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経済戦争で苦境のドイツ EUはアメリカ陣営から離脱する

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ウクライナ危機の本質として起こっている経済戦争。この経済戦争で一人負けの様相を呈しているのがドイツだ。

ご存じのとおり、EU(特にドイツ)はロシア産天然ガスや石油へのエネルギー依存度が高く、未だにロシアから天然ガスを買い続けている。

こうしたEUの対応に、アメリカさんはイラついているようだ。

NHKが報じるところでは、アメリカとEUは「協力してロシアに圧力かけようね!アメリカもエネルギー分野で援助するよ!」と合意したとのことだ。

ただ、実際の温度感は「おいこらEU、お前いつまでロシアからガス買っとんねん。ふざけんな。」と言った感じなのだろう。

ドイツは、急いで「2024年にロシアから買う天然ガス量を1割まで減らすことにします」と表明している。

2024年までとは中々に悠長だが、ドイツは天然ガスの5割強をロシアから、残りをノルウェーやオランダから輸入しており、ロシアの代替確保が大変なことが伺える。

ただ、ドイツは輸入した天然ガスの約半分を「転売」しているので、ロシア産の天然ガスを早急に減らしても耐えられそうではある。

しかし、ロシア産の天然ガスを減らすには問題がある。

以前にも紹介したように、ドイツのシュレーダー元首相がロシア国営石油企業「ロスネフチ」の会長であり、国営天然ガス企業「ガスプロム」の取締役に指名され、その子会社のパイプライン運営会社「ノルドストリーム」の役員でもある。

ドイツとロシアには天然ガス利権の繋がりが見え隠れすることや他国への転売益含め、ドイツの国際金融資本の面々が困るロシア産天然ガス輸入削減は簡単には進まなさそう。

そして、ドイツがロシアから天然ガスを買い続ける理由が利権にあるとすると、防衛(NATO)はアメリカ頼み、カネ儲けはロシア頼みという二股ドイツさんに対してアメリカは「アメリカ陣営に止まるor対米離脱」の決断を迫っていることになる。

さすがのEUは「ロシアからの資源輸入を完全に止めようぜ」と決議した。

とりあえず石炭輸入を止めることになったものの、ドイツやフランス、スペインなどが決議に反対しており、実施は1か月先送りされている。

ウクライナのゼレンスキー大統領も、ドイツや親ロシアのハンガリーを名指しで批判する。

EUにおける重要事項の決定は全加盟国が賛成する必要があるが、新ロシアでロシアに深く依存するハンガリーは必ず反対する。

表立って反対出来ないものの、ロシアからのエネルギー資源の輸入を止めると経済が即死するドイツ(やフランス)にとって、親ロシアを貫くハンガリーは神に見えることだろう。

結局のところ、EUでは確定反ロシアなのはポーランド、一部の北欧が反ロシア気味程度であり、こうした状況を踏まえるとEUが結束するハズもなく、今後も禁輸は延期延期となり実質的な意味合いは皆無のカラ制裁にいなると思われる。

また、中東勢OPECさんは「ウチはロシアさんの肩代わり出来まへんで」と水を差す。

ロシア陣営に寝返った中東勢は、バイデン大統領の電話会談にも応じず石油価格高騰を放置してウハウハなので、協力する気など全く無さそう。

さらにEUでは、ウクライナに武器支援する方向に進むことになった。

ただ、ウクライナの制空権をロシアが掌握する中で、実際に武器(重たい重火器とか戦車とか)を送り込むのは難しいと思われるが、マヂでロシアにキレられそうなこの動きにドイツは焦ったようだ。

何と、ウクライナと合意した兵器輸出に、ドイツのショルツ首相や防衛相が反対しているとか。

ドイツは軍事費削減で国防に支障が出るレベルなので「ウクライナにあげる余裕無いっす」というのが理由ぽい。

ただ、これは表向きの理由で、ロシア産の天然ガスが無いと色々と困る・・という切実な事情(利権)や、勝敗の帰趨が既に決したのに、ワザワザ兵器支援するフリするのダリぃっすとの本音が見える。

そんなドイツが率いるEUが、ポーズの域を超える真に有効な制裁などするハズもないのだが、「供給の不安定化」が喧伝された天然ガス価格は高騰しているほか、2021年のCOP26の前後から出始めた温暖化対策としての(国際金融資本が利権を抑える)原発再稼働の動きを後押しすることになりそう。

