1988年エコノミスト表紙

ロシアの金・資源本位通貨は新たなバンコールか

1988年エコノミスト表紙

以前に「ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット」や「ウクライナ危機でロシアが仕掛ける金・資源本位通貨」等で、ロシアや中国等のウクライナ危機ロシア陣営チームの国々により、金・資源本位通貨構想という新世界秩序(New World Order)の構築を目論む動きが出てきていることを紹介した。

そして、この動きを先導するロシア・プーチン大統領は、先日開催されたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで「欧米勢の自滅」を語った。

なお、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムとは、「グレートリセット」 を唱えるあのダボス会議ともパートナーシップ関係を持つ国際的な経済会議だ。

例年なら約140ヵ国が参加していたが、今年はウクライナ危機の影響もあって欧米勢以外の127ヵ国が参加したとか。・・・世界で孤立しているのは欧米勢か?

さて、この会議におけるプーチン大統領の演説内容については、クレムリンが「St Petersburg International Economic Forum Plenary session」として発信している。

演説自体はクソ長いのだが、プーチン大統領が演説の中で、インフレの原因となった流通の混乱等は、欧米諸国が「故意に」引き起こしたものとしている点が気になった。

なお、欧州ではロシア制裁(逆制裁)によりインフレが加速しており、その損失は原油部分だけでも4000億ドルを超えるようだ。

この他にも、天然ガスや食糧価格が高騰しているため、4000億ドルどころではない損失となるのは間違いなく、ロシア制裁やウクライナ支援を長く続けることは不可能だろう。

ただ、「金融危機が見えてきたアメリカと日本バブル」で紹介したように、インフレで真に問題となるのは金融引締めへの転換だ。

特にQT(市場からの資金吸収)は深刻で、FRBは2025年までに保有資産を8.9兆ドル→5.9兆ドル程度に圧縮する予定と報じられており、今後は年間1兆ドル規模の資金が吸収されることになる。なお、これは2017~18年のQTの倍ペースだ。

FRBに、ここまで金融引締めを急がせるインフレの原因はロシア制裁だが、「ウクライナ情勢の転換と役割を終えたバイデン政権」で紹介したように、ウクライナ危機を誘発したのも、異常なまでに厳しい経済・金融制裁を課したのもバイデン政権だ。

これはコロナ危機から続く世界的な物資不足・インフレを加速させるとともに、米ドルの信用を低下させることとなった。(ウクライナ危機という経済戦争で崩壊するドル、そして日本バブル)(ウクライナ危機でロシアに寝返るサウジとUAE 黒幕はイスラエル

このような背景から、インフレは欧米諸国が「故意に」引き起こしたとするプーチン大統領の指摘はごもっともだ。

さて、以前にも紹介したように、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンは、「市場からの資金吸収」こそが金融恐慌の原因であることを指摘しており、このQTによりリセッション入りする可能性が高い。

さらに、QEにより生み出された資金は莫大なものとなっている。以下はFRB保有資産の推移だ。

20220622FRB資産

2008年のリーマンショックを受けた米国債市場の崩壊を防ぐためにQE開始して以降、FRBの資産保有額がうなぎ登りとなっている(=市場に資金を提供)ことが分かる。

また、コロナショックのQEはリーマンショックを遥かに凌ぐ、尋常ではない規模の資金が市場に注入されていることが分かる。

同時期のナスダックチャート(月足)を見てみると・・

20220622ナスダック月足チャート

FRBの資産増加と合わせて株価上昇していることから、市場は実体経済によらずFRBの注入資金により動いており、明らかにバブル状態と言える。

このバブル崩壊を前に、パウエル議長もソフトランディングは非常に困難・・との声明を出しいる。

「非常に困難」とは「ハードランディング不可避」ということになろうか。

これまでのQEによる超低金利環境下において、審査の甘いコベナンツライトローンや社債発行で延命してきたゾンビ企業の大量倒産や、以前にも紹介した低信用企業への融資債権を証券化した企業版サブプライムローンのCLO(ローン担保証券)など金融地雷は大量に埋まっている。

