bank merger

アメリカの債務上限問題は解決しても、しなくてもドルは窮地に

bank merger

銀行の信用収縮でマネーサプライ急減、ドル崩壊後の準備が始まる」では、アメリカにおけるマネーサプライ減少に起因する信用収縮の加速によって、CRE(商業不動産)を端緒とする巨大な金融危機が発生する可能性について紹介した。

こうした中で、アメリカでは債務上限問題で揉めている。

「債務上限」とは、アメリカ政府が過度に国債発行(=借金)に依存し過ぎないように設定している「借金上限値」のことで、債務上限問題とは、借金が上限に達して新規で借金出来なくなり、資金繰りに窮して借金返済(国債の利払い・償還)に難儀している問題と言える。

なお、この問題は昨日今日始まったものではなく、アメリカの債務自体は2023年1月19日に上限に達していた。

このため、アメリカ政府は新規国債発行による資金調達・資金繰りが出来なくなったため、財務省の手持ち資金を取り崩して運転してきた。

これが最近になって深刻化してきたのは、財務省の手持ち資金が枯渇し、約31.4兆ドルの借金=国債の利払い・償還が出来なくなって米国債デフォルトとなる可能性が6月1日に迫っているからだ。

米国債デフォルトとなればエライことだが・・実際には心配するようなものではなく、過去に何度か繰り返された茶番劇・・との見方が大勢を占めている。

この見解は、米国債の動きからも明らかで、怒涛の国債売り(=利回り急上昇)など起こっていないことが分かる。

以下は10年米国債の日足チャートだが、直近で日足のレジスタンスをブレイクしつつあるものの、動きとしては比較的平穏だ。

2023051910年米国債日足チャート

また、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)から判断されるアメリカのデフォルト確率は、わずか3%とか。

逆に言えば、デフォルトしない確率が97%だ。

と言うことで、今のところの一般的な市場の声は・・

  1. 大統領選を前にして、政権が深刻なリセッションを容認するハズがない。
  2. 金融引締めと言ってもカネ余り状態が続いているので、市場は暴落せずソフトランディングや。
  3. インフレは鈍化しつつあるから、利上げももう終わる。

・・と言うもので、債務上限問題は回避されてリセッションも軽く済むし、もしかしたら利下げも近いと楽観的だ。

ただ、今のところ、共和党のマッカーシー下院議長は支出削減を譲らずバイデン政権は支出優先を譲らずで、交渉にすらなっていないようで・・

・・と、マッカーシー下院議長は「何も進まんかったわ」とこぼす。

また、ゼロヘッジさんの記事では、3%というデフォルト確率は、同様の債務上限問題に揺れた2011年・2013年の時よりも遥かに高い数値であることが指摘されている。

市場参加者の中で、妖気を感じているヤツがいる・・?

妖怪アンテナ

実際に、現在の債券ヨコヨコは嵐の前の静けさ・・との指摘が出てきている。

この記事の概要(意訳)だが・・

  • チャート的に、10年米国債の価格下落(=利回り上昇)のタイミングが近い。
  • 2011年と2013年の債務上限問題で債券利回りは低下したが、この時もリスクの中心は国債だったものの、当時のリスクオフ環境下においては、唯一の安全資産が国債だった。
  • しかし、直近ではコロナショックやインフレ対策を理由に国債発行は激増しており、債務上限問題の解決=国債発行の超加速となるのは間違い無い。
  • 10年米国債利回りに先行する、GFTI(世界金融逼迫指標)は上昇している。
  • 増加する過剰流動性マネーは、景気後退の兆しが強まる中でも、インフレヘッジを理由に国債ではなく株式に流入している・・が、どっちもインフレヘッジにはならない。(=株も暴落する?)
  • 米国債保有したくない海外勢が増える中で、短期金利の急上昇は、海外勢(日本など)の為替ヘッジコスト上昇に繋がるため、米国債需要は減退している。

・・と言うもので、チャート的に米国債暴落のタイミング+米国債の買い手不在+インフレ再加速によって、米国債大暴落(=利回り急上昇)するとの予測が出てきている。

ちなみに、インフレ加速や長期債暴落については、あの藤巻氏も同意見だ。

また、先のゼロヘッジさんの記事でも指摘されているように、ドルの債務上限問題のクリアとは、莫大な赤字国債(=通貨)発行の再開を意味する。

つまり現在の債務上限問題に揺れる米国債は・・

  1. 問題が解決されなければ、新規国債発行出来ずにデフォルトとなり、米国債暴落&利回り急上昇
  2. 問題が解決されても、米国債忌避+インフレ+国債の過剰発行再開で米国債大暴落&利回り急上昇

