2023年3月8日のシルバーゲート銀行破綻を皮切りに、3月10日には総資産額28兆円のシリコンバレー銀行(SVB)が破綻し、3月12日には総資産15兆円のシグネチャー銀行(SNY)が破綻した。
この中で最も規模の大きなシリコンバレー銀行(SVB)の破綻について、特に数多く報じられている。
米銀行シリコンバレーバンクが経営破綻 金融危機以来、米銀最大規模 #朝日新聞デジタル https://t.co/ReYAfhRzNE
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) March 10, 2023
瞬速で銀行破綻、瞬速で危機対応……フィンテック時代の金融のスピード感(冷泉彰彦)https://t.co/q7YHldSvAw #アメリカ経済 #金融 #フィンテック
— ニューズウィーク日本版 (@Newsweek_JAPAN) March 15, 2023
と言うことで、まずはSVBの破綻理由を簡単にまとめてみたい。
まず、最初に言われているのは、金融引締め(利上げ・QT)による経営環境の悪化だ。
ニューズウィークの記事には「預金金利を高めに設定」とあることから、預金獲得競争で苦戦していたことが伺えるが、一方で企業への融資金利は契約時に決めた固定金利だろうから、この部分では逆ザヤとなっていた可能性が高い。
しかし、シリコンバレー銀行の融資比率は約4割程度(融資額740億ドル/預金1,730億ドル)と低かったことから、この逆ザヤが破綻の理由では無いと思われる。
そもそも、SVBの主な顧客のシリコンバレーのベンチャー企業さんは、Softbankビジョンファンドの惨状からも分かるように「ハイリスク・ハイリターン」なので、融資比率が低いのは納得だ。
ただ、「CLOが日本に集中!次の金融危機は日本発か!?」で紹介したように、超低金利&ジャブジャブマネーの環境下でゾンビ企業も社債発行による資金調達が容易だったことを踏まえると、コロナQE(量的緩和)マネーが溢れる中では「ローリスク・ハイリターン」の商売だったんだろう。
参考までに、FRBの保有資産の推移を見ると・・
・・と2020年のコロナショックでは、リーマンショックを超える規模で急増していることが分かるが、その後のQT(市場からの資金吸収)の角度も急であり、資金吸収ペースも異次元であることが分かる。
コロナQEマネーと共に成長したシリコンバレーのベンチャー勢は、コロナQEバブルの終了&QTで失速していただろうから、SVBにとって優良な融資案件は無くなっており、銀行の本来業務(融資)では苦戦していただろう。
ただ、SVBにとって致命的に不運だったのは、ベンチャー勢の失速に伴いってIPO(株式公開)企業数も大幅に減ってしまったことだろう。
▶️米IPO件数は前年比「8割減」。投資銀行予測「冬の時代を突破」最有力3社に自動運転モービルアイなどhttps://t.co/5SulW8Y6dC
— Business Insider Japan (@BIJapan) September 14, 2022
ビジネスインサイダーさんの記事によると・・
金融情報サービスのディールロジック(Dealogic)によれば、2021年9月上旬時点の新規上場社数は700社、上場時の資金調達額は2280億ドルに及んだが、2022年は同時点で上場社数が142社、調達額が170億ドルと見る影もない。
・・とのことで、IPO件数が激減しており、SVBの「IPOで一気に儲けたろ」との目論見は狂った。
このように、利上げ・QTフェーズに入って失速したSVBだが・・・さらなる不運に襲われることに。
先に紹介したSVBの低い融資比率は、SVBに「預金」された有り余るQEマネーの大半が、国債やMBS(ローン担保証券)等の安定資産で堅実運用されていたことを意味するのだが、「安定資産」の債券類は、FRBの異次元ペースの利上げによって大幅に下落した。
特に、利上げ開始前の利回り低い債券類は誰も欲しがらないゴミ化してしまった。
このようにSVBは・・
- 預金が集まらず融資業務は逆ザヤ
- 一発逆転のIPO不振
- 資産運用で含み損
・・と泣きっ面に蜂を地で行っていた。
そこで、SVBは、含み損を抱えた債券類を一部売却して流動性の高い短期債に巻き替えると共に、確定損失分を別途資金調達(増資?)で乗り切ろうとしたとか。
Record Bank Run Drained A Quarter, Or $42BN, Of SVB’s Deposits In Hours, Leaving It With Negative $1BN In Cash https://t.co/pReiOwd4yX
