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ロシア、ドンバス併合に向けて動く

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ロシアのプーチン大統領が、ドンバス2州の独立を承認した。

独立承認については、ロシア下院からの要請を受けたもの・・という体裁をとっているが、実際にはプーチンが議会に要請させたものだろう。

先週、議会がドンバス2州の独立承認要請を可決してから音沙汰無かったので、ウクライナへの圧力材料にしているのかと思っていたが・・いきなりカードを使ってきた。

先日の「ウクライナで激化する戦闘はウクライナ政府が望んだこと?」で、ウクライナがドンバス2州への自治権付与が出来なかった場合に、ロシア軍が2州を取るのが「Bプラン」だと思っていたが、どうやら自治権付与ではなく両国を独立させ編入するのが「Aプラン」だったようだ。

こうした状況を受けて、欧州勢からはミンスク合意違反との非難が出ている。

ただ、ウクライナ側もロシア系武装勢力側も、互いに停戦違反を繰り返していたり、ドンバスへの自治権付与についても、高度に政治的な調整が必要なものであり、実現はかなり困難なものだった。

さらに、欧米勢やロシアの思惑も重なることを踏まえると、ミンスク合意とはつまるところ「絵に描いた餅」に過ぎないものだった。

ということで、事態は「ウクライナ情勢 アメリカ覇権の撤退とロシアのやる気が見えてきた」で予想した方向に動いているようで、ウクライナ東部地域(ドンバス)2州のロシアへの編入こそが、ロシアと欧米(というよりは支配者層)が決めた計画だった可能性が高い。

そうなると、アメリカが「ロシア軍がウクライナ全土に侵攻してくるぞ~」と喧伝してインテリジェンス拠点のキエフ大使館を閉鎖したのも、計画に基づく自作自演ということになる。

また、このタイミングでウクライナ東部地域(ドンバス)で砲撃の応酬開始も、ロシアによる独立承認→編入計画に基づく行動だった可能性が高く、ウクライナ軍内部とロシア系武装勢力の双方に入り込んでいた扇動部隊が引き起こしたものと見るべきか。

そもそも、ウクライナ軍が攻撃すれば、ドンバス2州はロシアに助けを求めるに決まってるだろうし、手を出したらイカンやつだったのにな・・。

さて、ドンバス2州で激化しているウクライナ政府軍とロシア系武装勢力との戦闘は、ロシアの国家承認により状況が大きく変わりそうだ。

ロシアは独立した両「国家」からの平和維持のための軍派遣要請に基づいて、ロシア軍派遣を決めたとか。

プーチン大統領は、国家承認した「ドネツク人民共和国(DPR)」と「ルガンスク人民共和国(LPR)」に、ロシアの平和維持軍の派遣を命じたとか。

ウクライナにとっては自国領にいるドンバス2州の武装勢力の鎮圧も、ロシアからみれば隣国のロシア系住民に対する侵略・迫害行為という事になる。

ウクライナとしては、うっかりロシア軍の侵攻を招きかねない事態となったため、これまでのように安易に軍の力で弾圧することが難しくなった。

まさに、以前のブログで、北京冬季五輪終了前後に、ウクライナ東部のロシア人武装勢力に対して、ウクライナ軍が(欧米勢にそそのかされて)動き出すなど、ロシアがウクライナ侵攻せざるを得ない状況に追い込まれる可能性を紹介したが・・何か、そんな感じになってきた。

まあ、「平和維持軍」という観点からは、NATO軍やアメリカ軍もウクライナ入りすればいいじゃんとも思うが、以前にも紹介したように、ストルテンベルグNATO事務局長は「NATO軍がウクライナに入ることはない」と表明している。

まあ、NATO加盟国でもないウクライナのために、NATO諸国が自国の兵士が犠牲になるかもしれないのに、ロシアと事を構えるハズもない。

さらに、「16日のロシア軍事侵攻はアメリカのガセネタだったが目的は達成」で紹介したように、東欧に派兵したアメリカさえも、米軍は「ウクライナ紛争に巻き込まれない」と表明している。

アメリカだって、ウクライナのために、アメリカ人兵士がロシアと対戦するかもしれない介入に積極的なワケがない。

アメリカやNATOに、ロシアと戦争になりかねないウクライナへの「平和維持軍」を派兵する意思は無い。

こうした点から、戦争の雰囲気は醸成されるかもしれないが、本格的な戦争は無さそうだ。日経も大きく下げたものの後半戦は盛り返してるし、ビットコインも下値を掘らない。

結局これだったか。

また、ウォール・ストリート・ジャーナルさえも、ウクライナ東部(ドンバス)において、ロシア系住民が迫害される様子が生々しく紹介するなど、ウクライナ政府の正統性に疑問を呈する記事を出している。

