昨日、10月15日からFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が事実上のQEの再開に踏み切った。
米FRB、資産買い入れ再開=短期国債を月6.5兆円規模で
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は、民間金融機関が資金を融通し合う短期金融市場を安定させるため、15日から短期国債を月600億ドル(約6兆5000億円)のペースで買い入れることを決めた。2014年10月に量的金融緩和を終了して以来、5年ぶりに保有資産の拡大に踏み切る。
ただ、資産購入再開についてパウエルFRB議長は「(景気刺激のために長期金利の低下を促す)量的緩和ではない」と強調。買い入れ対象は償還期間が1年以内の国債に限定し、量的緩和で購入した長期国債は除外した。
短期金融市場では9月中旬、金利が急上昇してFRBの政策金利の上限を突破。法人税支払いなどで資金需要が高まったのが直接の要因だが、量的緩和収束で銀行が短期市場に融通できる余剰資金が減り、短期金利が上がりやすい状況になっていた。
FRBの保有資産は金融危機時に導入された量的緩和で約4兆5000億ドルまで拡大したが、金融政策の正常化の一環として17年10月に資産圧縮を開始し、約3兆9000億ドルまで減少。銀行がFRBに預けた余剰資金である準備預金も約2兆8000億ドルから半減していた。
FRBは少なくとも20年4~6月期まで国債購入を続け、銀行が潤沢な準備預金を保有できるようにする。FRBの資産は20年4月ごろには圧縮開始前の水準に迫る計算だ。
FRBの説明によれば、今回の資産買い入れの目的は、あくまで短期金融市場(レポ市場)を安定させるためのものということだ。
先日、【短資金利】日米で起こっている金融危機の密かな進行でも書いたとおり、アメリカの短期金融市場(レポ市場)では、金融機関同士で資金を融通し合えないという異常事態が起こっている。
アメリカレポ市場の異変
短期金融市場では、金融機関同士が短期的な運転資金を融通し合うため、FRBが設定したFF金利(1.75%~2%)で取引がされるのだが、市場の資金不足から、この金利が9月に10%というとてつもない水準に達した。
このため、本来は金融機関同士が貸し借りするところ、FRBが国債を担保に直接貸し付けすることになった。一時的なものだったはずだが、結局のところ、未だに金融機関同士の取引はされておらず、みんなFRBから借りている。
FRBによれば、FRBがQE(量的緩和)をやめたこともあり、金融機関がFRBへの準備金を圧縮したところに、たまたま時期的に資金需要が重なった結果、どこの金融機関も資金不足になったというものだ。
なお、QE(量的緩和)ではFRBが各金融機関から国債等を買い上げて、代わりにFRBが刷ったお金を金融機関に渡すため、金融機関には常に潤沢な資金があった。ところが、FRBは2014年にQE(量的緩和)をやめ、FRBの持っていた国債等を手放し正常化することを試みていた。
ここでオカシイ点がある。
- たまたま資金需要が重なった位で金利が10%にもなるような資金不足は起こりえない。
- 未だにみんなFRBから借りている。
ということは、レポ市場混乱の原因は単なる資金不足ではない。
金融機関同士が疑心暗鬼になり、運転資金を貸すこと嫌がっている可能性が高い、ということだ。
一体何に対して、そんなに疑心暗鬼になっているのか。
今回のFRBの資産買入施策とは
FRBの説明によると、今回の施策は以下のようなものだ。
- レポ市場の異変について、国債等を「担保」にカネを貸していたところ、金融機関の国債を買ってカネを渡すことにした。
- 目的は各金融機関の資金を増やすため、ひとまず国債等を買い上げて、金融業界に資金供給をする。
- あくまでレポ市場の安定化が目的だ。
- 債券市場を助けたり、市場にマネーを供給し景気拡大を図ることが目的のQE(量的緩和)とは違うんだからQEと呼ぶんじゃねぇ。
- なお、月額600億ドル規模で買い入れるぞ!過去のQE(量的緩和)でも400~800億ドルだったから、ほとんど同じ規模だぞ!
- でもQEじゃねえぞ!
つまるところ、QEをやめようと2014年から頑張ってきたがやっぱダメだった、ということだろう。
QE(量的緩和)再開後の世界
アメリカでは2014年にQE(量的緩和)をやめたが、日本やEUでは継続していたため、日銀やECB(欧州中央銀行)からの資金によりアメリカの債券市場などは支えられていた。この間に、アメリカが正常な状態に戻っていれば、日本やEUもQE(量的緩和)をやめることが出来たのかもしれない。
なお、ECB(欧州中央銀行)もQE(量的緩和)を9月から再開した。しかし、買い支えられているはずの株価などは特に上がっていない。
日本だって、株価は一進一退だ。それどころか、日銀が金融機関からの国債買入を減らそうとしたところ、国債が売れず金利が高騰する事件が先月起こった。日本はもう日銀が国債を引き受け続けないと、まともに国債を消化することが出来なくなりつつある。
このまま行けば、アメリカもEU同じことになると思う。
これで日本・アメリカ・EUのいずれかの債券市場や株式市場が下落となれば、QE(量的緩和)に意味がないことが分かってしまう。
一番最初に下がったところから、エラいことが起こる!
政府が好きなだけ刷った国債を、中央銀行が全部引き受けるのがQE(量的緩和)だ。
本来であれば、政府なりが経済指標などを基に財政を考えながら国家運営するんだよな。国債刷って無限にカネが沸くなら、税金なんか取らなくてもいいだろ。
だからQE(量的緩和)が続くほど、中央銀行には誰も買わない=価値のない国債が大量に資産計上されていく。
そんな中央銀行「大丈夫か?」ってなり、そんな中央銀行が発行している通貨も「大丈夫か?」ってなる。
もし、最初に日本の債券や株式市場が下落すれば「大丈夫かよ」って言われるのは日銀だ。
そうなれば怒涛の株安・債券安・円安が日本を襲う。円安は輸出に有利なんて言ってられるレベルではないと思うぞ。
原田武夫さんは日本がデフォルトすると分析しているが、こんな感じでデフォルトに向かうのかもしれないな。
備えは金(ゴールド)しかない
これまで述べたような不安がすでに金融機関にはあると思う。
だから、世界の中央銀行は金(ゴールド)の保有量を増やしている。
金価格の覚醒はここからだ。ということで、過去記事を参考にゴールドを備えることを検討して欲しい。