— zerohedge (@zerohedge) March 11, 2023
この措置によってSVBは18億ドルの損失確定させたが、2000億ドルの資産規模から見れば微々たる損失で、債券類の塩漬けによる機会損失を思えば正しい判断だったと思われる・・・のだが、SVBに預金していた顧客は何故か「ヤバイよヤバいよ~」と取り付け騒ぎとなった。
3月9日だけで預金総額(1730億ドル)の25%(420億ドル)を失ったSVBの手持ち現金は10億ドルを割り込み、資金不足によって破綻した。
・・と言うことで、SVBは利上げ・QTと相性最悪だったのも事実だが、破綻に至った直接的な理由は「謎の取り付け騒ぎ」という不運な出来事なのだった。
しかし、本当に「不運な出来事」だったのかという点については疑問が残る。
最初に紹介したニューズウィークの記事には・・
SNS、特にツイッターでは匿名による「SVBの資産内容は怪しい」という噂が拡散していきました。そこでSVBは信用不安を避けるために、普通株、つまり自社の新株を売り出して資金調達を計画しました。ところが、これが裏目に出てしまい、「やはり疑惑はホンモノ?」という噂が更に広まったのでした。
・・とあるように、「謎の取り付け騒ぎ」はウワサによって誘発されており、そのウワサを流したヤツが、SVBを破綻させた犯人ということになる。
で、犯人は誰か・・という点だが、それは「一番利益を得たヤツ」と相場は決まっている。
そうした観点でニュースを漁ると・・一番利益を得たヤツが国際金融資本の殿上人だった。
「大き過ぎてつぶせない」に預金者殺到、米国でSVB余波https://t.co/zFrZjq0FNW
— ブルームバーグニュース (@BloombergJapan) March 14, 2023
SVBから引き出された預金は、JPモルガンやバンカメ等の巨大金融機関に大量流入し、迅速な受け入れ作業のため営業時間を延長してするレベルとのことで、ベンチャー勢(SVB預金者)が、安心安全な大手金融機関に殺到していることが伺える。
JPモルガンやバンカメさんが、SVBを破綻させた犯人だった・・?
そういえば、先に紹介したゼロヘッジさんの記事には、ピーター・ティール氏(ペイパルマフィアのドン)やJPモルガン等の巨大銀行が、木曜日(3月9日)にSVB顧客のベンチャー勢に預金を引き出すよう指南していたことが報じられている。
やはり、SVBを破綻させた「謎の取り付け騒ぎ」とは、わずか18億ドルの損失確定によって起こったのではなく、JPモルガン等の巨大金融資本が「起こした」ものだった可能性が高い。
また、SVB経営陣も、破綻の約2週間前に株式売却していたとか。
SVBのCEOグレゴリー・ベッカー氏は、持ち株の11%(360 万ドル)を売却し、CFOのダニエル・ベック氏は32%(60 万ドル) を、CMOのミッシェル・ドレイパー氏は28%を売却したとか。
SVB役員の株式売却が司法省とSECに調査される https://t.co/vGxxAbbGDc
— zerohedge jpn (@zerohedgejpn) March 14, 2023
この株式売却は、30日前に提出された計画書に沿ったものとのことだが、このような大型売却は過去1年間遡ってもは見当たらないことからインサイダー臭がプンプンする話であり、SVB経営陣は少なくとも30日前にはSVB破綻を知っていたのは間違いない。
となると、やはりSVB破綻は「不運な出来事」ではなく、巨大金融資本による「意図的な破綻」・・と考えるべきだろう。
わざわざ破綻させたのは何故か。
これについて考えられるのは・・
市場への資金(ドル)供給
・・だろう。
「FRBがドル安に動き出したことで見えてきた金融危機」等で紹介したように、毎月950億ドル(米国債600億ドル+MBS350億ドル)という異次元QTによって、市場からドルが吸収されると共にレポ金利も上昇するなど、ドル資金調達コストが上がっている。
このため、FRBはリバースレポ資金の市場放出や日銀にドル売り介入させるなど、市場へのドル供給に腐心してきた。
10月21日(金)に日銀が大規模介入したことは記憶に新しい。151.68円まで上がっていたドル円を、わずか数時間で146.16円まで叩きつける強烈な下げに加えて、まさかのニューヨークタイムの介入によって天に召された市場参加者は多かっ[…]
ここ最近のFRBのリバースレポ資金を見ても・・
