ドルの崩壊

崩壊しそうなドルと日銀の金融政策、そして新たな通貨システム

ドルの崩壊

FRBがドル安に動き出したことで見えてきた金融危機」では・・

  • FRBのQTにより、市場ではドル不足となっている。
  • このため、FRBはリバースレポ資金を放流すると共に、日本や中国にも「ドル売り介入」させて市場にドル供給している可能性がある。
  • ジャブジャブ資金&超低金利が大前提の金融システムは、QT・利上げに耐えられない。
  • ミルトン・フリードマンが指摘するように、超巨大バブル崩壊&金融危機は歴史的必然

・・と言ったことを紹介した。

さて、QTについては、FRBのパウエル議長のインフレ対策最優先で金融引締めする「ダンコたる決意」によって、毎月950億ドル(米国債600億ドル+MBS350億ドル)という異次元規模のQTによってドル資金が市場から吸収されている。(FRBの金融引締めは怒涛の暴落と円高、そして日本バブルへ

以下はFRB資産の推移だが・・

20221227FRB資産推移

・・9月以降に急速に減少しており、FRBが驚異的なペースで市場からカネ(ドル)を吸い上げていることが分かる。

これに関連して気になるのは、銀行間で短期資金を調達する際のレポ金利が上昇するなど、ドルの調達コストが上があっていることだろう。

ブルームバーグの記事からは、ドルの調達コスト上昇は、利上げに加えてQTにより金融機関の手持ちドルが少なくなっていることが原因であることが伺える。

さらに、金融機関の手元には担保となる米国債が大量にストックされているようで、QE停止・QT開始と無関係ではないだろう。

今では、国債利回りよりもドル調達コストの方が高そうなので、米国債需要とアメリカの野放図な財政拡大が懸念されるところだ。

なお、2019年12月に、銀行間で短期資金を融資し合うレポ市場の金利が急騰したことがあったが、その時はFRBが資金供給(=事実上のQE再開)することで何とか落ち着いた。

今回の場合、インフレ下でのQE再開は難しいだろうから、銀行さんが資金調達に苦心する状況は長引くだけでなく、QTの継続により市場からドルは姿を消していくため、資金調達の苦労はさらに増していく。

なお、ノーベル賞経済学者ミルトン・フリードマンは、経済は「需要と供給」ではなく「貨幣の数量」により規定されるため、歴史的なリセッションの原因は「金融引締めによるマネーサプライ減少」とする。

日本人だけが知らない戦争論(苫米地英人 著)

平たく言えば、1929年の暗黒の木曜日のような金融危機は、中央銀行による(意図的な)やらかしと言うことになる。

FRBはリバースレポ資金を放出し、さらに日本に為替介入(=ドル売り)させるなど、市場にドル供給し、その資金を米国債に投入することで、ドル&米国債の流動性を確保しているが、QTが続く限りドルの調達状況は悪化するばかりだ。

ちなみに、これに関連してドルにはもう一つ懸念材料がある。

それが「インフレ鈍化」だ。

以前のブログ記事で、CPI(消費者物価指数)やPCE(個人消費支出)の結果からインフレが鈍化し始めたことを紹介したが、この理由は、サプライチェーンの回復や原油価格の低下、賃金頭打ち等が言われている。

しかしながら、インフレ鈍化の真の理由は「銀行の信用収縮」なんじゃないか、との指摘が出てきている。

銀行は手持ちのカネ(準備金)以上のカネを貸し出す(=市中に出す)という「信用創造機能」を持っており、経済活動に応じて市中に出回るカネが増えていくようになっている。

だが、ゼロヘッジさんの記事によると、これまでの超低金利下で利ざや確保に苦しんだ銀行は「レバレッジ過剰」となっており、金融引き締めによるリスクを念頭に「信用創造」に後ろ向きになっているとか。

銀行は「もう誰にも貸さねーぜ」「貸し剥がしちゃうぜ」となっているのだが、市場流通する通貨・信用の9割は銀行発のものであるため、銀行の信用収縮リスクはかなり深刻だとか。

なお、アメリカの銀行は7月末からこの状態に陥っているようだ。

銀行の信用創造はバランスシートの拡大に表れるが、このグラフから分かるように、バランスシートは7月末以降は停滞している。

先に紹介したレポ金利・ドル資金調達の件も、手持ちドルが無いことに加えて、銀行間での信用収縮が進み、疑心暗鬼になっているのかもしれん。

ジャブジャブ資金&超低金利を前提としていたアメリカの銀行は、金融引き締めに全く対応出来ていない。

と言うことで、金融引き締めたアメリカのインフレ減速は、「金融引き締めの成果」ではなく「銀行の信用収縮」であり、ミルトン・フリードマンが指摘する超巨大バブルの崩壊に向かっている可能性が高い。

