金のインゴット

ロシア制裁はルーブルの金本位性とドル離れに繋がる

金のインゴット

ウクライナ危機について、3回目の停戦協議が行われたが、やはり合意には至らなかった。

ロシア側は、ウクライナがNATO(EUも?)加盟しないと明示して憲法改正することや、クリミア半島がロシア領であること、ドネツク・ルガンスクを独立国として承認することを停戦条件として提示しているとか。

ただ、ドイツなどはウクライナのEU加盟に反対の模様だ。

ドイツとしては、安定的なエネルギー確保の観点からロシアとの良好な関係を望みこそすれ、ハチャメチャなウクライナのために関係悪化させるなんてイヤやでと言うことだろう。

なお、NATO加盟も最初から認める気は無かったハズで、「アメリカさんにロシア敵視しろって言われて・・逆らえなくて・・オレ・・・」という本音が見える。

こうして見ると、ロシアがウクライナ侵攻した理由のうち「ウクライナのNATO加盟」はそもそもあり得ないことで、プーチン・ロシアも分かってただろうから、この停戦条件は「早く欧米から離れろ」といつ意味だろうか。

さらに、ドンバスの住民がウクライナドローンで殺害されていた件も、ロシア軍をこっそり義勇軍として送り込むなど他のやり方もあっただろうし、クリミア含め既に実効支配しているので、講話条件ならまだしも停戦条件にする理由は薄い。

また、ウクライナ側がNATOに「飛行禁止空域の設定」を求めたところ・・・

NATOは「絶対イヤやで」とアッサリ拒否したとのことで、NATOに軍事介入の意志が無いことが改めて確認された。

また、ウクライナが飛行禁止空域の設定をおねだりしたことは、ウクライナの制空権はロシアが完全に掌握していることを示している。

軍事的な観点から、このウクライナの状況で強気に出られるのは・・「やらされてる」のかもしれない。

ただ、制空権を確保するほど優勢なロシア軍も、首都キエフを攻略していない。

ウクライナ軍の強い抵抗やロシア軍の士気の低さが報じられているが、単にロシア軍に「街を攻略する気がない」というのが本当のところではないか。

以前にも紹介したこのツイート。

この状況から、ロシア軍は街の攻略ではなく、ウクライナ国内の欧米傀儡の武装勢力(アゾフ部隊)の排除が目的っぽい。

ちなみに、アゾフ部隊については、2018年にイギリスのガーディアン紙が報じている。

国会議員とも繋がる暴力組織で、勝手警察したり店を襲撃したり・・というワルの集団だとか。

現在のウクライナ国内では、そんなワルの彼らに武器供給されている状態で、街中の破壊活動のいくらかはアゾフ部隊による可能性が高い。

また、ウクライナからの脱出経路として設定された人道回廊を誰も通れなかったのは、ゼレンスキー大統領が発動した「総動員令」で18~60歳の男性を国外脱出禁止としていることから、アゾフ部隊が通せんぼしていた可能性も否定できない。

さらに、海外報道によると、ロシアはゼレンスキー大統領は留任させるものの、首相を親露派政党のボイコ氏に交代させることを求めているとか。

ロシアのウクライナに対する要求の本命は、恐らくこれだろう。

以前に「長期化しそうなロシア侵攻にバチカンが動き出した」でも書いたが、ロシアにとってはゼレンスキー大統領を「神輿」として留任させつつ、その取り巻きを欧米(国際金融資本)勢傀儡からロシア傀儡に変えて安定的な緩衝国家とさせたいようだ。

アゾフ部隊の排除と合わせ、ロシアは今後を見据えているっぽい。

ただ、

君がッ泣くまで

侵攻を止めないッ!となれば、ウクライナ危機は必然的に長期化する。

また、昨年からジュネーブで行われている米露会談。

恐らくは、この協議の場で今日の事態は打ち合わせ済みだった可能性が高い。

そこでは、ゼレンスキー大統領の取り巻きチェンジによるロシア-ウクライナ関係の安定化とアメリカ覇権の撤退が合意されたのではないか。

さらに、ロシアが戦争を長期化させる姿勢をとっていることは、ロシア金融制裁の長期化も意味しており、制裁ブーメランによるアメリカ覇権・ドル覇権の縮小、そして「グレートリセット」へと繋げる大いなるシナリオの達成が本丸と考えられる。(ロシアへの金融制裁はグレートリセットの始まり!?