・・SVB破綻の声が聞こえた3月9日から14日までの間に1870億ドルものカネがFRBのポケットから減少(=市場に放出)していたことが分かる。
ただ、2000億ドル規模で資金放出したものの、破綻危機がウワサされるクレディ・スイスのCDSがハネ上がり・・
クレディ・スイスのCDSが過去最高を記録 シリコンバレーの銀行危機が欧州にも波及か https://t.co/sY31Sw7Jjh
— zerohedge jpn (@zerohedgejpn) March 13, 2023
・・スイス中銀が救済を表明するハメになるなど、リバースレポ資金という場当たり的な対処では焼け石に水だった。
この「ドル不足による金融機関の苦境」という状況は、ノーベル賞経済学者ミルトン・フリードマンの指摘・・経済は需給ではなく「貨幣の数量」により規定されるため、中央銀行による市場からの資金吸収(=QT)が歴史的な金融危機の原因となる・・を思い起こさせるものだ。
日本人だけが知らない戦争論(苫米地英人 著)
このミルトン・フリードマンの指摘を踏まえて、ゼロヘッジさんのこの一連のツイートを見てみる。
Why are some banks – like JPM – paying 0.01% on deposits? Because they don’t need them, because they are still flooded with Fed reserves on which they collect hundreds of millions in interest daily. In fact, JPM is trying to slash its retail deposits which are a cost center pic.twitter.com/Oh6JO5yYLf
— zerohedge (@zerohedge) March 11, 2023
ゼロヘッジさんによると、JPモルガンなどの巨体金融資本にはQEマネーがまだ残っているため、顧客の預金に頼る必要が無く、預金金利も0.01%と強気設定なんだとか。
SVBが預金金利を4%に設定し、融資金利との逆ザヤに陥っていたのとは対照的だ。
また、預金に依存しないJPモルガン等の巨大金融資本は、絶対安全なポジションからSVB・SNY破綻等の信用不安を起こすことで、FRBにQE再開を迫るインセンティブがあるとする。
これらの情報を総合すると、QTによるクレディ・スイス発の金融危機を止めるため、JPモルガン等の巨大金融資本はFRBに「QE砲用意!」と号令(=SVB・SNY破綻)した可能性が高い。
と言うことで、モルガン様に「QEやれ」と言われた米財務省とFRBの破綻対策を見てみると・・、まず目につくのは、各銀行の預金の全額保護だろう。
シリコンバレー銀行の預金全額保護 FRBが緊急融資枠https://t.co/9bgOWO1uHp
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) March 13, 2023
アメリカでは、FDIC(連邦預金保険公社)が25万ドル以下の預金者を保護するシステムが用意されているが、SVBやSNYの預金者の9割は25万ドル以上預けるベンチャー企業なので、預金保護の対象外だった。
ただ、これらベンチャー勢を見捨ててベンチャー壊滅となれば連鎖破綻の可能性も出てくる・・との理由で、本来は対象外の預金もFD
この預金保護措置で助かるのはベンチャー勢であり、さらにそのベンチャーに投資するファンド勢であることを踏まえると、FRB資金(=QE)によりファンド勢を救済する仕組みと言える。
さらに、BTFP(銀行タームファンディングプログラム)として、銀行が保有する債券を担保にFRBが資金供給する緊急融資策も用意される。
FRBの新たな貸し出しプログラム、最大2兆ドルを市場に供給も https://t.co/cobRyuiS2i
— ブルームバーグニュース (@BloombergJapan) March 16, 2023
銀行が保有する債券をFRBが引き受けてカネを出す・・というスキームはQEそのものであり、融資期限は1年以内とされているものの、ロールオーバー可能なので事実上は無期限融資という点を踏まえても、QE再開と言えるものだ。
JPモルガン・チェースのアナリストさんによると、資金供給規模は最大で2兆ドル、実際に供給されるのは4600億ドル程度と予測しているとのことだが・・モルガンさんがご所望なのは2兆ドル?
