昨今、世界的に食糧価格が上昇しているが、日本への影響が大きいのは「制裁強化で現実になる米ドル崩壊と食糧危機」で紹介したように、アメリカやカナダにおける干ばつ被害によって小麦が不作となっていることだろう。
この他にも、様々な理由が重なることで食糧価格が高騰しており、その点についてロイターからまとまった記事が配信された。
情報BOX:世界で食料価格高騰、主な原因と今後の展望 https://t.co/VvTR3JXGjD
— ロイター (@ReutersJapan) May 15, 2022
これまでに「ロックフェラー財団の警告どおり世界は食糧危機に向かいそう」等で紹介した内容と重なる部分もあるが、まとまっていて分かりやすい。
ロイター記事の概要はこんな感じ。
- コロナにより消費者の備蓄需要が増大したが、サプライチェーン圧迫により出荷・流通量が減少したほか、移民労働者がいなくなり収穫量も減少した。
- こうした中で、ブラジルでの干ばつによる大豆の不作や、中国では小麦収穫への懸念のほか、世界最大のパーム油生産国のインドネシアでは、パーム油輸出を全面的に禁止するなど世界各地で天候不順による収穫量減少が起こっている。
- さらに、ウクライナ危機により、ロシアやウクライナからの小麦・トウモロコシ・ひまわり油の供給が激減した結果、穀物や食用油は高騰している。
- さらに、高騰した穀物を原料とする家畜用飼料も高止まりしているほか、鳥インフルは鶏卵・鶏肉価格上昇を招いている。
- 肥料大国のロシア・ベラルーシからの肥料が控えられたために肥料価格も高騰しており、適切な量の肥料が使われなくなり、生産量に影響が出る恐れも。
- 国連もグローバル食料安全保障は解決不能としている。
・・とこんな感じで、世界的に食料価格の高騰については、
- 天候不順による生産量低下
- コロナやウクライナ危機によるサプライチェーン圧迫
- ウクライナ危機による肥料不足
- 肥料不足による生産量低下懸念
- 穀物を原料とする畜産飼料も高騰
の5つが並列的に発生しており、しかもしばらくは収まらないとのことだ。
今のところ、小麦などの穀物が不足しているとの声はあまり聞かれないが、「ロックフェラー財団の警告 6ヶ月以内に食糧危機が起こる」で紹介したように、ロックフェラー財団のラジブ・シャー会長は肥料不足にる食糧危機が半年以内に発生するとの警告を発している。
まあ、これは警告と言うよりは予告と言った方が良いのかもしれないが・・・。
なお、先のロイター記事にある中国小麦については、ブルームバーグが報じている。
Videos showing acres of wheat in China being destroyed or cut down before they mature are going viral on social media, throwing doubts on the quality of the crop in some areas at a time when global prices are soaring https://t.co/hHOG0jYPOi
— Bloomberg (@business) May 11, 2022
中国では洪水被害を懸念した農民さんにより小麦が早期収穫されているが、早期収穫されたものは家畜用の干し草となるため、昨年に引き続き中国では食用の小麦を大量輸入することになりそう・・とのこと。
中国の農民さんの判断は世界的な小麦不足を助長しそうだが、以前にも紹介したように、中国共産党政府は世界の穀物備蓄量の半分を占めるほど備蓄を進めており、安易な早期収穫を許すとは思えない。
となると、世界的な小麦不足を助長するために中共政府は意図的に早期収穫させた・・という陰謀論的な可能性は成り立つ。
中国は、世界の食糧不足や価格高騰に一役買っているのかもしれん。
また、渦中のロシア・ウクライナ方面では、ロシア軍がウクライナから穀物(小麦)を略奪して出荷していることが報じられている。
地中海の港、ロシア商船の入港拒否 ウクライナから盗んだ穀物積載か https://t.co/2WpNMPAxsY
— cnn_co_jp (@cnn_co_jp) May 13, 2022
