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ウクライナ戦争終結と欧州分裂にトルコが暗躍

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7月11日から開催されたNATO首脳会議では、「7月11日第三次世界大戦勃発というヌーランド発言」のような第三次世界大戦を誘発するようなことは何も起こらなかった。

ヌーランドの神通力も終わりつつあるのかどうか分からないが、このNATO首脳会議やその前後の期間に、今後を占う様々な出来事があったので紹介したい。

まず気になるのは、以前にも紹介したように、2022年3月のロシア・ウクライナの停戦協定を締結直前で潰し、率先して戦車やミサイル供与したイギリスさんが、ウクライナ支援の限界を仄めかし始めていることだろう。

イギリスのウォレス国防相が、NATO首脳会議後のメディア取材に対して「去年の6月の話なんだけど、ウクライナのおねだりがヒドいから、ワシらはアマゾンじゃねえぞって言ったったわ」と、ウクライナへの不満をぶちまけた。

ウクライナの態度が常に上から目線なのは、「米英に対ロシア戦争を強要された」という立場なら致し方ないと言え、さらに「ゼレンスキー大統領はロシアのスパイ説を考える」で紹介したように、ゼレンスキー大統領がロシアスパイとするなら、際限無きおねだりには欧米諸国の兵器類を枯渇させる目的があった可能性が高い。

いずれにせよ、実務担当者レベルでは、昨年6月の段階で戦争(支援)継続が困難と判断していたことが伺え、さらにそれを言い出したのが、和平交渉を潰して戦争継続を強いたイギリスという点は注目すべきだろう。

実のところ、アメリカやNATO諸国は深刻な兵器枯渇に陥りつつあることが報じられている。

欧米諸国では、1991年のイラク戦争時から戦闘機群が半減するなど軍縮する中でのウクライナ支援で、アメリカ含むNATO諸国の兵器在庫は危機的水準となっていることが報じられている。

また、これまでの軍縮の流れの中で、兵器メーカーも生産能力の拡充投資を渋っており、増産も難しくなっているとか。

こうした中で、バイデン政権はアメリカの弾薬不足を理由に、ウクライナにクラスター爆弾の供給を開始した。

これに対して、イギリスのスナク首相はじめ欧州勢から「さすがにアカンやろ」と多くの批判の声が出ている。

これに対してアメリカから「他の国は既にクラスター弾を供給してるぞ」との爆弾発言があったとか。

ロシアメディアのスプートニクさんの記事では、ウクライナが米国以外の複数の国からクラスター爆弾の供給を受けていることを、米国防総省のダグラス・シムズ統合幕僚監部作戦部長が暴露したことが報じられている。

この状況からは、欧米諸国にはウクライナに送る兵器類や砲弾が枯渇してクラスター爆弾しか送れなくなっていることが伺える。

この戦争の目的は、ロシア潰しと言うよりも・・

  1. 安価なロシア資源に依存して経済成長するドイツを潰し(NATO vs ロシアの第三次世界大戦でドイツは消滅!?
  2. ドル・米国債を中心とした金融システムを崩壊させ、金・資源の裏付けを持つ通貨を創設する金融システムのグレートリセット(ロシアの金・資源本位通貨は新世界秩序に向けたグレートリセット

・・であり、その手段としての戦争継続こそが重要になっであり(勝敗はどうでもよい)、戦争の引き延ばしも限界に達していることが伺える。

①については、ロシア産の安価なエネルギーが断たれたドイツで、エネルギーコスト高騰に伴って化学メーカーが米中に脱出していることが報じられている。

対ロシア制裁によって孤立・凋落したのはロシアではなく、欧州勢だったことが明らかになりつつある。

②については、金・資源本位通貨の創設が遅れているようで、8月のBRICS会議で発表されるのではなく、まだ数年かかりそうなことが報じられているが・・

・・さすがにそこまでウクライナ戦争を先伸ばし出来ないだろう。

既にアメリカもウクライナも、前評判の高かった「反転攻勢」が失敗に終わったことを認めている。

この状況だと、「ウクライナ戦争終わり」宣言が出れば戦争は終わる可能性があり、ウクライナ戦争ではない別の手段で①②を達成する必要が出てくる。

その一環と思われるのが、NATOの一員でありながらロシアと良好な関係だったトルコが、スウェーデンのNATO加盟やロシアが捕虜にしたアゾフ連隊員のウクライナ帰国を承認するなど、新ロシア政策を180度転換したような判断を連発したことだろう。

