アメリカとロシア

ロシアがウクライナを電撃制圧した裏でアメリカもWin-Win

アメリカとロシア

ロシアがウクライナに侵攻した。

主に軍事施設や空港などの主要施設を一斉に攻撃し、特に重要な防空システムをあっという間に制圧したとか。

防空システムは、レーダーや地対空ミサイル、飛行場のことで、ウクライナ発表でロシア軍機を数機撃墜したとあるように(ロシア側は否定)、それだけ攻め側にとっては脅威であり、受け側にとっては重要な盾となる。

これまでのドンバス紛争でも、地対空ミサイルによりロシア軍には大きな被害が出ていたとのことなので、防空システムを潰すか守りきるかが戦況を決定することになる。

それが制圧されたとなれば、ウクライナは制空権を失ったに等しく、既に勝敗の帰鄒は既に決したと言える。

こうした状況を踏まえ、アメリカさんも首都キエフも制圧間近と考えているとか。

この段階になると、ウクライナには万に一つの勝ち目も無く、もはやウクライナ軍の抵抗は無意味だ。国民の命を守るためにも、一刻も早く降伏するしかない。

さて、これまではロシア侵攻があるとしても、ウクライナ東部地域(ドンバス)限定での侵攻かと思っていたが、まさかの電撃的全土制圧となった。

考えてみれば、東部地域(ドンバス)に限定して侵攻してもウクライナ軍との戦闘行為は長引くだろうし、早期の幕引きと言う点で考えれば、全土侵攻・制圧は当然にあると考えるべきだったか。

また、ウクライナ情勢緊迫化を受けて、ロシア国内ではプーチン支持率が高まっているとか。

とは言え、ロシア国内でも戦争に反対する人は多く、各地でデモか起こっているとか。

プーチンの生まれ故郷のサンクトペテルブルクでも反戦デモが起こっている点は興味深いが・・・ロシアにおいて反政府活動は厳しいものがあるな。

だが、ウクライナ侵攻で支持率が上昇しているとは言え、逮捕覚悟でデモするほどの熱意を持った反戦派もかなりの数いることがよく分かる事例だ。

プーチンが電撃制圧したのは、小規模戦闘を繰り返して戦争が長期化すれば、ロシア軍・ウクライナ軍双方に犠牲者が増えることになり、プーチン支持率が低下して反戦派が力を持つ可能性を恐れたか。

そうした点からも、電撃制圧は(プーチンにとっては)合理的なものであり、事前に分かるべきだった。

さらに、ロシア侵攻前日に、ウクライナ全土で大規模なサイバー攻撃が確認されていた。

サイバーセキュリティ会社のESETによると、

データ消去プログラムが「ウクライナの数百台のマシンにインストールされ」、攻撃は過去2、3カ月の間に準備されていた可能性が高いとした。

とあり、かなり前から念入りに準備されていたことが伺える。

サイバー戦で混乱させた所に防空システムを潰す・・、2014年のクリミアでも展開された現代戦のセオリーだ。

さらに、演習と称してウクライナ北部や東部にロシア陸軍14万が、南部の黒海には海軍艦艇がそれぞれ展開していた。その兵站を考えれば、かなり前から準備してなければこの重厚な布陣は不可能だ。