・・の2択となっており、どっちみち米国債は暴落する可能性が高いことが分かる。

この、米国債暴落によって懸念されるのが、銀行破綻劇の再来だろう。

アメリカの巨大金融資本が引き起こした銀行破綻とQE再開」で紹介したように、銀行危機とは・・

  • 預金が集まらないので預金金利を上げた結果、融資業務は逆ザヤ
  • 保有国債の大幅下落による莫大な含み損

・・という地銀さんたちがヨロシクナイ状態になっているところに、JPモルガン等の巨大金融資本が、地銀顧客に「この銀行ヤバイっすよ、ウチに預けた方がいいっすよ」と預金流出を誘発したことで、地銀のバランスシートが壊滅して破綻した・・というものだ。

つまり、モルガン等の巨大金融資本が、地銀を安く買いたたくために誘発した銀行危機・・との側面があるため、国際金融資本のエライ人たちが満足するまでは終わらないと言える。

実際に、JPモルガンCEOやシティ・バンクCEOと会談したイエレン財務長官が、「もっと銀行合併が必要やね(意味深)」と語ったことをCNN等が報じている。

CNN

During Thursday’s meeting with the CEOs of large banks, Trea…

既に、Nextシグネチャー銀行・シリコンバレー銀行・ファーストリパブリック銀行として、パックウエスト銀行やウエスタン・アライアンス銀行始め、いくつかの大手地銀の名前が挙がっているが、それらの銀行からの預金流出は深刻化しており、株価も8割減となるなど破綻目前となっている。

つまり、債務上限問題が解決してもしなくても、保有債券の暴落+利回り急上昇に巻き込まれた地銀勢は、保有債券の暴落&預金流出によって死ぬ(=巨大金融資本への身売り)ことになる。

また、銀行危機が再燃すれば、それを救うために国債の更なる発行による預金保証→国債発行→国債暴落→銀行破綻・・というドツボスパイラルに陥ることになる。

なお、2023年に破綻した銀行の規模に関するこのツイートは恐怖だ。

以下翻訳

2023年の時点で、すでに3つの銀行が破綻し、その合計資産価値はGDPの2%を超えています。以前のサイクルでは、同じ打撃を受けるには数百から数千の銀行が必要でした。

・・と言うもので、リーマンショックを超える異次元の早さで巨大銀行が潰れている状況となっている。

なお、この状況と並行して、ドルを取り巻く環境は・・

  1. ドルの金融兵器化による脱ドル&米国債・ペトロダラー崩壊→信用喪失→基軸通貨性喪失
  2. マネーサプライ減少→信用収縮→CREショックによる歴史的な金融危機→金融バブル大崩壊

・・と、第二次世界大戦以降で最大のヤマ場を迎えており、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンが指摘する「マネーサプライ減少が歴史的金融危機を誘発する」が懸念される中で、ドル暴落によるハイパーインフレ予測が散見される状況となっている。

銀行の信用収縮でマネーサプライ急減、ドル崩壊後の準備が始まる

バイデンのサウジ訪問はペトロダラー終焉の合図

ケニア大統領が警告するドル暴落とペトロダラー崩壊

元コインベースCTOが予測するハイパーインフレ=ドル崩壊

アメリカでは国を挙げて巨大金融資本への地銀資産の献上が進んでいることを踏まえると、銀行破綻の流れが止まるハズもなく、「米国債暴落」は意図的に誘発されていると言えよう。

意図的・・という点において、元キャリア外交官の原田武夫氏は、アメリカのデフォルトは「簿外資産」を受領するための方便と指摘する。

曰く、アメリカのバイデン政権は、(岸田さんが勝手に間に入っている?)簿外資産の受け手になるため、その巨額資産を必要とする理由としてデフォルトする・・との可能性が指摘されている。

また、米国債デフォルトとなれば、米国債・ドルを中心とした世界秩序が壊れていくのは当然であり、ここ最近の政界における維新の躍進や、芸能界のジャニさん問題表面化などは、アメリカ支配(3S政策)崩壊の象徴的な動きとする。

このように見ていくと、今回の債務上限問題は、2011年・2013年の時とは根本的に異なっており、それがアメリカのデフォルト確立3%という高率に表れていると考えられる。

かのジョージ・ソロスの信条は・・

市場は常に間違っている

・・というものだが、コロナ騒動やワクチン、ウクライナ危機等を踏まえると、この言葉の真の意味は・・

市場(=一般大衆)は常に間違った判断をさせられる

・・と読み解くべきだろう。

米国債デフォルトを察することが出来たのは、わずか3%・・・となるのかどうか。

ドル等の通貨が、早い段階で飲み込まれていくイルミナティカードが頭をよぎる。

bank merger

さて、ドル崩壊後を見据えた動きの一つとして、アメリカのテキサス州では、州独自の「金に裏付けられたデジタル通貨」発行に関する法案が、州の上下院議会に提出されたことを以前に紹介した