主に中東・アフリカ方面に輸出されていたウクライナ小麦だが、ロシアの黒海封鎖により輸出が止まり積み置きされており、これをロシアが勝手に貨物船に乗っけて出荷させたようだ。
ただ、以前にも紹介したように、インドがロシア石油を大量購入していることもあってロシアの収入は記録的な規模となっておりカネには困っておらず、確実に非難されるウクライナ小麦の略奪&輸出に手を出すとは考えにくい。
おそらく、ロシア陣営についている中東・アフリカ勢は、ウクライナからの小麦輸入が止まって困窮していることを受けた措置なのではないか。
CNNの記事によると、貨物船はウクライナ当局から連絡を受けたエジプトに入港拒否されているようだが、エジプトの本音は「バレないように別の船に積み替えてこい」なのかもしれん。
ただ、このロシアの動きにより、ロシア小麦はウクライナ盗品と疑われることとなった。近い将来、食糧危機が欧米諸国を襲ったとしても、ロシア小麦を輸入することは困難となった。
つまり、小麦不足となりそうなのは欧米諸国(日本含む)であって、中国・ロシア陣営ではない可能性が高い。
別のCNNの記事によると・・・
ウクライナ農家、ロシア軍が大量の穀物を略奪と証言 飢餓の歴史再来の懸念 https://t.co/PyB9N5wENo
— cnn_co_jp (@cnn_co_jp) May 6, 2022
ウクライナ南部に保管されていた小麦・トウモロコシ計2100万トンのうち、ロシアが略奪したのは40万トン程度とわずかだ。
この程度のカネを設けるために、ロシア軍が手間のかかる出荷作業に従事したとは思えず、やはり中東・アフリカ勢の要請があったことと、欧米諸国との小麦供給ルートを断絶する狙いがあったと見るべきだろう。
このCNNの記事では、略奪されなかった穀物倉庫はほとんどが破壊されていることが報じられており、今後の収穫物の保管が不可能となっていることが伺える。
さらに、
ルハンスク州の当局者によると、同地でこの春の種まきは行われていない。別の当局者によれば、ロシア軍はヘルソンで収穫量の70%を無条件で引き渡すことを条件として農家の種まきを認めたが、ほとんどの農家は拒んでいるという。
とあり、ロシアの年貢が重すぎて多くの農家が作付をしていないことが報じられている。
ロシアさんは、ロシア産・ウクライナ産小麦の供給を止めることで、中国さんと共に世界の小麦不足や価格高騰に一役買っている。
さらに、クアッドの一角でありながらロシアから石油を買いまくるインドさんも、この流れに追随する。
インド、小麦輸出を即時停止-国内の食糧安全保障を優先 https://t.co/Om3tTIB8uZ
— ブルームバーグニュース (@BloombergJapan) May 14, 2022
少し前まで「インドが世界に小麦供給するぜ」とアピールしていたインドさんだが、思ったより収穫量が少なくなりそうなので、国内優先で輸出しない方向に舵を切った。
まあ、インド小麦の大半は元々国内消費されていたので、小麦輸出アピールは「ロシアに制裁しろ圧力」をかわすための方便だったのかもしれん。
なお、日本は、アメリカ産小麦の不作を受けてインドからも小麦輸入するところだったが・・・大丈夫なのかな。
一応、記事には
インド商工省商務局・外国貿易部の13日付の通知によると、国内の食糧安全保障を万全にする。ただし、他国の要請や取り消し不能の発行済み信用状がある場合は輸出を許可する。
とあり、日本へは輸入されそうな雰囲気だが・・必要量確保の見通しが立っているかは分からんな。
こうしてみると、ロシア・中国・インドにより世界・・ではなくロシアの「非友好国」の小麦供給は大混乱となる可能性があり、特に日本では小麦を確保出来なくなるかもしれない。
また、これまでにロシアや中国が仕掛ける金・資源本位通貨制による「金融・経済システムのグレートリセット」を紹介してきたが、実は「食糧生産システムのグレートリセット」も並行して仕掛けられているように見受けられる。(ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット)
この食糧生産システムのグレートリセットについて、今現在見えているのは小麦の混乱であり、
野菜の流通か小麦関連か、日本で食糧問題が起こる。社会問題になる。
という、「ばあちゃんの予言」が10年以上の時を経て的中しそうな状況となっている。
