ユーロ

ウクライナ戦争の真のターゲットはEU ユーロは崩壊へ

ユーロ

先日の「占星術は封じられた声が世界を変える流れを示唆する」等で紹介したように、欧州では今冬のエネルギー危機が確実となっているだけでなく、エネルギー価格の高騰による金融危機も懸念され始めている。

こうした中で、ECB(欧州中央銀行)はインフレ対応として0.75%という大幅利上げに踏み切ったが・・金融危機の方は大丈夫なんだろうか。

ちなみに、欧州では青天井のエネルギーコストに耐えかねて、エネルギー集積型の鉄鋼・精錬業者が続々と閉鎖・休止しており、経済危機の様相も呈し始めている。

欧州のエネルギー危機のヤバさについては「自滅するEUの分裂と対米離脱、そして中東戦争へ」等で紹介したとおりだが、その元凶はドイツ-ロシアを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」の稼働停止だ。

この天然ガス供給の停止はロシアによる逆制裁との見方もあるものの、ノルドストリームは西側技術で建設されており修理・整備をドイツのシーメンスが担っている点を踏まえると、実際には欧州勢によるセルフ制裁と言える。

国際メディアに関する独立調査プロジェクトのSwiss Policy Resarch(SPR)のレポート「Is Russia limiting gas flows to Europe?」によると、ノルドストリームのタービン6基のうち4基は未だカナダにあり、1基はドイツに移管、1基はオイル漏れが発覚したものの、制裁によりシーメンスに修理許可が降りないとか。

結局のところ、ノルドストリーム1のタービンは全て西側の管理下にあり、天然ガス供給再開の決定権は欧州勢にあると言える。

そんなこんなでドイツ市民は薪集めに走っていることを以前に紹介したが、スイスではガスが配給制になった場合に室温19度以上の暖房使用で「3年間ムショ行きの刑」とする法律が検討されているとか。

ムショ行きでなくても30スイスフラン(5000円弱)~の罰金を課す可能性も検討されているようで、電気代ガス代どころの騒ぎではない、何処の北朝鮮だよ的な状況となっている。

ロシア制裁&ウクライナ支援ヤメロ的な民衆デモが起こるのも当然であり、それに金融危機懸念まで加わる昨今の情勢を鑑みれば、戦争に肩入れしてる場合ではないことが分かる。

こうした状況を踏まえて「NATOと全面戦争するかもしれないロシアと欧州の対米離脱」や「自滅するEUの分裂と対米離脱、そして中東戦争へ」で紹介したように、欧州勢は(半強制的に)対米離脱していく可能性は高い・・ということを紹介した。

ただ、欧州勢は簡単には対米離脱出来なさそうで、グレートリセット実現のため、EUやユーロ崩壊が確定するまで対米離脱を許して貰えないかもしれない。

それを感じさせるのがこの報道だ。

8月9日にクリミアにあるロシア海軍航空部隊のサキ基地での爆発について、関与を否定していたウクライナ軍が今になって「自分がミサイル攻撃したっす」と認めたとか。

爆発直後にウクライナ軍が関与を認めた報道もあったが、基本的にはウクライナ軍は関与を否定していた・・のに、今になって懺悔とはこれ如何に?

そもそも、「ウクライナにおける原発攻撃から見える核オプションと食糧危機」でも紹介したように、クリミア半島内陸部にあるサキ基地はウクライナ軍の前線から200キロは離れており、ウクライナ軍が保有する兵器類(米軍供与含む)の射程距離外にある。

ただ、共同通信の記事によると、ウクライナ軍は「ミサイル攻撃した」としており、ウクライナ軍は長距離射程のミサイルを保有している(=米軍が供与した)ことになる。

アメリカは(ロシアへの配慮から)ウクライナ軍への兵器類供与は自国防衛用に限定しており、ロシア国内を攻撃可能な長距離射程の兵器類は供与していないハズだった・・が、実は長距離射程の兵器類まで供与していた可能性が高くなった。