さらに住宅ローン金利の急騰やレイオフ進行により住宅バブルも萎み始めている中で、2008年のサブプライムローン破綻を機に制定された住宅ローンの返済猶予や強制立ち退き禁止の法令は、大半の州で失効している。

そうなると、今回のQTは「リセッション」に留まらず「スーパーバブル崩壊」の引き金となり、リーマンショックを超える史上最大級の金融危機を招く可能性が高い。

しかも、インフレの原因はコロナによる物流混乱やロシア制裁によるものなので、金融を引締めで解消される見込みは薄く、金融危機とインフレ(スタグフレーション)が同時発生する可能性が高いため、FRBがQE再開するのも難しい。

こうした状況を踏まえると、バイデン政権(と引締めを強要されるFRB)は故意に金融崩壊を誘発しようとしているようにしか見えず、プーチン大統領が「欧米勢は自滅している」と語るのはごもっともだ。

・・となると、このイルミナティカードの暗示のように、ドルやポンドなどの金融システムを支えたハードカレンシー崩壊へと発展することになりそうだ。

bank merger

なお、我らが日本は緩和継続して最後まで粘り通す感じか。あの原田武夫氏も、「日本はデフォルトしない」分析に変わったし。

さて、上記のナスダックチャートを見ても分かるように最近の金融市場は大混乱しているのだが、その中で国際金融資本の面々が大損していることが報じられている。

ゼロヘッジさんは「2022年に、世界で最も裕福な人々が保有する1.4兆米ドルもの富が消失した」とのブルームバーグの記事を紹介している。

世界最大の仮想通貨取引所バイナンスの創業者にしてCEOのチャンポン・ジャオ氏は、856億ドルもの資産を失い、残り102億ドルになっているほか、アマゾンのジェフ・ベゾス氏は668億ドルを失い残り1255億ドルになっているとか。

1929年の世界恐慌すら「演出」可能な国際金融資本の皆様が、この程度の暴落の波に飲まれるとは何事だろうか・・と思うのだが、もしかしたら国際金融資本の中で選別が始まっているのかもしれない。

以前に「ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット」で紹介した、Dr.苫米地氏が金・資源本位通貨について紹介するこの動画。

この中で、Dr.苫米地氏はグレートリセット後の「勝ち組」について、このように語っている。

  • アメリカ、ロシア、中国、ドイツ、イタリア、フランス等は多くの金を保有してグレートリセットに備えてきており、勝ち組となる。
  • 多くの上場企業の株を保有し貸し付けも多い国際金融資本は、企業の持つ有形無形資産(=本物の富)の大半を支配していることになり、勝ち組となる。
  • 日本は、資源は持っていないので、巨額のGDPや高度な教育システムから得られるメリットを裏付けとする通貨制度を主張すべき。

・・ということで、次の金融システムでも欧米の王侯貴族や国際金融資本などは勝ち組となるようで、今とあまり変わらない。

ただ、Dr.苫米地氏は、現行の通貨制度における際限なき通貨発行や、通貨発行と同時に国債が際限無く積みあがる点は問題視している。

となると、際限無き通貨発行の恩恵を受けただけの国際金融資本の末席組は「勝ち組」になれないのかも。チャンポン・ジャオ氏やジェフ・ベゾス氏が大損したのは、それが理由か・・。

さらに苫米地の言葉で気になるのが、「多くの上場企業の株を保有し貸し付けも多い国際金融資本は、企業の持つ有形無形資産(=富)の大半を支配していることになり、勝ち組となる」の部分だ。

FRBがQTを進めてリセッション入りする際に、借金のカタに担保資産(真の富)を二束三文で取り上げることで動きが加速しそうだ。

以前に原田武夫氏も、「デフォルトの流儀」として株価をつり上げて資産価値を高めた上で売り払う・・的な話をしていた。今後、多くの企業の身売りが相次ぐのかもしれない。

このように、米ドル・米国債を中心とした金融システムは「意図的な自滅」を歩んでいる一方で、ロシアは中国 等と金・資源本位通貨という新世界秩序(New World Order)構築を進めている。