さて、そうした「グレートリセット」の一環だろうか。

ロシアが金本位性に回帰するのではないか・・との話が出てきている。

以下はゼロヘッジさんの記事。

この記事では、クレディ・スイスの短期金融市場の第一人者であるゾルタン・ポザール氏の言葉を引っ張っている。

それによると、今回の金融制裁によりロシアの海外資産(主にドル)が凍結されたことを目の当たりにした各国は、ドルとはアメリカの指先一つでダウンして肝心な時に使えなくなることを認識し、ドルを準備通貨として国内外に備蓄することに疑問を持ち始めているとか。

また、ドル以外の通貨(ユーロや円、人民元等)であっても「法的通貨」である以上は同じリスクがあるが、国内に金(ゴールド)を保管する場合にはそうしたリスクは無いとしている。

そして、現在のロシアのように、頼りにしていた外貨資産が消し飛び、さらに通貨(ルーブル)に下押し圧力がかかる場合には、金を裏付けとすることが可能とする。

そして、ロシアがドル脱却を図る場合には、中国人民元と協力して、金の裏付けを持った通貨発行する必要があるとして、何らかの形でロシアが金本位性を打ち出す可能性を示唆している。

さらに、金(ゴールド)の量は現在の経済規模・貨幣量を支えるには少ないことが問題と言われているが、それは金(ゴールド)の価値を再評価すれば良い・・とか。

確かに、ロシアが欧米に持っていた現金や債券類、株式と言ったドル建て・ユーロ建ての資産は雲散霧消し、ルーブル安への介入すらまならなくなっている。

この制裁は、法的通貨とは所詮「フィアット」であり、相手国(アメリカ)の政策一つで吹き飛ぶ儚いものであることを印象づけることとなった。

これは、台湾問題等でアメリカから因縁をつけられている中国にとっても他人事ではない。

さらに、ゼロヘッジさんの別の記事で、ドル覇権失墜の可能性も指摘している。

ドル取引を禁じられたロシアは、小麦や天然ガス、原油、さらにはコバルトやパラジウム等レアメタル大国であり、世界各国はそれらを必要としている。

さらに、現在でもロシアの銀行は中国のCIPSに接続されているので中国人民元でロシア資源を購入出来るし、ロシアのSPFSもインド始めユーラシア経済連合(EAEU)加盟国に接続されているため、今後は、例えばEU-ロシア間で非ドル決済になるなどユーラシア全体でドル離脱が進むとしている。

さらに、原油価格の高騰や、小麦などの食糧やレアメタルの需給逼迫は、アメリカの(と言うか世界的な)インフレを招いている。

まさに、このツイートが的を射ている。

ロシア制裁によるコモディティ価格暴騰は、中国など非米諸国のプレゼンス向上と欧米諸国への大ブーメランとなる。

特に原油価格は、これまで「ペトロダラー体制」の元でアメリカが支配してきたが、昨今の原油価格上昇はアメリカの原油支配体制が崩れていることを示唆している。

「原油が買える唯一の通貨ドル」というドル優位性は揺らぐ。

また、アメリカでは一昨年から続くコンテナ船物流混乱などによるコストプッシュインフレを受けて、10年以上続けてきたQEを止めてQTへの転換を強いられるところだ。(世界で同時多発的にインフレの兆候 金融危機へのカウントダウン!?

ただ、「コロナ危機の終わりは金融危機と仮想通貨バブルへと繋がる」で紹介したように、アメリカの金融市場はQEマネーなくして成り立たないことが強く懸念される。

既に、株式市場は大きく下落しており「リセッション」の予感がするものの、物流混乱にロシア金融制裁によるインフレまで加われば、簡単にQEに戻ることは出来ない。

また、ガソリン高騰を抑えるために補助金などを出せば、それは市中の貨幣量増となり規模によってはさらなるインフレを招く。

さらに、現在のインフレの主要因は「コストプッシュ」であるため、実のところ中央銀行による金融政策で収束は難しいだろう。

アメリカ・・というかドルは、かなり難しい舵取りを迫られており、近い将来のドルの基軸通貨性含めてドル覇権崩壊という可能性もあり得る展開となってきている。

こうした中で、ロシアの金本位性への回帰や各国のドルシステムからの離脱は、ドル覇権崩壊を促進する動きになる。

さて、ロシアは金本位性に回帰するのか・・という点について、まず、世界の金保有ランキングを見ると・・ロシアの金保有量は約2300トンでIMFを除いて世界第5位の規模を誇る。