さて、SVBはゴミ化(価格下落)した国債を処分して取り付け騒ぎになったが、保有国債の下落に悩むのは何処の銀行も同じだ。
なので、このBTFPは銀行にとって「ゴミ処分のチャンス」であり、含み損の国債が「マネー」に化けるモラルハザードがまかり通ることになりそうだ。
既にこの兆候は出始めている。
FRB融資急増、過去最高https://t.co/bPHmOTjAd4
— 共同通信公式 (@kyodo_official) March 17, 2023
まあ、塩漬け不良資産がマネーになって株式市場や債券市場に再投入される・・というポジティブな見方もアリか。
FRB番記者のニック・ティミラオス氏によると、これら救済措置のためにFRBがバラ撒く(=QE)予定額は、今のところ3000億ドルとのことだ。
NEW: Borrowing at the Fed this week
+$148.3 billion – net discount window borrowing
+$11.9 billion – the new Bank Term Funding ProgramSubtotal: $160.2 billion
+$142.8 billion – borrowing for banks seized by FDIC
Total: $303 billionhttps://t.co/yUV5Db5iYj
— Nick Timiraos (@NickTimiraos) March 16, 2023
現在のQTが月額950億ドル規模なので、軽く3ヶ月分超を吹き飛ばすことになる。
順調に減少してきたFED資産も・・
・・わずか1週間で2970億ドルも増加しており、昨年4月から減らした6000億ドルの半分が戻ってしまった。
また、この増え方はコロナショックの時と同じようなペースであり、それだけ異次元規模のQE砲と言える。
この事実上のQE再開によるジャブジャブマネーは、株式市場や債券市場だけでなくFRB-スイス中銀経由でクレディ・スイスにも投入されるだろうから、金融危機は先送りされることになりそう・・だが、先送りするほどに金融バブル崩壊の規模はデカくなる。
このように、光の速さで事実上のQE再開が決まったワケだが、果たしてここまでの措置が必要だったのか・・という点は疑問だ。
実のところ、債券下落や預金流出によって破綻リスクにさらされている銀行は意外に少ないんだとか。
米銀行株の下げ止まらず シリコンバレー銀行破綻で動揺https://t.co/R6EU0nJfHr
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) March 11, 2023
日経記事には・・
保有債券の含み損を考慮すると破綻前から実質的に過小資本にあったシリコンバレーバンクと異なり、ほかの中堅銀行は財務基盤が比較的安定しているとの見方もある。
・・とあるように、実のところハイリスクなベンチャー勢融資がメイン+預金運用の大半を債券投資していたSVB以外は、ちゃんと銀行してるので問題は少ないとのこと。
こんな大盤振る舞いしなくても連鎖破綻しなかった・・?