そして、この金・資源本位通貨は、1944年のブレトンウッズ会議でイギリスの経済学者ケインズが提案した国際決済通貨「バンコール」の現代版である可能性が高い。

ちなみに、バンコールの特徴は、過去3年間の平均貿易額に基づいて各国に配布されたバンコールで貿易決済するほか、貿易黒字・赤字が一定割合を超えると、その分の利息を徴収するというものだ。

この懲罰的な利息により貿易不均衡を無くして世界経済を健全に回すものだったが、当時世界の7割の金を保有していたアメリカが「金融・経済覇権」を捨てるハズもなく、金・ドル本位制が採用されることとなった。

こうして見ると、欲深な国際金融資本によりバンコールが潰された感があるが、イギリス勢はIMFのようなバンコール管理機関を支配下において経済金融覇権を握ろうとしただろうから、どっちもどっちだ。

この後、基軸通貨ドルを各国が求める=アメリカの貿易赤字と金流出の構図となり、アメリカが金兌換停止(ニクソンショック)する1969年にも、イギリスはバンコールと同じような「SDR(特別引出権)」制度を作った。

ただ、ドルは変動相場制へと移行して復活したため、SDRは使われなかったが・・。

このように、国際決済通貨を作る動きは今に始まったことではない。

この背景にあるのは、中央銀行システムによる世界経済の発展が限界に達していることがあるのだろう。

イギリスは、1694年に国債を引き受けて通貨発行する世界初の中央銀行(イングランド銀行)を作ったことで、政府や民間企業が低利の資金調達が可能となり、近現代の覇権国となったほか、中央銀行は近現代の経済発展に大きく貢献した。

だが、今では「みんなが使ってモノが買える」という信用のみに基づく発行上限無きフィアット通貨となってしまい、通貨の過剰発行が貧富格差の拡大等の弊害を招いている。

経済発展のための中央銀行システムにより適切な経済発展が妨げられている状況となっており、それを是正する「グレート・リセット」を支配者層の皆様は志向しているのだろう。

そして、バンコール、SDRに続く3度目の正直となる今回は、米ドル・米国債中心の金融システムの終焉と並行させ、さらに2度も失敗したイギリスをクビにしてロシアに主導させることで、確実に新たな基軸通貨を構築させようとしているのではないか。

そして、ロシアのプーチン大統領は、イギリスに代わって新たな基軸通貨を作る動きを着々と進めている。

中国やEAEU諸国だけでなく、インドやブラジルなども交えていくようだ。新たな通貨システムは、当初は非欧米諸国の通貨としてスタートするっぽい。

ただ、この金・資源本位通貨が実現するためには、世界の全ての天然資源を管理下に置く「世界的な通貨管理機関」が必要となる。

以前に「サル痘の感染拡大と超国家権力を手にするWHO」で医療・疫学面において各国政府の国家主権が剥奪される可能性を紹介したが、それと同じように経済金融面における国家主権剥奪へと繋がる可能性が高い。

支配者層のグレートリセットプランでもある「ロックステップ計画」には、

  • その後の新たな経済システムの根幹として、マイクロソフト特許番号060606の身体活動のデータを使った暗号通貨を使用する。
  • 基本的に我々に従わないと、クレジットスコアを失い生活に必要なものも得られなくなる。新世界秩序にようこそ。

とあり、支配者層による管理社会構築に向けて社会システムをグレートリセットして新世界秩序を構築し、世界統一的な政府による統治が掲げられている。

そして、現在のブロックチェーン技術は、完全管理社会のツールとしても活用可能な「パーフェクト・バンコール」を可能としている。

これこそが、「世界統一デジタル通貨フェニックス」であり、イルミナティカードにあるように、最後まで粘った日本円も飲み込まれるのだろう。

新たな基軸通貨システムが作るのはバラ色の未来か、完全管理社会なのか・・。


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