トルコは、これまで反対してきたスウェーデンのNATO加盟について、NATO首脳会議を前にいきなり同意に転じた。

中立国スウェーデンがNATO加盟の意向を示したところ、トルコはクルド人の扱いを理由に反対していたのだが、それを急変させた理由について、上のブルームバーグの記事では・・

同当局者はまた、防衛関連の制裁解除という要求についても進展があったほか、関税同盟やビザなし渡航といった問題でも欧州連合(EU)から加盟交渉を加速させるとの同意を得たと明らかにした。

・・とあり、スウェーデン加盟承認と引き換えに、アメリカと揉めているF16戦闘機の更新問題や長年の悲願だったEU加盟に関して、欧米サイドから譲歩を引き出したことが伺える。

しかし、F16戦闘機の件が譲歩なのかは微妙だ。

トルコは、2019年にロシアからS400地対空ミサイルを購入して、F35開発チームから追放されたワケだが、その理由は、トルコがロシア製S400の防空性能の前でF35のステルス性能をテストして、その結果がロシアに渡る可能性があるためで、トルコがF35を購入出来なくなったのは妥当な判断と言える。

トルコもF35については何も文句を言ってないのだが、問題となったのは、後にトルコがF16戦闘機の更新を打診したところ、アメリカは難色を示したからだ。

トルコ国内では「ワシら軍事同盟NATOの一員じゃないんか」と怒りの声が噴出し、ロシア製戦闘機を購入する話も出るほど反米感情が高まっていた。

こうした声の背景には「S400を買ったからF35の件は仕方ないけど、F16の更新拒否はアメリカのいちゃもんや」との意識が強いことがある。実際にただのいちゃもんだ。

F16戦闘機の更新問題と引き換えにスウェーデンのNATO加盟を承認したとなると、アメリカの不当圧力に屈したことになってしまうため、この件とスウェーデンのNATO加盟は完全に別物と言える。

と言うことで、トルコがスウェーデンのNATO加盟と引き換えに求めるのは「EU加盟」一択だ。

ただ、トルコのEU加盟については、これまで「(加盟させるには)大きすぎ、貧しすぎ、異なりすぎる」としており・・

  • トルコの国土と人口が欧州諸国を圧倒していること
  • 農業中心で貧しい国であること
  • 宗教的・民族的な違いが大きいこと

・・EU諸国の負担が大きくなりすぎることを念頭に、加盟盟交渉は進まなかった経緯がある。

つまり、スウェーデンのNATO加盟と引き換えにする「トルコのEU加盟」とは、欧州勢にとって「毒まんじゅう」である可能性が極めて高い。

埋伏の毒

また、先に見たように、F16戦闘機の件はスウェーデンのNATO加盟と関係無いことを踏まえると、アメリカによる「ウチは戦闘機で譲歩した。欧州勢の諸君もヨロシク」という欧州勢への圧力でしかない。

欧州勢がどう対応するかは見ものだが、以前に紹介したように、米シンクタンクのランド研究所が・・

  1. ドイツを弱体化させてEU内での影響力を削ぐ
  2. EUからアメリカに利益還流する
  3. そのためにウクライナで戦争を起こさせる

・・との計画書を作成しているなど、アメリカにとっての真のターゲットはEU(特にドイツ)であることからも、トルコのEU加盟という毒まんじゅうを無理やり食わせようとしていると言える。

さて、欧州勢が食わされるトルコの毒Part1だが、現在のトルコは年率40%というスーパーなインフレによって、数百億ドル単位で外貨準備を吹き飛ばすなど、経済・金融情勢が極めて厳しくなっている。

