さて、新型コロナウイルスの感染拡大に揺れる日本では、東京オリンピック開催か中止か延期かで揺れている。
そうした中で、東京五輪が開催されない場合にどんな影響があるかの試算が出てきたぞ。以下はデイリースポーツからだ。
SMBC日興証券は6日、新型コロナウイルスの感染が終息せず東京五輪が開催中止に追い込まれた場合、国内総生産(GDP)を約7・8兆円、1・4%押し下げるとの試算を発表した。
五輪は、観客などの消費や大会運営で6700億円の需要があると予想している。SMBC日興証券は感染拡大が7月まで続けば五輪が中止になるとみている
莫大な税金をかけて準備を進めているオリンピック中止となれば、その影響は甚大だ。ヘタすれば日本が傾く。
だが、損失は日本だけが追うものなのだろうか。
元々のオリンピックは「アマチュアスポーツの祭典」で儲からないものだったが、転機となったのは1984年開催のロサンゼルス・オリンピックだ。
それまでの開催都市が多額の費用を負担する慣習を覆して商業手法が導入されたのだ。
もちろん、税金を1セント足りとも使わないようスタジアムは古いものを使い回すなど、経費削減の徹底も行った。
「オリンピック価値」の積極的な活用が図られ、スポンサー収入だけでもモントリオールオリンピックの700万ドル(約600社)を大きく上回る1億5720万ドル(35社)を集め、最終的に2億ドル以上の黒字を出した。
こうして「儲かるイベント」となったオリンピックだが、今回の東京五輪はどうだろうか。
まず、東京五輪の誘致段階ではロス五輪と同様に、スタジアムの使い回しなど経費のかからない形での開催を目指していた(ハズだ)。
実際にはスタジアムの改築等はあったものの、ロス五輪の前例からすればスポンサー料や放映権料だけで経費の大部分は賄えていたはずだ。
だが、フタを開けてみれば、東京都・国は3兆円を超える税金を投入している。
東京オリンピック招致委員会は電通経由で行った2億円の贈賄が問題になったが、こうした表に出せない経費を含めると3兆円以上かもしれない。
そんなに税金を投入しながら、ボランティアは交通費・宿泊費も自腹のタダ働きだ(前回の東京五輪はそれなりの報酬が出ていた)。
税金投入額ゼロではないにせよ低価格での開催が可能なところ、2億円の贈賄はじめ3兆円以上も使っていることは、誰かにカネが「不正に流れている」ことを意味する。
国際金融資本勢力など、超富裕層に流れていることは推測するに固くない。
このようなオリンピックの開催に意義があるのかどうか。
だが、日本には何が何でもオリンピックを開催したい事情があるのも事実だ。
日本では、2019年10月ー12月期のGDPは年率換算で△7.1%という前代未聞の下落幅だったが、これはGDPの6割を支える個人消費が消費増税で冷え込んだためだ。
※GDP△6.3%は速報値で、3月9日に△7.1%に下方修正されたぞ。
さらに、新型コロナ自粛ムードが追い打ちをかける。
大相撲や競馬は無観客試合、野球のオープン戦やJリーグは延期、ディズニーリゾートやUSJは閉園、ガラガラのイオンモールと消費増税の比ではない景況感だ。おそらく1月ー3月期のGDPはさらに絶望的だろう。
このままだと実体経済がヤバいのだ。オリンピックで何とか挽回したい。というか、オリンピック中止となれば、本当に実体経済が倒れる。
金融緩和で救えるのは株式・債券市場などの金融面だけで実体経済が救われないのは、リーマンショック以降で景気の良さを感じた「庶民」がいないことが証明している。
そして、事態は急展開している。週明けの東証の下落幅は1000円を超えた。以下は共同通信からだ。
東証大幅続落、終値2万円割れ
週明け9日の東京株式市場は新型コロナウイルス感染症の流行長期化で世界が不況に陥りかねないと懸念され、日経平均株価(225種)は急落して節目の2万円を割り込んだ。急速な円高ドル安や原油価格暴落が市場の波乱要因として意識され、一時前週末比1277円49銭下落した。
終値は1050円99銭安の1万9698円76銭で、約1年2カ月ぶりの安値を付けた。終値の下げ幅は約2年1カ月ぶりの大きさだった。前週末6日の大幅安に続いて売りが加速した。
米国内での感染者が500人を超えたと伝わり、米景気悪化への不安を背景にドル売りが進んで一時1ドル=101円台に達した。
怒濤のブラックマンデー。だが、ヤバいのは日本だけではない。以下はAFP通信からだ。
イタリア、ミラノやベネチアなど北部の広範囲を封鎖 新型コロナ
【3月8日 AFP】(更新、写真追加)欧州での新型コロナウイルス流行の中心地となっているイタリアは7日朝、ミラノ(Milan)があるロンバルディア(Lombardy)州全域、ベネチア(Venice)を含むベネト(Veneto)州の一部地域、パルマ(Parma)とリミニ(Rimini)を封鎖した。
ジュセッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相はツイッター(Twitter)で、北部の広範囲を1か月近く封鎖する政令に署名したと発表した。
中立系全国紙コリエレ・デラ・セラ(Corriere della Sera)などのメディアが入手した政令案によると、上記の都市、地域への出入りは4月3日まで厳しく制限される。
イタリアの人口は約6000万人で、金融の中心地ミラノの人口は140万人弱。ロンバルディア州の人口は1000万人。ベネチア、パルマ、リミニの人口は、合わせて約54万人。
イタリアでは、新型ウイルスの感染者が5883人、死者が233人に上っている。(c)AFP