また、本来はナイショな情報をウクライナ軍が暴露したのは、アメリカから「言ってもいいぞ」との解禁Goサインがあったことを伺わせる。

さらにこんな報道も。

今年4月にロシア海軍黒海艦隊旗艦モスクワがウクライナ軍のミサイル攻撃で撃沈されたが、この件に関してウクライナ軍がアメリカ国内で改良型ハープーンミサイルの運用訓練を受けていたことが暴露された。

モスクワ撃沈の背後に、支援の枠を越えて協力するアメリカ軍の存在があったワケだが、サキ基地の話が同時期に出ていることから、この情報はアメリカ政府筋からのリークだろう。

まあ、ロシア軍とウクライナ軍(アゾフ連隊等含む)の戦力差はあまりに大きく、かなりテコ入れしないとウクライナ軍は瞬殺されるだろうから、アメリカの過度な支援については理解出来る。

そして、アメリカの海よりも深い関与を意図的にリークする姿勢は、ウクライナ軍はアメリカの手先として戦争していることを示すだけでなく、この戦争に対するアメリカの本気度をも示している。

さらに、先日も紹介したように、3月に纏まりかけていたロシア-ウクライナの和平交渉はイギリスによって潰されていたことが明らかにされており、イギリスの本気度も高いことが伺える。

一方で、ロシアはこうした状況を把握していたハズだが、サキ基地爆発もモスクワ撃沈も「事故っす」を貫き通してウクライナ軍による攻撃と認めず、「特別軍事作戦」から「総力戦」に発展させなかった。

また、フランスのマクロン大統領主導の和平提案の話が出ている。

イギリスを除く欧州勢は、早いとこ戦争を止めて欲しそうな感じだが、アメリカ・イギリスの本気を踏まえると、3月の和平交渉と同じく頓挫するだろう。

これらの状況からは、アメリカ・イギリスは何らかの目的があってウクライナ戦争の長期化を望んでいる一方で、EUは早く終わって欲しい、ロシアは早期終了を望んでいるかは不明だか、あまりコトを大きくしたくはなさそうなことが分かる。

ちなみに、ウクライナ国内は国家の存亡をかけた戦争中とは思えないほどに日常だとか。

ウクライナは小麦の輸出再開に苦労してたくらい輸送は不自由なのに、何でモノが溢れてるんやろか・・。

また、通信網も正常稼働しておりテレグラム等を通じた情報も出てくるし、エネルギー供給も問題無さそうな点からは、ロシアからウクライナへの天然ガス供給は続いていることが伺える。

通信・輸送・エネルギーがちゃんと稼働している状況からは、明らかにプーチンは本気で戦争やってなさそうなことが伺える。

また、欧州勢も一枚岩ではなく、戦争続けたそうな国もある。

それがポーランドだ。

反ロシアが国是のポーランドが、ドイツに対して第二次世界大戦時の戦時賠償183兆円を請求したとか。

欧州にエネルギー危機が迫るこの時期に、韓国兄さんの如くEU・NATOの結束を乱すこの所業や如何にと言ったところ。

なお、1954年にソ連の東ドイツへの賠償請求権放棄に合わせて子分のポーランドも放棄させられた経緯から、ドイツは「解決済み」の立場であり、話し合いに乗ってくることは200%無い。

ポーランドが「納得できねー」のは分かるが、この時期にわざわざ賠償を蒸し返すポーランドの意図は気になるところ。

差し当り考えられるのは・・

  1. 対独賠償を求めるポーランド国内世論への配慮
  2. インフレに耐えきれないからカネ寄越せ
  3. ロシア制裁に日和るドイツのケツ叩き

辺りだろう。

ただ、①はドイツに無視されるのがオチだし、②は賠償請求なんて回りくどいことせずに素直にヘルプを求めるべきなので、現実的なのは③だろうか。

確かに、ドイツからポーランド等東欧諸国への武器供与は全く進んでいないことが報じられている。

旧東欧諸国がウクライナが使い慣れた武器を供与する代わりに、ドイツが自国兵器を旧東欧諸国に供与する・・という仕組みだが、東欧諸国やドイツ野党からは「ドイツから兵器が送られてない、詐欺や」と批判が噴出している。

