ロシア対アメリカ

ロシアの部分動員令と戦争のエスカレートを望むアメリカ

ロシア対アメリカ

9月21日、ついにロシア・プーチン大統領が、予備役など軍隊経験を持つ国民の動員を発表する演説を行った。

まあ、総動員ではなく部分動員なので完全本気というワケではなさそうだが、現状は総兵力の半数程度で戦争しているロシア軍兵力の増強となるのは間違いなさそう。

差し当って問題なのは、この部分動員令によって戦争がエスカレートするのか否かだ。

この部分動員とセットで見るべき・・と思われる報道が2つ出ている。

1つ目がこれ。

ロシアとウクライナの間で、捕虜交換が実施されたというものだ。

この件については、ゼロヘッジさんが報じているように、ロシア・ウクライナ双方の国民から不満の声が上がっている。

日本では、ロシア側は外国人捕虜含む215名を解放したと報じられているが、その中にアゾフ連隊の司令官級が含まれていたため、アゾフ連隊に深い恨みを持つドンバス地域等で不満の声が高まっているとか。(アゾフ連隊の活躍報道から見る戦況とドルの崩壊

ただ、このアゾフ連隊司令官級の捕虜は、戦争終結まで移送先のトルコに留まることになっているとのこと。

ウクライナでは英雄であるハズのアゾフ司令官のこの対偶から見えるのは、ロシア・ウクライナ共にアゾフの扱いに困ってたっぽいということだろうか。

ゼレンスキー大統領はロシアのスパイ説を考える」で紹介したように、ゼレンスキー大統領は今回の戦争を利用してウクライナ政府を牛耳るアゾフ連隊をロシアに潰させたと思われる。

一方のロシアにとっても、ウクライナの英雄アゾフ司令官の処刑により、ウクライナ国民からの反発を招いて戦争がエスカレートする可能性も予想された。

これらを踏まえると、ゼレンスキーは捕虜交換に当たって「アゾフは一応英雄なんでウクライナで引き取るけど、ウザいから追放しとくわ」との条件を提示した可能性が見えてくる。

また、この捕虜交換ではウクライナ側からは、プーチンと個人的な親交も深いとされている親ロシア派の国会議員&オリガルヒのヴィクトル・メドヴェチェクが解放されている。

メドヴェチェクはウクライナで逮捕されていたのだが、この逮捕にはアゾフと関係の深いイーホル・コロモイスキー(オリガルヒ)の関与が疑われているほか、逮捕の罪状は国家反逆罪なので、ウクライナ国内で処刑となる可能性もゼロでは無かった。

そうなれば、ロシアも黙っているワケにはいかなくなる。ゼレンスキーとしては、地雷となりかねないメドベチェクをロシアに送っておきたかった可能性が高い。

こうして見ると、今回の捕虜交換には両国とも制御不能な戦争のエスカレートを避ける目的があった可能性が高く、その点からは部分動員令による戦争エスカレートは無さそうではある。

もう一つ気になるのは、ロシアが9月23~27日にかけて予定している住民投票だ。

ドンバス2州とザポリージャ州、へルソン州のロシアが実効支配する地域において、ロシアへの編入の是非を問う住民投票が実施される。

この住民投票について、欧米メディアは「負けてるロシアが焦ってる証左」としているものの、本当にそうなのだろうか。

ウクライナ軍のハルキウ奪還で確実になるEUの崩壊」で紹介したように、ハルキウ戦でロシア軍は戦闘らしい戦闘をしていないため、元からハルキウ撤退を指向しており編入予定地域ではなかった可能性が高い。

実のところ、ロシアが実効支配している地域=ロシア系住民が多く住む地域=ウクライナの極右主義者からの迫害対象なので、戦争を望む国際金融資本の餌食となりやすいため、ウクライナ地域が安定しない原因でもあった。

また、ウクライナはドイツ・フランスから、ドンバス住民をいじめないことや自治権の付与を求められていたものの、国際金融資本や極右アゾフに牛耳られるウクライナ政府には履行不可能だった。(ウクライナで激化する戦闘はウクライナ政府が望んだこと?