イタリアでは、死者が突出している北部を中心に、4月3日までの約1ヶ月間の都市封鎖に踏み切った。
ミラノやベネチアなど有名観光地も含まれ、封鎖対象はイタリア人口の約4分の1にあたる1500万人に及ぶ。封鎖都市への出入りはもちろんのこと、都市内部では映画館や美術館その他集客施設は全て閉鎖だ。
日本に続き、イタリア経済も絶望的だ。
さらに、アメリカもカリフォルニア州やワシントン州、ニューヨーク州などで非常事態宣言が出ており、アメリカ経済も絶望的だ。
アメリカ企業は、経営状態が悪くても比較的低金利で資金調達しており、それらは証券化されて世界に売られている。以前にもお伝えしたコベナンツライトローンやレバレッジドローンだ。企業版サブプライムローンてとこだ。
だが、実体経済の急速な悪化で米企業の赤字が急拡大し、これらのローン返済が滞れば2008年のサブプライムの再来だ。
このほか、低金利な社債発行による資金調達をしている企業も多いが、実体経済の急速な悪化を受けて社債も危なくなりそうだ。以下はロサンゼルスタイムズ(英語版)だ。機械翻訳なので、変な日本語は勘弁してほしい。
ウイルスに襲われた企業が借金を返済できないという懸念により、信用市場は崩壊
米国の信用市場は、コロナウイルスの拡散が企業の収入と一部の企業の債務返済能力を損なうという恐れが強まっているため、過去10年間で最悪の日に苦しんでいます。
中略
売却は、投資家が損失をヘッジするために使用するデリバティブ指数の急上昇を引き起こし、少なくとも2011年以来、ブルームバーグがまとめた価格を最も押し上げました。信用市場のメルトダウンは、投資家が社債やローンを購入する米国のファンドから少なくとも10年で最も多くの現金を引き出した1週間の最高潮でした。
「これは、長期の強気相場が始まった後の不況の始まりです」と、ダイヤモンドヒルキャピタルマネジメントのポートフォリオマネージャーであるジョンマクレインは述べています。「これは市場でパニックを見る最初の日です。」
過去2週間で株は劇的に売り切れましたが、信用の低下はこれまでほぼ順調でした、と市場参加者は言います。彼らは、取引を成し遂げるためにさらに低い価格で証券を入札し、取引コストをはるかに高くしています。一部の人にとっては、キャリアでこのような不安定さを経験したのは初めてです。
販売圧力の大部分は、投資適格のゼネラル・エレクトリック社や高利回りのチャーター・コミュニケーションズ社などの流動性の高い名前に打撃を与えています。今週、マクドナルド社やシグナ社などの有名な発行体から販売された債券は、流通市場で打撃を受けました。レバレッジドローンは2週間の急落を続け、99ドル近く、または売却前の額面近くで取引された後、ドルで90セントを下回るローンが増えました。
中略
わずかな猶予にもかかわらず、旅行会社とエネルギーが矢面に立って痛みが広がっています。Traceによると、American AirlinesとViking Cruises Ltd.は、金曜日の高利回り市場で最も悪い旅行業界のパフォーマーの1つであり、一部の債券は12%を上回ります。エネルギー債券は石油で急落し、ヘス社やチェサピークエナジー社などのリスクの高い借り手に影響を与えています。
エジンバラを拠点とするカメスのファンドマネージャーで、ヨーロッパと米国の両方の市場で取引しているマーク・ベンボウ氏は、価格の一部は誤解を招く可能性があると述べています。トレーダーはリスクを取ることを非常に嫌っているので、実際の売買活動とは対照的に、債券が引き下げられることをより反映していると彼は言った。
以下略
変な日本語ですまん。内容は、社債が急落して金利が急上昇していると書いてある。GEやマクドナルドといったビッグネームすらも例外ではないようだ。
一部には社債は下げ過ぎという声もあるようだが、いずれにせよ急速な社債金利の上昇はCDS上昇を招く。
債券価格低下・金利上昇・CDS上昇は、債券市場の信用不安を招く。そして、この構図はリーマンショックそのものだ。
新型コロナウイルスは、アメリカ覇権の継続を望む国際金融資本勢力が、中国を退けるためのものと思っていた。
だが、世界中で実体経済を蝕み始め、その先にある社債やローン証券を通じて「金融市場」をも脅かし始めた。
これまでにも、レポ市場の金利急上昇など金融市場が崩壊しそうな予兆はあったが、その度に各国の中銀がQEの形で資金供給するなど金融バブルの拡大により崩壊を免れてきた。
まだ数年は金融バブルの拡大が続くかと思っていたが、新型コロナウイルスによりまさかの金融危機が目前に迫っている。
日本も東京五輪&変異ウイルスによって、デフォルトまで追い込まれる可能性はこれまでにも述べてきた。
日本デフォルトへの道か 新型コロナの感染拡大で日銀QEは終了!?
原田武夫氏の予測 中東戦争による石油危機は日本デフォルトを誘発!?
【原田武夫】新型肺炎パンデミックで東京五輪中止に!その後ウィルスは強毒化!?
現状だと、日本のデフォルトが先か、金融危機が先かというくらいの状況だ。
しかも、新型コロナウイルスの感染拡大はこれからが本番だ。まだまだ続く。新型コロナ序盤でここまで市場が荒れるとは正直思わなかった。
もはや東京五輪の開催などという次元の話では無い。
新型コロナは、実体経済から金融市場を破壊するアプローチで金融危機を誘発しようとしている。
しかも、リーマンショック時よりも金融市場バブル規模ははるかに大きい。そして、各国中銀に金融緩和余力はなく、政策的に弾切れ状態でそれを迎えることになる。
原田武夫氏の言う価値観の転換が目の前まで迫ってきている。
最後まで読んでくれてありがとう!