IRとは統合型(Integrated)のリゾート(Resort)のことで、カジノ施設含め様々なお楽しみ施設が併設された一大リゾート施設のことだ。
統合型リゾート(とうごうがたリゾート、英: Integrated Resort、略称:IR)とは、国際会議場・展示施設などのMICE施設、ホテル、商業施設(ショッピングモール)、レストラン、劇場、映画館、アミューズメントパーク、スポーツ施設、温浴施設などと一体になった複合観光集客施設のこと。日本においては、地方自治体の申請に基づきカジノの併設を認める区域を指定して設置される予定である。
(Wikipediaより)
まあ、様々な施設の中でもカジノが中心に来るのは間違いない。例えば沖縄の豪華ホテルにショッピングモールを併設するよりも、カジノを作った方が儲けはケタ違いだからな。当然、税収も期待できる。
ということで、官民挙げてIRに取り組んでいるというワケだ。
もっとも、カジノで儲けるのは簡単ではない。日本のご近所だとマカオや韓国のカジノリゾートが有名だが、儲けているのは圧倒的にマカオだ。韓国では15程度のカジノがあるが、利益が出ているのは韓国人の利用が認められている1か所のみだ。
マカオが儲けているのは「ジャンケット」がおり、「VIPルーム」からの収入が多くを占めることが理由だ。
「ジャンケット」はカジノからVIPルームの運営を任されている者たちだ。ジャンケットは、カジノの上客に対するコンシェルジュとして、ホテルや食事の手配から雑用までマカオ滞在中のお世話を引き受ける。
さらにカジノ軍資金も用立てている。中国では人民元の国外持ち出しに2万元/人という制限を課しており、マカオへも2万元までしか持ち込めない。このため、マカオの「ジャンケット」は中国人富裕層にカネを信用貸しているのだ。
また、よく言われるとおり「マネーロンダリング」もある。上客は表に出せないお金をジャンケットを通じてマネーロンダリングする。
ジャンケットにカネを預け、折を見てVIPルームで適当に勝たせてもらえばいいのだ。何なら勝ったことにして札束を持ってカジノから出てくれば、それだけでマネーロンダリングは完了だ。
こうしたジャンケットがいるからこそ、マカオのカジノは世界一儲かっているのだ。アメリカ資本が入っているけどね。
日本人は「清廉・高潔」が大好きなので、マネーロンダリングイメージの強い「ジャンケット」はナシにする方向のようだ。なので、日本のカジノは韓国と同様に失敗するだろう。
さて、このカジノIRを作っていこうとIR推進法が可決したワケだが、昨年12月に元IR担当副大臣の秋元司(衆院議員)がIRをめぐって中国企業からの収賄容疑で逮捕された。逮捕したのは「東京地検特捜部」だ。
東京地方検察庁にある特別捜査部ということで、東京地検特捜部だ。主に政治家の汚職や大型脱税等を独自に捜査・摘発する。
この事件の詳細は以下の産経新聞の記事が分かりやすい。
収賄罪で追起訴された衆院議員、秋元司被告は逮捕以来、一貫して容疑を否認しており、公判では検察側と全面対決になる見込みだ。中国企業「500ドットコム」側から受け取った金品を賄賂と認識していたかや、職務権限の有無などが争点になるとみられる。
「私は、一切不正には関与しておりません。このことをしっかり主張して参ります」。秋元被告は逮捕後、支援者らに宛てた手紙で潔白を訴えた。
秋元被告の起訴内容は主に3点で、(1)衆院解散日に「陣中見舞い」名目で現金300万円を受領(2)自身が実質管理する会社の口座に講演料名目で200万円の振り込みを受けた(3)北海道や中国に招待されるなどして約220万円相当の利益供与を受けた-ことだ。
弁護人によると、秋元被告は(1)については「受け取っていない」と授受自体を否定している。(2)は「賄賂ではなく講演に対する正当な対価」と主張。(3)は「秘書が支払っていると思っていた」と説明している。
収賄罪の成立には公務員が、自身の職務権限に関して賄賂を受け取ったことが要件とされるが、弁護人は「副大臣は何かを決められるわけでもなく、IRについて具体的に『500』社側にしてあげられることはなかった」と徹底抗戦する姿勢を見せている。