なお、ドンバス2州はロシア系住民が大半を占めていることもあって、ウクライナ政府はこの地域を見捨てており、医療やインフラなどの生活基盤はほとんど整っていない。

ドンバス住民に対する迫害はそれなりにヒドイと言え、ロシアに泣きついていくのも理解できる。

また、ロシアがドンバス2州を独立承認したことを受けて、バイデン大統領は両州に対して制裁を課すとした。

ドンバス2州におけるアメリカ人の投資等を禁止する形での制裁となるようだ。

ただ、この小さな地域に限定して、しかもアメリカ人の投資や金融取引を禁止するだけの制裁に何か意味があるのだろうか・・・。

むしろ、今後のロシア覇権下で安定的・継続的に発展する余地があることを踏まえると、むしろアメリカが介入するチャンスを潰しているだけのような気がする。

ちなみに、親ロシア諸国は、この独立承認の動きを歓迎していることを、ロシア系通信社のスプートニクが報じている。

さて、今後の見所としては、プーチン大統領が派兵決定したロシアの「平和維持軍」が、本当にドンバス2州に入るかどうかという点と、欧米によるロシアへの経済制裁の内容だろう。

まず、ロシア「平和維持軍」だが、既にドンバス2州の独立承認した今となっては、ウクライナ軍はロシア系武装勢力に対する攻撃をためらうだろうから、その点では「侵攻」までする必要性は薄い。

ただ、ドンバス2州の劣悪な生活環境を支える目的での軍派遣はあるかもしれないが、いずれにせよ、先に触れたように、アメリカ軍やNATO軍が介入する可能性は低い。

次に、アメリカさんの経済制裁だが、これもかなり微妙だ。

ロシアへの「迅速で厳しい経済制裁」については、天然ガス価格の高騰など欧米へのブーメランとなりかねないし、SWIFTに頼らない国際送金ネットワークや相互の通貨による直接取引が出てきているなど、ロシアにどれほど影響を与えるかは不透明だ。

また、そもそも厳しい経済制裁を発動できない可能性もある。

何故なら、「ウクライナ疑惑の新たな証拠!?真の疑惑はトランプかバイデンか」で紹介したように、バイデン大統領には弱みがあるからだ。

2014年に、ウクライナの親ロシア派のヤヌコビッチ大統領を、アメリカが扇動したデモで退陣に追い込み、親米派のポロシェンコを大統領に就任させた。

バイデン副大統領(当時)は、ウクライナへのシェール開発援助の見返りに、息子のハンター・バイデンをウクライナのガス会社ブリスマの役員に就任させ、2019年まで月額5万ドルの報酬を受け取らせていた。

この後、ウクライナではブリスマの脱税疑惑の捜査過程でハンターの名前も上がったが、資金援助をチラつかせたバイデン副大統領(当時)はウクライナの検察長官をクビにさせた。

いわゆる「バイデンのウクライナゲート」だが、この後にトランプがウクライナに「バイデン親子の疑惑をちゃんと捜査しろ」と電話したことが、援助を盾にしたウクライナへの不正圧力として騒がれ「トランプのウクライナゲート」となった。

そして、ロシアはこの「バイデンのウクライナゲート」を握っている。

アメリカの対応によっては「バイデンのウクライナゲート」が暴露されることも考えられ、そもそもウクライナへの米軍派遣や強烈な経済制裁は出来ない可能性が高い。

結局のところ、今回のロシアの動き(=ロシアへの編入)によって、ウクライナ東部地域(ドンバス)は長期的に安定する。

また、アメリカのインテリジェンス機能などを失ったウクライナは、2014年以前に戻り、親ロシア派政権が出来ることになりそうだ。

そうなれば、今回のウクライナ情勢緊迫化の目的だった「アメリカ覇権の撤退とロシア覇権下への編入」は達成されることになる。

また、東欧からのアメリカ覇権の撤退という目的を踏まえると、アメリカがウクライナ情勢の仲裁者となることは適切ではなく、存在感を示す展開にはなり得ない。

そうなると、あの原田武夫氏が言っていたように、バチカン辺りが仲裁に乗り出すことになるのだろうか・・。


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