トルコ国内では、トルコではインフレ(=通貨安)への対応として利上げすべきところ、エルドアン大統領は・・

  1. 利下げで資金調達が容易になって景気改善
  2. リラ安によって輸出やインバウンドが伸びる
  3. そもそもイスラム教徒は利子は禁止

・・として利下げを続けたことによるもので、同様の金融政策を採用する日本円と異なり、マイナーカレンシーのトルコリラは通貨安(=インフレ)が止まらない状況となっている。

トルコ国内はもはや「惨状」で、高金利を嫌ってきたエルドアン政権も異次元の利上げに追い込まれた。

以下はトルコリラドルの月足チャートだが・・

20230713トルコリラドル月足チャート

・・トルコリラは対ドルで何年も暴落中で、ここ数年だけでも8割減位になっており、6.5%という脅威の利上げも焼け石に水という有り様だ。

こうしたトルコの状況は、2010年のユーロ危機を彷彿とさせる。

あの時は、格付け会社S&Pがギリシャ国債をジャンク級の「BB+」に格下げしたのを機に、ポルトガル・スペイン・イタリア等も危ねーぞとなり、さらにS&Pはポルトガルとスペインの国債を格下げして追い込んだため、「ユーロヤバイ」となったファンド勢が資金を引き上げてギリシャ危機は「ユーロ危機」へとランクUPした。

現在では、アメリカFRBが異次元の利上げによって、外貨準備高の少ない新興国が起こしたドル建て債務の利金がエグくなっており、トルコリラ暴落も加わってトルコのドル建債券の信用危機が懸念されるところだ。

そうなってくると、トルコ国債を大量保有するスペインやフランスの銀行の信用危機に繋がるワケだが、そうした中でトルコがEU加盟すれば、2010年のユーロ危機と同様に、ドイツがトルコやスペインを助ける・・という議論が再燃する。

また、「ウクライナ戦争の真のターゲットはEU ユーロは崩壊へ」等で紹介してきたように、自滅的な対ロシア制裁によってEU(ドイツ)の金融・経済はズタボロとなっており、先に紹介したように、ドイツの大手化学工業が国外移転する状況だ。

こんな状況でトルコ債券問題なためにユーロ刷り増しなどするば、(ドイツ国民も猛烈に反対するし)ユーロ崩壊危機へと繋がる可能性も高そう。

欧州が食わされるトルコの毒Part2は、トルコのEU加盟によって、多くの(不法)移民がトルコ経由でEU域内の移動の自由を得ることだろう。

ドイツやフランスは(不法)移民を大量に受け入れた結果、住民と移民との間の分断・対立が深刻化しており、日本で礼賛される「多文化共生」など夢物語という現実が生まれている。

移民が文化や習慣の異なる住民共同体に入ることは不可能であり、移民仲間とコミュニティを作ってしまい一種の「国家内国家」となってしまうことを、元ウクライナ兼モルドバ大使の馬淵睦夫氏も指摘している。

知ってはいけない現代史の正体(馬淵睦夫 著)

外交官として多くの国を見てきた馬淵氏によると、多文化共生とは移民を受け入れることではなく、本来的な文化共同体である国家間でこそ実現可能としている。

「移民を受け入れて多文化共生」は幻想に過ぎないキレイ事なのは、先日のフランスで起こった内戦レベルの暴動を見れば明らかと言える。

なお、このゼロヘッジさんの記事では、銃規制の厳しいフランスにおいて多くの暴徒さんがAK47等の銃火器で武装していたことが報じられている。

トランプの機密文書問題はアメリカ内戦とグレートリセットに繋がる」等で、アメリカではバイデン政権による国境解放&放置政策により、(不法)入国者に数多くのテロリストが紛れていることを紹介したが、EUにおいても自由な移民政策によって数多くのテロリストが侵入していたことを伺わせる。

また、2020年にフロイド事件を機にアメリカ全土て発生した大暴動は、「アメリカの暴動はジョン・タイターの言う内戦の始まりか」等で紹介したように、街中の至るところに謎のレンガブロックが用意されるなど、ポリティカル・コレクトネス推進のために仕組まれた可能性が高いものだった。