ある特捜部OBの弁護士は「300万円の授受のほか、秋元被告にどんな職務権限があって、贈賄側が何を期待して、秋元被告がそれにどう応えたのかが公判の焦点になる」と話した。
秋元氏は1月にも再逮捕されており、中国企業から総額で700万円ほどのカネや便宜供与を受けたとされている。
収賄額としては東京地検特捜部が動くほどでもない「小物」の部類に入る。なので秋元氏個人が収賄を受けたことでは重要ではない。他にも100万円受け取ったものは何人かいるが、逮捕に至ったのは秋元氏だけだ。
要は他の議員や官僚に対する「見せしめ」ということだ。
では誰が「見せしめ」させたのか。
まずは、彼を逮捕した東京地検特捜部について見てみよう。
東京地検特捜部の前身は、GHQ内に設立された「隠匿退蔵物資事件捜査部」だ。反米的な日本人や旧日本軍が隠した反米運動用の物資(隠匿退蔵物資)を摘発するなど、いわばGHQの下部組織としての性格を持っていた。1947年の旧日本軍と政財界が絡んだ汚職事件により「東京地検特捜部」となった。
今でも「反米的な活動に対処するために特捜が動く」と言われており、米中等距離外交を唱え対米従属からの自立を試みた田中角栄一元首相やその意思を継いだ小沢一郎は検察に狙われた。陸山会事件などが記憶に新しい。当ブログでは、過去にも検察の闇について紹介したことがあるので参考にしてほしい。
森ゆうこ「検察の罠」は国際金融資本の傀儡の闇が分かる本だった
ようするに、東京地検特捜部は「アメリカにとって不都合な事案への対処のために動く」ということだ。陸山会事件では、証拠書類の改ざんや検察審査会を誘導し、官僚権力の制限や対米自立を志した民主党の小沢一郎の失脚を図ったことが明らかとなっている。
さて、アメリカにとって何が不都合だったのか。
アメリカのカジノ業界大手「ラスベガス・サンズ」のアデルソンCEOは、トランプ大統領の大口献金者だ。そして、トランプ大統領は「ラスベガス・サンズ」の日本参入を安部首相に働きかけたことがアメリカのニュースサイトで報じられた。
また、アデルソンCEOは頻繁に来日しIR関連法案に関して自身に有利となるよう”圧力”をかけるなど、参入前提だ。大都市2か所・地方都市1か所なども、この圧力を受けたものだ。アメリカでは過当競争でうま味が少ないので、日本ではライバルを少なくするためだろう。日本市場に相当参入したいようで、100億ドルもの投資を宣言している力の入れようだ。
まあ、これで中国に参入されたらたまらんぞ、というわけだ。
そんな検察は、人事問題で揺れている。以下は産経新聞からだ。
東京高検検事長、異例の定年延長波紋 野党「政権介入」 検察「難事件に対応」
政府が東京高検の黒川弘務検事長(63)について異例の定年延長を決定したことが波紋を広げている。「安倍晋三政権との距離が近い」(政府関係者)とされる黒川氏に、検察トップの検事総長就任の可能性を残す形となり、野党が「政権介入」「裏技」などと反発する。だが、黒川氏が日本の刑事司法制度を揺るがせた日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(65)の逃亡という極めて困難な事件の捜査指揮に当たっているのも事実だ。(市岡豊大)
政府は1月31日、2月7日で定年だった黒川氏の勤務を8月7日まで半年間延長することを閣議決定した。検事長の定年延長は極めて異例だ。検察ナンバー2に当たる黒川氏の人事をめぐっては、稲田伸夫検事総長が自らの職を譲らなければ退官せざるを得なかったが、定年延長により、稲田氏が7月まで慣例通りに2年間の任期を全うすれば、黒川氏を後任に充てることが可能になった。
衆院予算委員会では、野党から批判的な質問が相次いだ。
「(捜査現場に)にらみをきかせてもらうために、検事総長にするつもりで定年延長したのか」(国民民主・渡辺周氏)
「首相さえ逮捕できる権限がある組織の人事に裏技を使った」(立憲民主・本多平直氏)
検察庁法は検察官の定年について検事総長は65歳、それ以外は63歳と規定。同法に定年延長に関する規定はないが、国家公務員法では退職で公務運営に著しい支障が生ずると認められる場合、1年未満の範囲で勤務を延長できる。
