油田

原油高は中東混乱の前触れか 実はサウジアラビアが震源になるかも

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最近、原油価格が少しずつ上がってきている。

コロナ禍で、そこまでの需要はなさそうだが・・上がってきているのは、近いうちに中東で何かあるからなのか。

中東の混乱と言えば、イランvsイスラエルの中東戦争が予想されるところだが、実は意外とサウジアラビアが追い詰められている状況がある。

サウジアラビアは最大の産油国として、石油はドル建てでしか売らない(=ドルは石油を買える唯一の通貨)「ペトロダラー体制」により、ドルの信用・基軸通貨性を支えるとともに、豊富に手に入れたドルで米国債を買い支えることで、アメリカとの蜜月関係を築いてきた。

しかし、そんな蜜月関係が崩れつつある・・というか崩れている。

民主党・バイデン政権が、オバマ政権「イラン核合意」のように、中東の安定のために反米国家イランを優遇して、親米のサウジアラビアやイスラエルに冷や飯を食わせるのではないか、との観測が出ている。

しかし、この観測は半分間違いだ。

そもそも、「イスラエルファースト」と言われたトランプ政権でも、サウジの扱いはかなりヒドかったからだ。

トランプのサウジへの仕打ちとして、まず、シェールオイルの大幅増産があげられる。

何と、アメリカは世界一の産油国となってしまったことでエネルギーの自給度合が高まってしまった。つまり、アメリカはサウジアラビアに気兼ねすることなく、中東外交を展開出来るようになったのだ。

こうして、サウジの石油に頼らなくなったトランプは、サウジが嫌がることを次々にやり出した。

  • シリアやイラクからの撤退
    いずれもイランの影響が強い地域で、米軍撤退によりイランの覇権下に入ってしまう。
  • エルサレムのイスラエル帰属の支持
    サウジはイスラム教の聖地メッカ・メディアを有する、いわば守護者としての地位を自称する。聖地エルサレムのイスラエル帰属は、支持出来ない。
  • カショギ事件
    サウジ人ジャーナリストのカショギ氏が、在トルコ・サウジ領事館内で殺害された。首謀者はサルマン皇太子であることが暴露済み。ギクシャクしていたサウジ・トルコ関係を決定的に破壊した。

最後のカショギ事件を挙げたのは、アメリカが黒幕はサルマン皇太子と暴露した可能性も感じられるからだ。こんな感じでサウジの権威は失墜していた。

サウジがアメリカに振り回されている間に、イランは中東地域の新イラン勢力を軍事面・財政面から支援することで、その覇権を着々と固めていた。

シリアのアサド政権への支援をはじめ、レバノンのヒズボラやバーレーンのアル・アシュタール旅団、イラクのカタイブ・ヒズボラ、イエメンのフーシ派などが挙げられる。

そして、イエメンのフーシ派といえば、イエメンでは、サウジアラビアが後押しする「ハディ暫定大統領派」と「フーシ派(親イラン)」の内戦が未だに続いている。

この内戦の経緯として、2015年にイエメンのハディ政権とフーシ派の対立が激化して内戦化したところに、サウジが介入したものだ。サウジが、イエメンにイランが支援するフーシ派政権が出来ることを嫌ったためだ。

しかし、サウジの介入はアメリカにハメられた感もある。

フーシ派が政府軍を破って首都を制圧するなど戦いを有利に進める中で、何と米軍は「いやー、イエメン危険地域っすね」「フーシ派とイランはそんな仲良くないらしいっすよ」と言ってイエメンから撤退したのだ。これにはサウジもびっくり。

こうしてやむを得ず介入したサウジだが、アメリカの全面協力の密約は無かったことになっており、さらに、イラン製のドローン兵器で精油施設を攻撃されるなど、戦況はずーっとフーシ派有利に展開している。

サウジが推すハディ前大統領の実効支配はイエメン国内のわずか1割程度しか及んでおらず、事実上サウジアラビア軍がフーシ派と戦闘している状況だ。

人道上の問題になっているイエメン国民への爆撃や食糧不足は、暫定政府とサウジアラビアが行っているものであり、暫定政府・サウジ軍こそが非難されるべきテロ組織というのが現状だ。

話は逸れたが、トランプの狙いはサウジの国力を削るだけ削ることにあったようだ。そして、追い詰められたサウジがイランと和解することでペルシャ湾地域の緊張を緩和しようとしていたっぽいな。