サイバー攻撃があった23日の時点でロシアの全面侵攻は確定的であり、翌日には侵攻する可能性があると予測すべきだった(反省)。

ともあれ、このロシアの実力行使に対して、アメリカやNATOは素早く反応した。

ニューヨークタイムズによると、バイデン大統領は、アメリカ軍はウクライナに行かないことを改めて強調し、ウクライナをあっさり見捨てたとか。

・・・もう少し体裁繕えよと思うが、ウクライナに派兵しないことは前々から言ってたし、初志貫徹した感はある。

そして、この発言が好感されたようで、アメリカ株式市場は上昇した。

これはダウの日足チャート。

20220224ダウ日足チャート

戦争するのかせんのか・・緊張感が高まっている間は怒涛の下げだったところ、侵攻がハッキリしたら上がってしまった。

それにしても・・アメリカがいつ反戦派に宗旨替えしたのか知らんが、日米安保について日本はもっと考える良い機会としたい。

また、NATOも派兵を否定する。

こちらも、前々から派兵しないことを表明していたが、NATOに加盟してないウクライナのために、強大なロシアと戦うつもりは無いとの意志が改めて示された形に。

アメリカにしてもNATOにしても、最初からロシアと戦争おっ始める気など無いくせに、あれだけロシアを煽り倒して火がつけたら「火事場には行きません」と言うのも・・。

だが、派兵する気はなくとも経済制裁の第二弾として、ロシア主要銀行の外貨決済禁止や、ハイテク機器のロシアへの輸出規制は発動されるとか。

ただ、ロシアは独自の国際送金ネットワークSPSFを構築しているほか、世界88か国、450の銀行が参加する中国のCIPS、相互通貨での直接取引などが行われている中での外貨決済規制の実効性は不透明だ。

さらに、CNNからは「ビットコインで制裁回避、余裕」との報道も。

確かに、「ウクライナ情勢 アメリカ覇権の撤退とロシアのやる気が見えてきた」で紹介したように、ロシア政府は中銀の想いとは逆にビットコイン規制を緩和していた。

このCNNの記事を踏まえると、ガスや原油、穀物などをビットコイン決済出来るように準備しといた・・ということになるだろうか。

そして、アメリカの制裁とロシアのビットコインシフトはドルの弱体化を誘発すると共に、ビットコインの地位向上へとつながり、「バーゼルⅢで金と仮想通貨は爆上げ そしてドルは崩壊・・世界統一デジタル通貨へ」で紹介したような方向へと繋がって行く。

これも、ウクライナ危機の目的の一つなのかもしれない。

さらに、マイニング電力需要から、ロシアの天然ガスや原油価格上昇にも寄与するかも。

また、ハイテク機器の輸出規制についても効果は限定的になるかもしれない。その理由はこれ。

中国はロシア支持を明確に打ち出しており、ロシアに輸出規制するハイテク機器類が、中国経由で流れる可能性が考えられる。

台湾の超大手半導体製造のTSMCのバックにいるエライ人たちは、中国の半導体大手SMICやファーウェイのバックにいるエライ人たちと同じだ。

また、台湾・中国間の貿易決済は、相互通貨(人民元と台湾ドル)により行われており、SWIFTを経由しない。

つまり、台湾とは中国にとっての「出島」であり、アメリカが預かり知らぬうちに台湾→中国→ロシアのルートでハイテク機器は流れていく。

ロシア侵攻と合わせて、中国の台湾侵攻を心配する声が上がっているが、このような中台関係を踏まえると、両国の背後にいる華僑のエライ人たちのGoサインが無いうちは侵攻しないだろうな・・。

また、このような中・ロの経済関係を踏まえると、ハイテク機器の輸出規制や個人資産凍結どころか、SWIFTからの閉め出しですら効果が微妙であり、経済制裁のみという時点で単なるパフォーマンスと言える。

さらに、本格的な制裁が始まる前から欧州天然ガス価格が暴騰している。以下は欧州天然ガスの日足チャート。

20220224欧州天然ガスチャート

ロシア侵攻の報道が出た日の上げ幅がエグイ。

ちなみに、1年前の2021年2月24日は約16ユーロで、今は132ユーロくらい。天然ガス価格は8倍強となっており、仮に昨年冬のガス代が1万円だとしたら、現在は8万円を超えていることに。

・・・凍死待ったなしや。

先日も、イタリアさんが「天然ガスは制裁の対象外にしろ」と言ってたことを紹介したが、ロシアの天然資源は欧州の生命線になっており、対ロシア制裁において欧州の足並みが揃うわけがない。