まあ、ドイツも自国防衛との絡みもあるんだろう。

ただ、ポーランドはドイツから兵器が送られてこない代わりに、自前でアメリカや韓国から戦車や戦闘機を購入するようなので、ポーランドの戦時賠償請求は「お前(ドイツ)がカネ払っとけや」との意味合いがありそう。

しかしながら、NATOに加盟するポーランドが急いで軍備を整える必要性は薄く、この兵器類の入れ替え(古いのはウクライナへ、新しいのは購入)には何か別の目的を感じるところだ。

となると、ポーランドの真の目的はただ一つ。

それは、ウクライナ戦争の長期化によるウクライナ西部地域の併合だ。

実は、ポーランドは第二次大戦期の序盤でソ連からウクライナとベラルーシ西部を割譲するなど、歴史的に見てウクライナとの繋がり(領土的野心)は深い。

この領土は「ポーランド分割」によりソ連に取り戻されたものの、ポーランド現政権が「ウクライナ西部を取り戻す」と主張しているように、ポーランドにとってウクライナ西部は「ソ連に奪われた自国領土」だ。

つまるところ、ポーランドは戦争長期化によりウクライナを疲弊させ、西部の治安維持などを理由に進駐し、そのまま併合する未来を見ている可能性が高い。

その観点からドイツへの賠償請求を見ると、「まさか戦争やめさせねえよなぁ?」との脅しだろう。

ロシアメディアのRTによると、ウクライナはポーランド人の受け入れを始めているようだが、ウクライナのヤヌコビッチ前大統領(親ロシア派)は「ポーランドに併合されちまうぞ」と警告しているほか、別メディアによるとロシア元大統領メドベージェフ氏も同様の指摘をしている。

ポーランドの目論見が成功するか否かは不明だが、いずれにせよ戦争長期化を望むポーランドは、EU内にありながらドイツ・フランスの努力をジャマするアメリカ・イギリスの手先となっている。

と言うことで、EUは冬にかけてエネルギー危機と経済危機、金融危機に加えて「オランダの畜産制限から見える食糧危機の本質」で紹介した食糧危機も加えた4重苦になる。

しかし、EUの自滅は続く。

カネも食い物も無く暖房使ったらムショ行きという地獄絵図が数ヵ月後に迫る中で、ECBはインフレ抑制のため本格的に金融引締めに舵を切った。

ただ、インフレ筆頭の天然ガスはセルフ制裁の結果だったりするので、金融引締めによるインフレ抑制効果は薄く、むしろ金融危機を誘発するだけに終わる可能性が高い。

しかも、こうした引き締めと同時に、ドイツではエネルギーインフレへの対応として650億ユーロ(9兆円)規模の家計支援(バラマキ)をするとか。

これまでのインフレ対策と合わせると総額で950億ユーロ(13.7兆円)規模の支出となる。

日経の記事には、

エネルギー会社の利潤に上限を設けて超過する利益に課税し、税収の一部を電気代の低減に充てる。

とあるように、この対策の財源は電力会社などから徴収する見込みとなっているようだ。

しかしながら、冒頭で紹介したゼロヘッジさんの記事にあるように、電力会社は天然ガス等の現物を買い付けた際のヘッジ(先物ショート)で追証地獄に陥っている。

また、追証の規模についてはロイターが報じている。

ロイター記事には、

ノルウェーのエクイノールは、この「マージンコール」(追加証拠金差し入れ)の額が英国を除く欧州全体で少なくとも1兆5000億ユーロ(1兆5000億ドル)に上ると試算している。

とあり、イギリスを除いた欧州全体で1兆5000億ユーロ・・・210兆円くらいだろうか。桁が大きすぎてよく分からんレベルで、この規模のショートポジションが強制決済されれば、エネルギーはハイパーインフレしそう。