だが、「ロックフェラー財団の警告 6ヶ月以内に食糧危機が起こる」で紹介したように、ロックフェラー財団のラジブ・シャー会長が肥料不足による食糧危機を警告していることから、食糧生産システムのグレートリセットの本丸は化学肥料の不足だろう。
実際に、コロナやウクライナ危機によって世界的に化学肥料が不足・高騰している事態を受けて、日本の農家さんからも農業生産量が大幅に減少する・・・との声が出ている。
農家の現場から@日本自給自足100%プロジェクトさん
【農家が暴露】食糧危機が始まった!あと1年で米も野菜も作れなくなるワケ #食糧危機 #農業 #備蓄 #食料不足 https://t.co/xyNo3x8kb0 via @YouTube
— Nancy345 (@Nancy34512) January 24, 2022
このツイートで紹介されている動画の概要は以下のとおり。
- 日本の農家の中で、肥料が不足し始めていることが問題になっている。
- 特に、3大肥料(窒素・リン酸・カリウム)のうち、窒素肥料が不足している。
- これが無いと、米も麦も野菜も何も作れなくなる。
- 日本の肥料はほぼ全量を輸入に頼っており、コロナで輸入が2年ほど止まっているため国内の在庫が尽き始めているようだ。
- このままだと農業生産量が大幅に減少し、食料全量を輸入に頼ることになるが、マックのポテトすら入ってこない状況ではかなり厳しいのではないか。
- なお、食糧難になった場合、家庭菜園でのオススメはジャガイモ(カロリーベース的にも、栽培が簡単な点も)
現代農業に必須の化学肥料が無くなると、「米も麦も野菜も何も作れなくなる」という深刻な事態になりそうだ。
日本では「余剰気味の米があるから米粉にすればいいじゃん」的な声が散見されるが、肥料不足の中では米の生産すら覚束なくなるため机上の空論に過ぎない。
肥料以外にも、日本では8割自給している野菜もタネは大半が輸入だし、F1品種はそもそもタネがとれない。(グッバイ コシヒカリ!遺伝子組み換えライスしか食えなくなる時代に!?)
また、乳製品や卵も自給率は高いが、飼料(トウモロコシ)はほとんど輸入に頼っている。
さらに、以前に紹介したように、ガソリン価格高騰に耐えられなくなったアメリカはバイオ燃料(トウモロコシ由来)の利用促進に舵を切っており、トウモロコシは食用・飼料用・バイオエタノール用での争奪戦となっている。
実のところ、アメリカ陣営・ロシア陣営を問わず、世界の食糧・肥料生産国が食料システムの混乱を引き起こしており、「経済・金融面のグレートリセット」がアメリカ・ロシアの共同作業によって誘発されようとしているのと状況は似ている。
そういえば、グレートリセットにより新世界秩序(管理社会)の構築を目指すロックステップ計画に、食糧危機とは経済崩壊とともに発生するとのくだりがある。
- 食料・ガスなどは不足するため、許可制で最低限の買い物しか出来ないようにする。
- そして、更にロックダウンを強化・長期化(6ヶ月以上)して、世界的に経済を崩壊させて食糧危機を発生させる
。
「経済・金融面のグレートリセット」と「食糧生産システムのグレートリセット」は同じ流れで発生しそうだ。
また、「食糧生産システムのグレートリセット」が起こるのは、既存のシステムが限界に達しているからのようであり、その点でも「経済・金融面のグレートリセット」と同じだ。
With World Gripped By Fertilizer Crisis, Biden Admin Clings To “Climate-Inspired Utopian Food-Production Fantasies” https://t.co/Z6icVtwzly
— zerohedge (@zerohedge) May 10, 2022
ゼロヘッジさんの記事の中では、アメリカやEUのエライ人たちが、堆肥などの有機肥料への早期移行が生産者たちの利益になることや、化学肥料や農薬を使用した集約的農畜産業による生態系への悪影響を懸念する声明が紹介されている。
また、そのようにして生産された穀物を畜産(食肉)やバイオ燃料生産に当てることにも否定的であり、「この危機をムダにするな」としている。
緑の革命の全面否定にも取れるが、このエライ人たちの見解は理解できる。