批判に対し、森雅子法相は3日の衆院予算委で「検察庁法は国家公務員法の特別法。特別法に書いていないことは一般法の国家公務員法が適用される」と説明。「重大かつ複雑、困難な事件の捜査・公判に対応するため、黒川氏の指揮監督が不可欠だと判断した」と理由を述べた。
「事件」は、ゴーン被告が昨年末、レバノンに逃亡した事件を指すとみられる。黒川氏は法務省勤務が長く、他省庁や国会議員との窓口となる官房長と事務次官の在任期間は計約7年半に及び、豊富な人脈を生かした調整力が評価されている。身柄の引き渡しも含め官邸や外務省、警察庁など他省庁と連携した「国を挙げた戦い」(検察幹部)となっている逃亡事件の対応には、黒川氏の行政手腕が必要という判断だ。
官房長時代、東京地検特捜部が捜査した小渕優子元経済産業相側の政治資金規正法違反事件や甘利明元経済再生担当相の現金授受問題などで議員本人は不起訴とされたことから、黒川氏は「官邸の用心棒」(本多議員)などと揶揄(やゆ)される。元検事の郷原信郎弁護士は「官僚支配を強めつつある現政権としては、独立性を尊重されてきた検察庁も例外ではないことを示そうとしたのではないか」と話す。
一方、東京地検特捜部は昨年12月、政権の看板政策の一つであるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件に着手した。検察内部では消極論もあった中、黒川氏は積極的に進めた一人とされる。
ある特捜部OBの弁護士は「特捜部経験もある黒川氏は検察内部では事件積極派で知られる。仮に総長になったとして、政権に忖度(そんたく)してやるべき事件を止めることはあり得ない」と語る。政府高官の一人も「官邸から高く評価されているのは事実だが、検察が官邸の思い通りになるなどというのは論外だ」と断じた。
黒川さんという人を官邸は気に入っていて、検察のトップに据えたい。でも今のトップの稲田さんが勇退しないと席がない。もともと稲田さんは勇退予定だったが、カルロスゴーン逃亡事件が起こった。ここで勇退すると、ゴーン逃亡の責任を取って辞任した形になってしまうので辞めれなくなった。
でも黒川さんの定年間近…なら黒川さんの定年をちょっと伸ばせば問題なしってことのようだ。検察内部では、人格高潔な別の人を推していたようだが、官邸の意向で黒川さんがトップになると言うことだ。
野党マスコミが騒ぎ立てるほどには怪しくないが、やり方が強引すぎると言えばそのとおりだ。そもそも「内閣」が「司法」にあからさまに介入している時点で「三権分立」の観点から大問題だと思うが。
だが、検察といえども所詮は「官僚(司法官僚)」だ。権力の根源は官邸と同じ「対米従属」にある。自民党清和会(安部首相や小泉元首相など)と官僚が歩調を合わせて「国際金融資本勢力(アメリカの多国籍企業など)」に日本人の財産を献上する政策をしやすくするための人事なのだろう。
こうして、IR(カジノ)という舞台では官邸と官僚主導でアメリカに利益供与するお膳立ては整いつつある。
破談になったがTPPを参考に、日本政府はどの程度アメリカに日本人の財産を渡そうとしていたのかを考えながら、IR(カジノ)で日本が得られる利益の程度を見てみたい。
まずはリゾート開発からだ。TPPでは日本は全ての公共事業の門戸を開くことになっていた。それを踏まえると、こんなオイシイ案件は当然アメリカ企業が落札する。
アメリカ企業は自社の系列建設会社に発注し下請けも全てアメリカ企業だ。作業員は人件費の安い東南アジア辺りから連れてくるのだろう。日本の建設業界の出番はない。この時点で日本への経済効果は無い。
次に、カジノやリゾートがオープンしたら運営はアメリカ企業が担う。日本人が担うのはカモの役割くらいだろうか。もちろん、カジノ収益に対する税収はそこそこの額となるだろうが、経済的な波及効果は無い。税収が上がって喜ぶのは財務官僚だけだ。
また、マカオのようなジャンケットがいないとなると、おそらく利益は出ない。TPPの合意を踏まえると、想定される利益が出ない場合は「聞いてた話と違うから差額を日本政府が出せ」となる。また、日本政府は日本人の出入りを自由にして精いっぱいカモとしての役割を果たしてもらうことにすると予測する。
まあ、いずれにしてもロクなことにはならないだろうな…。カジノ参入が中国企業の方が、日本の取り分が増える可能性があるだろう。
最後まで読んでくれてありがとう!