・・と言うことで、電力会社さんは家計支援の原資を提供するどころか、キャッシュフロー悪化(追証金の工面)によるデフォルトの瀬戸際であり、むしろ公的資金が必要な状況となっている。

そして、200兆円規模の追証の財源は国債以外はあり得ないのだが、金融引き締めによりQEは終了し、さらに大幅利上げに踏み切っている。

追証代金を出さない場合、電力会社さんは手持ちの流動資産(株や債券)を売りまくる。200兆円規模の売りは株式・債券市場の大暴落だけでは済まず、各方面で追証地獄が同時多発的に発生する「ミンスキーモーメント」になる。

ECB(欧州中央銀行)はインフレ抑制を理由に金融引締め転換しているため、再びQEへと移行できるのかは未知数であり、そうこうしているうちに金融危機→金融崩壊→ユーロ崩壊へとなりかねない。

それが夢物語で無くなってるのに、欧州勢からはあまり危機感を感じない。追証地獄は決済しなきゃセーフ理論なのか、それとも他に資金のアテがあるのか。

・・ボ?

ここまでをまとめると・・

  • アメリカ・イギリスはウクライナ戦争を長期化させたいし、その意思もハッキリ示している。
  • 欧州勢は戦争支援とセルフ制裁をやめたいものの、和平は潰されるしポーランドはうるせぇし・・。
  • ロシアは何故か本気を出したがらず、戦争は長期化する。
  • 結果として欧州はエネルギー危機に見舞われ、さらに経済・金融危機とユーロ崩壊まで繋がる

と言う感じだろうか。

これまでに「ロシア制裁はルーブルの金本位性とドル離れに繋がる」や「バイデンのサウジ訪問はペトロダラー終焉の合図」等で、ウクライナ戦争の目的の一つにドルの信用低下・基軸通貨制の喪失があることを紹介してきたが、ドルよりも前にユーロの方が持たない展開となりそう。

ユーロ崩壊を受けて対米従属離脱・EU分裂の展開が考えられ、その後はユーロ崩壊を招いた問題児のポーランドはじめ東欧諸国の多くはロシア覇権下に戻ることになりそうだ。(自滅するEUの分裂と対米離脱、そして中東戦争へ

また、ユーロ圏で一大事となれば、当然ながらQTにより市場から資金吸収が進むドルも持たない。しかも、FRBのQTは8月になってから急速に進んでいる。以下はFRB資産の月足チャートだ。

FRB資産月足

8月に急減している。

先日のジャクソンホール以降の株式市場の下落の原因は、FRBのエライ人達のタカ派発言ではなくFRBがQTに本気出し始めたからなのかもしれない。

結局のところ、欧州→アメリカの順で金融危機は発生しそうであり、その点から見るとウクライナ戦争の真のターゲットはEUだった。

ロシアvsウクライナの戦争だが、抽象度を一段階上げるとアメリカ・イギリスvsEUという構図が見えてくる。

支配者層の御意は、アメリカ・イギリスを使ってEUに対ロシア制裁を強要させ、EU発の金融危機を誘発するつもりなのだろうか。

なお、「いよいよインフレが本格化 そして日本デフォルトとデジタル円」等で紹介したように、日銀は利上げどころか国債買入れ額を減らすテーパリングすら不可能な財務状況なのだが、それが幸いしてQE継続の日本だけが金融危機の嵐のダメージが少なそう。

そうなると、日本への投資集中により円高となりそうで、まさにBank Mergereのイルミナティカードの暗示どおりか。

bank merger

そして最後に円を飲み込む巨大なさかなクンは、ロシアなどBRICS諸国が進める金・資源本位通貨なのだろう。(ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット)(ロシアの金・資源本位通貨は新たなバンコールか)(いよいよインフレが本格化 そして日本デフォルトとデジタル円

「金融システムのグレートリセット」に繋がる動きがどんどん明らかになりつつある・・・。


最後まで読んでくれてありがとう!