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今回のフランス大暴動も拡大のテンポが手際よすぎだし、(不法)移民の銃器入手経路の不可解さを踏まえても、ナゾ勢力によって扇動された可能性を感じさせるものではある。

ポリティカル・コレクトネスの行き過ぎた推進は、都市部の治安悪化からのブルーステート(民主党支持州)を中心にアメリカ都市部においてCRE(商業不動産)問題に発展しかけており、何だかんだレッドステート(共和党支持州)・・と言うか、トランプ的な右傾化を招いている。

フランスでも大暴動によってマクロン政権の支持率が急落し、代わりに厳格な移民政策等を求めるマリーヌ・ルペン率いる右派政党への支持が急増しているなど、現実にそぐわないポリコレ推進の左派政権ズから右傾化する流れはEU主要国においても必定と言え、その流れの中で決定的な役割を果たすのが「移民政策」と言える。

自国ファーストで移民を認めない右派政権ズに対して、EU内の左派政権ズは「やっぱ移民アカンわ」とは言えないので、移民をEU加盟国内に強制的に分散させようとしているとか。

この政策は、EU問題児のハンガリー・オルバン首相が「断固拒否やで」と宣言しているように、移民から人気のない国々の大反発と政権右傾化を招く。

そして、自国ファーストの右派政権ズばかりになれば、EU分裂・崩壊をも招く可能性が出てくる。

つまり、移民問題とは・・

  • 国内で内戦級の暴動を招くテロリストの温床
  • 国民は誰も支持しないため、政権の右傾化を招く
  • 最悪、EU崩壊へ

・・という破壊力抜群のキレイ事政策であり、トルコのEU加盟によってトルコ経由でイスラム過激派の入国が増加し、フランス大暴動(内戦?)がEU加盟国内で散発して、政権の右傾化と共にEU崩壊の可能性も見えてくる。

と言うことで、EUから見ればトルコ加盟とは・・・

  1. 金融崩壊しそうなトルコ救済によるユーロ危機再燃→EU崩壊
  2. 不法移民急増により各国の右傾化→EU崩壊

・・と、とても認められるワケがないものだが、アメリカはF16問題で率先譲歩して圧力を掛けている・・と言えよう。

なお、アメリカの世界覇権撤退・縮小戦略(=軍事プレゼンス縮小によるドルの信用喪失)を踏まえると、EUだけでなくNATO崩壊をも狙っていると言えよう。

それは、欧州分裂・対米離脱という言葉で言い換えることが可能だ。

なお、トルコはスウェーデンNATO加盟を承認するのは、トルコ議会が開会される10月以降としている。

この記事を踏まえると、トルコは・・

  • スウェーデンに対して「10月までにクルド人を何とかしろ」
  • EUに対して「アメリカはF16を解決してくれたけど、お前らはどうなんや?タイムリミットは10月や」

・・と、交渉主導権を握っていることが分かる。

全体として見ると・・

  1. この話は、アメリカがスウェーデンにNATO加盟を促して始まった。
  2. トルコは自国のEU加盟と引き換えに認めるとした。
  3. このタイミングで、アメリカはF16戦闘機問題を解決した。
  4. EU(NATO)大ピンチ

・・という経緯をたどっており、スウェーデンのNATO加盟は「NATO vs ロシアの第三次世界大戦でドイツは消滅!?」等で紹介したアメリカのEU(ドイツ)潰し戦略の一環であり、トルコは乗っかってきただけと言え、スウェーデンのNATO加盟を1ミリも認める気が無いと考えられる。

なお、欧州勢はウクライナのEU加盟という話にも付き合わなければならないが・・・

・・腐敗&貧困国家ウクライナなど加盟して欲しくない中で、トルコはウクライナのNATO加盟も「ええんやないの」と言い出した。

なお、ウクライナのNATO加盟については、バイデン大統領でさえ「オタクの加盟は100年早いで。まずは戦争終わらせて出直しや」と完全否定している。

このアメリカの態度からは、ウクライナ戦争の目的がウクライナを守る点には無いことは明らかで、「戦争長期化するから、ウクライナさんは最後の一人まで戦ってね」という思惑が透けて見える。