さらに、米財務省やFRBがこんな大盤振る舞いしたのは、SVB・SNYの買い手不在との理由で事実上国有化したからだが、実は買い手がいたことをウォール・ストリート・ジャーナルがさりげなく暴露している。
The Federal Reserve’s new emergency lending facility will ensure banks don’t have to take losses liquidating their bonds to meet deposit redemptions.https://t.co/6mD3UKeM2p
— Wall Street Journal Opinion (@WSJopinion) March 16, 2023
SVBやSNYが身売りしていればQE再開不要だった=QE再開させたいから身売りさせなかった・・という可能性も。
こうした点からも、SVBの破綻は、QE再開のために意図的に誘発されたものであることは強く疑われる。
と言うことで、SVB破綻から救済策までを俯瞰すると・・
- JPモルガン等の巨大金融資本は、取り付け騒ぎを誘発してSVBを意図的に破綻させた。
- 必要以上に連鎖破綻の危機を煽ると共に、SVB等を財務省・FRB管轄下に置かせて事実上のQE再開させた。
・・となっており、QE再開のため、JPモルガン等の巨大金融資本がSVB破綻させたと思われる。
また、以前のブログ記事「【短資金利】日米で起こっている金融危機の密かな進行」等では、2019年にもレポ市場の金利高騰によってFRBが事実上のQE再開したことを紹介したが、この時にレポ市場金利を高騰させたのもJPモルガンだったことは、先のゼロヘッジさんの記事でも報じられているとおりだ。
JPモルガンさんがFRBを脅してQE再開させたのは2回目・・と言うことで、今回の銀行破綻劇は、JPモルガン等の巨大金融資本がFRB・米財務省にQE再開させるための「陰謀」であり、目的達成した以上は、連鎖破綻など無いと考えるのが打倒だろう。
しかしながら、これは金融危機が起こらないことを意味するものでは無い。
それどころか、JPモルガン等の巨大金融資本がFRBにQE再開させたのは、ミルトン・フリードマンが指摘する「QTによる金融危機」が迫っているからなんじゃなかろうか。
となると気になるのは、このゼロヘッジさんの記事の冒頭にある「SVBは忘れてくれ、クレディ・スイスはホンモノだ」のフレーズだろう。
“パニック、メルトダウン、泣く人…” https://t.co/i1g0VP5YIP
— zerohedge jpn (@zerohedgejpn) March 15, 2023
巨大銀行クレディ・スイスの財務管理はズタズタで預金流出が止まらず、CDS料率はリーマンショック時の比ではないハネっぷりで、以前に紹介した危機的状況からさらに悪化している。(継続する日銀のステルス介入は市場へのドル供給が目的か)
以下は、ゼロヘッジさんの記事に掲載されていた、クレディ・スイスのCDS料率の推移だが・・
・・既に破綻が見えてきた感じ。
あまりのヤバさにスイス中銀が救済表明し、さらにUBSグループが買収に動き出したとか。
UBS、クレディ・スイス買収検討 週末に取締役会―英紙報道 https://t.co/Xp1QWXoEhz
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) March 17, 2023
この救済・買収資金は、FRBの事実上のQEマネーが原資では・・?
と言うことで、クレディ・スイスはQEマネーで救済されそうな感じだが、そもそもクレディ・スイスが危機的状況となったのは、筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクが追加の資金提供を拒否したからだった。
クレディSは大丈夫、指標は健全-筆頭株主のサウジ・ナショナル https://t.co/PlKIcysH5g
— ブルームバーグニュース (@BloombergJapan) March 16, 2023
そして、サウジ・ナショナル・バンクが追加資金提供を拒否したのは、中東におけるアメリカ覇権衰退が原因ではないか。
中国が宿敵サウジとイランを仲介 アメリカは“傍観者となった”【報道1930】 https://t.co/HjsHDeDiq6
— TBS NEWS DIG Powered by JNN (@tbsnewsdig) March 17, 2023
アメリカ覇権下では御法度だった親米サウジと反米イランの仇敵関係を中国が修復したとのことで、これは、中東覇権の中国(&ロシア)陣営への移行と見てよいだろう。
さらに、モーサテでお馴染みの村松氏によると・・