このような状況と先の捕虜交換の対応を踏まえると、今回の4州の住民投票はロシア・プーチンが仕掛けたものではあるものの、極右や国際金融資本の排除に繋がる点から、ウクライナ・ゼレンスキーにとっても悪い話ではない。

なお、選挙について、ウクライナは側からは住民に対して投票をさせない動きが出ている。

敵国の占領下にいる住民に対して「敵の言うこと聞いたらムショ行きやぞ」の宣告は、捕虜になる前に自決しろという日本軍の教えを彷彿とさせ、背後のアメリカ・イギリスに言わされているだろうことが伺える。

また、以前にも紹介したように、ウクライナ軍の中にウクライナ軍の軍服を着たアメリカ兵が紛れている疑いもあるため、ロシアの部分動員令の目的の一つには、アメリカやイギリスによる選挙・編入妨害を排除することにありそう。

ロシアのショイグ国防相は、部分動員令の目的について1000kmを超える前線の強化としている。

ロイターには、

ショイグ氏によると、予備役の主な任務は、現在1000キロ以上に及ぶウクライナの前線を強化することだ。「当然ながら、この前線の後方を強化し、領土を支配する必要がある」とショイグ氏は国営テレビに語った。

とあり、部分動員令で増強した兵力は、ロシアが編入するエリアの防衛に回される模様だ。

これを「ウソや、戦争エスカレートや」と見る向きも多いが、捕虜交換の状況やハルキウからの撤退状況等を踏まえると、おそらく本当だろう。

と言うことで、部分動員令による戦争エスカレートは考えにくい・・が、ウクライナ領の一部がロシア領となれば和解は不可能となるだろうから、戦争の長期化は避けられない。

こうした中で窮地に立たされるのは、ロシアではなく欧州勢だ。

ウクライナ戦争の真のターゲットはEU ユーロは崩壊へ」等で紹介しているように、欧州はエネルギー危機・経済危機・金融危機のトリプルアタックにより、グレートリセットの切り込み隊長になりそうな状況となっている。

直近では、ドイツのエネルギー大手のユニパーが経営危機により国有化されることとなったとか。

この状況を見ると、欧州はセルフ制裁により既に瀕死の重症となっていることがわかる。

欧州勢がトリプルアタックを避ける唯一の道はロシア制裁の解除だが、これはウクライナ支援停止と対米離脱・NATO分裂とワンセットでるため、ハードルは高い。

なので、欧州勢はウクライナに「早く和解しろ」と加圧しているんだろうが、この戦争の本質は経済戦争メインターゲットはEUなので、グレートリセット推進役のバイデン政権にとっては・・

Yurusen

・・となっていることだろう。

そのメチャ許さん結果が「ウクライナ軍のハルキウ奪還で確実になるEUの崩壊」で紹介したような、アメリカ主導でウクライナ軍優勢が喧伝される展開であり、「ウクライナ支援の結果出てまっせ!」として欧州勢はウクライナ支援(ロシア制裁)を続けるハメになった。

こうした中での部分動員令+住民投票は、欧州勢にとって「ダメ押し」となる。

まるで欧州勢がアメリカにハメられたような状況だが、スウェーデンの日刊紙「ニヤ・ダグブラデッド」が、アメリカのシンクタンクのランド研究所による、ドイツを弱体化させてEU内での影響力を削ぐための計画書の存在を報じている。

記事の全文はこれ。

Shocking document: How the US planned the war and energy crisis in Europe

記事の概要はこんな感じ。

  • 3.5億ドルもの予算を持つランド研究所は国防総省と関わりがあり、冷戦中の外交および防衛政策に関するアメリカの戦略を策定していた。
  • 今年 1月にランド研究所が作成した文書は、ウクライナの攻撃的な外交政策によりロシアの軍事行動を誘発すると共に、欧州に対してロシアへの経済・金融制裁を課すよう圧力をかけるという内容だった。
  • その制裁によってドイツとロシアは分断されEU経済は崩壊することになるため、最大90億ドルの資源がアメリカに流れ込み、欧州の教育を受けた若者の移住も促進される。

アメリカが欧州経済を破壊して欧州からの資源流入を必要とするのは、アメリカ経済を維持することが理由となっている。

ただ、ブレグジットによりEUに対するアメリカの影響力は低下しているため、ドイツ・フランス・ロシアの協力体制を立ちきって弱体化させる必要があり、そのためにウクライナ戦争を誘発したということのようだ。

また、この計画ではロシアからのエネルギー供給を遮断するおバカさんがドイツに必要だが、そのバカとして使われたのは緑の党であり、視野の狭い原理主義的独善的な政治家は利用しやすいことが理由とか。

