ここ数日で、中東情勢がにわかにきな臭くなってきた。
イスラエル軍とガザ地区を治めるハマスとの間で戦闘が激化し、ロケット弾と空爆の応酬が始まっている。
パレスチナ戦闘激化 イスラエルがハマス拠点を空爆 https://t.co/cP7r4eHw8j
— GAIA FORCE TV ღ (@GAIAFORCETV) May 15, 2021
BBCニュース – イスラエル主要都市にロケット弾130発 ハマス「空爆に報復」https://t.co/JJuxqEXjrA
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) May 12, 2021
ハマスがテルアビブに打ち込んだロケット弾を迎撃する様子も。
普通にやばいんですが😅😅✨ pic.twitter.com/RYqwOLrOa3
— HiQ1717 (@yy197210) May 10, 2021
イスラエルの人達の日常なのか、ロケット弾撃ち込まれてもあまり怖そうではない。これは、イスラエルが誇る迎撃システム「アイアンドーム」によって、ハマスのロケット弾の9割は迎撃されているからだろう。
このアイアンドームは、AIによってロケット弾発射から21秒以内に着弾地点を予測し、迎撃ミサイルを発射するシステムだ。しかも、人口密集地に落ちるロケット弾だけを迎撃し、砂漠に落ちるものはスルーする無駄の無さ。
一方、イスラエル軍によるガザ地区空爆の様子も。
This is how #Israel employs US missiles to massacre the captive population of #Gaza. This is where the US taxpayer dollars go.#American #HumanRights #GazaUnderAttack #America #IsraeliTerrorism
— نائلة (@hopenothope) May 12, 2021
こちらの方がヤバそうな感じだ。5月12日の空爆では、子供10人以上を含む少なくとも49人が死亡したとか。
かなり至近距離で空爆と捉えた映像も。
パレスチナやイスラエルの日常がこれか・・。ちょっと耐えられないかも。
イスラエル軍は、地上部隊に動員をかけたようで、戦闘はさらにエスカレートする可能性が高い。
イスラエル軍、地上部隊による攻撃開始 https://t.co/5GPez8PQCd
— ロイター (@ReutersJapan) May 14, 2021
地上部隊はガザに突入していないものの、イスラエル軍による砲撃・空爆は激化しているようで、目ぼしい対象は軒並み攻撃に晒されておりメディアも例外ではない。
イスラエル「自衛権」で正当化 ガザのメディア支局ビル破壊 https://t.co/jsLfX1wAZg
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) May 15, 2021
メディア攻撃は、パレスチナ問題と中国のウイグル問題を同列に語られるのを避ける狙いもありそうだが、敵地のメディアに悪事をバレされる前に排除するのが目的だとすると、イスラエルのやる気は相当なものだ。イスラエルはハマス弱体化まで停戦しない意向もあると言う報道を見かけたが、本当みたいだ。
なお、ハマスは「テロ組織」のイメージが強いが、病院や学校を運営をして貧困層支援に取り組んでいるほか、パレスチナ自治政府を運営する政治部門もあるため、ガザ地区の公的機関は多かれ少なかれハマスと関係がある。
イスラエルの「自衛権」の理屈に基づくと、それなりに大きな建物・施設は大体ハマスと関係があり、イスラエル軍の標的となってしまう。
既にこの空爆等による犠牲者は200人を超えたとか。
イスラエル、ハマス幹部宅など空爆 パレスチナの死者200人超す https://t.co/uO4qiJTM9j
— 産経ニュースWEST (@SankeiNews_WEST) May 16, 2021
イスラエルの本気度は高い。この機に一気にハマス潰しに来ている感じがある。
イスラエルは世界最速のワクチン接種は、この侵攻が目的だったのか・・。やはりワクチンは「戦略物資」。日本のワクチン担当が厚生労働省ってのはマズいかも。