この推測を裏付けるのが、2020年1月のソレイマニ司令官殺害事件だ。

この件については、イランが米国にミサイル報復をしたことで、「米国に立ち向かった中東で唯一の国」としてイランの地位向上につながったことは以前にもブログで書いた

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イラン

だが、もう一つ大きな意義があったようだ。

2020年1月、ソレニマニはイラクで殺害されたのだが、そもそもソレイマニがイラクにいた理由について、イラク首相が議会で述べた。

それによると、ソレイマニは、イランからサウジ国王に宛てた親書(返信)をイラク首相に渡す予定だったとのことだ。

つまり、2020年1月の段階で、サウジはイラクの仲裁によりイランと和解するつもりだったところで、そのキーマンのソレイマニが米軍ドローンに殺害されたということだ。

サウジにしてみれば、イランとの和解が成立すれば、イエメンのフーシ派とも和解出来るし、何よりも国民に不評なイスラエルと組む必要もなくなる。

それをトランプがジャマしたのは、サウジの国力を削るだけ削る必要を感じたからかもしれない。体力が残っていると、サウジと仲良しのイスラエルにつけ込まれ、イランとの和解が台無しになることを恐れたのだろう。

しかも、イエメン内戦が長期化することで、サウジに大量の兵器を売りつけることが出来る。これには、軍産・国際金融資本勢力の皆様もニッコリなので、米軍撤退と違ってジャマされない。イエメン国民を思うと、人道的に許せるものではないが・・覇権とはそうも言ってられないのだろう。

また、トランプはサウジやUAEとイスラエルの国交正常化を図っていたが、イスラエルと国交正常化したサウジやUAEがイランと和解すれば、イランとイスラエルの和解も見えてくると踏んだ策だったのかもしれない。

こうして、戦闘は5年以上も継続してきたが、サウジへの助け舟なのか。バイデンがサウジに「武器売らねぇ」と言い出した。

サウジやUAE(アラブ首長国連邦)と言った、親米国家への武器支援をやめるとか。

サウジは米製武器で、病院やスクールバスを爆撃して多くの子供たちも殺害した。バイデンのこの決断は、人道的な観点から歓迎される。

それにしても、武器を売らないことを軍産・国際金融資本勢力が了承したのは、トランプの意図を見抜いたからなのか。

いずれにせよ、バイデンのこの決断は、アメリカのせいにしてイエメンから撤退出来るようにするための、サルマン皇太子への助け舟だろう。

イランはサウジから和解を持ちかけられれば、応じる可能性はあるが、その場合、米国やイスラエルとの関係修復、経済制裁の撤廃などが条件となるだろう。そうなれば、イランは石油収入を元にますます強くなる。

しかし、この状況をヨシとしない勢力が動いているようだ。

発端はイラクで多くの犠牲者を出した自爆テロだ。

さらに、イラクの民兵組織PMUもテロの標的にされた模様。

安全保障の議員が言う「テロ組織」とはISであり、その背後にはアメリカ、サウジ、そしてイスラエルいるとか。

さらに、イラクのレジスタンス組織が、23日にサウジアラビアの首都リヤドへに無人機攻撃による報復をしたとのこと。

イラクと言えば、サウジとイランの仲介役だったハズなのに・・・。

どうやら、軍産・国際金融資本勢力はISを使って「サウジの和解」をジャマしてきているようだ。

かつて、オバマ政権でイラクから米軍が完全撤退した後に、ISがイラクで暴れたため再度米軍を派遣するハメになったことがあったが・・今回も同じ構図か。

しかし、サウジは原油価格の低迷で金欠になっておりピンチだ。

サウジでは、採掘コストをペイするために60ドル~80ドルの原油価格が必要とのことだが、今は高くなってやっと50ドル前後だ。

サウジでは公務員の給与水準を下げたほか、高級品への付加価値税の税率も上げるなど、国民の不満が高まりやすい状況になっている。ヘタすれば王制転覆の可能性も。

バイデンは環境保護を理由にシェール規制を訴えていたハズだが、実際には何もしない模様だ。シェール規制を理由とした原油価格高騰は起こらない。

やはり、バイデンはサウジをアメリカチームから追い出したそうだ。

いずれにせよ、中東和平の実現をヨシとしない軍産・国際金融資本勢力は、サウジ・イエメン紛争を長引かせようとする。

しかし、バイデンは武器を売らないし、サウジはそもそもカネが尽きている。

残るは、米軍の直接介入とだが・・もしも、そうなれば原油価格の高騰が起こるだろう。

そういえば、旧南イエメンの首都アデンは、インド洋から紅海へ抜ける要衝で、日本の石油輸入にも重要なチョークポイントだ。アデンの対岸ジブチには自衛隊も駐屯している。

もしかして、フーシ派のせいにして、サウジ(かIS)が、この辺りで何か仕掛ける可能性もある。

原油価格の高騰は、インフレを招く。日本はじめ世界中でインフレとなると、QEの継続も困難になってくると思われるが・・・。


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