さて、一方の我が国日本では、円安・インフレにより日銀への「金融緩和ヤメロ」圧力が出始めている。MMTとか何処に行ったのか・・。

圧力の一例として、日銀が既発国債の半分以上保有していることを問題視する報道も出てきた。

日銀が既発国債の半分を保有し、事実上の財政ファイナンスまでしているのは大問題ではあるものの、今さらな情報でもあり、このタイミングで出てきたのは日銀の金融緩和を止めさせる圧力以外の目的が思いつかない。

また、日銀の余剰金が過去最高となったことを報じたこちらの記事。

株高や円安によって、日銀の保有資産の含み益が大幅に増加したことが報じられているが、最後の部分で・・

日銀が保有する国債は金利上昇(価格下落)の影響を受け、8749億円の含み損(今年3月末は4兆3734億円の含み益)に転じた。含み損が生じたのは、黒田東彦総裁が13年に異次元の大規模金融緩和を導入してから初めて。

とあり、国債価格の下落(=利回り上昇)によって、+4兆3734億円から-8749億円へと5兆円もの落差となったことが報じられており、日銀の国債大量保有を暗に批判する印象を受ける。

日本国債の利回りを月足で見ると・・

20221226日本国債月足チャート

記事が出た時期の利回り水準は0.25%強で、今年3月の0.2%弱の水準から切り上がっているが、この程度の利回り上昇で4兆円超の含み益が8000億円超の含み損に変わったワケで、まあ批判されても仕方ない。

さらに、国債利回りが1%となった場合には、含み損が28.6兆円になることも報じられている。

これらの記事は、通貨の番人たる日銀が、価格変動の激しいハイリスクな長期債を大量保有して債務超過になる可能性を指摘している点で正しいものの、やはり批判するには余りにも遅い。

世界的な金融引き締めの潮流に乗って、金融緩和を止めさせようとする圧力以外の目的は見当たらない。

そして、ついに圧力に屈したのか・・日銀さんは12月20日の日銀金融政策決定会合において、これまで0.25%としてきた10年国債の利回り上限を0.5%に引き上げた。

市場では、これを「事実上の利上げ」「引き締め転換」と受け止め、ドルとの金利差縮小期待から怒涛の円高展開となった。

いかはドル円の日足チャートだ。

20221220ドル円日足チャート

元々、アメリカの引き締め減速期待から円高方向に転換していたところだが、日銀の政策変更を受けて、高値137.4円付近から130.56円まで介入級の大暴落となった。

なお、この0.5%とは、日銀さんが含み損による債務超過に陥らないギリギリのラインだとか。

日銀さんも土俵際まで追い込まれたか・・と思いきや、日銀Webサイトにある「(参考)イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の見直し」と言う資料では・・

  • 10 年物国債金利について0.5%の利回りでの指値オペ
  • 各年限国債の買入れ増額・指値オペ実施

・・となっている。

これは、あまり買入していなかった5年債や20年債等を海外ヘッジファンド勢が売り込んで金利上昇したため、10年債金利だけ極端に低くなって「売買不成立」が続いたことへの是正措置と思われる。

10年債0.5%を軸に全年限をガッツリ購入して、海外ヘッジファンド勢による不自然な金利上昇を抑え込むとの意思表示だ。

YCC自体がそもそも不自然・不健全・・とのツッコミはあるものの、日銀は引き締めどころか事実上の金融緩和拡大をしており、国家存亡をかけた金融引締め圧力をかわしたと言えるだろう。

しかし、日銀が上手くかわした・・と言うか、金融緩和の継続を認めてもらえたのは何故か。

この理由として考えられるのが、「いよいよインフレが本格化 そして日本デフォルトとデジタル円」等で紹介したように、日銀は国債市場における最大の買い手なので・・

  • 日銀が国債購入から手を引けば国債価格暴落(=金利急騰)となる可能性が高い
  • 国債価格暴落で、日銀は債務超過となる可能性が高い
  • 日銀は事実上の財政ファイナンスをしており、金融緩和をやめられない

・・と言うことで、日銀は引き締めた瞬間に即死するため、そもそも引き締められないことは理由としてあるだろう。

しかも、強烈な金融引き締めをするアメリカでは、インフレ鈍化に見せかけた「銀行の信用収縮」が起こりつつあり、金融危機の一歩手前の状況になっている可能性が高い。

うっかり日本が引き締めれば、世界金融危機のトリガーとなりかねない。

さらに、見せかけの0.5%による円買い(=ドル売り)誘発は、市場へのドル資金放出に繋がるため、アメリカ様の御意に沿ったものである可能性も高い。

だが、それだけの理由で、日本だけ特別扱いしてもらえるとは思えない。

金融引き締めによって、欧米で金融危機となる可能性が高いため、そうなった際に、日本に資金を逃避させるためのに、日銀に金融緩和を許している・・と見るべきだろう。(FRBの金融引締めは怒涛の暴落と円高、そして日本バブルへ

これと合わせて、「ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット」や「フィリピンでのマルコス王朝復活と金融システムの転換」で紹介した簿外資産の日本流入の話も思い出したい。