イスラエル軍の地上部隊がガザに侵攻していないのは・・アメリカのGoサイン待ちか、ネタニヤフが必死に止めているかどちらかだろう。いずれにせよ、侵攻すれば2014年以来の大規模衝突となる。
これまでのパターンなら、イスラエルが一方的にハマスをボコることになりそうだが今度はどうだろうか。
実は、イスラエルには苦い記憶がある。
2006年にレバノンのシーア派武装組織ヒズボラと軍事衝突したが、期待していた米軍の参戦はなく、さらに国際社会の圧力もあってヒズボラと停戦するハメになった。
ヘタにイスラエル・ハマスが全面戦争となれば、ヒズボラがイスラエルを襲う可能性も。国際社会の目もあるなかで、ハマス・ヒズボラの2正面作戦はイスラエルと言えどもキツイだろう。しかも、両勢力とも背後にはイランがいる。
さらに、現在の中東親米諸国の動向も気になる。イスラエル最大の味方は親米国家のサウジアラビアだが、最近は旗色が悪い。
アメリカは、トランプ時代に「米国産シェール推し」政策でサウジ原油に頼らない方向転換や、トランプ政権下で始まったイエメン紛争やカショギ事件暴露により、サウジの実権を握るMbS王子の立場は弱まる一方だ。
これらの事件・紛争を起こすに当たり、サウジアラビアは間違いなくアメリカに事前相談をしたハズだが、完全に梯子を外された形だ。
さらに、バイデン政権になると、トランプですら公表しなかったカショギ事件の報告書を公表してMbS王子を更なる窮地に追い込むと共に、イエメン紛争を継続するサウジアラビアに武器を売らないとした。
アメリカのシェール推し・カショギ事件公表・イエメン紛争によって、MbS王子はアメリカ(&イスラエル)離れを強要されているように見受けられる。特に、イエメン紛争ではフーシ派と和解するのにイランとの協力は必須だ。
サウジは、アメリカによって親米・親イスラエル路線から、親イラン路線へと転換を迫られているっぽい。
さらに、サウジの盟友とも言えるUAEは、イランの脅威に対しサウジと共闘する同盟国だが、国内にはイラン企業数千社があり50万人ものイラン人が働いている。また、イランとの貿易額はは年間数十億ドル規模にのぼる、隠れ新イラン国家だ。
ヨルダンに至っては、国内に多数のパレスチナ難民を抱えており、安易にイスラエルの味方など出来ようハズもない。
中東の石油王たちは、イスラエルの味方をしにくい。
また、中東覇権はシリアやISのゴタゴタを経て、アメリカからロシアに移行しつつある。そんなロシアとアメリカは、これまた意図的とも思える仲違いの最中だ。アメリカもヘタに介入しずらい。
さらに気になるのが、今回のイスラエル軍とハマスの衝突の発端だ。
どうやら、イスラム教のモスクにイスラエル治安部隊が踏み込んで起こった衝突がエスカレートしたもののようだ。
イスラム教とユダヤ教双方の聖地「神殿の丘」にあるイスラム教礼拝所「アルアクサ・モスク」周辺などエルサレムの数カ所で7日夜、パレスチナ人とイスラエル治安部隊が衝突。イスラエル紙は、パレスチナ人163人が負傷したと報じました。https://t.co/qwNIpR8PDi
— 毎日新聞 (@mainichi) May 8, 2021
ハマス・イスラエルの報復の応酬が、ここまでエスカレートしてるのか・・お互いに恨みは深そう。
現在のところ、イスラエル軍もハマスも攻撃前に事前通告をしているようで、人的被害はある程度抑えられているようだ。
だが、イスラエル国内で「mob」と呼ばれるユダヤ系極右勢力やイスラエルの公的治安部隊によって、パレスチナ系住民に被害が出ている。
憎悪の生中継、ユダヤ系極右がアラブ系住民を「集団リンチ」 https://t.co/KC9yKCFLAs
— ニューズウィーク日本版 (@Newsweek_JAPAN) May 14, 2021
この構図・・アメリカ大統領選で出てきたアンティファやBLM運動とよく似ている。
イスラエルの治安部隊や半グレ系集団を使ってパレスチナ系住民に危害を加え、意図的に衝突を引き起こした可能性もあるな。
となると、今回の衝突の根っこには「【原田武夫】トランプ和平案のせいで中東戦争?イスラエルは危機的状況に!?」で紹介したトランプの和平案がありそうだ。