どこまで行っても、国際金融資本は儲かるように出来ているが、国際金融資本の儲けの原資を負担しているのはドイツ国民であり、エネルギー価格その他諸々のインフレで大変な状況になっているとか。

新潮さんの記事では、ドイツ経済への深刻なダメージが報じられている。

例えば、

今年1月の見通しでは、ドイツの約420万世帯の電気料金は平均63.7%上昇し、360万世帯のガス料金は62.3%値上がりとなっていた。

とある。

エネルギー自給できないドイツの電気代・ガス代はもともと高めだったが、それが前年比プラス60%に高騰しているとか。

ちなみに、ロシア系メディアによると、ドイツにあるガスプロム子会社が保有するドイツ最大の天然ガスタンク(国内シェア25%)の残量は1%しかないとか。

なお、ドイツにあるガスプロム子会社は制裁の一環でドイツに接収され国有化されている。

ドイツにおけるロシア産天然ガスの重要性が喧伝される展開となっており、資源企業はウハウハだろうが、ドイツ国民はかなり厳しい状況に追い込まれていることが伺える。

さらに、先日のブログでも紹介したように、ドイツでは電気・ガス以外に大手スーパーチェーンで20~50%値上げとなっており、エネルギー・ブツの両面で激しいインフレとなっている。

先の週刊新潮さんの記事にも、

3月のドイツの消費者物価指数(CPI)は前年比7.6%上昇した(EU基準)。戦後のドイツの最悪のインフレ率は第1次石油危機時の7.8%だったが、この数字が更新されるのは時間の問題だろう。

とあるように、既にドイツでは1970年代の石油危機に匹敵するインフレとなっているだけでなく、さらなるインフレ亢進が見込まれている。

こうした国民生活の困窮は、ドイツ国民に「エネルギー面のロシア依存脱却は絵空事」との意識を刷り込むことになり、将来的な対米離脱へと繋がることになる。

さらに悪いことに、このインフレ亢進によってドイツ・・というかECB(欧州中央銀行)でもQE終了&利上げ観測が出てきており、金融引締め転換へと追い込まれている。

新潮さんの記事にも、

ドイツ連邦銀行は4月6日「不動産市場が過熱しており、多額の債務を抱える不動産購入者への銀行融資を懸念している」と警告を発した。金融引き締めは間近に迫っており、ドイツ経済のハードランディングのリスクは高まっていると言わざるを得ない。

とあり、QE終了&利上げによって、不動産購入者のクビが回らなくなりQEバブル崩壊が懸念される状況となっている。

また、以前にも「ドイツ銀行のCDSが8000兆円!?これが欧州経済崩壊の引き金か!?」等で紹介したように、ドイツ銀行は社債などの債券破綻を補償するCDSやデリバティブを大量発行している。

これらの債券類は、金融緩和による潤沢な資金流動性&超低金利が大前提となっており、QE終了&利上げにより連鎖破綻する懸念はつきまとう。

折しも「制裁強化で現実になる米ドル崩壊と食糧危機」等で紹介したように、ロシア金融制裁により米ドルの基軸通貨性が揺らぎそうな中でアメリカでもQEバブル崩壊懸念が出ている。

こうした中で、「ロシアと敵対したくない」「アメリカに防衛(NATO)して欲しい」という二股ドイツに、アメリカさんは「ロシアかアタシかはっきりしなさいよ!」と迫っている。

QEバブル崩壊を踏まえれば、遅かれ早かれEUは対米離脱をすることになりそうなのだが、それを先取りするのがフランスだ。

フランス大統領選では、親ロシア・NATO離脱を掲げる極右のルペンが大健闘している。

選挙期間中の今こそ世論に配慮してロシア敵視に傾いているものの、「ロシアからの資源輸入止めません」「NATO(アメリカの軍事支援)脱退」を掲げている。

ルペンの「極右」とは、フランス国民の利益最大化を目指す「ナショナリスト」であり、「アメリカに従属しないことが国民のためよ」と言っているに等しい。

ルペンの政策はEUが対米離脱して一つの「局」となることを意味しており、来るべきアメリカ覇権崩壊後のEU自立時代を睨んだ動きと言える。

まあ、ルペンが勝つのは難しいだろうが、フランスは対米離脱派と従属派で割れることになるのは間違いない。

これまでに何度か紹介しているこのイルミナティカード。

bank merger

ここにユーロが入っていないのは・・EUは対米離脱してロシアとの関係を改善し、「ウクライナ危機でロシアが仕掛ける金・資源本位通貨」したロシア陣営が構築を進める新たな通貨システムと上手いことリンクするからなのかもしれない。