原田武夫氏の動画はこれとか・・

これ。

原田武夫氏曰く、簿外資産とは人類を未曾有の厄災から救う大規模資金であり、その投入時期が近づいているとか。

これらの動画で語られているポイントをまとめると・・

  • 簿外資産の受け皿となる日銀は、莫大な額を円転する必要があるため、今のところは円安誘導を続けている。
  • 日銀が莫大な額の簿外資産を円転するほか、「世界中の人が円を持たなければならない状況となる」ため、強烈な円高となる。
  • 日本に流入した資金により、株式や不動産などは壮絶なバブルとなる。
  • ただし、人類資金ともいえる簿外資産は日本には滞留せず、事前に決まっている世界の様々なプロジェクトに回されることになる。
  • 日本は、壮絶な円高・バブル局面を経て後にひっくり返ることになる。

・・とこんな感じだ。

簿外資産投入まで、日本(日銀)に倒れてもらっては困るエライ人が多いのだろう。

こうした状況を踏まえると、このイルミナティカードが示唆するような・・

bank merger

・・ドルなどの諸通貨を円が飲み込む展開となることが予想されるだけでなく、日本の金融緩和継続は支配者層の御意である可能性すら見えてくる。

しかしながら、このカードをよく見ると、円も謎の巨大魚に飲み込まれているし、原田武夫氏も「日本は壮絶な円高・バブルを経てひっくり返る」としている。

つまり、

米ドル・米国債を中心とした金融システムの崩壊

一瞬輝く日本

新たな金融秩序の構築

となっていくことが予想される。

そして、その新たな金融秩序の候補として、「ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット」等で紹介した、ロシア・中国陣営諸国が主導の金・資源の裏付けを持ったデジタル通貨が浮かび上がる。

この点について気になるのが、何処かの国の中央銀行が、大量に金を買い付けたことが報じられているこの記事。

ブルームバーグさんによると、7~9月期に世界の中央銀行は計399トンの金を購入しているが、これは、これまでの購入量記録の2倍に当たるとか。

また、このうち75%は購入国が不明としているが、ブルームバーグの記事では中国・ロシア・中東産油国の名前を挙げている。

いずれの国も、ロシア・中国陣営の国々なので、来るべきドル崩壊や金・資源本位デジタル通貨を見据えて、金を大量購入しているのかも。

このように、ロシア・中国陣営は金の保有量を増やし、さらにイランやサウジアラビア、UAE、ベネズエラと言った中東や南米産油国まで加わったことで、世界資源の過半を握っており、金・資源本位デジタル通貨は現実的なものとなりつつある。

対する欧米陣営は、QEによってスーパーバブル化したペーパー資産こそ大量保有しているものの、バブル崩壊に突き進んでおり、これらのペーパー資産は只のペーパーになりかねない。

また、「バーゼルⅢで金と仮想通貨は爆上げ そしてドルは崩壊・・世界統一デジタル通貨へ」では、ビットコインには世界統一デジタル通貨の広告塔としての役割があることを紹介したが、それを踏まえて気になるのがこの記事。

ロシア議会財政委員会委員長のアナトリー・アクサコフ氏が、来月にもロシアが国際取引において仮想通貨の使用を認める準備を進めていることを明らかにしたことが報じられている。

ロシア議会のエライ人が、国際決済においてビットコイン等仮想通貨の使用を認めるというものだ。

ロシア国内での流通は引き続き禁止されるものの、これまでロシアは仮想通貨取引を禁止していたことを思うと、大転換と言える。

この背景には「ロシアへの金融制裁はグレートリセットの始まり!?」等で紹介したように、アメリカがロシアに対してドル・SWIFTを金融兵器とする「禁じ手」を使ったため、多くの国々に「ドル保有のリスク」を認識させドル離れを招いていることがあるのは間違いない。

この点については、ブルームバーグからも報じられている。

資源大国ロシアへの金融制裁は、ドル以外のハードカレンシーの備蓄に加えて、中国のCIPSやロシアのSPSFなど、SWIFT代替の決済システムへの分散化を招いているが、そこに多くのアジア諸国も追随しているとか。

ただ、これらの代替決済システムは規模も小さく、直ぐにSWIFT代替になるというものでもない。

こうした中で、ビットコイン等の仮想通貨を決済通貨とすることで、新たなプラットフォームを作らずにドル離れすることが可能となる。

国内の銀行がCIPSやSPSFに参加してなくても、ビットコイン等の仮想通貨を使用すれば、ドル決済システムSWIFTを経由しないのでアメリカにバレずに済む。

表向き西側陣営にいる(日本のような)国々にとっては朗報と言え、安価なロシア資源をある程度自由に輸入できるとなれば国益にも沿うことになる。

まあ、輸送を上手くやらないとバレるという話もあるが。

ある意味で、ビットコインが国際決済通貨になるものであり、世界統一デジタル通貨「フェニックス」の広告塔としてビットコインを活用するもの・・と言えるのかもしれない。


最後まで読んでくれてありがとう!