7月12日のモーサテで、ホリコ・キャピタルマネジメントの堀古さんが強気のバブル入り予想をしていた。
米国株利回りと長期金利を踏まえるとバブルはこれから本格化するとして、「すぐに利食いするな」「いま割高でもためらうな」「空売りはうるな」のバブル戦略が紹介されていた。
FRBが緩和的であることや、現金・ 預金合わせたマネーストックが19兆ドル(アメリカ株の約半分の規模)と、めちゃくちゃ金余りになっていることが根拠だとか。
ただし、景気敏感株は既に十分買われているから推奨しないとか。そして、インフレは一時的なもので長続きしないとして、今年は金利1.6%辺りを越えない前提の元で、グロース株が推奨されていた。
おお・・ついにバブルへGoの時代が到来するのか。札びらでタクシー止める練習しとこかな。
ただ、個人的に気になったのはインフレを一時的なものとしており、ニンフレ懸念(偽のインフレ懸念)と言ってたのは気になった。
一方で、みずほ証券の山本さんは、インフレは一時的なものと見られているとした上で、想定以上に上がっており、背景には供給網の制約があると指摘していた。
インフレの原因については「WHO「コロナはまだまだ終わらない」 迫りくるのはインフレリスク!?」などで何度か取り上げているが、今のインフレは「コロナ禍からの回復需要」が原因ではなく、世界の物流混乱でコンテナ船の運賃が3倍~15倍程度に高騰していたり、食糧品先物価格上昇や半導体不足などが原因のコストプッシュインフレだ。
そして、金利上昇の原因もこのインフレに求められる部分が大きい。
このインフレと関連して、もう一つ気になったのが、三井住友DSアセットマネジメントの市川さんが「リバースレポ」について触れていたところだ。
たとえテーパーリングを実施してFRBが完全に資金買入れをやめたとしても、資金回収(引き締め)を始めない限り、ジャブ資金は世に出たまま#モーサテ pic.twitter.com/U0NPJYHhNu
— 亀太郎 (@kame_taro_kabu1) July 11, 2021
市川さん曰くらFRBはQEでカネを供給する以上に市場からカネを吸収しており(リバースレポ)、カネ余りの度合いは大きくテーパリング開始時期が早まる可能性もあるとか。
ただ、テーパリングとは供給資金量の減少に過ぎず、カネ余りの状況は変わらないとしている。
そんなの意味あるのか・・と言うことで気になる「リバースレポ」。
具体的にはFRBが金融機関に国債を渡し、金融機関はその国債を担保としてFRBにカネを預けるというもので、FRBが市場にバラマキ過ぎたカネを吸い上げ始めたと言えるだろう。
一方で、市場のカネ余り状態は変わらず、株式市場への影響も少ないとのこと。うーん、何のために実施されているのか。
以前に「アメリカレポ市場へのFRB資金供給増額が意味すること」で、金融機関が短期資金を融通し合うレポ市場で、JPモルガン・チェース銀行がレポ市場向け資金を大幅に減額したことをきっかけに、レポ市場で貸し手不在となり金利が大幅に上昇するという異変が生じたことを紹介した。
この時は、FRBが金融機関の保有する国債と引き替えに資金供給したが、これはまさに事実上のQE再開であり、JPモルガンがそれを促した形なのだった。
そして、今FRBがやっているのはこの時とは逆で、金融機関が持つカネを吸収しようとしている。
実は、FRBはかなり本気で「リバースレポ」を進めようとしており、先月(6月)のFOMC(連邦公開市場委員会)では、翌日物リバースレポ金利の5bp引き上げが決められた。
FRBのリバースレポ取引額、7558億ドルと最高 金利調整後も https://t.co/Vo7t4Lyopu
— ロイター (@ReutersJapan) June 17, 2021
ちなみに、IOER(超過準備預金金利)も同様に引き上げられた(0.1→0.15%)が、これは金融機関からFRBへの預け金のうち法定分を超えた部分につく金利。
いずれにせよ、FRBにカネを預け入れてもゼロ金利だったものが、0.05%の金利が付くようになった。
これを受けて金融機関はリバースレポに殺到しており、FRBが吸い上げたカネは、過去最高額を記録したとか。
FRB、リバースレポの吸収額9920億ドル 過去最高更新 https://t.co/qFImFtUrzQ pic.twitter.com/KPQhtAkJV0
— ロイター ビジネス (@ReutersJapanBiz) June 30, 2021
1日で9920億ドル!?
QEで毎月1200億ドル資金提供しているが・・吸い上げているカネは桁違いだ。QE継続に意義があるのか疑問が出てくるレベルと言ってもいい。
このリバースレポは、FF金利調整の支援であり経済全般に大きな影響を与えることはないと言うが・・この規模で本当に影響は無いのだろうか。以下はゼロヘッジさんによる「危なくない?」との記事。
Zoltan Sees Reverse Repo Hitting $2 Trillion In Weeks: What Happens Then https://t.co/QdToTtjKij
— zerohedge (@zerohedge) July 5, 2021
金融機関がリバースレポ全振りになって、伝統的な本来業務である企業や個人への融資を減らすんじゃないだろうか・・との指摘だ。
確かに、銀行の立場で考えるとリバースレポは魅力的だ。1日で9920億ドル集まるだけはある。
何せ、超低金利下では本業の融資業務では大した利益は得られない。しかも優良企業は社債発行での資金調達の方が有利だろうから、融資先はハイリスクな企業ばかりだ。
ハイリスクローリターンの本業に比べると、FRBのリバースレポならノーリスクで0.05%ゲット。そりゃ本業そっちのけで殺到するわ・・。
そうなれば、ゼロヘッジさんの指摘するように、融資は縮小・切り捨ての傾向が強くなる可能性は高い。
そうなると、リバースレポの真の目的は、金融機関の融資業務の縮小など、実体経済へのカネの流れを縮小させることなのかもしれない。そして、それはインフレ対策となる。
これまで、QEで大量の国債発行(=造幣)しても、実体経済にカネは回らず金融市場(債券買い支え)などに投入されたのでインフレにはならなかったし、FRBが国債消化して金利を低く抑えていた。
しかし、物流混乱等に端を発したコストプッシュインフレに加え、コロナ景気対策で多くの給付金・補助金が実体経済へとバラまかれた結果、インフレが加速している。金利上昇はインフレを受けたものだ。
リバースレポによって金融機関が融資を縮小すれば、実体経済に出回るカネは減少する。インフレは幾分かは抑制され、並行してQEによる国債買い入れを継続すれば、国債利回りも低く抑えられる。
さらに、リバースレポでは金融機関の資金と引き換えにFRBが保有する国債を渡す。金融機関は、国債の消化先となり、FRBの保有資産は圧縮されるので、インフレで金利上昇しても、FRB保有資産の棄損ダメージは抑えられる。
先日の「アメリカはインフレを放置プレイ中か」でも触れたが、FOMCで「テーパリングを始めるための議論を始めようかな~」と言ったところ、株価は敏感に反応した。テーパリングはなかなか難しい。
と言うことで、融資を受けられなくなる企業さんは苦しくなるが、リバースレポへの資金誘導により実体経済に回るカネを減らしてインフレ抑制することで、FRB(ドル)の延命に繋げようということだろうか。
もしかして、バーゼルⅢを見据えた対策!?(バーゼルⅢで金と仮想通貨は爆上げ そしてドルは崩壊・・世界統一デジタル通貨へ)
最後まで読んでくれてありがとう!