200%あり得ないウクライナのNATO加盟をトルコが言い出したのは、スウェーデンのNATO加盟と同様にEU・NATOへの牽制球で、EUがウクライナを特別扱いして加盟させるなら「トルコも当然OKよね?」として、EU加盟してないトルコはウクライナのNATO加盟で牽制していると考えられる。

EU・NATOはトルコの要求(withアメリカの圧力)を飲んで崩壊するか、トルコの要求を蹴ってアメリカと袂を分かつかを選ばされることになりそう。

結果として、対米離脱派(フランス)と対米従属派(ドイツ)に分裂しそうだが、これは「メドベージェフ元大統領は欧州分裂からの第三次世界大戦を予測する」で紹介した、ロシア元大統領のメドベージェフ氏が予測するEU崩壊と言える。

なお、トルコの毒はPart3もあって、それはトルコがアゾフ連隊の捕虜を解放・帰国させたことだろう。

トルコにいるアゾフ連隊捕虜は、マリウポリ攻防戦敗北時にロシア捕虜となったもので、昨年9月の大規模捕虜交換の一環として、戦争終結までウクライナに帰国させないとの条件でロシアからトルコに引き渡されたという経緯がある。

戦略的に戦争は終わっていると言えなくはないが、明らかな合意違反にロシアは反発しているようだが、スウェーデンやウクライナのNATO加盟への対応を踏まえると、トルコの目的はこのツイートに凝縮されているのではないか。

元アゾフ連隊の将兵は、討ち死に必至の前線に戻されることを嫌がって、ゼレンスキー大統領を憎んでいるとか。

実のところ、ウクライナ軍は兵士の補充が追い付かず、国内の若年層を誘拐的に徴兵している。

ウクライナ国内では、徴兵官・警察官が街中で見かけた若者を強制的にバンに押し込んでいるとのことで、ハンガリー系の多いトランスカルパチア以外にキエフやオデッサと言った都市部でも行われているようだ。

ウクライナの若者はビビッて家から出られないほか、メッセンジャーアプリで徴兵官の居場所が共有されるなど、ウクライナの若者が徴兵を激しく忌避していることが伺える。

ちなみに、7000ユーロを徴兵官に渡せば徴兵を見逃して貰えるシステムになっており、徴兵関係者がスペインに高級マンションと高級車を購入した点は、腐敗国家ウクライナの本領発揮と言ったところ。

この報道から伺えることは・・

  • ウクライナ軍の兵士補充が追い付いていない→前線の高い損耗率
  • 暴力的な強制徴兵や徴兵関係者が賄賂で蓄財→高まる軍への嫌悪感

・・と言ったことだろう。

こうした中で、戦意喪失・ゼレンスキー嫌悪のアゾフ連隊の捕虜が前線に駆り出されれば、強制徴兵された若者と共にウクライナ軍内部で反乱する可能性も見えてくる。

これは、ウクライナが和平派・抗戦派の分裂に繋がり、先のEUが対米離脱派と対米従属派に分裂するのと合わせ、欧州は大きく二つに分裂することになりそう。

と言うことで、EU・NATO崩壊(=欧州分裂・対米離脱)に伴う欧州分裂が現実化しそうなところだが、それと並行して「来るべき金融危機の勝ち組はビットコインと日本円!?」で紹介したドル安がさらに進み、ドルインデックスが100を割り込んだことが報じられている。

ドルインデックスの週足チャートを見ると・・

20230718ドルインデックス週足チャート

・・2022年3月の利上げ開始時点の水準に戻っていることが分かる。

ここ最近は、ドル円も円高方向に振れているが、日銀のYCC解除の可能性を踏まえた円高と言うよりは、一方的なドル安の結果と言える。

この理由は、先日のCPIが思ったより低下してインフレの終わり=金融引締めの終わりが見えてきたとされているが、加えてアメリカで信用収縮が進んでいる可能性は気になるところ。

実のところ、食品・エネルギーを除いたコアCPIはほぼ横ばいだ。

6月CPI(消費者物価指数)