なお、ランド研究所はこの文書の存在を否定しているが(そりゃ否定するだろう)、これが本当ならウクライナ戦争とはアメリカの、アメリカによる、アメリカのための戦争ということになる。

まあ、イラクやリビア、シリアも同じようなものなので、別に驚くようなことではないか。

結局のところ「ウクライナ戦争の真のターゲットはEU ユーロは崩壊へ」で紹介したように、この戦争のメインターゲットがEUというのは間違いなさそう。

ちなみに、20日に予定されていた部分動員令の発表演説が、急遽翌日に延期されたことをゼロヘッジさんが報じており、やられっぱなしの欧州勢も打開策を模索中のようだ。

延期の理由は謎だが、トルコのエルドアン大統領が「プーチン、早く戦争終わらせたいってよ」と話していることと関係があるかもしれない。

エルドアン大統領によると、ウズベキスタンで先日開催された上海協力機構の首脳会議においてプーチン大統領と「戦争の早期終結」「侵略した領土の返還」などを話したとか。

ドイツやフランスから仲裁を頼まれただろうエルドアンには「ワイは欧州で役に立つ大国なんや」とプレゼンスを高める目的もあっただろうから、これらの発言はリップサービスだろう。

ただ、藁にもすがるドイツから「エルドアンさんから聞いたんすけど・・」とプーチンに連絡が入って、部分動員令という超重大発表が1日延期された可能性は考えられる。

多分だが、欧州勢は「ウクライナ支援はアメリカにやれって言われてるだけなんですぅ」「NATOと全面戦争しないで、一生のお願い」との泣きが入ると共に、ウクライナ4州編入の住民投票について「欧州了解っす(^o^ゞ」となったのではないか。

また、「ウクライナで激化する戦闘はウクライナ政府が望んだこと?」で紹介したように、ドイツはウクライナにミンスク合意の履行を迫っていたが、そのミンスク合意は「ドンバスへの自治権付与」を定めており、見ようによっては住民投票によるロシア編入は自治権付与と言えなくもない・・かな?

いずれにせよ、欧州勢はNATOとの全面戦争に発展させないことを条件に、部分動員令と住民投票を承諾した可能性はありそうで、ロシア・ウクライナ・欧州勢は戦争のエスカレートを望まない点で一致してそう。

ただ、ウクライナ4州がロシア領となったところをウクライナ軍(実体はアメリカ軍)が攻撃すれば、領土防衛を大義とした本格戦争へとエスカレートする可能性はある。

また、特にアメリカから「核兵器」の単語がチラついており、先のランド研究所の計画を踏まえると、核の恐怖により欧州の賢い若者やカネをアメリカに呼び込みたい思惑が見えるため、アメリカは無理矢理にでもエスカレートさせるかもしれない。

だが、アメリカが戦争エスカレートさせるのは、自国が儲けたいからだけではない。

4回目ワクチン接種に見るイスラエルの役割とアルバートパイクの計画」で紹介したように、第一次・第二次世界大戦の予言(予定?)を的中させたアルバート・パイク曰く、世界革命の達成(世界統一政府樹立)のために、アラブの指導者とシオニストとの間で第三次世界大戦が引き起こされるとか。

教科書が絶対に教えない 闇の世界史(ウィリアム・G・カー 著)

そして、その第三次世界大戦(中東戦争)の原因として有力なのが、「イラン核合意は原油価格の高騰と中東戦争の引き金になる」で紹介したイラン核合意(JCPOA)だ。イランの国際社会の復帰を最も嫌うのが、イランの仇敵イスラエルだからな。

一方で、世界3大天然ガス産出国のイランの天然ガスを欲する欧州勢は、この核合意を最も必要としている。

この核合意については、イスラエルロビーが障壁となっており進展しない感じとなっているが・・追い込まれた欧州勢の底力でウルトラC合意となるかもしれない。

そこまで欧州勢を追い込むために、アメリカはウクライナ戦争をエスカレートさせるのかもしれない。

さて、「自滅するEUの分裂と対米離脱、そして中東戦争へ」で紹介したように、欧州のガスや電力供給は業界幹部や政府が言うよりも遥かに危機的状況となっており、多くの凍死者が出かねない状況となっている。可能な限り、人が死なずに済む方向性に動いて欲しいと切に願う。


最後まで読んでくれてありがとう!