先般の中国が仲介したイランとサウジアラビアの和解における交渉の会談では、英語は一切使わず、アラビア語、ペルシャ語と中国語を通訳を介して議論したとのこと。ここには強烈なメッセージ性があるなー。共通語の英語の否定、基軸通貨のドルの否定、米国は面白くないだろう。
— 村松 一之 (@gwYXhEqd7kjpwYu) March 18, 2023
・・と、中国・サウジ・イランの交渉の場では英語使用しなかったとのことで、これは米覇権衰退+アメリカへの決別宣言と見なすべきだろう。
ちなみに、「バイデンのサウジ訪問はペトロダラー終焉の合図」等で紹介したように、ここ最近のアメリカはサウジに対して・・
- イランの影響力の強いシリアやイラクから撤退し、両国をサウジと仲が悪いイラン(ロシア・中国)の覇権下に押し込もうとした。
- イスラム教の守護者を自認するサウジを無視して、イスラム教の聖地でもあるエルサレムのイスラエル帰属を支持した。
- トルコのサウジ領事館内でサウジ人ジャーナリストのカショギ氏が殺害された件について、首謀者はサウジのMbS皇太子と暴露してサウジ・トルコ関係を破壊
- アメリカ協力の密約の上で、世界最弱のサウジ軍をイエメン内戦に介入させたが、アメリカは密約を破棄して撤退
- さらに、サウジのイエメン攻撃を人道危機と非難した上に、フーシ派によるサウジ油田へのドローン攻撃を見逃した。
・・と言った無慈悲な仕打ちを繰り返しており、サウジの離米は時間の問題でもあった。
そんなサウジがウクライナ戦争を機にロシア・中国陣営に寝返ったのは「ウクライナ危機でロシアに寝返るサウジとUAE 黒幕はイスラエル」で紹介したとおりで、さらにイランとの関係正常化交渉では英語も使用しないという「強い決別の意思」を示してクレディ・スイス問題もガン無視した。
サウジ問題に加えて、世界的に米国債忌避が強まっており、親米諸国(対米従属国)以外は誰も米国債欲しがらないんだとか。
The world is dumping US Treasuries. Raising new debt is now difficult for the US Govt. The last tool is money printing on the backs of other nations. That’s why many nations don’t want the US dollar as a reserve currency anymore. The US is exporting inflation to the world. #Broke pic.twitter.com/2vhzwHsyw3
— Kim Dotcom (@KimDotcom) March 12, 2023
クレディ・スイスの救済資金をサウジが出さない上に、肝心の米国債を誰も欲しがらないとなれば、FRBが引き取る(=事実上のQE再開)しかない。
と言うことで、SVB危機をまとめると、JPモルガンがSVBやSNYを潰してまでQE再開させたのは、サウジに見捨てられたクレディ・スイスを救済して金融危機(ドル崩壊)を防ぐためであり、ウクライナから遠く離れたアメリカ金融界で起こった、欧米陣営 vs 中国・ロシア陣営の経済戦争の一環だった。
「ウクライナ危機という経済戦争で崩壊するドル、そして日本バブル」や「ウクライナ危機でロシアが仕掛ける金・資源本位通貨」等で紹介したように、ウクライナ戦争の本質は経済・金融覇権(ドル覇権)を争う経済戦争なので、QE再開させられた欧米陣営の旗色が悪くなっていることの表れではないか。
ゼロヘッジさんによると、サウジ・イランの和解によってインド~ロシアに至る貿易ルートの出現や「脱ドル化」「ペトロダラー崩壊」の可能性が強まっているとか。
イランとサウジの和解は、ドルに致命的な打撃を与えるだろう https://t.co/XNkTiqE7LC
— zerohedge jpn (@zerohedgejpn) March 18, 2023
離米を決めたサウジにペトロダラーを維持するメリットなど無く、そうなればペトロダラーによる信頼を失った米ドルを決済通貨として使うメリットは皆無であり、金融システムの中心に位置する米ドル・米国債の信頼性は大きく揺らぐ。
ところで、事実上のQE再開でクレディ・スイスショックという金融危機(米ドル崩壊?)は先延ばしされたが・・世界には、FRBの全力QEでも救済不可能なドイツ銀行も控えている。(NY・日経暴落もぶっ飛ぶ衝撃!ドイツ銀行がデフォルトする!?)(ドイツ銀行のCDSが8000兆円!?これが欧州経済崩壊の引き金か!?)
中国・ロシア陣営の次のターゲットは、いよいよドイツ銀行なのか?
最後まで読んでくれてありがとう!