異常に強硬なアメリカ含めEUなど欧米勢の動きは、新たな金融システムの構築に向けたものなのか。

さて、開戦前の水準まで戻したロシアルーブルは、ここに来て足踏み状態となっている。以下はルーブルドルの日足チャートだ。

20220415ルーブルドル日足チャート

この理由は、急激なルーブル高をロシア中銀が調整しているためとか。

ロイター報道によると、ロシア中銀は「個人の現金外貨購入」「証券会社を通じた外貨購入時の手数料(12%)廃止」を打ち出してルーブル高を牽制するなど、かなりの余裕を感じる。

この背景には、ロシアが保有する石油や天然ガス、鉱物資源、金などのレアメタル、さらには小麦などの輸出が絶好調なことが挙げられる。

ロイターさんによると、ロシアの収入は4月だけで96億ドルも増加する見込みとか。

JETROによると、2020年のロシアの輸出額は3400億ドル程度なので、96億ドル/月という額は相当なものだ。

まあ、ロシア制裁には欧米勢(日本含む)を中心とした世界の4分の1程度の国しか参加しておらず、ロシア資源を買おうとする国はいくらでもあるからな。

対中包囲網クアッドの一角ながらアメリカさんと距離を置くインドは、ロシア産原油を20%ディスカウント価格で、前年比の倍ペースで購入(それでも侵攻前より高い)している。

あのブルームバーグも、制裁によってロシアが3210億ドルの収入を得る旨を報じている。

エネルギー輸出で3210億ドル(約40兆円)・・予想される経常黒字額2400億ドルという数字は、ロシアが記録的な収入を得ることを示唆している。

先日も紹介したように、ロシアはドル建て国債の利払い・償還をルーブル払いしたが、それを市場は「デフォルト」とは捉えてなさそうなのは、この莫大な貿易黒字があるからなのかも。

そして、ロシア国債をデフォルトと捉えない市場は、ドルを保有するメリットよりも「ドル保有こそがリスク」と見なしていく可能性が高い。

また、サウジ・UAEと言った中東の天然資源保有国やインド・中国などの消費大国がロシア陣営についているし、ロシア陣営が保有する金や石油などの天然資源に基づく統一通貨構想も出てきている。(ウクライナ危機でロシアに寝返るサウジとUAE 黒幕はイスラエル)(ウクライナ危機でロシアが仕掛ける金・資源本位通貨

この動きは、ロシア・アメリカ・EUの目論見どおりなのは分からないが、制裁を受けているロシアが40兆円儲けている裏側で、ドイツ国民は死にそうになりフランスでルペンが健闘しているのは事実だ。

ドイツはひっそりと、フランスは堂々と対米離脱を進め、ロシアと適切な距離感を保ちつつ西欧を覇権下におさめる新時代のEUへと変わっていきそうだ。

対して日本の動きは非常に気になる。

実のところ、日本もEUと大差ないレベルで制裁ポーズを続けてきたところだが、このところロシアからキレられ続けている。

先日も、日本の公安調査庁がウェブサイト上にあったアゾフがネオナチ関連と読める表現を削除したところ、日本はアジアの中でロシア嫌悪筆頭とキレられた。

「ワシのこと嫌いか?あ?」と威圧されている。「いつか殺すリスト」に名前が載ってないことを祈るばかり。

さらに、ロシアは日本海域でミサイル打ったとか。

以前にも紹介したように、日本はロシアの天然ガス開発から撤退しないし、ロシア資産ボッシュートもしていない。

ただ、プーチン娘の資産を凍結と、EUに続いて「石炭輸入を止めます」は言った。

ただ、EUのロシア石炭輸入停止は実施されない可能性が高いのに対して、日本は本気でやっちまった・・というところが異なる。

そして、ロシアにブチ切れられる日本と、結構なこと言ってもキレられないEUという状況から、EUは本当にロシアが困る制裁を課していないという立ち回りの上手さが伺える。

EUでは、反ロシアが国是のポーランドなどによる過激主張が目立つものの、ドイツやフランスなどEU中心国は、ウクライナ危機による金融経済システムの転換を見据えているのかもしれない。


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