロジェ、オデッサと言った東部・南部をロシアが併合し、リヴィウ始め西部はポーランドが併合、南部のザカルパッチャ州とチェルノフツィ州は、それぞれハンガリーとルーマニアが併合し、ウクライナはキエフ周辺エリアだけとする・・というものだ。
まあ、ここまで過激にウクライナが分割されるかは微妙なところだが・・メドベージェフ氏の予測にはポーランドに加えてハンガリーも入ってるほか「キエフ共和国」の名前も見られるので、ウクライナが徹底的に分割される可能性はあり得る。
また、ポーランドのウクライナ西部進駐・事実上の併合をロシアが承認することで、戦争終結・和平交渉へと繋がっていくのだろう。
さて、メドベージェフ氏は、ポーランド・ハンガリーがウクライナ西部を占領する以外に・・
5. ドイツとその衛星国、すなわちポーランド、バルト諸国、チェコ、スロバキア、キエフ共和国、およびその他の追放者の領土を含む「第 4 帝国」が創設される
6. フランスと第4帝国の間で戦争が勃発する。ヨーロッパは分割され、ポーランドはその過程で再分割される
・・ことを予測しており、ウクライナ分割を軸に欧州が分裂する予測となっている。
ウクライナ分割を歓迎するチームとしては、ロシア・ポーランド・ハンガリー(ルーマニアも?)に加えて、ロシアの格安資源欲しさから分割協議を支持するだろうドイツが考えられる。
また、分割により欧米勢の傀儡政権が崩壊したウクライナ(キエフ共和国?)はロシア傀儡になるだろうから、この分割劇を支持することになりそうだ。
一方で、この分割劇を断固拒否しそうなのが、自身の傀儡国家を壊されることになるアメリカ・イギリスだろう。また、正義感の強そうなフランスもだろうか。
・・と言うことで、気が付けば「昨日の味方は今日の敵」となってEU・NATOは事実上崩壊し、戦争(第三次世界大戦)へと突入することになりそう。
メドベージェフ氏の予測は、アメリカ内戦や通貨制度の崩壊などにも及んでいるが・・それは次の機会に!
最後まで読んでくれてありがとう!