この糖質制限の本の中には、興味深い分析が出てきている。
炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学(夏井睦 著)
ざっとかいつまむと、1900年代初頭に16億人程度だった世界人口は今では約80億人となっているが、その人口増加を支えたのは、安価で大量のカロリーを確保出来る小麦などの穀物生産量の増加だった。
1950年代までは農地面積の増加に伴って穀物生産量も増加していたが、それ以降の増加は「緑の革命」によるもの。
「緑の革命」とは、高収量品種(近代品種)の作付けや化学肥料・農薬の使用、灌漑技術等により単位当たりの収穫量が飛躍的に増加したことを指しており、これを主導したのがロックフェラー財団だった。
ただ、爆発的に膨れ上がった金融市場と同じように、この生産システムにも綻びが出てきている。
過剰使用された化学肥料は河川流出を通じて海を富栄養化して赤潮公害を引き起こしているほか、地下深くに染み込んだ窒素肥料は分解されて硝酸となり、地下水汚染の原因となっている。
また、化学肥料や農薬の大量使用は土中の微生物群に致命的なダメージを与えており、土地そのものが痩せ細った結果、化学肥料では何ともならない状況になりつつある。(「奇跡のリンゴ」は、多国籍アグリメジャーの日本侵略への切り札か!?)
さらに、大規模灌漑による地下水の枯渇は現実のものとなっているなど世界中で深刻な水不足が起こっているほか、灌漑により不毛の大地の地下深くまで水が染み込んだ結果、地下の塩分が地上に出てきており(塩害)不毛の大地に逆戻りしそうとなっている。
つまり、緑の革命の成果たる「穀物の大量生産」は風前の灯だ。
当然ながら、大量の穀物飼料を前提とした畜産も風前の灯火であり、世界のエライ人たちが推奨する昆虫食もこの流れの一環と言える。
昆虫は畜産よりも効率的に植物をタンパク質に変換することが出来るのだが、近代農畜産業が限界を迎える中にあっては、効率的にたんぱく質を作れる昆虫に頼るしかない・・見た目的にアレだが・・というのが本当のところだろう。
以前に、コロナやウクライナ危機によるサプライチェーン混乱や世界中の不作によって、世界の穀物備蓄量が低水準となっていることを紹介した。
Global Grain Reserves “Extremely Low,” Will Be Depleted For Years, Warns Top Fertilizer Boss https://t.co/4JBBo9bNH4
— zerohedge (@zerohedge) May 6, 2022
だが、世界の穀物備蓄が少ないのは、化学肥料や農薬を使用した食糧生産システムが頭打ちとなっており、生産量が低下している可能性もありそうだ。
また、ロックフェラー財団が警告する食糧危機は化学肥料不足が理由だが、実際には化学肥料が潤沢にあっても生産量が低迷する可能性が高く、その点からもグレートリセットは不可避なのかもしれない。
現在のコストや量を追及しすぎた農業は限界に達しており、その点では木村秋則さんはじめ無農薬農業などの重要性は高まるかもしれない。
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録(石川 拓治 著)
なお、化学肥料や農薬に頼らない農業ということで、様々な病害虫耐性を持つGMO(遺伝子組み換え)作物の普及が一気に進む可能性も充分に考えられる。
食うに困った状態ならGMOは普及しやすくなる・・ということか。
それにしても・・日本では、全国民が毎日茶碗1杯のご飯を捨てているのに相当する食品ロスが発生しているというが・・そんなことなどウソだったかのように、食べ物の価値は劇的に向上するだろう。
また、本来は草を食べて大きくなる牛に穀物肥料を与えて不自然に成長させていたような畜産業も終わることになり、食肉の価値は特に高くなりそう。
まあ、食べ物粗末にするような社会が長続きするとも思えないので、グレートリセットもやむを得ない面はあるが・・・金融面でも食糧面でも展開が急すぎる。
とりあえず、半年後(10~11月頃)の食糧危機には備えておいた方が良いかもしれない。コメとかパスタとかプロテインとかかな。
最後まで読んでくれてありがとう!