トランプ和平案は、キリスト教やイスラム教の聖地でもあるエルサレムを「イスラエルの不可分の首都」としたほか、ヨルダン川西岸に違法入植を進めるイスラエルの行為を肯定するなど、露骨にイスラエル贔屓なものだった。
バイデンもトランプ路線を継承してイスラエル寄りだったので、イスラエル内部の右派強硬勢力が一気にハマスを片付けるためにしたのかもしれん。
やはり、今回の衝突は意図的に引き起こされたものか。
以前のブログで、トランプ和平案によって中東戦争が起こる可能性とともに、イスラエル単独で戦争に望むことや石油価格の上昇を招く危険性があることを紹介した。
元キャリア外交官の原田武夫氏が、自身のブログで語ってたことのうち「中東に関すること」を考えてみたい。※リンク先のブログは全部英語です。言葉が少しおかしいのは機械翻訳なので勘弁してください。参考までに、上記ページで原田武夫氏が警鐘を鳴[…]
この時は、石油価格上昇によってインフレが進みQE(量的緩和)が終了することが日本で金融崩壊・デフォルトを引き起こす可能性を指摘した。
だが、インフレ被害やQE停止の危機は日本だけではなく、世界中どこでも同じだ。
過去に石油危機でインフレとなった際には金融引締で収束しているため、同様の事態となればFRBや日銀などに速やかな金融引締(供給資金減、金利上げ)を求める圧力がかかるだろう。
だが、金融引締には問題が山積みだ。
現在のQE(量的緩和)では、市場へ資金供給する際に、インフレ(=金利上昇)が起こらないように中央銀行が大量に国債を購入して低金利を実現している。
中央銀行がどれだけ国債を購入しても、政府が国債をどれだけ発行しても問題が少ないのは超低金利だからだ。
しかし、「コロナ終わらないのに進むインフレ」で紹介したように、世界では物流の混乱や穀物価格等の上昇、コロナ対策として実体経済への現金バラマキによって既にインフレ傾向となっている。
特にアメリカでは、予想を上回るインフレで市場に動揺が。
🇺🇸消費者物価指数(CPI)⚠️インフレ加速
結果:4.2%
予想:3.6%
前回:2.6%初動
金利上昇
株安 pic.twitter.com/qKYIwlsVDy— にこそく (@nicosokufx) May 12, 2021
景気が回復したワケでもないのに、既にインフレ気味になっているところに、限定的であっても「中東戦争」となれば、さらなるインフレを招く。
また、既にインフレ対応としてQE縮小(テーパリング)・金利上昇の声が聞こえている。
このブログでも、米国債の金利上昇がかなり前から進んでいることや、その原因がインフレの可能性を指摘していたが、その傾向はより顕著になる。
金利が上がれば、アメリカや日本政府が発行する莫大な国債の利払いが苦しくなる。
また、金利上昇は国債価格の下落を招き、さらなる金利上昇・・のスパイラルとなるが、そうなれば株価も大暴落だ。さらに、市中の銀行も自己資本比率の関係からリスク資産の投げ売りに走り、暴落スパイラル突入となる。
また、日銀やFRBは莫大な国債・債券を保有している。さらに、日銀は莫大な株式ETFも保有する。国債や株価暴落によって、日銀やFRBのバランスシートは大きく棄損する。
日銀やFRBの財務悪化により、「ドル」や「円」に対する信認に疑念を持たれることになるかもしれない。円やドル、ユーロなどメジャー通貨安が誘発されれば「狂乱物価」さながらのインフレ・・と言うかスタグフレーションになろう。
こうした事態を踏まえると、インフレでも安易に金融引締に転じることは難しい。
ただ、イギリスやカナダでは資産買入額を減らしたり、日銀も4月以降は株価下落してもETF買いをあまり行っていない(4月21日は実施)。インフレを踏まえ、QE停止圧力が高まっていることがうかがえる。
ただ、このインフレは景気回復ではなく、物流混乱や商品価格上昇などによるものなので、QEやめてもインフレは止まらないばかりか、金融市場に混乱をもらたすだけの結果になりそうだ。
以前に「中央銀行による金融支配の終わりが近い!?」で紹介したが、原田武夫氏によると「政体勢力」の上に位置する「国体勢力(王族たち)」が、リバランス(おカネを入れる)の必要性を意識しつつあるとのこと。
イスラエルやハマスも衝突のエスカレートは避けたいだろうが、支配者層たる国体の皆様が金融崩壊を仕掛けるとするなら、この衝突の行方は要注意だ。
最後まで読んでくれてありがとう!