この法案にある「金に裏付けられたデジタル通貨」とは・・

  • 個人がテキサス州からデジタル通貨を購入
  • テキサス州はそのカネで金を購入し、テキサスの金地金保管所等に保管
  • デジタル通貨はドルや金と交換可能

・・という金本位制的なデジタル通貨で、中央銀行による無限発行が出来ない「健全な」スキームとなっている。

また、ピーター・シフ氏は、この健全なデジタル通貨によって・・

  • 逆グレシャムの法則(良貨は悪化を駆逐)の発動により、CBDC(中央銀行デジタル通貨)等の裏付けの無いフィアット通貨は駆逐される
  • 政府のムダ使いは抑制されて、世界からムダな戦争は無くなる

・・となることを予測している。

さて、この「金本位通貨法案」だが、何と、付議されていたテキサス州の下院国務委員会において可決されたとか。

7対6と僅差だったものの、テキサス州には金銀の裏付けを持ち、現金(ドル)や金銀での償還可能なデジタル通貨の確立が義務付けられたことになる。

また、複数の州で金銀の裏付けを持つデジタル通貨の使用・流通が始まれば、FED(連邦準備制度)は事実上無効となり、銀行家(FRBを作った人たち)による貨幣独占は終わる・・とのことだ。

なお、話題のCBDC(中央銀行デジタル通貨)も、裏付けを持たないフィアット通貨という点ではドルと同じなので、金本位デジタル通貨によって駆逐されることになる。

こうした中で、以前にも紹介したFedNow(フェドナウ)に関して、新たな動きが出てきている。

FedNow自体は、FRB謹製の即時決済サービスに過ぎないものの、CBDC実用化のために必要なインフラであるため、FedNow稼働によってCBDCへの移行が可能になる。

このFedNowと、厳格な法適合をコンセプトに開発された「メタル・ブロックチェーン」を統合したバンク・ブロックチェーンが作られることが報じられている。

コインテレグラフさんの記事には・・

この統合により、銀行が将来的な中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対応したり、あるいは「ステーブルコイン通貨のバスケット内で相互作用する銀行発行のステーブルコイン」に対応したりするための準備を進めることが可能になると述べている。

・・とあり、米国内の銀行にCBDC対応させるための準備が進んでいることが伺える。

こうした中で、金本位通貨を可決したテキサス州議会では、CBDC禁止法案も提出されているようで、中央銀行やドルに正面からノーを突きつけている。

法案草稿によると、CBDC(デジタルドル?FedCoin?)の使用により、FEDと個人(消費者)の間に直接的な関係が確立されるため、政府が個人の現金保有・取引を監視・統制可能となってしまう・・というのがCBDCを禁止する理由だとか。

さらに、CBDCは取引データを集中管理するため、ハッキング(クラッキング)された際の被害が大きくなるなどセキュリティ面では脆弱になるため、単に政府の監視・統制が強まるだけでメリットは無い旨も指摘している。

また、フロリダ州ではCBDC禁止法案に、デサンティス知事が署名したとのことで、一足先に成立したようだ。

この流れで行くと、フロリダ州でも金本位通貨の導入が義務づけられることになるかもしれない。

ここまでをまとめると・・

  • 市場(世間)は米国債がデフォルトしないと楽観的だが、実はデフォルト確率はこれまでで一番高い。一説には、簿外資産を受けるためのデフォルトとか。
  • ただでさえドル・米国債離れが進んでドルの基軸通貨性が脅かされる中で、デフォルトしなくても米国債は下落する。
  • そうなれば、巨大金融資本とアメリカ政府による(意図的な)銀行危機が再燃する可能性が高い。
  • アメリカでは、デフォルト後の措置として、CBDC構想が動き初めているが、テキサス州では、金銀本位通貨の創設が決まり、フロリダ州ではCBDC禁止法が出来た。

・・と言う感じか。

気になるのは、テキサス州の金銀本位通貨の裏付けとなる金銀は、現在の経済規模に対応するほどの量があるのかだが、もしかしたら、その原資は簿外資産・・??

さて、アメリカ財務省の残り資金も少なくなってきたようで、6月1日まで持たないかもしれない。

共和党・民主党「えっ?6月1日が期限て聞いてたんですけど?」とはならないだろうが・・。


最後まで読んでくれてありがとう!