また、以前のブログでも紹介したが、ロシアは資源大国であると同時に食糧生産国であり、中でも小麦の世界シェアでは11%を占めている。

穀物市場は10%の不足で2倍に高騰すると言われてるほどに投機的な市場であり、ロシア産小麦が出回らなくなれば小麦価格は倍になる。

ちなみに、小麦先物の日足チャートはこんな感じ。

20220225小麦

ウクライナ侵攻直前の3日間の火柱上げにより、948.5ドルまで到達。ちなみに、1年前の価格は670ドル前後だったので、1.5倍くらいになっている。

天然ガスや原油以外に食糧価格まで高騰するとなると、厳しい制裁を課すことは困難だ。

さらに、このロシア侵攻は、アメリカ(というかバイデン政権)にも大きなメリットがある。

ロイターによると、アメリカ人はロシア経済制裁を支持しており、特に追加制裁は約7割が支持している一方で、米軍派遣は6割以上が反対しているとか。

インフレ対策で人気が凋落していたバイデン政権にとっては、「何もしない口先制裁」で支持率を上げるボーナスステージになりそうな雰囲気だ。

さらに、欧州の天然ガスに代表されるように、ロシアのウクライナ侵攻を受けて資源は全面高となっており、世界的なインフレの責任をロシアのせいに出来そうな状況に。

ウクライナ侵攻は、アメリカ(バイデン政権)にとって悪い事を全てロシアのせいに出来る夢の口実となる。

こうしたアメリカのメリット、実のある経済制裁が出来ないこと、絶対軍を出さないという決意、そして、これまでのアメリカによる過剰なまでのロシア煽りを踏まえると、今回のウクライナ危機は、欧米とロシアの間で事前合意済みの「茶番劇」だったことが強く伺われる。

また、「全面戦争」を煽る割には犠牲者は少ない。

コロナとエライ違いやな・・。

やはりウクライナ危機とは、ウクライナ地域のアメリカ覇権をロシアへ委譲するにあたり、インテリジェンスのジャマが入らないうちに「ロシア軍事侵攻」で一気に覇権チェンジすると共に、ロシアのプレゼンス向上も見込んだものなのかもしれん。

いずれにしても、ウクライナ侵攻は終わりが近そう。

一部で、ウクライナはロシアと断交するような報道があったが・・交渉はいつでもウェルカムみたいで、早く停戦したそう。

ロシアはウクライナを併合する意図がないとしていることから(本当かどうか知らんけど)、今後はウクライナに「親ロシア派政権」が樹立されることになりそうだ。

折しも、アメリカはインテリジェンス拠点だったキエフ大使館から撤退している一方で、ウクライナ国内にはロシアのインテリジェンスが跋扈しているだろうから、親ロシア政権は比較的容易に樹立されそう。

あと、東部地域(ドンバス)とクリミアは、完全にロシアに編入されるだろうし、場合によってはクリミアまでの黒海ルート上の地域も編入されるかも。

余談だが、もう一つ気になる点がある。ロシアがチェルノブイリを制圧したことだ。

チェルノブイリが首都キエフから比較的近いとは言え、わざわざ攻め落とす理由が不明だ。

プーチンのウクライナ侵攻の理由の一つに「ウクライナの核開発阻止」があったが・・チェルノブイリに残る核物質を制圧するためなのか。

だが、チェルノブイリ内部は制御不能の状態だろうし、そこから核物質を調達するなど無謀の極み。

さらに、原発燃料に使われるウランの濃縮度合いは、せいぜい5~10%程度だ。

兵器級ウランが90%濃縮であることを踏まえると、無理してまで取りにいくようなものでは無いと思うが・・。

ただ、開戦前からウクライナ軍は何故かチェルノブイリ周辺での軍事演習をしていた。

確かに、チェルノブイリ周辺の無人の街で、実戦訓練は出来るだろうが・・

訓練前の放射線測定は必須で、安全が確認された場所でしか訓練は行えない

ようなところで訓練する必要があったのか。軍事演習に頃合いの土地なら、他にいくらでもあるだろうに。

ロシアやウクライナが重要視するチェルノブイリ・・ここに何かあるのか?

ともかく、ウクライナ危機の帰結として、アメリカは政権支持率が浮上しそうなこと、アメリカのウクライナ覇権(東欧覇権)撤退とロシアへの覇権委譲が進むこと、ビットコインの地位向上によるドル弱体化はと世界は進みそうだ。


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