また、ロシアはこの10年ほどで米国債を放出して金に切り替える動きを急速に進めてきたとか。

一方で、ロシアの人口は約1億4000万人。国土が広い割に日本とあまり変わらない規模であり、GDPランキングも韓国に次ぐ11位となっている。

世界GDPランキング

実のところ経済規模もそこまで大きくはない。

このような人口・経済規模から見て、金の保有量はかなり多いと言える。

また、ロシアの金保有量の増加ペースからは、今日の事態を見越したドル脱却やルーブル防衛のためだった可能性は高い。

直ちに金本位性に移行することは無いだろうが、さらなるルーブル暴落や米ドル崩壊の兆しが見えてくれば、米ドルへの金融兵器も兼ねて「金本位性ルーブル」を発行するかも。

なお、アメリカは8000トンオーバーの金を保有していることになっているが、以前に「英米による金価格コントロールの終わりと今後の展望」でも紹介したように、実際の保有量はもっと少ない可能性が高く、過剰発行気味のドルの裏付けは不可能だろう。

次に、各国がドルシステムから離脱する可能性だが、現在のところ対ロシア制裁に加わっている国々はこんな感じ。

実のところ、ロシア制裁に加わっているのは欧米勢のみ(日本・台湾含む)という状況だ。

アメリカの裏庭「中南米諸国」や経済発展著しく今後の主役級が期待される「東南アジア諸国」、そしてアメリカ主導の対中国包囲網「クアッド」に加盟するインドは制裁に加わっていない。

これらの国々は、ロシア資源の購入代金を支払うのにSWIFTが使えなくなるため、中国のCIPSやロシアのSPFS、または相互通貨による直接取引の形へと移行することになる。

そこにドルは介在しない。

さらに、イギリスの大手石油企業のシェルは、サハリンの石油開発からは撤退したものの、ディスカウントされているロシア原油を買い付けたことを批判されている。

シェルの本音としては、「石油開発はルーブル下落で赤字になるから撤退やけど、世界の原油供給にロシアは欠かせないし、安い原油は儲かるから買いまっせ」と言ったところか。

また、アメリカ金融大手の面々が、割安になったロシア社債を買い入れたことがバレて批判されている。

ゴールドマン・サックスやJPモルガンと言った大物が割安になったロシア社債を買いまくっており、エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)は「制裁を台無しにしとるやないか」とブチ切れている模様。

イギリスのシェルにせよ、ゴールドマン・サックスにせよJPモルガンにせよ「儲かるなら何でもアリ」という国際金融資本エリート様の論理はロシアを救う。

メディアの前では「ロシア取引自重するっす」と言うものの、彼らの論理では取引がバレるSWIFTから中国のCIPSなどに移行していく可能性が高い。

つまるところ、それは「ドル離れ」となる。

なお、アメリカの一部の州では、既に金銀が法定通貨として認められていることをDr.苫米地氏が紹介している。

現実に金銀で買い物する人はいないだろうが、FRBがドルの価値を維持できない以上は、近い将来、有効な方策となるかもしれない。

ウクライナ危機の意図的とも思える長期化や、ロシアの悪行が喧伝される展開は、さらなる金融制裁の呼び水となり、そして原油や小麦などのコモディティ高騰へと繋がる。

そして、ドルの価値低下が誘発されるとともに、アメリカではリセッションの影がチラつきつつも金融引締めに転換する。最悪、これまでのQEバブル大崩壊となるかもしれない。

原因は、QEをやめたこと、コストプッシュインフレの激化、ロシア金融制裁のブーメランにあるのだが、今ならプーチンのせいにできる。

「グレートリセット」の第一幕が始まりそうだ。


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