前回4.0% 予想3.1% 結果3.0%

6月コアCPI

前回5.3% 予想5.0% 結果4.8%

つまり、実際にCPIを下げたのはエネルギー価格の下落であり、加えて「崩壊しそうなドルと日銀の金融政策、そして新たな通貨システム」でも紹介したように、アメリカのインフレ鈍化は信用収縮(クレジット・クランチ)が原因である可能性が高い。

アメリカの大手銀行の様子を見ると、バンカメさんの金利収入は減少に転じていることが報じられている。

利上げが続くなかでの金利収入の減少は、それだけ融資が少なくなっていることを意味している。

また、金利収入の元になる預金残高そのものが減少しており、預金流出の波が大手銀行にも及んでいるとか。

日経さんの記事によると、6月末預金残高は、大手のシティやウェルズに加えて、あのJPモルガンさんもファーストリパブリック銀行を吸収した分を除くと微減とのことで、以前にも紹介したように、銀行預金がMMFに流れ込む流れは継続していることが伺える。

銀行の金利収入の減少は、「企業が信用ならん+預金流出」があることが伺え、「銀行の信用収縮でマネーサプライ急減、ドル崩壊後の準備が始まる」で紹介したように、信用収縮の悪化と共にマネーサプライ減少が進みそうで、CRE(商業不動産)市場の崩壊が迫っていることが懸念される。

急激なドル安は、このような懸念が引き起こしているのではないか。

さらに、アメリカでは6月分税収が前年比9.2%も減少し、ロックダウンで経済が死んでいた2020年6月以来の落ち込み幅になったとか。

また、米国の今年度の支払利息は約1兆ドルの大台を超える一方で税収は3年ぶりの低水準となり、支出は史上最速ペースで増加しているとのツイートが続いている。

これは、アメリカ財政が税金ではなく赤字国債に頼りきりということを意味している。

また、先日の債務上限問題クリア後に発行された米国債は約1.08兆ドルだが、FRBが国債を買い支える裏金的なリバレポ資金を確認すると・・

20230717リバースレポ

・・債務上限問題からのリバレポ残高は2.2兆ドル→1.7兆ドルと加速度的に減少しており、新規発行分の約半分はリバレポ資金で買い支えていることが伺える。

さらに、同時期のドル円日足チャートを見てみると・・

202306ドル円日足チャート

・・謎に5円位円安ドル高になっており、残りの半分は岸田マネーかも。(【日本の闇】特別会計を通じて日本の富はアメリカへ

と言うことで、赤字国債はリバレポ資金+岸田マネーで消化されている可能性が高く、放漫財政と合わせてドルの裏付けの一つとなる「アメリカ経済力(担税力)」は消失している。

と言うことで、現在のドル安は、インフレ終了に伴う金融引締め終了を見込んだもの、という理由に加えて・・

  • 銀行の信用収縮に伴うマネーサプライ減少による金融危機
  • 放漫財政+アメリカ経済力(担税力)消失で、ドルの信用が一つ消えた

・・という点がありそで、事実上の通貨切り下げ的な側面を持っているのかも。

こうしてみると、欧州分裂・対米離脱とドル崩壊の状況はリンクしており、事態は加速しつつあることが分かる。

なお、欧州はもう一つ難題を抱えていることが報じられている。

8月のBRICS首脳会議が南アフリカで開催されるのだが、南アフリカはICC(国際刑事裁判所)加盟国なので、国際手配されているプーチン大統領が入国すれば逮捕しなきゃいけないのだが、それを「アカン、無理や」としていることが報じられている。

海外報道では、南アフリカのラマポーザ大統領がプーチン大統領に「ZOOM出席してくれんか」と頼んだところ、「絶対に行くで」と全否定されたことも報じられている。

ICCのエライ人は反ロシアが国是のポーランドのお方もいるのだが・・果たしてどう対応するのか。

アメリカ辺りからは「当然逮捕するよなぁ」みたいな圧力もかかりそうで、欧州勢は対ロシア戦争の瀬戸際に立たされることになる。

ロシア元大統領のメドベージェフ氏が予測したEU崩壊や第三次世界大戦は、ドルの崩壊を伴いつつ本当に起こるかもしれない。


最後まで読んでくれてありがとう!